天然ドSな彼女に抱かれ続けた結果、色々あって一緒に暮らすことになりました。

桃ノ木ネネコ

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第55話:これってマンネリ?(その2)

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「デート?」
「そう!デート!」
その夜の夕食時、すみれはユキヤに提案した。

「最近、一緒に出かけたりとかしてなかったでしょ? 
だからさ、久しぶりにデートに行きたいの」
「うーん・・・」
ユキヤは考える素振りをする。

「・・・駄目?」
すみれは少し不安そうに尋ねる。
「いや、そんな事ないって!」
ユキヤは笑って否定した。
(よしっ!)
内心ガッツポーズをしつつ、すみれは提案する。
「どこか行きたいとことかある?」

「うーん・・・じゃあスイーツバイキ・・・」
「却下」
早速スイーツバイキングを提案しかけるユキヤを
すみれはにこやかに反対する。

「えー?どうして?」
「・・・私はビックリ人間を見たいんじゃないの。」
すみれはあきれ顔で返す。
折角のデートにあの人知を超えた甘党ぶりを見せられては
色々とぶち壊しになってしまう。
「ちぇっ!行きたいところって言った癖に・・・」
ユキヤが拗ねたように言う。

「君の場合、そういう所に行くと
食べるのがメインになっちゃうでしょ!」
「あー・・・それは・・・まぁ・・・」
反論の余地がないのでユキヤは唸るだけだった。

「じゃあどこに行こうか?」
二人はまた考え込む。
(とはいっても、下手につき合いが長いから、
これまで大体のところは行ったしなぁ・・・)
「うーん・・・」

と2人で悩んでいるところへ目の前のTVにCMが入った。
『みんなで行こう!旭野動物園、
リニューアルオープン!フェア実施中!!』

「・・・・。」
CMが流れた途端、すみれがはしばし黙って画面を見つめる。
そしてすぐ責を切ったように
「そうだ!ここの動物園に行こう!」
と言い出した。

「・・・動物園?」
「うん!」
無邪気な笑顔で言うすみれにユキヤはドキッとした。

(あ、やば・・・)
ユキヤは慌てて平静を装う。
「うん、じゃあ動物園行こうか」
「いいの!?」
ユキヤがそう答えるとすみれは嬉しそうに聞き返した。
「いいよ」
ユキヤが笑顔で頷くと、すみれは更に嬉しそうに笑った。
(やれやれ、単純な奴)
心の中でそう思いながらもユキヤも笑みを浮かべた。

***

そんなこんなで、デートの当日。
すみれは一人張り切って準備をしている。
ユキヤはというと、のんびりと朝ご飯を食べていた。

「もう、ユキヤってばのんびりしすぎ!」
準備を終えたすみれがユキヤに言う。
「ええ?まだ時間あるじゃん・・・」
「もう、そんなこと言って・・・ほら行くよ!」
「はーい」
出かけるのが嬉しいのか、すみれは若干テンションが高い。

(まぁ、こいつが楽しそうだからいいか)
ユキヤはそう思った。
「じゃあ行こうか」
早々に朝食を済ませて片づけを終えたユキヤが言うと、
すみれは嬉しそうに頷いた。
「ささ、早く早く!」
(やれやれ・・・)
ユキヤは心の中でため息を吐いた。

(しかし久々のデートに動物園とかつくづく平和だよな俺らは)
確かに大学生同士のデートとしては、少し子供っぽい感じがする。
すみれがそういう所に行きたいと言い出した時は
少し戸惑ったが、 まぁ平和と言えば平和なのかも知れない。

「楽しみだねぇー!」
すみれはニコニコしながら言う。
「あぁ・・・」
ユキヤは少し呆れて笑う。
でもそんな何気ないやり取りが
二人は楽しくてたまらなかった。

目的地である旭野動物園は
電車で1時間ほどのところにあった。
(電車って久々だなぁ・・・)
ユキヤはのんびりそんな事を考えていた。

以前はよく、すみれと2人で電車に乗って出かけたものだ。
「楽しみだねー!」
車窓に流れていく風景を見ながらすみれが言った。
「あ、うん・・・」
(しかしなんでこいつは急に出かけようなんて言い出したんだ?)
ユキヤが疑問に思いながらも、すみれを横目で見る。
すみれは鼻歌交じりに上機嫌だ。

(ま、こいつが楽しいならそれでいいんだけど・・・)
「どうしたの?」
視線を感じたのかすみれが首をかしげる。
「あ、いや、なんでもない」
ユキヤは慌てて首を横に振った。
「そーぉ?・・・」
すみれはまだ少し首を傾げていたが、
すぐに電車の窓から見える風景に夢中になった。

(ほんとにこいつは・・・)
ユキヤは小さく苦笑した。
こうして電車に揺られているとなんだか眠くなってくる。
心地よい揺れが眠気を誘うのだ。
(やれやれ・・・)
目をこすりながらも、ユキヤはそのまま眠りに落ちていった。

***

『次は~旭野町三丁目~旭野町三丁目~』
目的駅のアナウンスでユキヤは目を覚ました。
「もうそろそろ着くみたいだな」
「そうだね」
電車から降りると、そこは動物園の入り口の近くだった。

入り口前には家族連れやカップル、友達同士などが行き来している。
ユキヤ達の少し後ろからカップルが手を繫いで出てくる。
「休みだけあって結構人多いな」
「そうだね」
人混みに押されて2人は自然と寄り添う。

ようやく中に入れたところですみれがあたりを見回して
「・・・へぇ、本当に色々とリニューアルしたんだね」
と呟いた。

「え?お前来たことあるの?」ユキヤが少し意外そうな顔をする。
「え?!・・・だって・・・」
とすみれは驚いたように何か言いかけるが
「・・・ううん、なんでもない」と打ち切った。
「?」
ユキヤは不思議そうに首を傾げるが、 それ以上追及はしなかった。

「行ってみようよ!」すみれはそう言ってユキヤの手を引く。
「あ、あぁ・・・」
ユキヤは戸惑いながらもすみれの手を取ってついて行った。

「あ、ライオンがいるよ!」
暫く二人で歩いていると、ライオンの檻が目に入った。

ユキヤは普段テレビや写真でしか見ない動物に若干興奮する。
「可愛いね!」
「あぁ」
そんなやり取りをしつつ、ユキヤも少しはしゃいでいた。

「ねぇねぇ!ペンギンだよ!」
更に歩いていくとペンギンのプールがあった。
こちらも普段見ない動物だ。
「かわいい・・・」
短い足でパタパタ地面を歩く様子に
すみれは思わず呟いてしまう。
「おい、あんまり近寄ると・・・」とユキヤが声をかけるが遅かった。
突如ペンギンがプールに飛び込んだ。

「きゃっ・・・!?」
水しぶきがかかり、すみれは少し驚く。
「あー・・・ほらな?だから言わ・・・」
ユキヤが言い終わる前にもう1羽のペンギンが飛び込む。
・・・今度はユキヤが水しぶきを浴びる番だった。「うわっ!?」
ユキヤも思わず驚いて声を上げる。

「ぷっ・・・あははははは!もうびしょ濡れじゃない!」
すみれが可笑しそうに笑い転げる。
「ここの動物園、ペンギンのプールが近すぎだろ!
(こいつめ・・・)
ユキヤは一瞬ムッとするが、すぐに自分もおかしくなって笑った。
2人で暫く大笑いする。

(あれ?この感じ何処かで・・・)
ユキヤは何か既視感を感じた。

(でも、何処で?)
「どうしたの?」すみれが不思議そうにユキヤを見る。
「あ、いや・・・なんでもない」
ユキヤは首を振ってごまかした。

***

その後園内を一通り回った後、二人は昼食のため
動物園内のレストランに立ち寄った。
店内は家族連れやカップルで賑わっている。
2人は窓際の席に向かい合って座った。

メニュー表を見て2人で相談する。
「俺はこのハンバーグランチにするかな・・・」
とユキヤが言うと
「私はナポリタンでいいかな」
すみれもそれに倣って答える。

「お前またそれ食べるの?前来た時もそれだったじゃん」
「え?!」
ユキヤが何気なく言ったセリフをすみれは聞き逃さなかった。

「?!」
ユキヤ本人も自分で言った事にハッとする。
そして先程から自分の中にあった
妙な既視感の正体に気が付いた。

「俺・・・ここ来たことあるよな?」
ユキヤはすみれに尋ねる。
頭の中にある記憶のパズルが組みあがっていくのが分かった。

そんな彼を見てすみれは少し微笑んで
「・・・やっと思い出した?」
そう言った。「あ、あぁ・・・」
ユキヤはまだ実感がわかないと言った顔で答える。
「忘れん坊だなぁ」
すみれは笑ってユキヤの鼻をつついた。

「そうだよ、ここは私たちが初めてデートしたところだよ」
「・・・すみれ・・・」
ユキヤはようやく実感が湧いたのか、感慨深そうに呟く。
(そうだ・・・ここは俺たちが知り合ってすぐ・・・
本格的に付き合う前に来たデートスポットだ!)

「もう、いつ思い出すのかと思ったよ!」
すみれはそう言って微笑んだ。
(あぁ、やっぱりすみれには勝てねぇや)
ユキヤは思わず苦笑して、メニューに目を落とした。

***

「ああそうだ、あのときゾウの檻のところで
お前が象のマル君に帽子を取られたんだっけか?」
「・・・そんな事はすぐ思い出すんだから!」
とすみれは少し怒った口調で言うと、
「えへへ♪」と言ってユキヤの腕に自分の腕を絡めた。

「おい!人が見てるだろ・・・」
慌てるユキヤにすみれは小声で囁いた。
「いいの・・・見られても・・・」
「!?」
その言葉にユキヤは一瞬ドキッとした。
「だって恋人同士だもん!」
「・・・お前なぁ」
浮かれ気味なすみれにユキヤは少し呆れ気味になる。

「でも忘れたてたのは酷いよ・・・」
すみれは少し寂しそうに言った。
「お前との思い出はインパクト強いのばっかだから、
それらのせいで記憶が薄れてただけだってば!」
ユキヤは慌てて弁解する。
(実際、あの時はこんなに長い付き合いになるとは
思ってなかったしな・・・)

「だからってさぁ、普通忘れる?・・・」
すみれは少しむくれた表情を浮かべる。
「ご、ごめん・・・悪かったから」
ユキヤは必死ですみれのご機嫌を取りにかかる。

「ねぇ、じゃあ今度はちゃんと忘れないような思い出作ろうよ」
「そうだな!」
すみれの提案にユキヤも同意する。
こうして2人は動物園を出て、手を繋いで歩いて行った。

つづく
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