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33.テイムスキルとは?
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弱点は胸の中央か……なかなか狙い難い位置ではあるが、背中から貫いてもいいってことだな。
「あのワイトはレベル65です」
「レベルより、飛び道具を使ってくるかどうかは分かるか?」
「ワイトなので、もし生前に魔法が使えたとしても今は使えなくなっているはずです。リッチやバンパイアなら別ですが……」
飛び道具は無しってことね。
後半、聞きたくない情報が混じっていたな。でも、今は聞かなかったことにしようじゃないか。うん。
「じゃあ、コレットの矢で気を引いてグサッといくか」
「分かりました!」
コレットがギリギリと弦を引き絞り、矢を放つ。
真っ直ぐワイトの頭に向かって飛んで行った矢であるが、奴は頭を逸らしひょいっと矢を躱してしまった。
コレットの矢はレベルがあがったことにより速度がかなり増している。それを躱すとは思った以上に、こいつの敏捷性が高いことを意味する。
奇襲するにしても、奴にさとられないようにしなきゃ……え?
ゴキ――という鈍い音が俺の耳に届く。
なんと、ぼーっとしているだけだと思っていたパンダが華麗なジャンプから右腕を横に振るっていたのだ!
そいつがワイトの頭にクリーンヒットし、ワイトの首が真横に折れた。
真後ろから襲い掛かるとはやるじゃあないか、パンダ。
しかし、相手はアンデッド。
首を折ったからといって動きが止まらない。
や、やべえ。
とっさに枝から勢いをつけて飛び降りる。
パンダの方へ振り向いたワイトが腕を鞭のようにしならせ、パンダを狙う。
だが、俺の方が早い!
パンダの方へ振り向いたことで、俺には背を向ける形になってしまったようだな。
その背中に俺の槍が突き刺さる。
これが致命傷となり、ワイトはサラサラと闇と化していった。
「パンダ。アンデッドはタフだ。気をつけろよ」
『パンダは笹が食べたいようです』
「……」
こ、こいつうう。
人が心配して駆けつけたってのに。
もしゃ……一仕事をしたらユーカリが食べたくなる。
モンスターを攻撃し打ち倒すのって体力だけじゃあなく、精神的にも疲れるもんなんだよな。
だからこそ、清涼剤としてユーカリの葉が必要だ。腹を満たすだけじゃあなく、気分転換にも使えるユーカリはまさに万能と言って良いだろう。
『パンダは笹が食べたいようです』
「分かったって」
アイテムボックスから笹を数枚取り出し、ヒラヒラと地面に落とす。
地面に落ちる前にパンダが素早く回収した。
口をあんぐりと開けて。
「コアラさんとパンダさんが揃って食べていて何だか癒されます」
「もしゃ……失礼な。こんな食いしん坊と同じにしないでくれ」
「えへへ」
樹上から降りて来たコレットがそんな失礼なことをのたまった。
しかし彼女は微笑ましそうに顔をほころばすばかり。
「少し早いが今日はもう休もうか」
「はい!」
いろいろ調べたいことが増えてきたし、考えをまとめるためにも少し長めに休息する時間を取りたい。
――なんて思っていました。
最近よく寝床にしているところがありまして、どこかって言いますと小川のほとりです。
水場があると何かと料理やらで便利なんだよな。
小川に到着し、コレットが水を沸かしてくれていたらパンダが小川にざぶーんとしてさ。
そのまま、水浴びとなったんだよ。
今は、キャンプファイアーの傍で暖を取っているってわけだ。
「こら、俺の前でブルブルってするんじゃねえ」
パンダから水しぶきが飛んで来る。
せっかく乾かしているのに濡れるじゃないか。
『パンダは笹が食べたいようです』
……。
無言で笹をパンダの口に突っ込む。
「はふ……」
一方でコレットは出来立てのシチューに口をつけている。
何のかんので水浴びは気持ちよかったし、こうして乾くまでの間にゆっくりとコレットと話すことはできるか。
「コレット。俺の持つテイムスキルについて、コーデックスに聞いてみてくれないか?」
「はい。お待ちを」
食べる手をとめ、両目をつぶるコレット。
あ、食べてからにしたらよかったな……すまん。
心の中で「ごめんね」をしている間にコレットが目を開く。
「テイムスキル。なかなか面白いスキルですね」
「へえ。どんな感じなんだ? あ、食べながらで」
再びお椀から手を離そうとしたコレットに待ったをかける。
「テイムスキルにはスロットって仕組みがありまして――」
コレットの言葉をまとめると、テイムスキルは一筋縄ではいかないスキルだと分かった。
テイムスキルにはスロットってもんがあって、従えることのできるペットの数に制限がある。
熟練度があがると、スロットが増えて行くのだそうだが、最初のスロット数は一しかない。
スロット数が増えると扱えるペットの数も増えるって仕組みだ。だけど、中には一体で2スロット以上必要な生物もいるって話だから複雑だ。
今のところ、スロットについては考えなくていい。パンダがいるからな。
テイムした生物は俺のペットとなるわけだが、自分にある程度懐くもののペットの動きを制限できるわけじゃあない。
ここが面倒な点で、主人はあくまでペットに「お願い」する形であって、命令や強制ができないんだ。
熟練度が上がると、お願いを聞いてくれることも多くなるそうだが……パンダだしなあ。余り変わらない気がする。
一方で悪いことばかりでもない。
テイムスキルはペットを従えている限り、常に熟練度が上昇して行く。
「要はペットと仲良くするスキルってわけだな。たまにお願いを聞いてくれたらラッキーみたいな?」
「いえ、テイムスキルの真価はそこじゃあありません」
「ん? 他にも効果があるの?」
「はい。知ってらっしゃると思って……省いていました。テイム生物とマスターは熟練度に応じて能力が補正されます」
「な、なんだと……」
一番大事なことの説明が抜けているとは……あ、そうか。コレットにとっては「誰でも知っていること」だったんだな。
冒険者達にテイマーが羨まれる最大の理由は何もテイム生物を連れているだけじゃあない。もちろん、ペットと仲良く戦うってことに憧れている人もいるだろうけど。
テイムスキルの本質は、主人とペットの相互強化にある。
熟練度に応じて補正値が変わるが、主人とペットが強くなればなるほど、お互いに相乗効果をもたらすのだそうだ。
つまり、パンダが何の役にも立たなかったとしても、パンダの能力に応じて俺のステータスが強化される。
「すげえな……テイムスキル」
「はい!」
ステータスにはレベルしか表示されないから、自分の力がどれだけ強くなったのかは分からない。
だけど、少しでも自分の能力が補正されるとなれば嬉しいものだ。
そう思うと、このパンダだって可愛く見えて――。
『パンダは笹が食べたいようです』
来るわけねえだろおおおお。
笹をばら撒く。
するとパンダは普段見せない機敏な動きで、器用に笹をキャッチしていく……口で。
「可愛い」
パンダの様子を見たコレットの口元が綻ぶ。
「全く……もしゃ」
仕方ねえ。ユーカリの葉のついでに笹もちゃんとストックするか……。
あくまでついでだがな。
今日だけで結構な量の笹がアイテムボックスに入ったから、多少は大丈夫だけど……この食欲だ。すぐに在庫が底をつく。
「コアラさんもユーカリの葉を食べているんですね」
「もしゃもしゃ。ユーカリ茶も飲んでいるぞ」
「そうでした」
「あ、もう一つある。こっちは相談なんだけど」
「何でしょうか!」
身を乗り出さなくても。
そんな大した話じゃあない。いや、大した話なのかもしれない。
「あのワイトはレベル65です」
「レベルより、飛び道具を使ってくるかどうかは分かるか?」
「ワイトなので、もし生前に魔法が使えたとしても今は使えなくなっているはずです。リッチやバンパイアなら別ですが……」
飛び道具は無しってことね。
後半、聞きたくない情報が混じっていたな。でも、今は聞かなかったことにしようじゃないか。うん。
「じゃあ、コレットの矢で気を引いてグサッといくか」
「分かりました!」
コレットがギリギリと弦を引き絞り、矢を放つ。
真っ直ぐワイトの頭に向かって飛んで行った矢であるが、奴は頭を逸らしひょいっと矢を躱してしまった。
コレットの矢はレベルがあがったことにより速度がかなり増している。それを躱すとは思った以上に、こいつの敏捷性が高いことを意味する。
奇襲するにしても、奴にさとられないようにしなきゃ……え?
ゴキ――という鈍い音が俺の耳に届く。
なんと、ぼーっとしているだけだと思っていたパンダが華麗なジャンプから右腕を横に振るっていたのだ!
そいつがワイトの頭にクリーンヒットし、ワイトの首が真横に折れた。
真後ろから襲い掛かるとはやるじゃあないか、パンダ。
しかし、相手はアンデッド。
首を折ったからといって動きが止まらない。
や、やべえ。
とっさに枝から勢いをつけて飛び降りる。
パンダの方へ振り向いたワイトが腕を鞭のようにしならせ、パンダを狙う。
だが、俺の方が早い!
パンダの方へ振り向いたことで、俺には背を向ける形になってしまったようだな。
その背中に俺の槍が突き刺さる。
これが致命傷となり、ワイトはサラサラと闇と化していった。
「パンダ。アンデッドはタフだ。気をつけろよ」
『パンダは笹が食べたいようです』
「……」
こ、こいつうう。
人が心配して駆けつけたってのに。
もしゃ……一仕事をしたらユーカリが食べたくなる。
モンスターを攻撃し打ち倒すのって体力だけじゃあなく、精神的にも疲れるもんなんだよな。
だからこそ、清涼剤としてユーカリの葉が必要だ。腹を満たすだけじゃあなく、気分転換にも使えるユーカリはまさに万能と言って良いだろう。
『パンダは笹が食べたいようです』
「分かったって」
アイテムボックスから笹を数枚取り出し、ヒラヒラと地面に落とす。
地面に落ちる前にパンダが素早く回収した。
口をあんぐりと開けて。
「コアラさんとパンダさんが揃って食べていて何だか癒されます」
「もしゃ……失礼な。こんな食いしん坊と同じにしないでくれ」
「えへへ」
樹上から降りて来たコレットがそんな失礼なことをのたまった。
しかし彼女は微笑ましそうに顔をほころばすばかり。
「少し早いが今日はもう休もうか」
「はい!」
いろいろ調べたいことが増えてきたし、考えをまとめるためにも少し長めに休息する時間を取りたい。
――なんて思っていました。
最近よく寝床にしているところがありまして、どこかって言いますと小川のほとりです。
水場があると何かと料理やらで便利なんだよな。
小川に到着し、コレットが水を沸かしてくれていたらパンダが小川にざぶーんとしてさ。
そのまま、水浴びとなったんだよ。
今は、キャンプファイアーの傍で暖を取っているってわけだ。
「こら、俺の前でブルブルってするんじゃねえ」
パンダから水しぶきが飛んで来る。
せっかく乾かしているのに濡れるじゃないか。
『パンダは笹が食べたいようです』
……。
無言で笹をパンダの口に突っ込む。
「はふ……」
一方でコレットは出来立てのシチューに口をつけている。
何のかんので水浴びは気持ちよかったし、こうして乾くまでの間にゆっくりとコレットと話すことはできるか。
「コレット。俺の持つテイムスキルについて、コーデックスに聞いてみてくれないか?」
「はい。お待ちを」
食べる手をとめ、両目をつぶるコレット。
あ、食べてからにしたらよかったな……すまん。
心の中で「ごめんね」をしている間にコレットが目を開く。
「テイムスキル。なかなか面白いスキルですね」
「へえ。どんな感じなんだ? あ、食べながらで」
再びお椀から手を離そうとしたコレットに待ったをかける。
「テイムスキルにはスロットって仕組みがありまして――」
コレットの言葉をまとめると、テイムスキルは一筋縄ではいかないスキルだと分かった。
テイムスキルにはスロットってもんがあって、従えることのできるペットの数に制限がある。
熟練度があがると、スロットが増えて行くのだそうだが、最初のスロット数は一しかない。
スロット数が増えると扱えるペットの数も増えるって仕組みだ。だけど、中には一体で2スロット以上必要な生物もいるって話だから複雑だ。
今のところ、スロットについては考えなくていい。パンダがいるからな。
テイムした生物は俺のペットとなるわけだが、自分にある程度懐くもののペットの動きを制限できるわけじゃあない。
ここが面倒な点で、主人はあくまでペットに「お願い」する形であって、命令や強制ができないんだ。
熟練度が上がると、お願いを聞いてくれることも多くなるそうだが……パンダだしなあ。余り変わらない気がする。
一方で悪いことばかりでもない。
テイムスキルはペットを従えている限り、常に熟練度が上昇して行く。
「要はペットと仲良くするスキルってわけだな。たまにお願いを聞いてくれたらラッキーみたいな?」
「いえ、テイムスキルの真価はそこじゃあありません」
「ん? 他にも効果があるの?」
「はい。知ってらっしゃると思って……省いていました。テイム生物とマスターは熟練度に応じて能力が補正されます」
「な、なんだと……」
一番大事なことの説明が抜けているとは……あ、そうか。コレットにとっては「誰でも知っていること」だったんだな。
冒険者達にテイマーが羨まれる最大の理由は何もテイム生物を連れているだけじゃあない。もちろん、ペットと仲良く戦うってことに憧れている人もいるだろうけど。
テイムスキルの本質は、主人とペットの相互強化にある。
熟練度に応じて補正値が変わるが、主人とペットが強くなればなるほど、お互いに相乗効果をもたらすのだそうだ。
つまり、パンダが何の役にも立たなかったとしても、パンダの能力に応じて俺のステータスが強化される。
「すげえな……テイムスキル」
「はい!」
ステータスにはレベルしか表示されないから、自分の力がどれだけ強くなったのかは分からない。
だけど、少しでも自分の能力が補正されるとなれば嬉しいものだ。
そう思うと、このパンダだって可愛く見えて――。
『パンダは笹が食べたいようです』
来るわけねえだろおおおお。
笹をばら撒く。
するとパンダは普段見せない機敏な動きで、器用に笹をキャッチしていく……口で。
「可愛い」
パンダの様子を見たコレットの口元が綻ぶ。
「全く……もしゃ」
仕方ねえ。ユーカリの葉のついでに笹もちゃんとストックするか……。
あくまでついでだがな。
今日だけで結構な量の笹がアイテムボックスに入ったから、多少は大丈夫だけど……この食欲だ。すぐに在庫が底をつく。
「コアラさんもユーカリの葉を食べているんですね」
「もしゃもしゃ。ユーカリ茶も飲んでいるぞ」
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