霊感令嬢の視る仕事。〜視るだけの楽なお仕事?視るだけです厄介事はお断りします!〜

たちばな樹

文字の大きさ
19 / 55
二章

8

しおりを挟む
「……ナン令嬢。レベナン嬢、聞いているか?」
「へっ?何がですか?」
「聞いてなかったのか?」

呆れ顔を向け、むうと眉間に眉をよせるマアディン近衛騎士。

「私、なんでここに連れてこられたかも知りませんし。説明不足じゃないですか!?」

ジト目で不満をぶつけた。ぷぅと頬が若干膨れるのは言葉を飲み込んであげたからだからね!
この脳筋!短慮!

「ああ。悪かった。説明するより来た方が早いと思ってな」
「もー。人を振り回しといて酷くないですか?王子様からの仕事を残してここに連れて来たのに」

じじさまと話してたり、周りの観察で話を聞いなかったのは内緒だ。
だって興味ないし。来た理由聞いてないし。
再度説明してくれるって。当然よねー。
面倒臭い顔してるね。ちゃんと聞いてあげるから口をへの字にしないの。

「この魔法館には色々な魔法使いがいる。氷の魔法使い、火の魔法使い。付与魔法使いや防御魔法使い。あと、呪術魔法使いだ。今回のことを考えると、君も呪術者に話を聞いた方がいいと思ってな」

真剣な口調に私も流石に気を引き締めた。マアディン近衛騎士も私の様子を伺いながら話しを続けた。

「だから、レベナン嬢の能力を此方に説明してもいいかと聞いたのだ。どうだろうか?」
「私の能力を?」
「ああ。ここの呪術者は今回の捜査に協力して貰っているが、力を合わせれるなら心強いだろ?」

そう勝手に言われても。
この能力で嫌な思いばかりしてきた。デメリットしか思い当たらないのに自分から話すのは躊躇われた。

「話しても外部には漏れませんよ。誓約があるので安心してください」

俯いて悩んでいた私はパッと顔を上げてヴェクステル館長を見つめた。私と目が合うとニッコリと微笑むと周りの精霊達がポワポワと光っている。
嘘は言ってない。
そう伝わってきた。


「私のことが外部に漏れない条件で、お話します」

肯定とばかりに頷くヴェクステル館長に私の能力を話した。



「なるほど。霊体が視えるのですね。特殊な世界を視ることが出来るなど凄いことだと思うのですよ。貴女には困ったことなのでしょうけど」

視えること。視えて困ること。
話せる範囲の最小限を伝えるとヴェクステル館長は納得したとばかりにパチリと手を合わせた。

「ここの館にいる大半は貴女と同じ様な悩みを抱えてます。特殊故にここに居るのですから」

ーー私の苦労はここの人達と同じ……。

そう聞いてハッとヴェクステル館長を見上げた。
悲しげに寂しさを含んだ瞳が睫毛に翳るのを見た。
特殊故に、ここに居る。
家族と離れ寂しいこの館で過ごしたと。

私は神殿でダンおじちゃんに会えて楽しかった。
両親は居なかったけど、寂しさをダンおじちゃんが埋めてくれた。
この違いに心がギュッとした。
胸を押さえて心の奥から暖かさが溢れるように感じた。

「??どうした?具合悪いのか?」

胸を押さえた私を心配してくれたマアディン近衛騎士。身を起こし大丈夫だと手を振り居住まいを正した。ヴェクステル館長は私の息が整うのを待つと話しを聞いてきた。

「レベナン嬢に、私の守護はどのような方なのかお聞きしてもよろしいかな?」
「ヴェクステル館長は……。人ではなくて。力のある方が憑いている、と言うか。守護してます」
「力のある方とは?」
「………精霊、です」



私の視えたこと、じじさまの言ったことは正解だったみたいで、驚かれた。
誓約もこの精霊が関係しているらしい。

詳しく聞きますか?とヴェクステル館長に微笑まれたが。

詳しくは知りたくないので遠慮した。

これ以上関わりたくないので。


関与拒否します!



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ご読了ありがとうございます。
昨日夕方、2回目の投稿が出来なかったので、次話も続けて投稿しております。
よろしくお願いします。





しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうぞ、おかまいなく

こだま。
恋愛
婚約者が他の女性と付き合っていたのを目撃してしまった。 婚約者が好きだった主人公の話。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

安らかにお眠りください

くびのほきょう
恋愛
父母兄を馬車の事故で亡くし6歳で天涯孤独になった侯爵令嬢と、その婚約者で、母を愛しているために側室を娶らない自分の父に憧れて自分も父王のように誠実に生きたいと思っていた王子の話。 ※突然残酷な描写が入ります。 ※視点がコロコロ変わり分かりづらい構成です。 ※小説家になろう様へも投稿しています。

死に戻ったら、私だけ幼児化していた件について

えくれあ
恋愛
セラフィーナは6歳の時に王太子となるアルバートとの婚約が決まって以降、ずっと王家のために身を粉にして努力を続けてきたつもりだった。 しかしながら、いつしか悪女と呼ばれるようになり、18歳の時にアルバートから婚約解消を告げられてしまう。 その後、死を迎えたはずのセラフィーナは、目を覚ますと2年前に戻っていた。だが、周囲の人間はセラフィーナが死ぬ2年前の姿と相違ないのに、セラフィーナだけは同じ年齢だったはずのアルバートより10歳も幼い6歳の姿だった。 死を迎える前と同じこともあれば、年齢が異なるが故に違うこともある。 戸惑いを覚えながらも、死んでしまったためにできなかったことを今度こそ、とセラフィーナは心に誓うのだった。

笑い方を忘れた令嬢

Blue
恋愛
 お母様が天国へと旅立ってから10年の月日が流れた。大好きなお父様と二人で過ごす日々に突然終止符が打たれる。突然やって来た新しい家族。病で倒れてしまったお父様。私を嫌な目つきで見てくる伯父様。どうしたらいいの?誰か、助けて。

絶対に近づきません!逃げる令嬢と追う王子

さこの
恋愛
我が国の王子殿下は十五歳になると婚約者を選定される。 伯爵以上の爵位を持つ年頃の子供を持つ親は娘が選ばれる可能性がある限り、婚約者を作ることが出来ない… 令嬢に婚約者がいないという事は年頃の令息も然り… 早く誰でも良いから選んでくれ… よく食べる子は嫌い ウェーブヘアーが嫌い 王子殿下がポツリと言う。 良い事を聞きましたっ ゆるーい設定です

転生皇女はフライパンで生き延びる

渡里あずま
恋愛
平民の母から生まれた皇女・クララベル。 使用人として生きてきた彼女だったが、蛮族との戦に勝利した辺境伯・ウィラードに下賜されることになった。 ……だが、クララベルは五歳の時に思い出していた。 自分は家族に恵まれずに死んだ日本人で、ここはウィラードを主人公にした小説の世界だと。 そして自分は、父である皇帝の差し金でウィラードの弱みを握る為に殺され、小説冒頭で死体として登場するのだと。 「大丈夫。何回も、シミュレーションしてきたわ……絶対に、生き残る。そして本当に、辺境伯に嫁ぐわよ!」 ※※※ 死にかけて、辛い前世と殺されることを思い出した主人公が、生き延びて幸せになろうとする話。 ※重複投稿作品※

【12月末日公開終了】これは裏切りですか?

たぬきち25番
恋愛
転生してすぐに婚約破棄をされたアリシアは、嫁ぎ先を失い、実家に戻ることになった。 だが、実家戻ると『婚約破棄をされた娘』と噂され、家族の迷惑になっているので出て行く必要がある。 そんな時、母から住み込みの仕事を紹介されたアリシアは……?

処理中です...