【完結】今夜も彼氏を鳴かせたい~そして俺は彼女に抱かれる~

桃ノ木ネネコ

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第60話:お酒とバースデイ(後編)

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翌朝。
「ん・・・」すみれは真新しいシーツの上で目を覚ました。
その腕にはユキヤから貰ったオオサンショウウオのぬいぐるみが抱かれている。
「あれ?なんで私服着ててないの・・・?」
昨日は確か、誕生日パーティーで、ユキヤと飲んでいたはずだが・・・
「そうだ!ユキヤは!?」
隣を見るとユキヤが眠っている。

「ユキヤ・・・おはよう」すみれが揺り起こす。
「ん・・・おはよう」
「うん、今何時?」
「今は8時半くらいかな」
「そっかぁ・・・」
すみれは起き上がって伸びをした。
「・・・ううっ」
起き上がって唸った途端、すみれがまた座り込む。
「・・・頭痛い」

「あれだけ飲んだら・・・まぁ二日酔いにもなるか」
「ううっ・・・」
すみれは頭を押さえながら、ユキヤに聞く。

「あの後どうなったの?」
「昨日酔いつぶれて家に帰った後、更にこれをこれだけ開けた」
そう言って半分ほどになったワインのボトルを見せた。「うわぁ・・・」
「その後俺に何したかも覚えてない?」
「うーん・・・」
すみれが必死になって思い出そうとする。

「えーっと、ケーキ食べてからユキヤと二人でお酒飲み始めて、
それから・・・」
「それから?」
「えーと・・・」
すみれはそのまま俯いていしまう。

「え?!まさか何も覚えていないとか?」
「うっ・・・」
「マジかよ・・・」
「えへへ、面目ありません・・・」
「それで、何があったのか教えてくれる?」

「ええと・・・」
今度はユキヤが目を逸らす番だった。
「何があったの?」
「・・・言いたくない」
「えぇ・・・」
「だって、あんなこと・・・!」
流石に自分から口に出すのは憚られる・・・。

「え?また縛り付けて何かひどい事しちゃった?!」
「いや・・・縛られは・・・って、あああーっ!!!」
そう、ここでユキヤは今回自分がようやく
拘束されていなかったことに気付く・・・・。
(そうだよ!今回は逃げたり抵抗したりできたじゃん!
何されるがままにされてたんだよ俺の馬鹿・・・!!)

自分のうかつさに頭を抱える。「ねえ、一体何をされたの?」
「ええと、それは・・・」
「言えないような事をしちゃったのね!?」
「ううっ・・・」
あまりに自分が間抜けすぎて詳しく話したくない。

「何か痛い事とかしちゃった?!」
「いや・・・そういうわけじゃなくて・・・」
「う~ん・・・」ここですみれも頭を抱えてしまう。
興奮したら頭痛がひどくなったらしい。

「ううぅ・・・目が回る・・・」
「あぁもう、だから無理して飲むなって言ったのに」
「ごめんなさいぃ・・・」
すみれは頭をおさえて悶絶していた。
「あぁ、水持ってくるからちょっと待ってて」
そう言ってユキヤが立ち上がる。

「うん、ごめんね」
ユキヤは冷蔵庫からペットボトルの水を取り出すと
コップに入れて持ってきた。
「はい、とりあえずこれ飲んで落ち着いて」
「ありがとう」

そう言って水を飲んでいくすみれ。
ゴクッゴクッと音を立てて飲んでいる。
ユキヤはその様子を見つめていた。
「・・・やっぱり私、ひどいことしたの?」
すみれは弱っているせいか珍しくしょんぼりしている。

「ううん、そんなことないよ。大丈夫」
「ホント?」
「うん、すみれは悪くない」
「でも、ユキヤは私に隠してるよね?」
「・・・いつもと大して変わらない事されたよ・・・」「本当に?」
「本当だよ・・・だたちょっと乱暴だったというか・・・それぐらい。
凄くひどい事とかはされてないから。」
「そう、ならいいんだけど・・・」
そう言ってすみれはほっとした表情を浮かべる。

ユキヤとしてもかなりはしょってるが嘘は言っていない。
「それにしても、昨日の記憶が全然ないなんて・・・」
すみれは少し申し訳なさそうな顔をする。

「まぁ初めてお酒飲んだんだし仕方ないよ。」
「うん・・・」
「さっきの質問だけど、すみれは俺に酷い事はしなかったよ。ただ・・・」
「ただ?」

「・・・俺も、嫌じゃなかった・・・」

「えっ・・・」
ユキヤの言葉にすみれの顔が赤くなる。
そして、ユキヤの方も照れているのを見てますます顔が赤くなっていく。
しばらく二人の間に沈黙が流れた。

すみれがボソっと口を開く。「ユキヤは嫌じゃなかったの?」
「そりゃ、その・・・何されるか全然わからなくて・・・怖かったけど」
(そうか・・・だから俺、逃げなかったんだ・・・)
そう言ってユキヤは自分の行動を振り返る。

「そっかぁ・・・」
そう言って少し安心した様子を見せるすみれ。
「あ、でもお前が相手だからそう思っただけで、誰でもいいとかじゃないし、
断じてそういうのが好きとかそんなんじゃ・・・」
「わかってるよ、ありがと」
慌てふためくユキヤを微笑んで見守るすみれ。「ユキヤは優しいね」
「別に優しくなんかねぇし・・・」
「ふふっ、素直じゃないね」
「うっせぇ!」
そう言ってプイッと横を向くユキヤ。
そんなユキヤを愛おしそうに見つめるすみれ。

「もう、可愛くてしょうがない!」そう言って抱きつくすみれ。
「ちょ!やめろって!」そう言いながらもユキヤはまんざらでもない顔だった。
「ユキヤ、大好き!」そう言ってキスをするすみれ。
「まだ二日酔い治ってないだろお前は・・・」
「だって、ユキヤが可愛いから」
「俺は男だし、可愛くないし」
「ユキヤは世界一かわいいよ?」
「うぐぅ・・・」
すみれの笑顔と言葉に何も言えなくなるユキヤ。

「ねえ、もう一回したい」「ダメ」
「なんで?!」
「・・・今は大人しく寝てなさい!」
「うっ・・・」ユキヤはすみれをベッドに押し倒すと布団をかぶせる。
「ほーら、おとなしくしてないとまた頭痛くなっても知らないぞ」
「ううぅ・・・わかったよぉ」
すみれは渋々といった感じで引き下がる。

「じゃあ、もうちょっとしたら起こすからそれまでゆっくりしてて」
「うん、ありがとう」
そう言ってすみれは再び眠りについた。

(それにしても・・・)
ユキヤがさっきすみれに言ったことに嘘はない。
昨夜のことを思い出すだけで身体がぞわぞわしてきて、
背中のあたりはゾクゾクしてくる。
しかし、それ以上にユキヤの心を満たしているものがあった。

それはすみれへの愛情だ。今まですみれに抱いていたものとは違う。
すみれに甘えたい。すみれのそばにいたい。もっとすみれのことを知りたい。
自分のすべてをさらけ出してもいいと思えるほどの強い気持ち。
その想いがユキヤの胸をいっぱいに満たしていた。

その証拠に、今こうしてすみれの頭を撫でている手からは
優しさがあふれ出ている。
「んっ・・・」
すみれが少し身じろぎする。
ユキヤはハッとしてすみれを見る。
どうやら起こしてしまったわけではないようだ。
ホッとすると同時に少し残念に思う自分に気づいて驚く。

(さっきは・・・自分の頭痛よりも俺にひどいことをしてないか、
そっちばかりを気にしてくれていたな。)
すみれは本当に優しい。そして強い。
ドジで不器用ではあるが、自分への想いは純粋なものだ。
だからこそ、自分が支えてあげたいとユキヤは強く思った。

「俺が、すみれを守るから」
そう呟いて、すみれの額に軽く唇を落とす。
「おやすみ、すみれ」
そう言ってユキヤは部屋を出て行った。

***

翌日。
「うう、ひどい目に遭ったぁ・・・」すみれは昨日のことを思い出していた。
「まぁ確かに初心者にワインは強すぎたかもしれんが・・・
お前がどれだけ酒に弱いかも知ることが出来ただけいいんじゃね?」
様子を見に来たユキヤが返す。
(あとかなりの酒乱ってこともよくわかったぞ・・・)
こっちは口に出さなかった。

「もう・・・他人事だと思って!」
「はは、次からはサワーか何かにしておこうな」
「ううぅ~、はい・・・」
「あと一人で飲み会に参加するのも禁止」
「ええぇ、どうして~」
「・・・潰れたら誰が連れて帰ると思ってるんだ?」
「うっ、そう言われると反論できない・・・」
ユキヤに言われてしょぼんと肩を落とすすみれ。

(ありえないとは思うけど・・・もしこいつが潰れて
他の不届きな奴にお持ち帰りでもされたら・・・)
そう考えるとユキヤの背筋に冷たいものが走る。
(それだけは何としても避けねば!)

「と・・・とにかく、俺同伴でなきゃだめだ!」
「う、うん・・・わかったよ」
「よし、じゃあ約束な」
「うん!」
そう言って二人は指切りげんまんをした。
(もっとも、酔ったすみれが持ち帰った男に、俺にいつもするように
責めまくって再起不能にする可能性もないわけではないが・・・)

そんな地獄のような光景を想像してしまったが口には出さなかった・・・。

おわり

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