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二章
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「……ナン令嬢。レベナン嬢、聞いているか?」
「へっ?何がですか?」
「聞いてなかったのか?」
呆れ顔を向け、むうと眉間に眉をよせるマアディン近衛騎士。
「私、なんでここに連れてこられたかも知りませんし。説明不足じゃないですか!?」
ジト目で不満をぶつけた。ぷぅと頬が若干膨れるのは言葉を飲み込んであげたからだからね!
この脳筋!短慮!
「ああ。悪かった。説明するより来た方が早いと思ってな」
「もー。人を振り回しといて酷くないですか?王子様からの仕事を残してここに連れて来たのに」
じじさまと話してたり、周りの観察で話を聞いなかったのは内緒だ。
だって興味ないし。来た理由聞いてないし。
再度説明してくれるって。当然よねー。
面倒臭い顔してるね。ちゃんと聞いてあげるから口をへの字にしないの。
「この魔法館には色々な魔法使いがいる。氷の魔法使い、火の魔法使い。付与魔法使いや防御魔法使い。あと、呪術魔法使いだ。今回のことを考えると、君も呪術者に話を聞いた方がいいと思ってな」
真剣な口調に私も流石に気を引き締めた。マアディン近衛騎士も私の様子を伺いながら話しを続けた。
「だから、レベナン嬢の能力を此方に説明してもいいかと聞いたのだ。どうだろうか?」
「私の能力を?」
「ああ。ここの呪術者は今回の捜査に協力して貰っているが、力を合わせれるなら心強いだろ?」
そう勝手に言われても。
この能力で嫌な思いばかりしてきた。デメリットしか思い当たらないのに自分から話すのは躊躇われた。
「話しても外部には漏れませんよ。誓約があるので安心してください」
俯いて悩んでいた私はパッと顔を上げてヴェクステル館長を見つめた。私と目が合うとニッコリと微笑むと周りの精霊達がポワポワと光っている。
嘘は言ってない。
そう伝わってきた。
「私のことが外部に漏れない条件で、お話します」
肯定とばかりに頷くヴェクステル館長に私の能力を話した。
「なるほど。霊体が視えるのですね。特殊な世界を視ることが出来るなど凄いことだと思うのですよ。貴女には困ったことなのでしょうけど」
視えること。視えて困ること。
話せる範囲の最小限を伝えるとヴェクステル館長は納得したとばかりにパチリと手を合わせた。
「ここの館にいる大半は貴女と同じ様な悩みを抱えてます。特殊故にここに居るのですから」
ーー私の苦労はここの人達と同じ……。
そう聞いてハッとヴェクステル館長を見上げた。
悲しげに寂しさを含んだ瞳が睫毛に翳るのを見た。
特殊故に、ここに居る。
家族と離れ寂しいこの館で過ごしたと。
私は神殿でダンおじちゃんに会えて楽しかった。
両親は居なかったけど、寂しさをダンおじちゃんが埋めてくれた。
この違いに心がギュッとした。
胸を押さえて心の奥から暖かさが溢れるように感じた。
「??どうした?具合悪いのか?」
胸を押さえた私を心配してくれたマアディン近衛騎士。身を起こし大丈夫だと手を振り居住まいを正した。ヴェクステル館長は私の息が整うのを待つと話しを聞いてきた。
「レベナン嬢に、私の守護はどのような方なのかお聞きしてもよろしいかな?」
「ヴェクステル館長は……。人ではなくて。力のある方が憑いている、と言うか。守護してます」
「力のある方とは?」
「………精霊、です」
私の視えたこと、じじさまの言ったことは正解だったみたいで、驚かれた。
誓約もこの精霊が関係しているらしい。
詳しく聞きますか?とヴェクステル館長に微笑まれたが。
詳しくは知りたくないので遠慮した。
これ以上関わりたくないので。
関与拒否します!
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ご読了ありがとうございます。
昨日夕方、2回目の投稿が出来なかったので、次話も続けて投稿しております。
よろしくお願いします。
「へっ?何がですか?」
「聞いてなかったのか?」
呆れ顔を向け、むうと眉間に眉をよせるマアディン近衛騎士。
「私、なんでここに連れてこられたかも知りませんし。説明不足じゃないですか!?」
ジト目で不満をぶつけた。ぷぅと頬が若干膨れるのは言葉を飲み込んであげたからだからね!
この脳筋!短慮!
「ああ。悪かった。説明するより来た方が早いと思ってな」
「もー。人を振り回しといて酷くないですか?王子様からの仕事を残してここに連れて来たのに」
じじさまと話してたり、周りの観察で話を聞いなかったのは内緒だ。
だって興味ないし。来た理由聞いてないし。
再度説明してくれるって。当然よねー。
面倒臭い顔してるね。ちゃんと聞いてあげるから口をへの字にしないの。
「この魔法館には色々な魔法使いがいる。氷の魔法使い、火の魔法使い。付与魔法使いや防御魔法使い。あと、呪術魔法使いだ。今回のことを考えると、君も呪術者に話を聞いた方がいいと思ってな」
真剣な口調に私も流石に気を引き締めた。マアディン近衛騎士も私の様子を伺いながら話しを続けた。
「だから、レベナン嬢の能力を此方に説明してもいいかと聞いたのだ。どうだろうか?」
「私の能力を?」
「ああ。ここの呪術者は今回の捜査に協力して貰っているが、力を合わせれるなら心強いだろ?」
そう勝手に言われても。
この能力で嫌な思いばかりしてきた。デメリットしか思い当たらないのに自分から話すのは躊躇われた。
「話しても外部には漏れませんよ。誓約があるので安心してください」
俯いて悩んでいた私はパッと顔を上げてヴェクステル館長を見つめた。私と目が合うとニッコリと微笑むと周りの精霊達がポワポワと光っている。
嘘は言ってない。
そう伝わってきた。
「私のことが外部に漏れない条件で、お話します」
肯定とばかりに頷くヴェクステル館長に私の能力を話した。
「なるほど。霊体が視えるのですね。特殊な世界を視ることが出来るなど凄いことだと思うのですよ。貴女には困ったことなのでしょうけど」
視えること。視えて困ること。
話せる範囲の最小限を伝えるとヴェクステル館長は納得したとばかりにパチリと手を合わせた。
「ここの館にいる大半は貴女と同じ様な悩みを抱えてます。特殊故にここに居るのですから」
ーー私の苦労はここの人達と同じ……。
そう聞いてハッとヴェクステル館長を見上げた。
悲しげに寂しさを含んだ瞳が睫毛に翳るのを見た。
特殊故に、ここに居る。
家族と離れ寂しいこの館で過ごしたと。
私は神殿でダンおじちゃんに会えて楽しかった。
両親は居なかったけど、寂しさをダンおじちゃんが埋めてくれた。
この違いに心がギュッとした。
胸を押さえて心の奥から暖かさが溢れるように感じた。
「??どうした?具合悪いのか?」
胸を押さえた私を心配してくれたマアディン近衛騎士。身を起こし大丈夫だと手を振り居住まいを正した。ヴェクステル館長は私の息が整うのを待つと話しを聞いてきた。
「レベナン嬢に、私の守護はどのような方なのかお聞きしてもよろしいかな?」
「ヴェクステル館長は……。人ではなくて。力のある方が憑いている、と言うか。守護してます」
「力のある方とは?」
「………精霊、です」
私の視えたこと、じじさまの言ったことは正解だったみたいで、驚かれた。
誓約もこの精霊が関係しているらしい。
詳しく聞きますか?とヴェクステル館長に微笑まれたが。
詳しくは知りたくないので遠慮した。
これ以上関わりたくないので。
関与拒否します!
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ご読了ありがとうございます。
昨日夕方、2回目の投稿が出来なかったので、次話も続けて投稿しております。
よろしくお願いします。
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