23 / 34
23.敵
しおりを挟む
「サエの魔法は何というか……変だな」
「そ、そうでしょうか」
ファフニールが迷うそぶりをみせ、出て来た言葉にガクリとしちゃったわ。
彼は「もふもふ牧場」システムを使うことを魔法だと思っているの。
自分で宝石や食べ物を作っておいてわざわざ掘り返したり、なんてこと普通はしない。
「そうか、サエの魔法はこの『結界そのもの』なのか」
「ニールさん、それです結界というものについてお聞きしようと思っていたんです」
そうだ。最初に出会った時、彼は勝手に自分の領域に結界をなんてことを言っていた。
あの時、巨大なドラゴンに対して気が動転していて、ハッキリと覚えていなかったの。
だけど、今ハッキリと彼は「結界」という言葉を口にしたわ。
「その言いよう。サエの魔法は結界ではないのか?」
「分かりません。結界というものかもしれないんです。私、自分がどうしてこういう魔法を使えるのかも分かってないんです」
「ほう。制約か。知ったからといってお前の結界が綻ぶわけではないか。結界にはいくつか種類がある」
「はい」
ファフニールは指を三本たてる。
彼の指って長いのね。人間って指の長さと手のひらの長さって手の平の方が長いくらいじゃない。
だけど、彼の場合は指の方が長かったの。
おっとっと。彼の指に気を取られていたら、せっかくの説明を聞き逃しちゃう。
佐枝子の聡明な頭脳で理解したところによると、結界の種類はこんな感じ。
一つは私が結界と聞いて想像するものに近かった。
この結界は何者もの侵入を防いでくれる。どんな危険地帯であっても、その中で昼寝をすることができるだって。
いいわね。この結界。ライオンの群れの真ん中でステーキを貪りたいわ。
二つ目は罠ね。
敵を誘い込んで、結界内に入ったところでどおどどおおおん。敵は死んだ。
きゃー、こわいいい。助けてえ。隊長ーってやつね。
三つ目がたぶんファフニールが最初に結界だといったことに繋がる。
結界内に新たな法則を書きこむ……難しいので佐枝子的に言うと結界の中に新しい世界を作るってことね。
結界が構築され「もふもふ牧場」的な世界が広がっているというわけなのさ。
だから、私はイルカにお願いしたり、作物を育てたりといったことができる。
小人族の村に行った時、もしトッピーに梨を渡していなかったらと思うとゾッとするわ。
村ではイルカを呼び出せないかもしれない。
うーん。でも、梨とかは結界の外に持っていってもそのままだったわけよね。
「お前がどのようにして『物質』を生成しているのかは分からない。しかし、物質化したものは永続的にその形を保つ」
「梨とか服とかを外に持ち出しても、大丈夫ということでしょうか?」
「そうだ」
ファフニールがちょうど疑問に思っていることに対する回答をくれた。
あ。そっか。
「よかったです」
「小人族のことか?」
「それもありますけど、ニールさんと食べたものもそのままちゃんと食べ物としてちゃんと消化されたんですよね。幻になって消えちゃったらと」
「そんなことか。問題ない。お前が振舞ってくれた料理は全て俺の血肉となっている」
初めてファフニールがくすりとしたところを見た気がする。
そっか、彼はこんな顔で笑うんだ。むすっとしているより素敵。もっと彼が微笑んでくれるように、佐枝子は頑張る所存です。
砂のことだって、彼にやってもらいっぱなしだもの。
少しでも彼に楽しんでもらいたい。
「ニールさん、似たようなものになっちゃいますが、お食事ご一緒しませんか?」
「いつも悪いな」
「いえ、砂をどどーんとしてくださいましたし。ほんのお礼です」
「俺はそういうつもりでやったわけじゃないんだが」
「もし、砂のことがなかったとしても、私、ニールさんをお食事に誘っちゃってます。一人より二人の方が楽しいですし、おいしいです」
「そうか。友とはよいものだな」
「はい! 一人きりじゃなくて本当に良かったと思ってます」
フクロモモンガと白猫はいるけど、あいつらはちょっと違うのよね。
ペット枠? とでも言ったらいいのかしら。
こう、考え方が動物的過ぎて人間と接しているような気持ちにはならないわ。
ファフニールも人間じゃなくてドラゴンだけど、彼は人と考え方が近い。
人間やっぱり独りぼっちじゃ辛いものなのよ。
トッピーやラナにもまた会いたいな。彼らも私にとっては大事なお友達だもの。
「どうした? 突然笑って」
「嬉しいなと思いまして」
「お前はすぐに顔に出るな」
「そうですか。えへへ」
「はは。家に向かうのか?」
「はい!」
ファフニールと横に並んで家路に向かう。
◇◇◇
家に帰ると、中に白猫に乗ったルルるんが待ち構えていた。
梨をお届けしてくれたらしく、ベッドの上に梨が転がっていたわ。
「わざわざ持ってきてくれたの?」
『ついでもきゃ。敵がいたもきゃ。倒すかもきゃ?』
「敵?」
『そうもきゃ。奴ら数が多いもきゃ』
ルルるんが忌々しそうに万歳して、大きなお目目をぐるぐるさせる。きゃわいい。
って、そこじゃなくって……数が多いですってええ。
どうしましょう、隊長。マシンガンを斉射でありますか?
しかし、自分、マシンガンどころか拳銃の一つも持っていません。
変なことをぐるぐる妄想していると、ファフニールが口端をあげふんと顎をあげる。
「サエにとって真の敵ならば、いいがな。お前の見間違いじゃないのか?」
『そんなことないもきゃ』
「なら、俺が滅してこよう。魔王といってもその程度だというわけだ」
『もっきゃあああ! 余裕もきゃ。勝手に抹殺したらと思ってサエコに確認しに来ただけもきゃ。あんなやつらスレイプニルのにゃーんで一発もきゃ』
きゃあああ。私を挟んで喧嘩しないでえ。
私は一人しかないの。取り合うなんて不毛だわあ。
いやんいやん。モテる女って辛い。
と、妄想はここまでにして、事情をもきゃから聞かないと。
「ルルるん。その敵というのはどこにいるの?」
『木の中もきゃ。奴ら巣を作っているもきゃ。昨日までは影も形もなかったのに』
「木がポップして、そこに巣があったのかな」
『朝になったら突然生えてきたもきゃあああ!』
だいたい分かったわ。そうか、ようやく出て来たわね。
虫取り網がプレゼントされた時からいずれ来るとは思っていたの。
でも、刺されたら痛いので放置しようかなあ、なんて気でいた。
「サエ、敵か?」
「いえ、たぶん私たちに敵意があるってわけじゃないと思うんですが、その何というか、行ってみましょう」
「分かった。ストゥルルソン。案内しろ。サエは俺の後ろからついてこい」
「はい!」
フクロモモンガと白猫はともかく、ドラゴンはさすがにオーバーキル過ぎると思うわよ。
消し炭になっちゃうかも。
「そ、そうでしょうか」
ファフニールが迷うそぶりをみせ、出て来た言葉にガクリとしちゃったわ。
彼は「もふもふ牧場」システムを使うことを魔法だと思っているの。
自分で宝石や食べ物を作っておいてわざわざ掘り返したり、なんてこと普通はしない。
「そうか、サエの魔法はこの『結界そのもの』なのか」
「ニールさん、それです結界というものについてお聞きしようと思っていたんです」
そうだ。最初に出会った時、彼は勝手に自分の領域に結界をなんてことを言っていた。
あの時、巨大なドラゴンに対して気が動転していて、ハッキリと覚えていなかったの。
だけど、今ハッキリと彼は「結界」という言葉を口にしたわ。
「その言いよう。サエの魔法は結界ではないのか?」
「分かりません。結界というものかもしれないんです。私、自分がどうしてこういう魔法を使えるのかも分かってないんです」
「ほう。制約か。知ったからといってお前の結界が綻ぶわけではないか。結界にはいくつか種類がある」
「はい」
ファフニールは指を三本たてる。
彼の指って長いのね。人間って指の長さと手のひらの長さって手の平の方が長いくらいじゃない。
だけど、彼の場合は指の方が長かったの。
おっとっと。彼の指に気を取られていたら、せっかくの説明を聞き逃しちゃう。
佐枝子の聡明な頭脳で理解したところによると、結界の種類はこんな感じ。
一つは私が結界と聞いて想像するものに近かった。
この結界は何者もの侵入を防いでくれる。どんな危険地帯であっても、その中で昼寝をすることができるだって。
いいわね。この結界。ライオンの群れの真ん中でステーキを貪りたいわ。
二つ目は罠ね。
敵を誘い込んで、結界内に入ったところでどおどどおおおん。敵は死んだ。
きゃー、こわいいい。助けてえ。隊長ーってやつね。
三つ目がたぶんファフニールが最初に結界だといったことに繋がる。
結界内に新たな法則を書きこむ……難しいので佐枝子的に言うと結界の中に新しい世界を作るってことね。
結界が構築され「もふもふ牧場」的な世界が広がっているというわけなのさ。
だから、私はイルカにお願いしたり、作物を育てたりといったことができる。
小人族の村に行った時、もしトッピーに梨を渡していなかったらと思うとゾッとするわ。
村ではイルカを呼び出せないかもしれない。
うーん。でも、梨とかは結界の外に持っていってもそのままだったわけよね。
「お前がどのようにして『物質』を生成しているのかは分からない。しかし、物質化したものは永続的にその形を保つ」
「梨とか服とかを外に持ち出しても、大丈夫ということでしょうか?」
「そうだ」
ファフニールがちょうど疑問に思っていることに対する回答をくれた。
あ。そっか。
「よかったです」
「小人族のことか?」
「それもありますけど、ニールさんと食べたものもそのままちゃんと食べ物としてちゃんと消化されたんですよね。幻になって消えちゃったらと」
「そんなことか。問題ない。お前が振舞ってくれた料理は全て俺の血肉となっている」
初めてファフニールがくすりとしたところを見た気がする。
そっか、彼はこんな顔で笑うんだ。むすっとしているより素敵。もっと彼が微笑んでくれるように、佐枝子は頑張る所存です。
砂のことだって、彼にやってもらいっぱなしだもの。
少しでも彼に楽しんでもらいたい。
「ニールさん、似たようなものになっちゃいますが、お食事ご一緒しませんか?」
「いつも悪いな」
「いえ、砂をどどーんとしてくださいましたし。ほんのお礼です」
「俺はそういうつもりでやったわけじゃないんだが」
「もし、砂のことがなかったとしても、私、ニールさんをお食事に誘っちゃってます。一人より二人の方が楽しいですし、おいしいです」
「そうか。友とはよいものだな」
「はい! 一人きりじゃなくて本当に良かったと思ってます」
フクロモモンガと白猫はいるけど、あいつらはちょっと違うのよね。
ペット枠? とでも言ったらいいのかしら。
こう、考え方が動物的過ぎて人間と接しているような気持ちにはならないわ。
ファフニールも人間じゃなくてドラゴンだけど、彼は人と考え方が近い。
人間やっぱり独りぼっちじゃ辛いものなのよ。
トッピーやラナにもまた会いたいな。彼らも私にとっては大事なお友達だもの。
「どうした? 突然笑って」
「嬉しいなと思いまして」
「お前はすぐに顔に出るな」
「そうですか。えへへ」
「はは。家に向かうのか?」
「はい!」
ファフニールと横に並んで家路に向かう。
◇◇◇
家に帰ると、中に白猫に乗ったルルるんが待ち構えていた。
梨をお届けしてくれたらしく、ベッドの上に梨が転がっていたわ。
「わざわざ持ってきてくれたの?」
『ついでもきゃ。敵がいたもきゃ。倒すかもきゃ?』
「敵?」
『そうもきゃ。奴ら数が多いもきゃ』
ルルるんが忌々しそうに万歳して、大きなお目目をぐるぐるさせる。きゃわいい。
って、そこじゃなくって……数が多いですってええ。
どうしましょう、隊長。マシンガンを斉射でありますか?
しかし、自分、マシンガンどころか拳銃の一つも持っていません。
変なことをぐるぐる妄想していると、ファフニールが口端をあげふんと顎をあげる。
「サエにとって真の敵ならば、いいがな。お前の見間違いじゃないのか?」
『そんなことないもきゃ』
「なら、俺が滅してこよう。魔王といってもその程度だというわけだ」
『もっきゃあああ! 余裕もきゃ。勝手に抹殺したらと思ってサエコに確認しに来ただけもきゃ。あんなやつらスレイプニルのにゃーんで一発もきゃ』
きゃあああ。私を挟んで喧嘩しないでえ。
私は一人しかないの。取り合うなんて不毛だわあ。
いやんいやん。モテる女って辛い。
と、妄想はここまでにして、事情をもきゃから聞かないと。
「ルルるん。その敵というのはどこにいるの?」
『木の中もきゃ。奴ら巣を作っているもきゃ。昨日までは影も形もなかったのに』
「木がポップして、そこに巣があったのかな」
『朝になったら突然生えてきたもきゃあああ!』
だいたい分かったわ。そうか、ようやく出て来たわね。
虫取り網がプレゼントされた時からいずれ来るとは思っていたの。
でも、刺されたら痛いので放置しようかなあ、なんて気でいた。
「サエ、敵か?」
「いえ、たぶん私たちに敵意があるってわけじゃないと思うんですが、その何というか、行ってみましょう」
「分かった。ストゥルルソン。案内しろ。サエは俺の後ろからついてこい」
「はい!」
フクロモモンガと白猫はともかく、ドラゴンはさすがにオーバーキル過ぎると思うわよ。
消し炭になっちゃうかも。
13
あなたにおすすめの小説
「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます
七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。
「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」
そう言われて、ミュゼは城を追い出された。
しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。
そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……
他国から来た王妃ですが、冷遇? 私にとっては厚遇すぎます!
七辻ゆゆ
ファンタジー
人質同然でやってきたというのに、出されるご飯は母国より美味しいし、嫌味な上司もいないから掃除洗濯毎日楽しいのですが!?
お兄様、冷血貴公子じゃなかったんですか?~7歳から始める第二の聖女人生~
みつまめ つぼみ
ファンタジー
17歳で偽りの聖女として処刑された記憶を持つ7歳の女の子が、今度こそ世界を救うためにエルメーテ公爵家に引き取られて人生をやり直します。
記憶では冷血貴公子と呼ばれていた公爵令息は、義妹である主人公一筋。
そんな義兄に戸惑いながらも甘える日々。
「お兄様? シスコンもほどほどにしてくださいね?」
恋愛ポンコツと冷血貴公子の、コミカルでシリアスな救世物語開幕!
異世界召喚されたアラサー聖女、王弟の愛人になるそうです
籠の中のうさぎ
恋愛
日々の生活に疲れたOL如月茉莉は、帰宅ラッシュの時間から大幅にずれた電車の中でつぶやいた。
「はー、何もかも投げだしたぁい……」
直後電車の座席部分が光輝き、気づけば見知らぬ異世界に聖女として召喚されていた。
十六歳の王子と結婚?未成年淫行罪というものがありまして。
王様の側妃?三十年間一夫一妻の国で生きてきたので、それもちょっと……。
聖女の後ろ盾となる大義名分が欲しい王家と、王家の一員になるのは荷が勝ちすぎるので遠慮したい茉莉。
そんな中、王弟陛下が名案と言わんばかりに声をあげた。
「では、私の愛人はいかがでしょう」
存在感のない聖女が姿を消した後 [完]
風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは
永く仕えた国を捨てた。
何故って?
それは新たに現れた聖女が
ヒロインだったから。
ディアターナは
いつの日からか新聖女と比べられ
人々の心が離れていった事を悟った。
もう私の役目は終わったわ…
神託を受けたディアターナは
手紙を残して消えた。
残された国は天災に見舞われ
てしまった。
しかし聖女は戻る事はなかった。
ディアターナは西帝国にて
初代聖女のコリーアンナに出会い
運命を切り開いて
自分自身の幸せをみつけるのだった。
召喚失敗!?いや、私聖女みたいなんですけど・・・まぁいっか。
SaToo
ファンタジー
聖女を召喚しておいてお前は聖女じゃないって、それはなくない?
その魔道具、私の力量りきれてないよ?まぁ聖女じゃないっていうならそれでもいいけど。
ってなんで地下牢に閉じ込められてるんだろ…。
せっかく異世界に来たんだから、世界中を旅したいよ。
こんなところさっさと抜け出して、旅に出ますか。
「地味な婚約者を捨てて令嬢と結婚します」と言った騎士様が、3ヶ月で離婚されて路頭に迷っている
歩人
ファンタジー
薬師のナターリアは婚約者の騎士ルドガーに「地味なお前より伯爵令嬢が
ふさわしい」と捨てられた。泣きはしなかった。ただ、明日から届ける薬が
一人分減るな、と思っただけ。
ルドガーは華やかな伯爵令嬢イレーネと結婚し、騎士団で出世する——はずだった。
しかしイレーネの実家は見栄だけの火の車。持参金は消え、借金取りが押し寄せ、
イレーネ本人にも「稼ぎが少ない」と三行半を突きつけられた。
3ヶ月で全てを失ったルドガーが街角で見たのは、王宮薬師に抜擢された
ナターリアが、騎士団長と笑い合う姿だった。
「なあ、ナターリア……俺が間違っていた」
「ええ、知ってます。でも、もう関係のない話ですね」
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる