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第3話:不器用だけど縛ってみたい(前編)

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「ふぁ~あ・・・」
すみれは大学の構内でスマホを見ながらあくびをする。
それを見た友人の黄瀬ひなのが声をかける。
「あれ?すみれ、今日は寝不足?」
「えぇ、ちょっとね。昨日も遅くまで起きてたから・・・」
「へー、もしかして彼氏が寝かせてくれなかったとか?」
「ううん、あいつが寝かせなかったわけじゃないよ。」
「・・・ということは昨日も一緒にいたのね?ホントに仲いいわねあんたら。」
「・・・ん~だってとってもかわいいし・・・」
昨晩のユキヤの顔を思い出し、すみれは頬を赤らめる。
「茶木くんって、かわいい・・かな?」ひなのは首をかしげた。
普段のクールなユキヤしか知らなければ、想像できないのも仕方がない。
「それにしても珍しいわよね。いつもなら、
私達と一緒にいる時はスマホいじらないすみれなのにさ。」
「そういえばそうだね。何見てたの?」
「・・・それは秘密だよ。でも・・・まぁ色々と勉強してるところなんだ。」
「勉強・・・ねぇ」「なんか怪しいわね。
・・・まさかエッチなサイトを見てたんじゃないでしょうね?」
「違うよ!そんなんじゃないったら!」
すみれは慌てて否定する。
その慌てぶりに、ますます疑いの目を向けるひなのであった。

****
同じころ。
「ふぁ~あ・・・」
今日は別の抗議を受けていたユキヤがあくびをする。
「あれ?ユキヤ、今日は寝不足?」友人の栗田が声をかける
「ああ、ちょっとな。昨日は遅くまで起きてたから・・・」
「へー、もしかして彼女さんが相手に一晩中大暴れしてたとか?」
「・・・・・・。」
「・・・な、なんで急に黙るんだよ?」
ユキヤは冷や汗を流しながら、ひきつった笑顔を浮かべた。
「いや、なんでもないぞ?ハハッ・・・」
「・・・そっか。まぁ、ほどほどにしとけよ?」
ユキヤの様子に何かを感じ取ったのか、それ以上追及しなかった。
「ところでユキヤ、お前最近彼女と上手く行ってるんだろ?どうだ?楽しいか?」
「まぁ、それなりには。」本当はそれなりどころではない。
「うらやましいなぁ・・・俺なんて、最近全然ダメでさ。
別れようかと思ってるんだけど、なかなか踏ん切りつかなくてさぁ」
「そうなの?まぁ、お互い頑張ろうぜ。」
「そうだな。また相談に乗ってくれよ。」
「もちろんさ。」
ユキヤは栗田に手を振って別れた。
ユキヤは講義室へと移動していた。
(上手く行きすぎてるのも問題なんだよなぁ・・・)

彼らの会話からお察しの通り、昨晩はすみれがユキヤを一晩中ヒイヒイ鳴かせて、
お互い寝不足だったのだ。

****
その日の夜、すみれは沙由美に電話をしていた。
「それで、女装させてメイクもしてみたんですけど・・・全然似合わなくて・・・
しかもメイクすればするほど、コントみたいになっちゃって・・・」
『ぷっはははは・・・』電話口で沙由美が笑っているのが聞こえる。
「もう、笑い事じゃないんですよぉ!」
『ごめんなさいね。でも・・・やっぱり、女装したユキちゃんが見たいのよね?』
「うぅ・・・そりゃあ見たくないと言えば嘘になりますけど・・・
圭太君みたいになならないし、ユキヤ完全に怒っちゃったし、散々でしたよ」
すみれはちょっと不機嫌気味に言った。
『まぁ・・・圭ちゃんのは、ある種の才能だから』
「そうですね。それは認めざるを得ません。」
すみれは苦笑いした。
『ところで、ユキちゃんはどうなったの?少しは調教できた?』
「えぇっと・・・調教っていうか、ユキヤが可愛く鳴いてくれることしてます。」
『あら、そうなの?どんなことなのかしら?』
「後ろ手に拘束したり、自分でしてみるように言ってみたり。
恥ずかしがりながらも言うとおりにしてくれるのが可愛いです。」
すみれは嬉しそうに話す。
『ふーん、そんな感じなんだ。
じゃあさ、ちょっとお願いがあるんだけど、いいかな?』
「なんですか?」
『ユキちゃんの事を縛ってあげて欲しいの。
あと目隠しとか。出来れば猿ぐつわもつけてあげるとなお良いわ。
そしてすみれさんが責める側になってみるといいかも』
「うーん・・・縛るのは私不器用だから難しいかなぁ、
猿ぐつわは声が聞けなくなりそうだし・・・」
すみれは申し訳なさそうに答えた。
『いきなり亀甲とかは難しいから、手首と足首一緒に縛るのが簡単で効果高いわよ。
猿ぐつわは泣き声に変わり始めたあたりで外してあげるとこっちも効果高いのよ』
沙由美は自信満々に答える。
「そ、そうでしょうか?それならやってみようと思います。」
『うん、頑張ってみて。どうしても亀甲縛りがしたいなら、練習台は貸してあげるから』
「ありがとうございます。ちょっと練習してみます。」
『よろしく。ユキちゃんの反応楽しみにしているわ』
「はい。頑張ります。」
『ユキちゃんが可愛い反応したら写真送ってね。』
「わかりました。ではまた連絡しますね」

・・・(ユキヤにとって)何やら恐ろしい計画が進行していた

****

大学の食堂で、すみれは昼食を食べながらスマホを見ている。
(ふむふむ、こんな風にすれば良いのですね。なるほど。)
「何見てるのすみれ?」背後からひなのが声をかける。
「あ、ひなってば、びっくりさせないでよ。」
「ごめん、ごめん。何か面白いものでもあったの?」
「いえ、特に何も。ただ・・・ちょっと荷造りの仕方を・・・」
すみれは慌てて画面を隠した。
「何?あなた引っ越しでもするの?」「・・・いやそういうわけじゃないんだけど」
「じゃあ何よ?教えなさいよ」
「えっと・・・その、あの・・・たまった段ボールを捨てようかなって」
すみれは咄嗟に思い付いた言葉でごまかした。
「へぇ、珍しいじゃん。いつもは捨てないのに」
「う、うん、まぁね」
すみれは冷や汗をかいている。
「ねぇ、何?まさか彼氏と同棲するの?だったらお祝いしないと!」
「ち、違うよ、残念ながら。」
「じゃあ、どうして?」
「それは、その・・・ちょっとした気分転換というか、色々と整理整頓しようと思って」
「ふーん、そうなんだ。ところでさ、今日飲みに行かない?茶木くん今日バイトでしょ?」
「あ・・・ごめん、私も家庭教師のバイトがあるから・・・」
「えー!最近付き合い悪いじゃん。どうしたのよ?」
「本当にゴメンね。今度埋め合わせするから」
すみれは逃げるようにその場を離れた。

***
「・・・で、俺に練習台になれと?」圭太が呆れた顔をしている。
「だって沙由美先生が練習台にしていいって・・・」
今日は圭太への家庭教師のバイトの日だ。
「あのね、俺の父さんと母さんが姉さんにバイト代を払ってるのは、
俺の勉強を見てもらうためであって、俺を縛りの練習台にするためじゃないんだよ。」
いつになく圭太のツッコミが厳しい。
「お願い、今日の宿題全部やってあげるから・・・」
すみれが手を合わせて頼む。
「それなら引き受けてもいいけど」
圭太はしぶしぶ了承した。
「じゃあ早速だけど、服を脱いでくれる?下着はつけたままでいいわ」
「・・・はい」

・・・30分後。

「・・・想像を絶する不器用さだね、姉さん。」
すみれなりに奮闘してみたが亀甲縛りは完成しなかった。
それどころか世にも奇妙で奇怪な結び目を作っていた。
「あれーおかしいなぁ・・・」すみれはスマホで手順を確認しながら首を傾げた。
「これはこれで可愛いと思うよ」圭太がフォローを入れる。
「もうっ!馬鹿にしてっ!!」
すみれはムッとして頬を膨らませた。
「・・・やっぱり初心者は手首と足首を一緒に縛るやつでいいんじゃない?」
圭太が提案する。
「そっか、そうよね。最初からハードルの高いことをしてもダメだもんね」
すみれは納得した。
「じゃあ、圭太君、もう一度やってみてくれる?」
「えぇ・・・」再び練習台にされる圭太だった。

***
そんなこんなで数日が過ぎ・・・
「よーし!」すみれは拳を作って気合を入れる。
「何始める気だよおい・・・」ユキヤがすみれの気迫に圧倒される。
「というわけでユキヤ、まず服を脱いで!」
「は!?なんでいきなり脱ぐ必要あるんだよ?」
「いいから早くっ!」
「ったく、しょうがないな・・・」
ユキヤは渋々ながらも裸になった。
「よし、じゃあベッドに座って股を広げて・・・」
「ちょ・・・」
すみれは買っておいた手芸用ロープを取り出し、手首と足首一緒に縛りだす。
「お、おい!なんだよこれ!!」ユキヤの発言を無視してすみれは作業を続ける。
「ふう、やっとできた・・・」手首足首を一緒に縛る『カニ縛り』ができあがっていた。
「おいまて・・・これ、足が閉じれない・・・」
ユキヤはガニマタの状態で固定され身動きが取れなくなっていた。
「ふっふっふ、どう?動けない気分は?」
「こ、この野郎・・・」
「さて、これから何をするかわかるかしら?」
「知るかボケ!」
「正解は猿ぐつわ」
すみれはユキヤの口にタオルを噛ませる。
「むぐうっ!?」ユキヤは慌てて抵抗するが
手足の自由がきかないためなす術がなかった。
「よーし、やっと私も脱げ・・・」とすみれが服に手を掛けたところで、
カレンダーが目に入った。

「あああー!!」日付を見るなりすみれは叫び出した。
「・・・レポート明日までだった。」
それは絶望的な一言だった。


つづく
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