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第18話:教授たちの憂鬱(後編)

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「浅葱さん、何時までもこんなところで油売ってていいんですか?」
「大丈夫っスよ。あたしの上司は今、仕事部屋に入り浸ってますから。」
数日後、浅葱はすっかりユキヤのバイト先の常連になっていた。
そしてユキヤとも談笑するぐらいの仲になっていた。

「だからさっちゃんが心配することはないっスよ。」
(さっちゃんって・・・なんかすごいあだ名付けられてるな俺)
ユキヤはそう思ったものの口には出さなかった。
「ところでさっちゃんは彼女とかはいるっスか?」
「・・・まぁ一応いるにはいますけど」ユキヤはすみれの顔を思い出しながら答えた。
「へぇ、どんな子っすか?かわいいんすかね?美人なんすかね?
スタイルはどうっすか?性格とかは?」
「えっ、ちょ、ちょっとそんな一気に言われても困りますよ。」
ユキヤが戸惑った様子を見せる。
「ああ、ごめんなさいっス。気になったら止まらないっスから。」
ユキヤが「ははは」と苦笑いを浮かべる。
「でも、ホントその子のこと好きなんすね。」
「ああいう子と出会うことはまずないと思いますよ」
ユキヤは照れ臭そうに言った。
その顔を見て浅葱は意味深に笑う。
「・・・あ、そろそろ時間っス。また来るっス。」
そう言うと浅葱は店を後にした。

****
「いやぁ、女性客には高確率で声をかけているって聞いてたっすから、
ちょっとインパクトのある行動取ったらすぐに仲良くなれると思ったら案の定だったっス。」
「・・・そのためにあんな砂糖と牛乳の塊を・・・信じられない。」
「あ、それは世界中のパティシエを敵に回す一言っスよ!」
浅葱と根岸は蘇芳の書斎に来ていた。
蘇芳は2人に向かって話していた。
「・・・ボクの方は、なんとか白石さんと話すことに成功しました。」
浅葱と根岸の言葉に蘇芳はほくそ笑み、
「二人ともよく頑張りましたね。」
蘇芳は嬉しそうに言った。
「・・それで、接触したみた感想はいかがですか?」
「あれは一度がんじがらめにして、彼女から何をされているのかを
残さず白状させてみたくなるッスね」
「・・・白石さんは普通の優しい女の人って感じでした。」
「・・・ふぅん、月並みな感想っスね。」
「うるさい!変態女!」
「お二人は仲が良いですね。あと何か気付いたことなどはありますか?」
蘇芳は楽しげに笑いながら言った。
「うーん・・・意外にも身体には被虐的なことをされた形跡がなかったっスね」
「・・・被虐的な事一切せずにあそこまで調教できてしまうものなのでしょうかね?」
浅葱と根岸は蘇芳を見ながら疑問を口にした。
「ああ、きっと彼女はユキヤ君の事をとても大切に思っているのでしょう。
だからそんなことはしないのだと思いますよ。」
2人は納得したようにうんうんとうなずいた。
「・・・というわけで、頑張ってくれたお二人には私から直々にご褒美を・・・」
と蘇芳が言いかけたところを浅葱は止める。
「あ、ダメっス。今夜から1週間、地獄の射精管理の予定が入っているっス。
教授自身が言い出したことですからね。」
「1・・・週間?!」蘇芳の顔が少しだけ青ざめる。
「・・・そういえば、今日も教授、ボクとセックスしてる最中に
急用が入ったとかで中断させられてたっけ。」
「え、そうなんですか!?」浅葱は驚いた表情をする。
「・・・じゃあ、今週はもう無理じゃないっスか? 
まぁ、毎週のことなんであたしらは別にいいっスけど。」
「いえ、大丈夫です。私はやりますよ。・・・それも楽しみの一つです。」
蘇芳は青ざめながらもやる気に満ちた顔で答えた。
「・・・性癖のデパートな変態だと、色々大変なんっすね」浅葱は呆れたような顔をする。
「・・・それでは、私は準備があるので失礼します。」
そう言うと蘇芳は研究室の奥にある部屋へと入っていった。

***
一方、すみれのマンションではすみれとユキヤが夕飯を食べていた。
「・・・でね、そのネギちゃんって子が・・・」「ネギちゃん?」すみれの言葉にユキヤは首を傾げる。
「うん。『根岸』って名前だからっあだ名つけたんだ。かわいいでしょ?」
「いや、それはどうかと思うけど・・・」ユキヤは苦笑いしながら答える。
(・・・浅葱さんとあだ名のセンスが同じだ・・・)
「ふーん、へぇ、それで、その子はどういう子なの?」
ユキヤは興味深げに尋ねる。
「うーん、1年の子なんだけどね、心理学部っていってたかな・・・」
すみれの話を聞きながらユキヤは箸を動かす。
「へー、すごいね、そんな学部もあるのか。」
「ほら・・・この前のあの教授もそんなこと言ってたじゃん。」
「ふぅん、その子とどこで知り合ったの?」ユキヤは話を続ける。
「ええとね・・・私の目の前ですっころんで・・・」すみれはその光景を思い出すように話す。

「で、女の子かと思って手当したら男の子だったと?」
ユキヤが聞く。
「そ!びっくりしたよ、私より背が高くてさぁ!」すみれは声を弾ませる。
「でもなんかかわいかったんだよねぇ。それにすっごい美人で。」すみれはにやけ顔になる。
「・・・ふうん」ユキヤはちょっと不機嫌になる。
「でね、そのあと、お礼したいって言われてお茶して、いろいろおしゃべりしてたら意気投合しちゃった。」
すみれは上目遣いになって、嬉しげに語る。
「・・・」
「・・・ちょっと、何怒ってるの?」ユキヤの不機嫌そうな顔を見てすみれが言う。
「別に?俺には浮気するなっていつもさんざん言ってるのにさ」
ユキヤはぶっきらぼうに答える。
「あ、それなら心配ないよ。ネギちゃん今好きな人がいるって言ってたから。」
「・・・どうだか」
ユキヤはまだ少し不満げにつぶやく。
(うわ、めんどくさいなコイツ)すみれはそう思いながら、ユキヤの肩に頭を預ける。
「大丈夫だよ、私はユキヤにしかこんな風にしないもの。」
すみれは優しくささやくと、そのままユキヤの首筋にキスをする。
「ん・・・わかった。信じるよ。」
ユキヤはすみれの腰を抱き寄せ、唇を重ねる。
すみれはユキヤの服の中に手を入れ、背中をまさぐる。
「あんまり触られると勃っちゃうかも。」ユキヤが恥ずかしそうに言う。
「いいじゃん、私だってもう準備できてるんだもん。」
「じゃあ、ベッド行こっか。」ユキヤは微笑んですみれの手を引く。
「・・・ん、でもその前にお皿片付けてからね。」
そう言いながらすみれが食器を台所までもっていく。
そして食器を洗いながら「・・・そろそろユキちゃんの後ろの処女貰っちゃおうかな」
すみれがいたずらっぽく笑う。「・・・冗談でも勘弁してください」
ユキヤは青ざめながら答えると、自分も食器を持ってキッチンに向かう。

「はい、これで終わりっと」
すみれが最後の皿を拭き終わると、ユキヤがそれを受け取って棚にしまう。
「さ、ベッド行こうか」
ユキヤはすみれの手をひいて寝室に入る。
部屋に入るとすぐに、すみれはユキヤのズボンのチャックに手をかけ、パンツごと一気に下ろす。
すると、すでに大きくなっているユキヤのものが勢いよく飛び出してきた。
「あはっ、ユキちゃん元気だね。」すみれは嬉しそうにクスッと笑って、ユキヤのものを口に含んだ。
「・・・っく」ユキヤが小さくうめく。
しばらく口の中で舌を動かしたあと、ユキヤの両手首を頭の後ろでクロスするように拘束した。
「あの・・・俺まだシャツ脱いでないんだけど・・・」
すみれにユキヤが困惑気味に声をかける。
「だめ、今日はこれでいくの。」「下半身だけ脱がされてるのはちょっと・・・」
ユキヤは恥ずかしそうにもじもじしている。しかも両手を拘束されているので前も隠せない。
「ふふっ、可愛い。」ある意味全裸よりも恥ずかしいかもしれない。
すみれは楽しげに笑みを浮かべると、そのままユキヤの上に覆いかぶさり、
シャツをまくり上げて乳首や脇腹などを愛撫し始める。
「んんっ!ちょっ、いきなりそんなっ!」ユキヤは顔を真っ赤にして身をよじる。
「ほら、ユキちゃん気持ちいいでしょ?こことか。」
すみれは意地悪そうな顔でユキヤの股間をいじくり始める。
「あぁ・・・ダメ、そこはっ!」
「あれ?なんだか先っぽ濡れてるみたいだけど?」
「うぅ・・・」ユキヤは恥ずかしそうに目をそらす。
「ふーん、じゃあここは触らないでおくね♪」すみれはわざとらしく言うと、 
そのままユキヤの乳首を指でつまんでクリクリし始めた。
「あっ・・・ちょっとっ!それ違うってばっ!!」
ユキヤは必死に身をよじり、なんとか逃れようとするが、手首はしっかりと固定されていて動かせない。
「ん?何が違うのかしら?こんなに固くなってるけど?」すみれは楽しそうにユキヤの乳首を弄ぶ。
「うぐぐ・・・」ユキヤは歯を食い縛って声を我慢する。
「あはは、やっぱりユキちゃんはいじめられるの好きなんだね。」
すみれは笑いながらユキヤの乳首をちょっと引っ張ってみた。
「あああんっ!!!」ユキヤはビクンっと身体を大きく跳ねさせた。
「え?今のでイッちゃったの!?」
すみれは驚いたように目を見開く。
「ちがっ・・・これはその・・・」
ユキヤの顔は耳まで真っ赤に染まっている。
「しょうがないわねぇ、そろそろイカせてあげるからじっとしてて」
すみれはそういうと、再びユキヤのものをくわえこんだ。
そして、激しく頭を上下させはじめた。
「あああっ!!待っ、それダメぇっ!!!」ユキヤはたまらず大きな声で叫ぶ。
しかし、すみれは構わずに動き続ける。
やがて限界に達したユキヤのものはすみれの口の中に大量の精液を放った。
「ふう・・・」
ユキヤは大きく息をつく。
「はい、ご苦労さま。」
すみれは満足げに微笑むと、ユキヤの手を拘束していたものを外す。
「まったく、毎回これじゃ体が持たないよ・・・」
ユキヤは疲れ切った表情で言う。
「大丈夫、慣れれば平気になるから。」
「ほんとかよ。」
「まあまあ、それよりお風呂入ろうよ。洗ってあげる。」
「はいはい。」
二人は仲良く浴室に向かった。

***

数日後。
ユキヤが大学構内を歩いていると、蘇芳教授が誰かと話しているのが見えた。
よく見るとそれは浅葱だった。(あれ?あの二人知り合いなのか?)
少し興味を持ったユキヤはこっそり近付いて二人の話を盗み聞きすることにした。
「それで?例の件はどうなりました?」
「ああ、順調っスよ。」
「なるほど。後は頼みましたよ・・・」
「で、今の調子はいかがっスか?」「流石に4日目となると結構精神に来ますね・・・」
「でもまだあと3日あるっスからね。頑張ってください。」
蘇芳の方を見ると、態度こそいつもの同じだがその顔には冷や汗をかいているのが見える。
「じゃあまた後程・・・」というと蘇芳は研究室へと歩いて行った。

「浅葱さん!」
ここでユキヤが声をかけると浅葱は振り返った。
「あれさっちゃん?どうしてこんなところに?」「いや俺ここの学生なんで。」
すっとぼけた調子の浅葱にユキヤは冷静に答える。
「・・・あの蘇芳教授とは知り合いなんですか?」
「上司っスよ。車で送り迎えしてるっス。」
「えっ!?マジですか!?」意外な事実にユキヤは驚く。
「というか、教授の秘書ってやつっスね。」
「へぇー!知らなかったです。そんなお仕事されてたんですね。」
「ああ見えて色々と世話の焼ける人ですから、大変っスよ。」
そういうと浅葱は笑って見せる。(この人も苦労してんだなぁ)ユキヤは心の中でそう思った。
「じゃあまた、店に遊びに行くんでその時はよろしくっス。」
そう言うと浅葱は去っていった。

「・・・・・・。」
その姿を見送りながら、ユキヤは色々と思いを巡らせた。

その日の夕方、ユキヤは蘇芳教授の研究室を訪ねる。
そこにいたのは蘇芳一人だった。
「あんた、一体何を企んでるんだ?」
ユキヤは単刀直入に切り出す。
すると蘇芳はニヤリと笑う。
「おや、もうバレてしまいましたか。」
「しらばっくれんのもいい加減にしてもらえませんかね。
ここ数週間であんたと知り合って、俺が店で知り合った浅葱さんはあんたの秘書で、
すみれと知り合った根岸って奴はあんたの研究所で助手をしてるって聞いた。
・・・これだけ揃ってりゃおかしいと思うでしょう?。」
ユキヤは蘇芳を睨みつける。
「いやはや、さすがは茶木くんですねぇ。素晴らしい洞察力だ。」
蘇芳は拍手をしながら感嘆する。
「まぁ、ほとんど直感だったけど、当たってたみたいだな。すみれの方は気づいていないよ」
ユキヤがそう答えると、蘇芳は嬉しそうな顔をした。
「・・・そうですか。でもご安心ください。
私はあなた方の生活を脅かすような真似をするつもりはありませんよ」
蘇芳は笑顔のまま話を続ける。
「あんたが何をしたいのかなんか興味ないが、すみれに何かしたらタダじゃおかない」
ユキヤは蘇芳を威嚇するように言う。
しかし、そんなユキヤの言葉にも蘇芳は全く動じずに余裕のある表情を浮かべる。
「えぇ、もちろんですとも。私も可愛い教え子を傷つけるようなことはしたくはないのでね。
それに、彼女に関しては、今のところ私が何かするつもりは微塵もないですよ。
今はただ、あなた方の様子を見守っていきたいだけですから。」
(・・・このおっさんの言ってることはよくわからんが、
すみれに手出す気がなさそうだっていうならひとまずはいいか)
ユキヤは蘇芳の話を聞いて少しホッとする。
「私はただ・・・研究観察が・・・したいだけ・・・うぅ・・・」
蘇芳が話してる途中で突如倒れそうになる。「大丈夫かおい!」ユキヤが声を掛けるが、
その顔色は悪く、脂汗がにじんでいる。
「いえ・・・私は大丈夫です。それより私はあなた方に危害を加えることはない
・・・それだけはお約束しますよ。」
蘇芳は苦しげにしながらも、なんとかユキヤたちに言葉をかける。
「わかった!もう喋んなくていいから!」
ユキヤは慌てて蘇芳に駆け寄り、肩を支えるようにして立ち上がらせる。
「もうすぐ・・・浅葱くんが迎えに来ます。だから大丈夫ですよ」

その言葉の通り、ほどなくして浅葱が迎えに来て、
浅葱に支えらえるようにして蘇芳は帰っていった。

***

翌日、ユキヤのバイト先に浅葱がやってきた。
相変わらずバカ食いをしている。
(この身体のどこに入るんだろう・・・)
そんなことを考えつつ、ユキヤは浅葱にコーヒーを出す。
浅葱は礼を言いながらそれを一口飲むと、おもむろに切り出した。
「まぁ、教授は人間観察がしたいだけだから、
今回の事は大目に見てやってほしいっス」
浅葱の言葉にユキヤは首を傾げる。
「それってどういう意味だ?」
浅葱はため息をつきながらも答える。
「あー、つまり、あんたたち二人を見て楽しんでるだけっつーことっスね。」
ユキヤはそれを聞いて顔をしかめる。
「俺らなんか観察してもなんも面白くないと思いますけどね」
面白さならあんたらの方が断然面白いわ!・・・と言いたいのをユキヤは飲み込む。
浅葱は苦笑する。
「いや、教授にとっては面白いと思うっスよ?
あの人、他人を観察するの大好きっスからねぇ。
ただ、悪気がない分タチが悪いっスよね」
ユキヤは眉をひそめたまま尋ねる。
「でもいいんですか?そんなこと俺にべらべらしゃべっちゃって?」
「いうべきことと言わなくていい事の区別はついているから大丈夫っスよ」
浅葱はそう言って笑う。
ユキヤは釈然としない表情のまま、浅葱に質問をする。
「ところでさ、なんで蘇芳教授は俺たちの事を観察してるわけ? 
あんたと根岸って子は知ってるみたいだけど」
浅葱は一瞬考えるようなそぶりをして「それは言えない事っスね。」と言う。
(あーそっちは『言えない』事なんだな)
ユキヤは納得した。
そして話題を変える。

「で、蘇芳教授、あのあと大丈夫だったんですか?大分体調悪いみたいでしたけど?」
「・・・心配ないっスよ。半ば自業自得みたいなもんっス」「自業自得?」
「・・・何せ性癖のデパートのような人っスから」「性癖の・・・デパート?」
ユキヤは浅葱の答えに若干引く。
「ちなみに教授はサドとマゾを両方併せ持つド変態っスよ」「マジですか!?」
「しかもバイセクシャルでもあるっス。
そのくせ自分はマゾだから、他の人がどんなプレイしてるのか見たがるんすよね」
「・・・まさか昨日のって・・・」
「自分をあえて苦しめて、快感を得てるっスよ」ユキヤは絶句する。
「え、それじゃ、あの人、自分の身体を痛めつけて気持ちよくなってるってこと?」
「まぁそういうことになるっスね」
「えぇ・・・」
ユキヤはドン引きしていた。
「だからあたしが管理しないとあの人自分の性に溺れて死ぬっスよ」
「は、はは・・・」
ユキヤは乾いた笑いしか出なかった。

おわり
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