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26.アンデッドはゴミだ
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「これってレアアイテムですよね」
コレットがおずおずと地面に転がった球体を拾い上げる。
「お金になる奴だな」
確か牙の五倍くらいの価格で売れた気がするが、換金できるからユーカリの次くらいには役に立つアイテムだという認識だ。
といっても牙もお金になるから、牙も拾うがね。
「コ、コアラさん。レアアイテムの意味って分かってます?」
「もちろん。ユーカリの代わりに出てくる外れアイテムだ」
「……」
何故か絶句するコレット。
当然じゃないか、ユーカリにはお金に変えられない価値がある。
「そもそも、俺がモンスターを倒しているのは、レアアイテムとやらを取るためじゃあないからな」
「え?」
「お金にはなるし、アイテムボックスに収納すりゃ邪魔にもならない。だから拾っているに過ぎないんだ」
「それだけ強いのに修行にストイックなんですね……全てを修行にって少しカッコいいかもしれないです。いえ、コアラさん自身は可愛らしいですけど、そうじゃなくて……」
あたふたとブツブツ呟いているコレットを置いておいて、俺は黙々とユーカリの葉回収作業を続ける。
一枚一枚、丹精込めて拾い上げないとアイテムボックスに放り込めないからな。
ガサガサ、カサカサ。
鼻歌混じりにユーカリの葉を集めて行く。ん、なんだか少し盛り上がった部分があるな。
ユーカリの葉を拾いあげてみると、中からまたしても目玉を発見する。
「コレット」
「……は、はい」
未だブツブツ呟いていたコレットの名を呼ぶと、ようやく意識がこっちに戻ってきた。
「もう一個あった」
ポイっとコレットの足元に転がすと、彼女はびくうっと肩を震わせしゃがみ込む。
彼女はコロコロと転がり止まった球体に対し目を見開き、こちらに顔を向けた。
「え、ええええ! 一度にレアアイテム二個なんて聞いたことがありません」
「俺も気になっていたんだ。何等かのスキルによってドロップアイテムの数が増えているんじゃないかってさ」
「そうなんですか。わたしにコアラさんが習得しているスキルを見させていただいても良いでしょうか?」
「え、見れるの?」
「コアラさんもわたしのスキル一覧を閲覧できますよね? わたしもコアラさんのスキル一覧を閲覧できるんです」
「それは分かるが、スキル名だけじゃあ何も分からないよな?」
「ですです。ですので、スキルを一つ一つコーデックスに聞いていいかなとコアラさんにお聞きしているわけです」
「お、おおおお。そいつは素晴らしい。是非是非見てくれ」
「はい! わたしもとても興味があります!」
こいつはすげえ。コレットのギフトの手を借りれば、一切情報の無かったスキルの効果が分かるかもしれん。
「そこの目玉っぽい球体と牙も回収してから、樹上で」
「はい!」
おおっし、ワクワクして来たあ。
◇◇◇
「スキルを見させてくれるんじゃあなかったんですか……」
「仕方あるまい。ユー……モンスターがいたんだから。起きて来て襲われたらたまらんだろ」
「ぐっすりとお休みのようですし、ここはそっと立ち去る方が……」
「そんなわけにはいかねえだろ。仕留めといたらリポップするまで安全だ」
「……はい……」
ベノムウルフの落としたアイテムを回収後、安全な樹上でコレットにスキルを見てもらうつもりだった。
だけど、敵の気配を察知してしまったのだよ。
幸い熊はぐっすりと寝ていたが、発見したからにはちゃんと仕留めておかないとな。ユーカリ4枚だし。今なら8枚は出すかもしれん。
「ただの熊だ」
「アーマーベアですよね……レベル52です」
「頭にある兜みたいなのが厄介だが、眉間をつけば問題ない」
「……」
「サクッとやってくるからしばし待っ……む」
「どうしました? コアラさん」
「奴らか。まだ残ってやがったんだな」
ふよふよ浮かぶ丸い形。闇に潜んでいるつもりだろうが、このコアラの目は誤魔化せんぞ。
薄明薄暮性を舐めるなよ。
「一体何が……」
「敵だ。見えるか、あの辺りに浮かんでいる」
「何かの果実でしょうか、で、でも浮かんで……」
「コーデックスに聞いてみろ。すぐに分かる」
「ジャックオーランタンですか。コアラさんくらいの大きさなのに、アーマーベアと同じくらいの力を持っています」
「一体ならいいんだが、奴らは……集まる」
どうする?
兜熊を仕留めた後、逃げるかジャックオーランタンを返す刀で葬るか。
しかし、兜熊を倒した直後、俺は無防備になる。
ユーカリは惜しいが……。
「ど、どうしましょう?」
「仕方ない。様子見だ」
ジャックオーランタンはエルダートレントから産まれる(どこかの脳筋女子情報)。
元を絶ったはずだが、まだ生き残りがいたってことか。
俺と脳筋と犬は本体を急襲したから、生き残りがいたとしても不思議じゃあない。ジャックオーランタンはエルダートレントの手足の代わりとなり、広範囲に散らばっていたからな。
指示系統を失ったジャックオーランタンがどんな動きをするのか見極めないと。
以前のようにわらわら来るなら脅威だからな。戦いは数だよ兄貴……もしゃ。
「コアラさん、こんな時にお食事なんて」
「もしゃもしゃ。ボーっと待っていたら食べたくなるだろ。もしゃ」
「は、鼻がつーんとします……」
「もしゃもしゃ。こんなに食欲をそそる香りなんて他にないだろ」
恐怖感と緊張感から俺を後ろから抱っこしようとしたコレットが、思いっきり眉根を寄せている。
黙って見ておくべしだぞ。今は。もしゃ……。
ジャックオーランタンは兜熊もといアーマーベアに引き寄せられるようにふよふよとにじり寄り、顔面積の半分以上ある大きな口を更に開き――。
アーマーベアのお尻に噛みついた。
当然ながら、物凄い悲鳴をあげ起き上がるアーマーベア。
寝込みに噛みつかれて怒り心頭なアーマーベアはその場で立ち上がる。
二足で立ち上がったアーマーベアは、両腕を思いっきり振り回すと共に自らの体を回転させた。
ジャックオーランタンを振り落とそうってわけだな。
遠心力で振り回されたジャックオーランタンへ止めとばかりに、アーマーベアの右腕がうなりをあげて襲い掛かる。
器用に当てるなあ。アーマーベアと真昼間に格闘したら、かなりヤバそうだ。
地面に転がったジャックオーランタンへアーマーベアが今度は左腕を振るう。
まともにアーマーベアの張り手を喰らったジャックオーランタンは大木に叩きつけられた。
「そろそろだ。俺も出る」
コレットにそう言い残し、素早く目的の枝に乗り移る。
どうだ?
ジャックオーランタンは後ろからひしゃげ、地面に転がった後よろよろと再び浮かぶ。
このまま行くとアーマーベアの勝ちで確定だが、ジャックオーランタンのお仲間は来るか、来ないか。
一方でアーマーベアは更なる敵への警戒など無かったようで、ジャックオーランタンへ右、左と張り手をぶちかます。
左の張り手を喰らった時、ジャックオーランタンは粉々に砕け散った。
そのまま砂と……化さない。
砂ではなく黒い煙と言えばいいのか、ススが大量に混じった時に出るそんな感じの濁った黒っぽい煙だ。
そいつが、アーマーベアの顔に纏わりつく。
嫌な予感がした俺は、枝から飛び降りる!
勢いをつけたまま、槍をアイテムボックスから出し、アーマーベアの眉間に突き刺した。
――ドオオン。
急所を一撃で貫かれ倒れ伏すアーマーベアとそれに纏わりついた黒い煙。
砂と化していくアーマーベアと共に黒い煙も消えてしまった。
後に残ったのはユーカリの葉7枚だけだ。
コレットがおずおずと地面に転がった球体を拾い上げる。
「お金になる奴だな」
確か牙の五倍くらいの価格で売れた気がするが、換金できるからユーカリの次くらいには役に立つアイテムだという認識だ。
といっても牙もお金になるから、牙も拾うがね。
「コ、コアラさん。レアアイテムの意味って分かってます?」
「もちろん。ユーカリの代わりに出てくる外れアイテムだ」
「……」
何故か絶句するコレット。
当然じゃないか、ユーカリにはお金に変えられない価値がある。
「そもそも、俺がモンスターを倒しているのは、レアアイテムとやらを取るためじゃあないからな」
「え?」
「お金にはなるし、アイテムボックスに収納すりゃ邪魔にもならない。だから拾っているに過ぎないんだ」
「それだけ強いのに修行にストイックなんですね……全てを修行にって少しカッコいいかもしれないです。いえ、コアラさん自身は可愛らしいですけど、そうじゃなくて……」
あたふたとブツブツ呟いているコレットを置いておいて、俺は黙々とユーカリの葉回収作業を続ける。
一枚一枚、丹精込めて拾い上げないとアイテムボックスに放り込めないからな。
ガサガサ、カサカサ。
鼻歌混じりにユーカリの葉を集めて行く。ん、なんだか少し盛り上がった部分があるな。
ユーカリの葉を拾いあげてみると、中からまたしても目玉を発見する。
「コレット」
「……は、はい」
未だブツブツ呟いていたコレットの名を呼ぶと、ようやく意識がこっちに戻ってきた。
「もう一個あった」
ポイっとコレットの足元に転がすと、彼女はびくうっと肩を震わせしゃがみ込む。
彼女はコロコロと転がり止まった球体に対し目を見開き、こちらに顔を向けた。
「え、ええええ! 一度にレアアイテム二個なんて聞いたことがありません」
「俺も気になっていたんだ。何等かのスキルによってドロップアイテムの数が増えているんじゃないかってさ」
「そうなんですか。わたしにコアラさんが習得しているスキルを見させていただいても良いでしょうか?」
「え、見れるの?」
「コアラさんもわたしのスキル一覧を閲覧できますよね? わたしもコアラさんのスキル一覧を閲覧できるんです」
「それは分かるが、スキル名だけじゃあ何も分からないよな?」
「ですです。ですので、スキルを一つ一つコーデックスに聞いていいかなとコアラさんにお聞きしているわけです」
「お、おおおお。そいつは素晴らしい。是非是非見てくれ」
「はい! わたしもとても興味があります!」
こいつはすげえ。コレットのギフトの手を借りれば、一切情報の無かったスキルの効果が分かるかもしれん。
「そこの目玉っぽい球体と牙も回収してから、樹上で」
「はい!」
おおっし、ワクワクして来たあ。
◇◇◇
「スキルを見させてくれるんじゃあなかったんですか……」
「仕方あるまい。ユー……モンスターがいたんだから。起きて来て襲われたらたまらんだろ」
「ぐっすりとお休みのようですし、ここはそっと立ち去る方が……」
「そんなわけにはいかねえだろ。仕留めといたらリポップするまで安全だ」
「……はい……」
ベノムウルフの落としたアイテムを回収後、安全な樹上でコレットにスキルを見てもらうつもりだった。
だけど、敵の気配を察知してしまったのだよ。
幸い熊はぐっすりと寝ていたが、発見したからにはちゃんと仕留めておかないとな。ユーカリ4枚だし。今なら8枚は出すかもしれん。
「ただの熊だ」
「アーマーベアですよね……レベル52です」
「頭にある兜みたいなのが厄介だが、眉間をつけば問題ない」
「……」
「サクッとやってくるからしばし待っ……む」
「どうしました? コアラさん」
「奴らか。まだ残ってやがったんだな」
ふよふよ浮かぶ丸い形。闇に潜んでいるつもりだろうが、このコアラの目は誤魔化せんぞ。
薄明薄暮性を舐めるなよ。
「一体何が……」
「敵だ。見えるか、あの辺りに浮かんでいる」
「何かの果実でしょうか、で、でも浮かんで……」
「コーデックスに聞いてみろ。すぐに分かる」
「ジャックオーランタンですか。コアラさんくらいの大きさなのに、アーマーベアと同じくらいの力を持っています」
「一体ならいいんだが、奴らは……集まる」
どうする?
兜熊を仕留めた後、逃げるかジャックオーランタンを返す刀で葬るか。
しかし、兜熊を倒した直後、俺は無防備になる。
ユーカリは惜しいが……。
「ど、どうしましょう?」
「仕方ない。様子見だ」
ジャックオーランタンはエルダートレントから産まれる(どこかの脳筋女子情報)。
元を絶ったはずだが、まだ生き残りがいたってことか。
俺と脳筋と犬は本体を急襲したから、生き残りがいたとしても不思議じゃあない。ジャックオーランタンはエルダートレントの手足の代わりとなり、広範囲に散らばっていたからな。
指示系統を失ったジャックオーランタンがどんな動きをするのか見極めないと。
以前のようにわらわら来るなら脅威だからな。戦いは数だよ兄貴……もしゃ。
「コアラさん、こんな時にお食事なんて」
「もしゃもしゃ。ボーっと待っていたら食べたくなるだろ。もしゃ」
「は、鼻がつーんとします……」
「もしゃもしゃ。こんなに食欲をそそる香りなんて他にないだろ」
恐怖感と緊張感から俺を後ろから抱っこしようとしたコレットが、思いっきり眉根を寄せている。
黙って見ておくべしだぞ。今は。もしゃ……。
ジャックオーランタンは兜熊もといアーマーベアに引き寄せられるようにふよふよとにじり寄り、顔面積の半分以上ある大きな口を更に開き――。
アーマーベアのお尻に噛みついた。
当然ながら、物凄い悲鳴をあげ起き上がるアーマーベア。
寝込みに噛みつかれて怒り心頭なアーマーベアはその場で立ち上がる。
二足で立ち上がったアーマーベアは、両腕を思いっきり振り回すと共に自らの体を回転させた。
ジャックオーランタンを振り落とそうってわけだな。
遠心力で振り回されたジャックオーランタンへ止めとばかりに、アーマーベアの右腕がうなりをあげて襲い掛かる。
器用に当てるなあ。アーマーベアと真昼間に格闘したら、かなりヤバそうだ。
地面に転がったジャックオーランタンへアーマーベアが今度は左腕を振るう。
まともにアーマーベアの張り手を喰らったジャックオーランタンは大木に叩きつけられた。
「そろそろだ。俺も出る」
コレットにそう言い残し、素早く目的の枝に乗り移る。
どうだ?
ジャックオーランタンは後ろからひしゃげ、地面に転がった後よろよろと再び浮かぶ。
このまま行くとアーマーベアの勝ちで確定だが、ジャックオーランタンのお仲間は来るか、来ないか。
一方でアーマーベアは更なる敵への警戒など無かったようで、ジャックオーランタンへ右、左と張り手をぶちかます。
左の張り手を喰らった時、ジャックオーランタンは粉々に砕け散った。
そのまま砂と……化さない。
砂ではなく黒い煙と言えばいいのか、ススが大量に混じった時に出るそんな感じの濁った黒っぽい煙だ。
そいつが、アーマーベアの顔に纏わりつく。
嫌な予感がした俺は、枝から飛び降りる!
勢いをつけたまま、槍をアイテムボックスから出し、アーマーベアの眉間に突き刺した。
――ドオオン。
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