【完結】飯屋ではありません薬屋です。

たちばな樹

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「お!妹!!」


いきなり呼ばれて振り向くと眼光鋭く狼のような雰囲気を纏った男が立っていた。


あぁ?
私はお前の妹じゃない!
気安く呼ぶな!!
ちゃんと名前を呼べ!!


ラフな白シャツに黒の革のベスト。黒のトラウザーズに黒の編み上げブーツのその男。
騎士服を着用していないが、その目付きの悪さは覚えている。

気分の悪い私が騎士の厳ついご面相如きに恐れを成すわけがなかろう!


私の疲労の元凶の一人、ライ・ロッゲンだ。



「重そうだな。買い出しか?」
「ええ!どっかの馬鹿達がウチを食堂と勘違いしてるみたいでね!!」


馬鹿達の一人が目の前に居るが。


そう言われ渋い顔するのは自覚ありか!?
なら改めろ!


私の不機嫌を察したのかライが手を出した。

荷物を持つとの意思表示か?

お前らの所為で買い出しが大変なんだから当然だな!


なら、と荷物を出し手に押し付けた。

ライは、また渋い顔しながら反対の手に荷物を持ち替えた。

で、また手を出した。

は?

ジィッと見つめた。


「……迷子になるだろ?」
「引っ越して、もうだいぶ経ったから迷子になんてならないわよ?」
「チッ!………だから、まぁ……、なんだ」
「ダメでしょ?騎士が両手塞いじゃ。咄嗟に剣が抜けなくなるよ」



父は絶対利き手を空けていた。
だから騎士の手を塞ぐのはご法度だと知っている。




迂闊なライに呆れた顔を向けた。


父から聞いた騎士の矜持を懇々と説明しながら帰路についた。







ウチに着き、荷物を兄に手渡したライ。



「お前……」




無言無表情のライに珍しく肩を叩き、そして何故か肩を落としていた兄。



兄の目がどんよりしているが……?
ま、いいか。





さーて。
夕飯何にするかなぁ。





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