霊感令嬢の視る仕事。〜視るだけの楽なお仕事?視るだけです厄介事はお断りします!〜

たちばな樹

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二章

7

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「ここは?」

棟がいくつかある高い建物の前にやってきた。
建物は複数の棟と、一つだけ高い塔がある。

「魔法使いがいる館だ」
「術者がいるところですか!」

王宮の奥に連れてこられ訝しんでいたが、それを聞いてパァッと顔が輝いた。魔法使いが居る館なんて普通は近寄ることも出来ない。
術者なんて王様見るより珍しい存在だ。
人前になんて出ないし、研究とかで出てこない。架空の存在かもとも噂されるほどだ。
実像など話しがあるわけもなく、噂話ししか耳にしない存在は王様よりレアだ。
下手したら王様より貴重な存在かもしれない。

ん?王様をサゲてるって?
そうだよ。だって。
王様のせいでこんなことになってるし。
王様のせいでここにいるし。
王様のせいで面倒ごとにまきこまれてるし。
恨み節が入るのは当然だと思いまーす。


マアディン近衛騎士が扉を叩いたらスウッと開き法衣を纏う長身で長髪の男性が出てきた。

「おや。アロイ・マアディン近衛騎士殿。この館に何用ですか?」

あ、この人凄い。精霊が守護に憑いてる。
額に守護紋が視える。

偶に、本当ーに、極稀に守護精霊が加護として人に力を渡すと額に紋様が出る。
紋様によって守護内容が分かったりもする。
この方は花を中心に蔓の葉が絡み合う紋だ。植物の精霊の守護なんだろうとは思う。
詳しく視れば分かるけど、あまりジロジロ視るのも失礼なので。

〈此のお方はかなり上位の精霊じゃよ。紋の色が金を帯びておるじゃろ。力のある精霊じゃな〉
『じじさまでも正体分からないのか。すごーい』



マアディン近衛騎士が恭しく頭を下げて訪問を謝罪する。

「スティル・ヴェクステル館長殿。急な訪問で申し訳ない。しばしお時間を頂けないだろうか」

館長さんは私をチラリと見ると、「こちらです」と案内してくれた。


大きな扉を抜け、エントリーホールは吹き抜けで大きなシャンデリアがぶら下がっている。
あまりの高さに思わず口をポカリと開けて見上げていたら、マアディン近衛騎士に指先でそっと顎を上げられて口を閉じられた。

失礼な。
レディーの顎先に触れるとは。
はたと気付き、その指先をペシリと叩いた。
マアディン近衛騎士、双眸を緩めながら苦笑いしてますが。
プンと腹立ち紛れに「デビュタントした女性に無闇に触らない!」と苦言を呈した。

「レディーの口の中に虫でも入ったら大変だと思いまして。失礼致しました」

わざわざ騎士の礼をしながら謝る割には、すっごーく楽しそうな顔してますね!
枕元に親父さん立たせちゃうわよ?


ヴェクステル館長さんは終始そのやり取りを楽しそうに眺めていた。
ちょっとは止めて欲しいもんだ。


案内されたのは、本棚が壁一面にある図書館のような応接室。図書室に応接室があるのか?溢れた本が山積みされているのは応接室としては如何なものかと思うのですが。


「マアディン近衛騎士殿と御令嬢。お座りください」

促されてソファーに座る。
ヴェクステル館長も座ると徐ろに喋り始めた。

「マアディン近衛騎士殿がこちらに来られるの珍しいですね。一応初めての御令嬢もいらっしゃるので、自己紹介いたしますね。わたくしは館長のスティル・ヴェクステルと申します。お嬢様のお名前をおきしてもよろしいかな?」
「ご紹介に与りまして光栄にございます。私はルヴェナート・レベナン子爵が娘、ソルシエレ・レベナンと申します」

お互い座ったままでの略式挨拶で済んでよかった。カーテシーは面倒で嫌いだ。足が疲れるし。


館長さんはとても顔が整った美形さん。髪はサラサラだし目鼻立ちはスッとしてるし。女装できそうな美人さんだ。
それよりも、額の精霊紋が気になるけど。

『じじさま、わかる?』
〈分からんよ。上位は名すら畏れ多いのじゃよ〉

正体は諦めた。じじさまが無理な時は無理なのだ。じじさまも視れないならと、今度は部屋を観察することにした。

色々いらっしゃるので視て飽きなかった。











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