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二章
父親の独り言。(2)
しおりを挟む歳月は流れ、娘がデビュタントの歳を迎えた。
神官様も、もう大丈夫だとのお墨付きを貰い、娘を迎えに行った。
ぎこちない挨拶から始まり、少しずつ日々を重ねた。
怯えていた妻も、今では微笑みが浮かんでいる。
神官様に娘をお願いしたあと、気を病み痩せた妻は体調を崩しやすくなった。手放した娘への罪悪感と慕情に苛まれる日々に涙を流した。
娘を手放しあれから笑わない笑えない日々に、娘が戻り少し穏やかになってきたのはやはり娘のおかげなのだ。
家族が。
やっと揃ったのだ。
◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇
長い長い、紆余曲折を経て。
娘はデビュタントを迎える日が近づいた。
そのために家族で王都に来た。
そんなある日、娘が捕まった。
捕縛されて牢屋だと言う。
それを聞いた妻は倒れた。
メイドに妻をお願いし、朝を待ち詰所に向かうと娘は場所を移動したと言う。
こんどは王城だ。
しかも王からの勅命だと言う。
情報の錯綜に混乱した。
娘がどんな罪を犯したのか。
王に裁かれるほどの大罪を犯したのか。
急いで王城に迎えに行った。
血の気が引く思いで城内へと駆け込むと。
ーー歓待された。
逮捕され。捕縛され。歓待され。
そしてーー
王との謁見だと??
………その後の記憶はあまり残ってはいない。
ただ、娘が王を助けたのだと。
褒美で爵位が上がった。
しかも税の免除まで。
喜んでいいのか、娘を怒ればいいのか。
ただ、それでも娘が無事でよかったと。
心から安堵した。
◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇
税収分で領地の施設を修繕し、施設の増築に伴い住民が増えた。
以前より活気の出た領地に移住者も商店も増え、それなりに栄えた街が増えた。
ーー娘のおかげ。
その一言にどれだけの過去と思いと気持ちが込められているか。
複雑な気持ちも含め手放しで喜べず、戸惑うばかりだ。
娘は王から王宮で仕事を依頼され、就職も求められているようだ。それでもいい。仕事で王宮に勤められれば将来を心配せずに済む。
社交経験もなく、貴族交流も無かった娘の未来を思えば、職業婦人で人生を過ごしても構わない。
貴族らしく育てる事が出来なかった。
婚約者も用意出来なかった。
娘の未来を案ずるなら、そのまま城で仕事をしているのが一番なのかもしれない。
こんな機会など、もうないだろう。
仕事に勤しみ、人脈を築き、普通に生活できるならそれで良い。
そう思った。
だが、何故だか娘は腹を立てている。
王家からの仕事を受諾したのに。
親の心子知らずだ。
まだまだ娘との距離は縮まらない。
それでも、娘の帰る場所として、親として、ここで待っている。
時間がかかろうとも。
あのプニプニほっぺは心に刻まれている。
あの陽だまりのような笑顔も。
疲れたら帰ってこればいい。
ここが故郷なのだから。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ちゃんと、ご両親は親として頑張りました。しかし力及ばす神官様に縋り、親子関係が拗れてしまいました。ママも普通じゃ無い問題に育児鬱になってしまうのもわかります。
それでも、愛情があったから彼女は擦れずに捻くれずに、ちょいと生意気だけど素直に育ちました。ダン神官様の努力の賜物でもありますが。
三つ子の魂百までですね。
親側の話しなんて、皆さんに需要があるのかわかりませんが、背景としての情報程度に読み飛ばして下さいませ。
お目汚し失礼いたしました。
ご読了心より感謝致します。
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