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12.コズミックフォージ
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「第一の魔にいるアンデッド全ては意思を持っていない。本能的に生きている人を襲うって思ってる?」
「その通りだ。彼らは哀れにもアンデッドとして再び動き出した。そこに生前の意思はない」
「うん。ご名答。だけど、意思を保った人もいるの。私だけだけどね」
「前置きはいい。始まりの物語を聞かせてくれ」
「焦らない。焦っちゃだめよ。十分に触ってからじゃないと」
「いいから話せ」
「もう。長くなるわよ。途中で何か来てもあなたが対処してね」
「来たらすぐに仕留める」
くすくすと軽薄な笑い声をあげ、彼女は語り始める。始まりの物語を。
1000年前、ベルベットはそれなりに名の知れた宮廷魔術師だった。一国のお抱え魔法使いなのだから、彼女が言うより有名な魔法使いだったのかも。
彼女らは魔法の研究をしていくなかで行き詰まる。
二年ほど頑張ってみたが、成果があがらず途方に暮れたそうだ。
そこで、彼女は深淵なる大賢者「ハールーン」を頼ることにした。
といってもハールーンは秘境の奥地に住んでいると言われ、人の世には決して出て来ようとしなかった世捨て人である。
ハールーン捜索隊が結成され、探すこと一年、ついにベルベットらはハールーンのいる場所を発見した。
「ちょっと待て、ハールーンって」
「ハールーンはハールーンよ」
「どこかで聞いたことのある名だと思ったけど、おとぎ話に出てくる『全てを知る者』ってやつか」
「さあ。後の世ではどうなっているやら、私には分からないわ」
「ハールーンの言う事」という絵本があってな。俺も子供の頃に親に見せてもらったものだ。
教訓話集みたいなもんで、賢者ハールーンが子供たちに昔話を聞かせるといった内容である。
「すまん、遮って。続けてくれ」
「分かったわ」
森を超え、谷を越え、深い森に入り、ハールーンの元へ辿り着いたベルベットら。
そこで彼女らはハールーンと邂逅する。
叡智を授かり、意気揚々と帰路につこうとした時、突如空が暗転した。
そこから悪夢が始まったのだと。
ハールーンは意識を失い、動かなくなった。
食べ物は無く、徐々に衰弱していくハールーンの弟子たちとベルベットら一行。
それでも魔獣の森から食糧を得て、生き抜いていた。
しかし、病で一人倒れ、魔獣に受けた怪我が元でまた一人倒れ……倒れた者からアンデッドになって行く。
アンデッドになった者は生前の人格はなく、ただただ生きている者を襲ってくる。
脱出するにも出口がない。当時の迷宮は今でいうところの「死者の大聖堂」と魔獣の森の一部しかなかったんだと。
いや、あったかもしれないけど行き来できなかったとベルベットは言う。
「ちょっと整理させてくれ。ベルベットたちはコズミックフォージに取り込まれた。行き先はここ死者の大聖堂で、俺がいたような小屋がある場所じゃなかったってことか」
「そうね。私はあなたのいう『小屋のある場所』に入ることができないから、どうなっているのか分からないわ。危険な魔物もおらず、食べるに困らないとだけ聞こえてきた声から情報を得ただけね」
「……すげえ、嫌らしいな。コズミックフォージってやつは」
「気がついちゃった? 話を続けるわね」
「うん」
ベルベットはどうすべきか悩んだ。いずれ、寿命がつき自分もあの無残なアンデッドと化してしまう。
頼りのハールーンは眠ったまま。
このまま朽ちていくことなぞベルベットの矜持が許さない。幸い彼女には魔法の素質と時間があった。
当時の「死者の大聖堂」には元彼女らの仲間以外のアンデッドはいなかったから平和なものだったというのがベルベットの言葉だ。
そしてついに彼女は死者にして自分の意思を保つ研究を完成させた。
それは、魔法によるアンデッド化である。
ターニングリッチと言われる魔法を自分にかけ、肉体を作り変えた彼女は死者の大聖堂で唯一人、意思を持つアンデッドとして1000年を過ごす。
「私はリッチと呼ばれる存在となり、今に至るわ」
「ベルベットのことは分かった。それで眠ったままのハールーンはどうなったんだ?」
「そこにいるじゃない」
「そこ?」
ベルベットが指さす先には火の玉がいる。
『確かに僕の名前はハールーンだという事だけは覚えているけど。眠っちゃあいない』
「そうね。そこがコズミックフォージの嫌らしいところ。コズミックフォージはあなたの知恵を恐れていた。だから、一番にあなたを狙ったのだと思っているわ」
「狙った?」
ベルベットの言葉に今度は俺が問いかける。
「あくまで私の推測よ」
そう前置きしてベルベットが自分の推測を述べ始めた。
コズミックフォージの迷宮は謎に包まれている。だが、大賢者ハールーンならばすぐさま解明してしまうかもしれない。
コズミックフォージがせっかく準備した遊び場をあっさり破られてしまってはたまらないと奴が考えたとしても不思議じゃあないか。
そこでコズミックフォージは不意を打ったというわけだ。
まず最初にコズミックフォージはハールーンのいる場所を狙い、彼の肉体と魂を分離させた。他は巻き込まれただけに過ぎない。
魂だけになったハールーンは自分の名前以外の記憶を失い、あの小屋のあるエリアで時を過ごす。
最初の犠牲者たちが全てアンデットと化した後、訪問者たちがあの小屋に呼ばれ始めたというわけだ。
「しかし、1000年もとなるとさすがにハールーンの肉体は」
「そうでもないわ。だって、ハールーンの魂はそこでちゃんと動いているじゃない。肉体が死ねば魂も召される」
「だったら、ハールーンの体を探そう。彼は森に行くことができないと言っているんだ」
「そうね。だって、ハールーンの体は死者の大聖堂に封じられているのだもの」
「そうだった。そうだよな。『最初』に来たのがこのエリアだったのなら、ここにあるはずだ」
ベルベットが壊れた奇妙な像の方へすっと指を向ける。
「あれはお前が壊したじゃないか」
「そうよ。あの像はとっても硬い材質でできているのよ。だから、私が壊してあげたのよお。あなたたちの前に棺を見せるために」
「それならそうと先に言えよ。いきなりドカーンじゃ、首を落としたくなるだろ」
「何でそうなるのよ!」
「……登場の仕方に問題があったとはいえ、俺も動くものは全部敵だと思っていたからな」
「痛み分けってことで……」
「仕方ない。そう言うことにしておいてやろう。それで棺は?」
「これだから早漏は」
「斬るぞ」
両手をあげて降参のポーズを見せるベルベットにっちっと舌打ちし、バラバラになった像の方へ進む。
ふよふよとハールーンが続き、ベルベットも後からてくてくとついてくる。
像だったものの瓦礫をどけていくと、確かに棺らしきものを発見した。
石でできた四角い箱。
蓋を開けようとしたが、重くてビクともしない。
「少し離れていろ、ベルベット」
「分かったわ」
こういう時こそ、スペシャルムーブだろ。
拳を打ちあわせ口を開く。
「超筋力」
棺の蓋に手をかけふんぬと力を込める。
どーんと蓋が吹き飛び、天井に当たって凄まじい音を立てて床に突き刺さった。
「これがハールーン?」
おっと、そのまま凝視するもんじゃないな。
急ぎ首を飛ばしたワイトからローブを剥ぎ取り、中で眠るハールーンの体にかける。
「その通りだ。彼らは哀れにもアンデッドとして再び動き出した。そこに生前の意思はない」
「うん。ご名答。だけど、意思を保った人もいるの。私だけだけどね」
「前置きはいい。始まりの物語を聞かせてくれ」
「焦らない。焦っちゃだめよ。十分に触ってからじゃないと」
「いいから話せ」
「もう。長くなるわよ。途中で何か来てもあなたが対処してね」
「来たらすぐに仕留める」
くすくすと軽薄な笑い声をあげ、彼女は語り始める。始まりの物語を。
1000年前、ベルベットはそれなりに名の知れた宮廷魔術師だった。一国のお抱え魔法使いなのだから、彼女が言うより有名な魔法使いだったのかも。
彼女らは魔法の研究をしていくなかで行き詰まる。
二年ほど頑張ってみたが、成果があがらず途方に暮れたそうだ。
そこで、彼女は深淵なる大賢者「ハールーン」を頼ることにした。
といってもハールーンは秘境の奥地に住んでいると言われ、人の世には決して出て来ようとしなかった世捨て人である。
ハールーン捜索隊が結成され、探すこと一年、ついにベルベットらはハールーンのいる場所を発見した。
「ちょっと待て、ハールーンって」
「ハールーンはハールーンよ」
「どこかで聞いたことのある名だと思ったけど、おとぎ話に出てくる『全てを知る者』ってやつか」
「さあ。後の世ではどうなっているやら、私には分からないわ」
「ハールーンの言う事」という絵本があってな。俺も子供の頃に親に見せてもらったものだ。
教訓話集みたいなもんで、賢者ハールーンが子供たちに昔話を聞かせるといった内容である。
「すまん、遮って。続けてくれ」
「分かったわ」
森を超え、谷を越え、深い森に入り、ハールーンの元へ辿り着いたベルベットら。
そこで彼女らはハールーンと邂逅する。
叡智を授かり、意気揚々と帰路につこうとした時、突如空が暗転した。
そこから悪夢が始まったのだと。
ハールーンは意識を失い、動かなくなった。
食べ物は無く、徐々に衰弱していくハールーンの弟子たちとベルベットら一行。
それでも魔獣の森から食糧を得て、生き抜いていた。
しかし、病で一人倒れ、魔獣に受けた怪我が元でまた一人倒れ……倒れた者からアンデッドになって行く。
アンデッドになった者は生前の人格はなく、ただただ生きている者を襲ってくる。
脱出するにも出口がない。当時の迷宮は今でいうところの「死者の大聖堂」と魔獣の森の一部しかなかったんだと。
いや、あったかもしれないけど行き来できなかったとベルベットは言う。
「ちょっと整理させてくれ。ベルベットたちはコズミックフォージに取り込まれた。行き先はここ死者の大聖堂で、俺がいたような小屋がある場所じゃなかったってことか」
「そうね。私はあなたのいう『小屋のある場所』に入ることができないから、どうなっているのか分からないわ。危険な魔物もおらず、食べるに困らないとだけ聞こえてきた声から情報を得ただけね」
「……すげえ、嫌らしいな。コズミックフォージってやつは」
「気がついちゃった? 話を続けるわね」
「うん」
ベルベットはどうすべきか悩んだ。いずれ、寿命がつき自分もあの無残なアンデッドと化してしまう。
頼りのハールーンは眠ったまま。
このまま朽ちていくことなぞベルベットの矜持が許さない。幸い彼女には魔法の素質と時間があった。
当時の「死者の大聖堂」には元彼女らの仲間以外のアンデッドはいなかったから平和なものだったというのがベルベットの言葉だ。
そしてついに彼女は死者にして自分の意思を保つ研究を完成させた。
それは、魔法によるアンデッド化である。
ターニングリッチと言われる魔法を自分にかけ、肉体を作り変えた彼女は死者の大聖堂で唯一人、意思を持つアンデッドとして1000年を過ごす。
「私はリッチと呼ばれる存在となり、今に至るわ」
「ベルベットのことは分かった。それで眠ったままのハールーンはどうなったんだ?」
「そこにいるじゃない」
「そこ?」
ベルベットが指さす先には火の玉がいる。
『確かに僕の名前はハールーンだという事だけは覚えているけど。眠っちゃあいない』
「そうね。そこがコズミックフォージの嫌らしいところ。コズミックフォージはあなたの知恵を恐れていた。だから、一番にあなたを狙ったのだと思っているわ」
「狙った?」
ベルベットの言葉に今度は俺が問いかける。
「あくまで私の推測よ」
そう前置きしてベルベットが自分の推測を述べ始めた。
コズミックフォージの迷宮は謎に包まれている。だが、大賢者ハールーンならばすぐさま解明してしまうかもしれない。
コズミックフォージがせっかく準備した遊び場をあっさり破られてしまってはたまらないと奴が考えたとしても不思議じゃあないか。
そこでコズミックフォージは不意を打ったというわけだ。
まず最初にコズミックフォージはハールーンのいる場所を狙い、彼の肉体と魂を分離させた。他は巻き込まれただけに過ぎない。
魂だけになったハールーンは自分の名前以外の記憶を失い、あの小屋のあるエリアで時を過ごす。
最初の犠牲者たちが全てアンデットと化した後、訪問者たちがあの小屋に呼ばれ始めたというわけだ。
「しかし、1000年もとなるとさすがにハールーンの肉体は」
「そうでもないわ。だって、ハールーンの魂はそこでちゃんと動いているじゃない。肉体が死ねば魂も召される」
「だったら、ハールーンの体を探そう。彼は森に行くことができないと言っているんだ」
「そうね。だって、ハールーンの体は死者の大聖堂に封じられているのだもの」
「そうだった。そうだよな。『最初』に来たのがこのエリアだったのなら、ここにあるはずだ」
ベルベットが壊れた奇妙な像の方へすっと指を向ける。
「あれはお前が壊したじゃないか」
「そうよ。あの像はとっても硬い材質でできているのよ。だから、私が壊してあげたのよお。あなたたちの前に棺を見せるために」
「それならそうと先に言えよ。いきなりドカーンじゃ、首を落としたくなるだろ」
「何でそうなるのよ!」
「……登場の仕方に問題があったとはいえ、俺も動くものは全部敵だと思っていたからな」
「痛み分けってことで……」
「仕方ない。そう言うことにしておいてやろう。それで棺は?」
「これだから早漏は」
「斬るぞ」
両手をあげて降参のポーズを見せるベルベットにっちっと舌打ちし、バラバラになった像の方へ進む。
ふよふよとハールーンが続き、ベルベットも後からてくてくとついてくる。
像だったものの瓦礫をどけていくと、確かに棺らしきものを発見した。
石でできた四角い箱。
蓋を開けようとしたが、重くてビクともしない。
「少し離れていろ、ベルベット」
「分かったわ」
こういう時こそ、スペシャルムーブだろ。
拳を打ちあわせ口を開く。
「超筋力」
棺の蓋に手をかけふんぬと力を込める。
どーんと蓋が吹き飛び、天井に当たって凄まじい音を立てて床に突き刺さった。
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