俺の畑は魔境じゃありませんので~Fランクスキル「手加減」を使ったら最強二人が押しかけてきた~

うみ

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22.触れちゃあいけないこと

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「膝はもう震えていないようだな」
「はい! もう動くことができます!」
「じゃあ、念のためこの階層を探索してから帰還するとしようか」

 ピピンへ笑いかけると、彼女は少しばかり頬を染め「はい!」と返事を返す。
 
「じゃあーさがそうー。わたしが一番ー」

 プリシラが言うと、イルゼが突っかかる。
 
「何を言う。お前などに任せてはおけない。ここはキッチリこのイルゼが探査しよう」
「負けないぞー」

 蝙蝠の翼を背中から出し、フワリと飛び上がるプリシラ。
 対するイルゼはふうと息を吐き、スタスタと歩きながら左右を見渡し始めた。
 
「俺たちも行くか」
「はい……そ、そのお……」
「どうした?」
「ちょ、ちょっとだけ待っていていただけますか? う、後ろを向いて」
「何なら離れていてもいいけど……」
「い、いえ……モンスターがいつ来るか分からないですし……こ、怖いんです……まだ」
「そ、そうか……」

 俺の後ろで衣擦れの生々しい音が聞こえたが、気にしてはダメだ。
 気持ち悪かったんだろうな……。
 
 気まずい空気の中、ピピンと肩を並べて探索を開始する。
 先に行った二人は既に見えなくなっていた。さすがの速さだ。
 今は彼女を連れているから、俺も走るわけにはいかないよな。
 
 なら、ノンビリと農業のことでも考えながらテクテク歩くとするか!
 
「果樹園もいいが、芋類も捨てがたい……」
「あ、あの……」
「水やりは魔法でできちゃうし……三人でもいろんな作物が育てることができそうだよなあ……」
「あ、あの」
「ん、どうした? 大丈夫だ。(イルゼとプリシラが)ちゃんと探索をしているからさ」

 プリシラもポヤポヤしているように見えて、高レベルに裏打ちされた鋭敏な感覚がある。
 イルゼは見た通りキッチリしているから、やると言ったからには目を皿のようにして探索をしてくれているはずだ。
 だから、俺は鼻歌交じりに歩くだけでいい。
 
「い、いえ……ちょっとスース―します……」
「そ、そうか……」

 そこには触れようとしていなかったってのに。
 ん、待てよ。
 ダンジョンの中は外界と隔絶されているから、家の中と同じように窓でも開けないと風通しは無い。
 それがどうだ。
 ピピンのお尻がスース―するってことはだな。
 どこかしらから風が吹いてきているってことだ。
 
「そのままそこで待っていてくれ」

 その場で腰を降ろし、目を瞑る。
 いい機会だから、鋭敏な感覚ってのを試してみよう。
 
 今なら二人に邪魔されることもないからな……。
 集中し意識を外に向ける。
 感じ取れ。風を。
 どこから吹いてきたのか。部屋の構造を目以外の感覚で受け止めるんだ。
 見えない手を伸ばすようにして、辺りを探る。
 
 お、おお。
 分かるぞ。
 どこかしらに吹き抜けがあるのか。
 風の吹き具合からして、外と繋がっているのかもしれないぞ。
 
「バルトロ―」

 もう少し見えない手を伸ばそうとした時、首元に誰かが手を回してきた。
 この声はプリシラだな。
 
「探索は終わったのか?」
「うんー。奥に棺がいっぱいあったよー」
「アンデッドの気配は感じなかったけど、いたのか?」
「ううん。何もいないよ。ここには何もー」
「分かった。文字が描かれていたりする壁画とか無かったか?」
「んー。あったようなー」
「案内してくれるか」
「うんー」

 プリシラに手を引かれ立ち上がると、ピピンも俺の後ろに続く。
 しかし、行けども行けども目的地が見えてこない。
 このダンジョンは広いからなあ……。

「ピピン」
「はい!」
「乗ってくれ」
「え、えっと……」

 膝を曲げ、手を腰にやりおぶされとピピンに指示を出す。
 しかし、彼女は戸惑ったようにあわあわと首を振るばかり。

「だあああ。プリシラ! 乗っかるんじゃない」
「えー。わたしじゃあダメなのー?」
「歩いてだと時間がかかるから、走ろうと思ったんだよ」
「それならー。えーい。フライ」

 プリシラが指をくるんと回すと、ピピンの体が浮き上がる。
 
「あ、あうう」

 真っ赤になって服の裾を抑えるピピン。
 
「大丈夫だ。俺は見ない。見ていないから大丈夫だ」

 ピピンと反対方向に顔を向け、走り出す。
 
「いくよー。ピピン―」
「え、ええええ! だ、ダメですう!」
「だっしゅだー」
「め、めくれ……ひゃああ!」
「バルトロ―、真っ直ぐだよー」
「分かった」

 何やら騒がしいが、とっとと進みたいから仕方ない。
 しばらく我慢してくれよ。ピピン。
 
 走れば広大なダンジョンであってもすぐだ。
 ものの数分で目的地に到着する。
 
 辺りは棺が整然と並び、突き当りの壁のところに金属製の大きな板がはめ込まれていた。
 板にはビッシリと文字が描かれているけど……。
 
「読めねえな」
「古代文字らしい。私の知る古代文字より随分と古いのではないかと思う」

 腕を組み首を傾け、凛とした眉をひそめるイルゼ。
 いつの間にそこにいたんだ。
 いや、最初からいたけど俺が気を払っていなかっただけか。
 
 後ろがうるさいしさ……。
 
「も、もう降ろしてください……」
「また移動するからダメー」
「え、えええ……」

 誰かピピンにパンツなりショーツなり渡してやれよ。

「プリシラ、イルゼ」
「んー」
「どうした?」
「パンツはあるか?」
「はいてるけどー」
「と、突然何なのだ! バルトロ殿」

 履いているのは分かっている。いや、普段から履いていないのかもしれないけど……そこが問題ではない。
 まるで質問の意図が伝わっていかなったか。
 気を取り直し、再び二人へ問いかける。

「予備を持ってない?」
「ないよー。パンツが欲しいなんて、バルトロのえっちー」
「……」

 呆れた様子のイルゼときゃっきゃ喜ぶプリシラ……対称的な二人だったけど、答えは分かった。
 ここに予備のパンツはない。
 
「すまんな。我慢してくれ」
「わ、分かりましたからこっちを見ないで……く、ださい」

 ピピンは宙に浮いているから下から見上げる形になってしまうよな。
 いっそ、俺のパンツでも履くか?

「ちょ、ちょっと何脱ごうとしているんですかー!」
「あ、いや。要らないかやっぱ」
「何を考えていたのか分からないですけど、放っておいてくれれば大丈夫ですから!」

 仕方がない。
 ベルトの位置を元に戻し、改めて鉄製の板を眺める。
 
「どうだ?」
「うん、やっぱりまるで何が何だか分からん」
「私もだ」

 うんうんと頷き合う俺とイルゼ。
 絵が描かれていたりしたら少しは想像がついたのかもしれないけど、文字だけびっしりだと何の手がかりもないからなあ……。
 
「じゃあ、戻るか。風穴がありそうだから、そこから出られるかもしれない」
「おー、いこー」

 そんなこんなで俺たちはダンジョンから出るべく、吹き抜ける風の元を辿り始めたのだった。
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