霊感令嬢の視る仕事。〜視るだけの楽なお仕事?視るだけです厄介事はお断りします!〜

たちばな樹

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二章

14

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すみません。
お昼の投稿が出来ませんでした。
2話分投稿しますので、よろしくお願いします。

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「帰っていいですか?」

三人娘から絡まれたパーティーの帰り道。
潜入捜査もひと段落したし、帰りの馬車の中でそうファルシュさんに言うと無表情の無言で見つめられた。前髪の隙間から見える目が怖いんですが。

「……何処にですか?」
「家です」
「何か気に触ることでもありましたか?」
「いえ。疲れたので家に帰りたいんです」

両親とは、まだまだ隔たりとしこりが残る関係性とは言え、家と言う安心感は格別だと思う。
それにヴェクステル館長の言葉が引っかかったままだ。そのモヤモヤをハッキリさせたいのもある。

「一時帰宅なら出来るのですが」
「はい?一時帰宅ですか?私はもうやる事やったから家に帰りたいんです。王宮に永住でもしなきゃならないんですか?」
「……まだ、城内のアチラの方々のお話しを聞く仕事が残ってますよ?」

あー!!忘れてた!潜入捜査を優先して、途中なままだったことを思い出した。
ファルシュさんは目を細めてニイと笑う。
嫌な笑みだ。
作り笑いの。


胡散臭い顔を浮かべた私にファルシュさんは悠然と足を組んで寛ぐと王子様な顔付きをした。
前髪から覗くその碧い瞳が刺さるようで壁際に身を寄せた。


◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇



本日分の城内アチラの方々マッピングを済ませたくて、私は足早に視て回った。
マアディン近衛騎士が時間あるときにやっているためなかなか進まないのだ。


「マアディン近衛騎士様。早く済ませましょう!」

早歩きはちょっとお行儀が悪いが人がいない時は気にしない。それに私の早歩きなんてマアディン近衛騎士の歩幅程度。彼には歩いているのと変わらない。

私の早歩きに余裕の歩幅を繰り出し、一生懸命早歩きする私をチラリと見て、マアディン近衛騎士はふっと鼻で笑う。

脚の長いヤツめ。
身長差があるからね!
当然だけどね!

「レベナン令嬢。マアディン近衛騎士と呼ぶのは長いのでアロイで構いませんよ」
「いえ。名を呼ぶのは体裁がありますので家名でお願いします」

ピシリと断ると物珍しげに眺められたあと、眉尻を下げ残念がるマアディン近衛騎士は諦めず名前呼びを推してくる。

親しい間柄でもない男女が名前呼びなんて周りからどんな誤解を受けるか、考えただけでも恐ろしい。マアディン近衛騎士は家柄と肩書きで言うと、優良物件だ。厳つい強面で嫌煙されがちみたいだが、物件内容目当てだと周りから思われたり見られたりしたら困る。
三人娘から言われた王子との疑惑で嫌な思いをしたばかりだ。不用な中傷など受けたくない。

首を振り拒否する私にマアディン近衛騎士が詰め寄り「呼び名が長い」「体裁が」と繰り返した。
結局根気に負けて、”マアディン卿”と言う敬称に落ち着いた。
「慣れたらアロイで」と和かに微笑まれる。

慣れるころは自領に帰ってますよ。


◇◆◇


「ここ…………」

そう言って、言葉を濁した。
次の場所に移動したのだが。

アチラの方が無言で床をひっ掻いている。

私の耳にはガリガリと爪を立てて石畳を掻く音が届く。マアディン卿はキョトンとした表情で首を傾げている。
視えない、聞こえないっていいね。

『じじさま、この下って……』
〈うむ。秘密の通路か何かじゃろうな。壁の向こうから続いておるぞ〉

じじさまの言葉をどうマアディン卿に伝えるか。
そもそも、こんな抜け道とかの暴露をしていいのかも難しい判断だ。

『じじさま。周りに誰も居ない?』
〈大丈夫じゃ〉

「マアディン卿、ちょっとよろしいでしょうか」

私は通路の端にマアディン卿を呼び耳打ちをした。

秘密の抜け穴とか、どう報告すればいいのかを。
場合によっては、王族しか知らないとかもある。
偶発的に第三者が知るべきではない事案はどうするのか。

マアディン卿は黙り込み考え込んだ。
秘密を知って消されるとかないよねと心配になった。


「今日は、ここまでにしておきましょう」


マアディン卿は考え込んだまま。

その眼の色は深く沈んでいた。


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