魔法使いが暗躍する世界で僕一人だけ最強のぼっち超能力者

おさない

文字の大きさ
12 / 35

第12話 化け物と友達になろう!

しおりを挟む

 ――その日の深夜。

「眠れない……」

 夕食時の会話が原因で、僕の目は完全に冴えていた。

 今まで遭遇した謎の化け物たちが実在していると思うと、どうしても気になってしまうのだ。

「もしかして……今日も公園に何かいるのかな……」

 僕は天井を見つめながらそう呟いた。

 もし僕以外の――超能力を使えない人が、この前みたいな鬼と遭遇した場合、どうなってしまうのだろうか? 

 やはり、なす術なく食べられてしまうのかもしれない。

 もし、そんな危険な存在に湊や渚が出会ってしまったら……?

「放ってはおけない……!」

 僕はきっと後悔するだろう。自分だけが倒せる危険な存在が家の近くの公園をうろついていたことを知っておきながら、何も対策をしなかったことに。

「悪霊退散しないと……!」

 僕はベッドから這い出し、パジャマの上から長袖の黒いパーカーを着た。今日から、自宅付近の平和を守る警備員――名付けて自宅警備員になるのだ!

 ……他の呼び名を考えておこう。

 そそくさと自分の部屋を後にして、家族を起こさないように階段を降り、玄関から家の外へ出る。

 そして、すぐ近くにある昭間公園へと一直線に向かった。

 ――それからしばらく散歩道を歩いてみたけど、特に何かの気配は感じない。

「まあ、そんな簡単に化け物と遭遇するはずないよね……よかった……」

 ほっとしたその時。

「おい、そこのお前」

 突然、何者かに呼び止められた。場所は前と同じく、並木道の真ん中あたりである。

 振り返るとそこに立っていたのは、黒い着物を着た長身の男の人だった。

 前とは少し色が違うけど、ものすごいデジャブを感じる。

「我が名は悪路王あくろおう。この世界の人間ども全てを滅ぼし、地上を我々鬼の楽園とする為、再び顕現した!」

 僕が戸惑っていると、男の人は自己紹介してくる。珍しい名前すぎてよく聞き取れなかった。

 ――でも間違いない。前の人と同じようなこと言ってるし、この人も鬼だ!

 念力で爆散させようとした次の瞬間、男の人が言った。

「……一つ聞きたいのだが、お前は私より先にこちらへ顕現した我が弟、大嶽丸の家畜となった人間か?」
「ぇ、あ、あっ……」

 なんか……前の人の知り合いっぽい! あの人の後を追いかけてここに来たんだ! まさかの繋がりに、僕はちょっとした感動を覚える。

「アイツは心優しいからな。下等で虫けらの如き人間どもでも、有効に利用してやろうと考えていた。こちらで会うのが楽しみだなァ」
「あっ…………!」

 しかし、感動はすぐに悲しみに変わった。

 どうしよう……僕その人のこと悪霊退散しちゃった……! 気まずい……。でも悪い鬼だったからああするしかなかったし……。

「ご、ごめんなさい、あの、その人は…………」

 とりあえず謝っておこう。

 自分の弟の仇とか、絶対許せないけど……。

「あァ?」
「僕がおととい、爆散させました……」

 そう伝えると、男の人は大声で笑った。

「お前のように下等でひ弱な虫けらの雑魚が、我が弟を祓えるはずがないだろう。巫山戯《ふざけ》たことをぬかすなよれ者」
「ぁ……っはい」
「極めて不愉快だ! お前には死すら凌駕するほどの恐怖と苦痛を与えてやるッ! 身の程を知れ虫けらァ!」

 案の定、男の人は赤い鬼に変身し始めたので、僕はすかさず念力を発動させて爆発四散させた。

「おおたけまるーーーーッ!」

 悲しい断末魔と共に消滅する何とか王さん。これじゃあ、まるで僕が悪者みたいだ……。

 人を襲うほうがいけないはずなのに、何故か罪悪感が込み上げてくる……。

「他にもいないか探そ……」

 ――でも仕方のない犠牲だ。

 僕は気持ちを切り替え、探索を再開した。悪霊は退散させないといけない。

 それから三分ほど歩きまわっていると、今度は視界の端で怪しい影を捉える。

 道端の林の中に、一つ目で毛むくじゃらの化け物が座っていたのだ。

「ま、また見つけた……!」

 あまりにもすぐ化け物と遭遇するので、僕は困惑する。

 この公園……化け物の巣窟じゃん! 昼間はみんな普通に散歩してるのに!

「――オマエ、オレのことが視えているな?」

 僕があたふたしていると、向こうが先に話しかけてきた。声が高くてちょっと可愛いかも。ゆるキャラみたいだ。

 何も言わずに爆散させようとしてたけど、思いとどまる。

 もしかしたら人間に友好的な化け物なのかもしれない。話も聞かず一方的に爆散させていたら、本当に僕が悪者になってしまう。

 幸い、こんな感じの人の形をしていない化け物が相手なら僕のコミュ障もあまり発動しないし、まずはお話ししてみよう。

 言葉が通じるんだから、話せば分かり合える可能性だってあるよね! よく見ると熊みたいで可愛いし、声も可愛かったし、ひょっとしたら友達になれるかも?

 ――人と化け物、相容れぬ二人の間に芽生えたのは確かな友情だった。この夏、最大の感動がスクリーンへやってくる! 全米が泣いた! 涙の超大作!

 …………みたいな。

「……ば、ばっちり視えてるよ! 君は――」
「シネェ!」

 その瞬間、一つ目の化け物は全身の毛を針みたいに飛ばしてきた。

 僕は身体の周囲に念力で展開したバリアによってそれを防ぐ。

「なにィ?!」

 そして化け物に向かって念力を飛ばし、いつものように爆散させた。

「ぐわああああああああああああああッ!?」

 どうか安らかに。

「短い夢だった……!」

 所詮は化け物。やはり人とは分かり合えない。

 言葉の通じる人間同士ですら分かり合えないのだから当然だ。

 僕は自分にそう言い聞かせた。

「……………………」

 よく考えたら熊も危ないし、可愛いからって油断したらいけないな。

「……次、行こ」

 本日二匹目の化け物を無事に退治し終え、悲しみに包まれていたその時。

「――そこのキミ」

 突然、後ろから声をかけられた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

男女比1:15の貞操逆転世界で高校生活(婚活)

大寒波
恋愛
日本で生活していた前世の記憶を持つ主人公、七瀬達也が日本によく似た貞操逆転世界に転生し、高校生活を楽しみながら婚活を頑張るお話。 この世界の法律では、男性は二十歳までに5人と結婚をしなければならない。(高校卒業時点は3人) そんな法律があるなら、もういっそのこと高校在学中に5人と結婚しよう!となるのが今作の主人公である達也だ! この世界の経済は基本的に女性のみで回っており、男性に求められることといえば子種、遺伝子だ。 前世の影響かはわからないが、日本屈指のHENTAIである達也は運よく遺伝子も最高ランクになった。 顔もイケメン!遺伝子も優秀!貴重な男!…と、驕らずに自分と関わった女性には少しでも幸せな気持ちを分かち合えるように努力しようと決意する。 どうせなら、WIN-WINの関係でありたいよね! そうして、別居婚が主流なこの世界では珍しいみんなと同居することを、いや。ハーレムを目標に個性豊かなヒロイン達と織り成す学園ラブコメディがいま始まる! 主人公の通う学校では、少し貞操逆転の要素薄いかもです。男女比に寄っています。 外はその限りではありません。 カクヨムでも投稿しております。

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた

黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。 その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。 曖昧なのには理由があった。 『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。 どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。 ※小説家になろうにも随時転載中。 レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。 それでも皆はレンが勇者だと思っていた。 突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。 はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。 ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。 ※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。

【完結】転生したら最強の魔法使いでした~元ブラック企業OLの異世界無双~

きゅちゃん
ファンタジー
過労死寸前のブラック企業OL・田中美咲(28歳)が、残業中に倒れて異世界に転生。転生先では「セリア・アルクライト」という名前で、なんと世界最強クラスの魔法使いとして生まれ変わる。 前世で我慢し続けた鬱憤を晴らすかのように、理不尽な権力者たちを魔法でバッサバッサと成敗し、困っている人々を助けていく。持ち前の社会人経験と常識、そして圧倒的な魔法力で、この世界の様々な問題を解決していく痛快ストーリー。

文字変換の勇者 ~ステータス改竄して生き残ります~

カタナヅキ
ファンタジー
高校の受験を間近に迫った少年「霧崎レア」彼は学校の帰宅の最中、車の衝突事故に巻き込まれそうになる。そんな彼を救い出そうと通りがかった4人の高校生が駆けつけるが、唐突に彼等の足元に「魔法陣」が誕生し、謎の光に飲み込まれてしまう。 気付いたときには5人は見知らぬ中世風の城の中に存在し、彼等の目の前には老人の集団が居た。老人達の話によると現在の彼等が存在する場所は「異世界」であり、元の世界に戻るためには自分達に協力し、世界征服を狙う「魔人族」と呼ばれる存在を倒すように協力を願われる。 だが、世界を救う勇者として召喚されたはずの人間には特別な能力が授かっているはずなのだが、伝承では勇者の人数は「4人」のはずであり、1人だけ他の人間と比べると能力が低かったレアは召喚に巻き込まれた一般人だと判断されて城から追放されてしまう―― ――しかし、追い出されたレアの持っていた能力こそが彼等を上回る性能を誇り、彼は自分の力を利用してステータスを改竄し、名前を変化させる事で物体を変化させ、空想上の武器や物語のキャラクターを作り出せる事に気付く。

処理中です...