外れスキル「トレース」が、修行をしたら壊れ性能になった~あれもこれもコピーし俺を閉じ込め高見の見物をしている奴を殴り飛ばす~

うみ

文字の大きさ
12 / 39

12.コズミックフォージ

しおりを挟む
「第一の魔にいるアンデッド全ては意思を持っていない。本能的に生きている人を襲うって思ってる?」
「その通りだ。彼らは哀れにもアンデッドとして再び動き出した。そこに生前の意思はない」
「うん。ご名答。だけど、意思を保った人もいるの。私だけだけどね」
「前置きはいい。始まりの物語を聞かせてくれ」
「焦らない。焦っちゃだめよ。十分に触ってからじゃないと」
「いいから話せ」
「もう。長くなるわよ。途中で何か来てもあなたが対処してね」
「来たらすぐに仕留める」

 くすくすと軽薄な笑い声をあげ、彼女は語り始める。始まりの物語を。
 1000年前、ベルベットはそれなりに名の知れた宮廷魔術師だった。一国のお抱え魔法使いなのだから、彼女が言うより有名な魔法使いだったのかも。
 彼女らは魔法の研究をしていくなかで行き詰まる。
 二年ほど頑張ってみたが、成果があがらず途方に暮れたそうだ。
 そこで、彼女は深淵なる大賢者「ハールーン」を頼ることにした。
 といってもハールーンは秘境の奥地に住んでいると言われ、人の世には決して出て来ようとしなかった世捨て人である。
 ハールーン捜索隊が結成され、探すこと一年、ついにベルベットらはハールーンのいる場所を発見した。
 
「ちょっと待て、ハールーンって」
「ハールーンはハールーンよ」
「どこかで聞いたことのある名だと思ったけど、おとぎ話に出てくる『全てを知る者』ってやつか」
「さあ。後の世ではどうなっているやら、私には分からないわ」

 「ハールーンの言う事」という絵本があってな。俺も子供の頃に親に見せてもらったものだ。
 教訓話集みたいなもんで、賢者ハールーンが子供たちに昔話を聞かせるといった内容である。
 
「すまん、遮って。続けてくれ」
「分かったわ」

 森を超え、谷を越え、深い森に入り、ハールーンの元へ辿り着いたベルベットら。
 そこで彼女らはハールーンと邂逅する。
 叡智を授かり、意気揚々と帰路につこうとした時、突如空が暗転した。
 そこから悪夢が始まったのだと。
 ハールーンは意識を失い、動かなくなった。
 食べ物は無く、徐々に衰弱していくハールーンの弟子たちとベルベットら一行。
 それでも魔獣の森から食糧を得て、生き抜いていた。
 しかし、病で一人倒れ、魔獣に受けた怪我が元でまた一人倒れ……倒れた者からアンデッドになって行く。
 アンデッドになった者は生前の人格はなく、ただただ生きている者を襲ってくる。
 脱出するにも出口がない。当時の迷宮は今でいうところの「死者の大聖堂」と魔獣の森の一部しかなかったんだと。
 いや、あったかもしれないけど行き来できなかったとベルベットは言う。

「ちょっと整理させてくれ。ベルベットたちはコズミックフォージに取り込まれた。行き先はここ死者の大聖堂で、俺がいたような小屋がある場所じゃなかったってことか」
「そうね。私はあなたのいう『小屋のある場所』に入ることができないから、どうなっているのか分からないわ。危険な魔物もおらず、食べるに困らないとだけ聞こえてきた声から情報を得ただけね」
「……すげえ、嫌らしいな。コズミックフォージってやつは」
「気がついちゃった? 話を続けるわね」
「うん」

 ベルベットはどうすべきか悩んだ。いずれ、寿命がつき自分もあの無残なアンデッドと化してしまう。
 頼りのハールーンは眠ったまま。
 このまま朽ちていくことなぞベルベットの矜持が許さない。幸い彼女には魔法の素質と時間があった。
 当時の「死者の大聖堂」には元彼女らの仲間以外のアンデッドはいなかったから平和なものだったというのがベルベットの言葉だ。
 そしてついに彼女は死者にして自分の意思を保つ研究を完成させた。
 それは、魔法によるアンデッド化である。
 ターニングリッチと言われる魔法を自分にかけ、肉体を作り変えた彼女は死者の大聖堂で唯一人、意思を持つアンデッドとして1000年を過ごす。
 
「私はリッチと呼ばれる存在となり、今に至るわ」
「ベルベットのことは分かった。それで眠ったままのハールーンはどうなったんだ?」
「そこにいるじゃない」
「そこ?」

 ベルベットが指さす先には火の玉がいる。
 
『確かに僕の名前はハールーンだという事だけは覚えているけど。眠っちゃあいない』
「そうね。そこがコズミックフォージの嫌らしいところ。コズミックフォージはあなたの知恵を恐れていた。だから、一番にあなたを狙ったのだと思っているわ」
「狙った?」

 ベルベットの言葉に今度は俺が問いかける。
 
「あくまで私の推測よ」

 そう前置きしてベルベットが自分の推測を述べ始めた。
 コズミックフォージの迷宮は謎に包まれている。だが、大賢者ハールーンならばすぐさま解明してしまうかもしれない。
 コズミックフォージがせっかく準備した遊び場をあっさり破られてしまってはたまらないと奴が考えたとしても不思議じゃあないか。
 そこでコズミックフォージは不意を打ったというわけだ。
 まず最初にコズミックフォージはハールーンのいる場所を狙い、彼の肉体と魂を分離させた。他は巻き込まれただけに過ぎない。
 魂だけになったハールーンは自分の名前以外の記憶を失い、あの小屋のあるエリアで時を過ごす。
 最初の犠牲者たちが全てアンデットと化した後、訪問者たちがあの小屋に呼ばれ始めたというわけだ。
 
「しかし、1000年もとなるとさすがにハールーンの肉体は」
「そうでもないわ。だって、ハールーンの魂はそこでちゃんと動いているじゃない。肉体が死ねば魂も召される」
「だったら、ハールーンの体を探そう。彼は森に行くことができないと言っているんだ」
「そうね。だって、ハールーンの体は死者の大聖堂に封じられているのだもの」
「そうだった。そうだよな。『最初』に来たのがこのエリアだったのなら、ここにあるはずだ」

 ベルベットが壊れた奇妙な像の方へすっと指を向ける。

「あれはお前が壊したじゃないか」
「そうよ。あの像はとっても硬い材質でできているのよ。だから、私が壊してあげたのよお。あなたたちの前に棺を見せるために」
「それならそうと先に言えよ。いきなりドカーンじゃ、首を落としたくなるだろ」
「何でそうなるのよ!」
「……登場の仕方に問題があったとはいえ、俺も動くものは全部敵だと思っていたからな」
「痛み分けってことで……」
「仕方ない。そう言うことにしておいてやろう。それで棺は?」
「これだから早漏は」
「斬るぞ」

 両手をあげて降参のポーズを見せるベルベットにっちっと舌打ちし、バラバラになった像の方へ進む。
 ふよふよとハールーンが続き、ベルベットも後からてくてくとついてくる。
 像だったものの瓦礫をどけていくと、確かに棺らしきものを発見した。
 石でできた四角い箱。
 蓋を開けようとしたが、重くてビクともしない。
 
「少し離れていろ、ベルベット」
「分かったわ」

 こういう時こそ、スペシャルムーブだろ。
 拳を打ちあわせ口を開く。
 
超筋力力こそパワー

 棺の蓋に手をかけふんぬと力を込める。
 どーんと蓋が吹き飛び、天井に当たって凄まじい音を立てて床に突き刺さった。
 
「これがハールーン?」
 
 おっと、そのまま凝視するもんじゃないな。
 急ぎ首を飛ばしたワイトからローブを剥ぎ取り、中で眠るハールーンの体にかける。
しおりを挟む
感想 21

あなたにおすすめの小説

A級パーティから追放された俺はギルド職員になって安定した生活を手に入れる

国光
ファンタジー
A級パーティの裏方として全てを支えてきたリオン・アルディス。しかし、リーダーで幼馴染のカイルに「お荷物」として追放されてしまう。失意の中で再会したギルド受付嬢・エリナ・ランフォードに導かれ、リオンはギルド職員として新たな道を歩み始める。 持ち前の数字感覚と管理能力で次々と問題を解決し、ギルド内で頭角を現していくリオン。一方、彼を失った元パーティは内部崩壊の道を辿っていく――。 これは、支えることに誇りを持った男が、自らの価値を証明し、安定した未来を掴み取る物語。

最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。 「もうオマエはいらん」 勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。 ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。 転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。 勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

幼馴染パーティーから追放された冒険者~所持していたユニークスキルは限界突破でした~レベル1から始まる成り上がりストーリー

すもも太郎
ファンタジー
 この世界は個人ごとにレベルの上限が決まっていて、それが本人の資質として死ぬまで変えられません。(伝説の勇者でレベル65)  主人公テイジンは能力を封印されて生まれた。それはレベルキャップ1という特大のハンデだったが、それ故に幼馴染パーティーとの冒険によって莫大な経験値を積み上げる事が出来ていた。(ギャップボーナス最大化状態)  しかし、レベルは1から一切上がらないまま、免許の更新期限が過ぎてギルドを首になり絶望する。  命を投げ出す決意で訪れた死と再生の洞窟でテイジンの封印が解け、ユニークスキル”限界突破”を手にする。その後、自分の力を知らず知らずに発揮していき、周囲を驚かせながらも一人旅をつづけようとするが‥‥ ※1話1500文字くらいで書いております

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

追放されたS級清掃員、配信切り忘れで伝説になる「ただのゴミ掃除」と言って神話級ドラゴンを消し飛ばしていたら世界中がパニックになってますが?

あとりえむ
ファンタジー
【5話ごとのサクッと読める構成です!】全60話 完結しました。読者の皆様ありがとうございます! 世界を救ったのは、聖剣ではなく「洗剤」でした。 「君のやり方は古いんだよ」 不当な理由でS級クランを追放された、ベテラン清掃員・灰坂ソウジ(38歳)。 職を失った彼だったが、実は彼にはとんでもない秘密があった。 呪いのゴーグルのせいで、あらゆる怪物が「汚れ」にしか見えないのだ。 ・神話級ドラゴン  ⇒ 換気扇の頑固な油汚れ(洗剤で瞬殺) ・深淵の邪神  ⇒ トイレの配管詰まり(スッポンで解決) ・次元の裂け目  ⇒ 天井の雨漏りシミ(洗濯機で丸洗い) 「あー、ここ汚れてるな。チャチャッと落としておくか」 本人はただ業務として掃除をしているだけなのに、その姿は世界中で配信され、人類最強の英雄として崇められていく! 可愛い元ダンジョン・コアや、潔癖症の聖女も入社し、会社は今日も大忙し。 一方、彼を追放した元クランは、汚れ(モンスター)に埋もれて破滅寸前で……? 「地球が汚れてる? じゃあ、一回丸洗いしますか」 最強の清掃員が、モップ片手に世界をピカピカにする、痛快・勘違い無双ファンタジー! 【免責事項】 この物語はフィクションです。実在の人物・団体とは関係ありません。

最上級のパーティで最底辺の扱いを受けていたDランク錬金術師は新パーティで成り上がるようです(完)

みかん畑
ファンタジー
最上級のパーティで『荷物持ち』と嘲笑されていた僕は、パーティからクビを宣告されて抜けることにした。 在籍中は僕が色々肩代わりしてたけど、僕を荷物持ち扱いするくらい優秀な仲間たちなので、抜けても問題はないと思ってます。

追放された回復術師は、なんでも『回復』できて万能でした

新緑あらた
ファンタジー
死闘の末、強敵の討伐クエストを達成した回復術師ヨシュアを待っていたのは、称賛の言葉ではなく、解雇通告だった。 「ヨシュア……てめえはクビだ」 ポーションを湯水のように使える最高位冒険者になった彼らは、今まで散々ポーションの代用品としてヨシュアを利用してきたのに、回復術師は不要だと考えて切り捨てることにしたのだ。 「ポーションの下位互換」とまで罵られて気落ちしていたヨシュアだったが、ブラックな労働をしいるあのパーティーから解放されて喜んでいる自分に気づく。 危機から救った辺境の地方領主の娘との出会いをきっかけに、彼の世界はどんどん広がっていく……。 一方、Sランク冒険者パーティーはクエストの未達成でどんどんランクを落としていく。 彼らは知らなかったのだ、ヨシュアが彼らの傷だけでなく、状態異常や武器の破損など、なんでも『回復』していたことを……。

隠して忘れていたギフト『ステータスカスタム』で能力を魔改造 〜自由自在にカスタマイズしたら有り得ないほど最強になった俺〜

桜井正宗@オートスキル第1巻発売中
ファンタジー
 能力(スキル)を隠して、その事を忘れていた帝国出身の錬金術師スローンは、無能扱いで大手ギルド『クレセントムーン』を追放された。追放後、隠していた能力を思い出しスキルを習得すると『ステータスカスタム』が発現する。これは、自身や相手のステータスを魔改造【カスタム】できる最強の能力だった。  スローンは、偶然出会った『大聖女フィラ』と共にステータスをいじりまくって最強のステータスを手に入れる。その後、超高難易度のクエストを難なくクリア、無双しまくっていく。その噂が広がると元ギルドから戻って来いと頭を下げられるが、もう遅い。  真の仲間と共にスローンは、各地で暴れ回る。究極のスローライフを手に入れる為に。

処理中です...