超名門貴族の次男、魔法を授かれず追放される~辺境の地でスローライフを送ろうとしたら、可愛い妹達が追いかけて来た件~

おさない

文字の大きさ
83 / 83

第75話 グレッグの最期

しおりを挟む

 スティングとの契約が成立し、家族を売り渡したデルフォスは、屋敷の一番端にある小部屋までやって来ていた。

「父さんが隠れそうな場所くらい簡単に想像が付く。――地下室だ」
「……そもそも、どうして旦那の旦那は隠れてるんでゲスか?」
「父さん――いや、あの無能は俺の旦那ではない。ふざけるなカス。反吐が出る」
「じゃあ、なんて呼んだら良いんでゲスか?」
「ゴミカスと呼べ」
「えぇ……?」

 あまりにも酷すぎるデルフォスの言動に、ドン引きするガス。

「それが嫌なら貴様を殺す」
「り、理不尽すぎるでゲス……!」

 しかし、今に始まったことではないので何ら問題はない。
 
「原因は私の娘――ハウラじゃあないかな。随分とおかしくなっているみたいだからねぇ。手に負えなくなってしまったのだろう」
「使用人に屋敷を乗っ取られるとは……とことん無能だな。あれを尊敬していた自分が恥ずかしくなる」

 デルフォスはそう吐き捨てた後、小部屋の物置き棚をずらし、地下室へと続く隠し扉を開けた。

「なぁるほど、こんな所に隠し階段が存在していたのか。これは中々見つけられないねぇ。相変わらず、用心深い男だよ」

 感心するスティング。

 デルフォスは、特に何も言わずに先へと進む。

「く、暗いでゲスね……わわわっ?!」

 そのあとを追いかけようとしたガスは、足場が見えずにバランスを崩して、階段を転がり落ちそうになる。

「おっと危ない」

 しかし、スティングが咄嗟に彼の腕を掴んで引き寄せたので、事なきを得た。

「大丈夫かいカス君。気をつけたまえよ」
「ふ、ふん! 別にアンタに助けてもらったって、嬉しくないんでゲスからねッ! 勘違いするなでゲスよッ! あと、ガスでゲス!」
「これは失敬」

 憎んでいる相手に優しくされ、感情が不安定になるガス。

「……茶番は済んだか? 先へ進むぞ」

 くだらないやり取りを間近で見せられたデルフォスは、不愉快そうに顔をしかめながらそう言い放ち、急ぎ足で階段を降りていくのだった。

 *

 一方その頃、ヴァレイユ家の現当主であるグレッグは、デルフォスの読み通り地下室に潜み、頭を抱えていた。

「一体どうなっているんだ……ッ!」

 娘が全員家出をした上に、ハウラまでおかしくなり、更にそこへスティングから「久しぶりに娘の顔を見に行く」という手紙まで届いたのだ。

 問題が積み重なりすぎて、もはや何をどうすれば良いのか分からなくなっていた。

「スティングの奴め……都合の良い口実をつけて俺のことを殺しにでも来たのか……ッ!? 親子揃って碌でもない奴らだッ!」

 その時、部屋の扉がノックされる。

「グレッグく~ん。こんにちはぁ」
「うわああああああッ」

 突然のことに驚き、悲鳴を上げながら転がり落ちるグレッグ。

「ご名答だよぉ~。君はいつもそういうところで余計な勘が働くよねぇ~」
「か、帰れッ! 入って来たら貴様を殺すッ!」
「違うよ~。君が、今から殺されるんだ」
「ふ、ふざけるな! 何故俺が殺されなければならない!」
「アニ君を――根絶やしにしろと命令されていたレスター家の人間を匿っていたんだ。当然だろう?」
「………………!」
「バレてないと思ったかい? 匿うにしても、追放する時にちゃんと殺しておかないからこんな事になるんだよ。……もっとも、そんなことをすれば、彼を疎ましく思っていた君が真っ先に子殺しとして疑われるだろうけど」

 ――アニを始末すれば自分自身が疑われる可能性が高く、真実を公表すれば今度は匿っていた事を罪として問われてしまう。

「君は、あの子を匿うという選択をした時点で詰んでいたんだよ。グレッグくん」
「クソぉ…………ッ!」
「残念だったね。そんな君に、さらにもう一つ残念なお知らせがあるけど」

 刹那、部屋の扉が勢いよく蹴破られ、中にスティングとデルフォスが侵入してくる。

「で、デルフォス……!?」
「つまりこういうことだ。ゴミカスクソ親父」
「お、お前、親に向かってなんて口の利き方を……!」
「黙れ! 貴様のような無能はもはや俺の親ではない! 大人しく死ね!」
「な、何を言っているんだデルフォス……?」
「……妹達を連れ戻す為には貴様が死ぬ必要がある。それだけのことだ」

 そう言われたグレッグは、力なくその場へ座り込む。

「お前まで……私を裏切るのか……」
「裏切る? 違うな。俺が貴様に裏切られたんだ。……俺を国王にすることも出来ないような無能に今まで媚びへつらっていたのかと思うと、虫唾が走るぞ……!」

 腹立たしげに近くにあった椅子を蹴るデルフォス。

「ところで君、どうしてそこまで国王になりたいんだい?」
「決まってるだろう。国王が一番偉いからだ! 国王になれば、この国の全て……いや、世界の全てがこの俺の思い通りとなる!」
「………………」

 興味本位で聞いたスティングは、その解答に絶句した。

「旦那ってもしかしなくても馬鹿でゲスよね。そこが憎めない所でゲス!」

 そして、誰かの呟きが部屋の外から聞こえて来る。

「……ま、まあ、そういう訳だから、別れの挨拶も済んだしそろそろ死のうか、グレッグ君」
「や、やめろ……!」

 全てに裏切られ、憔悴し切っているグレッグにゆっくりと近づいていくスティング。

「安心したまえ。死体は私の死霊魔術で有効に再利用してあげるよ」
「死霊魔術だと……?! な、なぜ貴様がの――」

 刹那、グレッグの首筋に太い針が突き立てられた。
しおりを挟む

この作品は感想を受け付けておりません。

あなたにおすすめの小説

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

痩せる為に不人気のゴブリン狩りを始めたら人生が変わりすぎた件~痩せたらお金もハーレムも色々手に入りました~

ぐうのすけ
ファンタジー
主人公(太田太志)は高校デビューと同時に体重130キロに到達した。 食事制限とハザマ(ダンジョン)ダイエットを勧めれるが、太志は食事制限を後回しにし、ハザマダイエットを開始する。 最初は甘えていた大志だったが、人とのかかわりによって徐々に考えや行動を変えていく。 それによりスキルや人間関係が変化していき、ヒロインとの関係も変わっていくのだった。 ※最初は成長メインで描かれますが、徐々にヒロインの展開が多めになっていく……予定です。 カクヨムで先行投稿中!

うちの冷蔵庫がダンジョンになった

空志戸レミ
ファンタジー
一二三大賞3:コミカライズ賞受賞 ある日の事、突然世界中にモンスターの跋扈するダンジョンが現れたことで人々は戦慄。 そんななかしがないサラリーマンの住むアパートに置かれた古びた2ドア冷蔵庫もまた、なぜかダンジョンと繋がってしまう。部屋の借主である男は酷く困惑しつつもその魔性に惹かれ、このひとりしか知らないダンジョンの攻略に乗り出すのだった…。

俺の好きな人は勇者の母で俺の姉さん! パーティ追放から始まる新しい生活

石のやっさん
ファンタジー
主人公のリヒトは勇者パーティを追放されるが別に気にも留めていなかった。 ハーレムパーティ状態だったので元から時期が来たら自分から出て行く予定だったし、三人の幼馴染は確かに可愛いが、リヒトにとって恋愛対象にどうしても見られなかったからだ。 だから、ただ見せつけられても困るだけだった。 何故ならリヒトの好きなタイプの女性は…大人の女性だったから。 この作品の主人公は転生者ですが、精神的に大人なだけでチートは知識も含んでありません。 勿論ヒロインもチートはありません。 他のライトノベルや漫画じゃ主人公にはなれない、背景に居るような主人公やヒロインが、楽しく暮すような話です。 1~2話は何時もの使いまわし。 亀更新になるかも知れません。 他の作品を書く段階で、考えてついたヒロインをメインに純愛で書いていこうと思います。

俺が死んでから始まる物語

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。 だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。 余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。 そこからこの話は始まる。 セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕

【本編45話にて完結】『追放された荷物持ちの俺を「必要だ」と言ってくれたのは、落ちこぼれヒーラーの彼女だけだった。』

ブヒ太郎
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――荷物持ちとして命懸けで尽くしてきた高ランクパーティから、ゼロスは無能の烙印を押され、なんの手切れ金もなく追放された。彼のスキルは【筋力強化(微)】。誰もが最弱と嘲笑う、あまりにも地味な能力。仲間たちは彼の本当の価値に気づくことなく、その存在をゴミのように切り捨てた。 全てを失い、絶望の淵をさまよう彼に手を差し伸べたのは、一人の不遇なヒーラー、アリシアだった。彼女もまた、治癒の力が弱いと誰からも相手にされず、教会からも冒険者仲間からも居場所を奪われ、孤独に耐えてきた。だからこそ、彼女だけはゼロスの瞳の奥に宿る、静かで、しかし折れない闘志の光を見抜いていたのだ。 「私と、パーティを組んでくれませんか?」 これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!

最上級のパーティで最底辺の扱いを受けていたDランク錬金術師は新パーティで成り上がるようです(完)

みかん畑
ファンタジー
最上級のパーティで『荷物持ち』と嘲笑されていた僕は、パーティからクビを宣告されて抜けることにした。 在籍中は僕が色々肩代わりしてたけど、僕を荷物持ち扱いするくらい優秀な仲間たちなので、抜けても問題はないと思ってます。

処理中です...