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第11話 レベルアップ
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鹿の解体も二度目とあって吐き気を催すこともなく、無事作業を終えることができた。鹿の皮の加工はもちろんするけど、まずはご飯だご飯。
お腹がすいて仕方がない。
「良介さん、さっき作った土器ですが、そろそろ火入れできそうですよ」
「お、おお。じゃあ食べてからやろうか」
「はい!」
俺が解体作業をしている間もライラは燻製している鹿の皮の様子まで見ていてくれた。
また彼女がチェックしたところ食器類はひび割れもなかったから、すでにかまどの中に入れたとのこと。仕事が早くて助かるよ。
「良介、肉はまだなのか?」
「すぐやるよ」
かまどを見ていたらウォルターが早く早くと急かすので、すぐに肉を焼き始める。
今日は塩がある、もう一度言う、塩があるのだ。
先にうるさいカラスと可愛いポチへ焼けた肉を与えてから、次の肉が焼けるのを待つ。
「ライラ、これ焼けてるから先に食べてくれ」
「良介さんから先にどうぞ」
「いや、君が見つけてくれた塩だから、先に」
「いえいえ」
「ならば、我が輩が」
ライラと俺が肉を譲り合っていると食いしん坊カラスが割り込んできたから、ささっと焼けた肉を取ってライラの手に握らせた。
話をしているうちに俺の分も焼けたし……。
肉を持ち、さっそく塩をパラリとかけて食べてみる。
お、おおお。塩を振るだけで昨日とは段違いだ。獣臭さがかなりマシになってこれなら美味しくはないけど、食べる分には問題ない。
いずれ、美味しいと思えるような肉を食べたいところだ。
「ライラ、明日はフルーツや野草を探しに行かないか?」
「はい!」
俺が頭に思い浮かんだ熱帯性のフルーツはパイナップルだった。肉にパイナップルは邪道だと言う人は多いけど、パイナップルの酸味で肉が柔らかくなると聞く。
それに、味付けにもなるから塩を振るだけより味がよくなると思うんだよなあ……。
今はポチが狩猟してくれる鹿とスイカしかない状態だから。食の充実は急務だ。生活に必須なものは食にあると俺は思っている。
「良介さん、蔦を集めませんか?」
「お、縄はあると便利だね。ついでに集めよう」
「はい!」
ここにはツル性植物がわんさか自生しているから、容易に集めることができるだろう。
蔦をそのまま使ってもよし、細いものならより合わせて縄にしたら強度もそれなりに増すから何かと使い勝手がよい。縄を編めば籠にもできるじゃないか。
お、おお。想像すると一気に生活が便利になる気がしてきたぞお。
みんなが満腹するまで食べたんだけど、四分の一くらいの肉が余ってしまった。昨日は捨てるしか選択肢がなかったけど、塩がある今なら燻製にすると多少日持ちがするかな。
「ライラ、余った肉を燻製にしようと思っているんだ」
「私もそれを考えてました。おそらく三日くらいなら保管しておけると思います」
「おお、気温が高くてもそれくらいもつんだ」
「はい。日が暮れる前にやりましょう!」
ライラの手ほどきを受けながら、手頃なサイズに切り分けた鹿肉にナイフで細かい穴を開けて塩を塗り込んでいく。
本来は乾燥させる工程が入るみたいだけど、このまま置いておくと肉がすぐに腐ってしまう。熱帯って食べ物が豊富なのはいいところなんだけど、すぐに食べ物がダメになってしまうのが難点なんだよなあ。
ひょっとしたらベーコンも作れるかなあと思ったけど、肉を寝かせておく冷蔵庫がないことにすぐ気が付いた。
そんなことを考えているうちに、ライラがビニール紐くらいの太さがある蔦を持ってくる。
「良介さん、この蔦で肉を縛って振り回してください」
「りょーかい」
なるほど。道具が何もないから、水気を切るのに原始的な手段を取るってことか。
肉塊が飛んでいかないようしっかりと蔦で縛り付けると、その場で腕を回し肉を回転させる。
うお、思った以上に血の混じった液体が飛び散るな……。
液体が肉塊から飛ばなくなったら小川で肉を洗い、再び軽く塩を刷り込み再び肉塊を振り回した。
よおし、これで下準備が完了だ。
続いて鹿の皮を燻製している所へ肉塊を吊り下げ作業が終了した。
俺は、満足気に吊り下がった肉塊を眺め、大きく息を吐く。
一息つこうかと思ったんだけど、ライラが休みもせずさっき解体した鹿の皮の下処理をしていたから彼女を手伝うことにした。
それが終わると、かまどに火を入れて土器を焼く。
「ライラ、これってこのままでいいのかな?」
「はい。朝まで置いておけば完成です」
「おお! それは明日が楽しみだ!」
明日になれば、食器がない生活から解放される! テンションが上がってきた。
しかし、この頃にはすっかり日が落ちてしまう。
太陽が沈むと月あかりと焚火以外に光が無くなるから、途端に視界が悪くなるよなあ。現代日本じゃ考えられない光景だ。
「良介さん、ロウソクに火をつけようと思ったんですが、ロウソク受けがありません……土器が完成するまで我慢ですね」
「うん、今日はもう家に入ろうか」
「はい。どうしても灯りが必要でしたら、少しの間だけですが光を灯すことはできます」
「お、おお。魔法の光かな?」
「はい」
焚火のゆらゆらとした赤い光に照らされたライラの顔を見つめると、彼女ははにかんで軽く頷きを返した。
この世界の魔法はどんな仕組みなんだろう? MPを使うのか、MPは寝たら回復するのか……ライラに火の魔法を何度も使ってもらっているけど、彼女の体調に負担をかけていないか心配になってくる。
「ライラ、魔法を使うと君の身体にどんな影響がでるのかな?」
「そうですね……多少疲れる程度です。充分な休息を取れば何ともありません」
「そっか。それならよかった。君の魔法が命を削るようなものだったら使わせるべきじゃあないと思っていたから」
すると、ライラはクスっと声を出して笑う。そんなおかしい事言ったかなあ?
俺がブスっとしているのに気が付いたライラは無理に笑いをこらえて口を開く。
「す、すいません。変なところで心配されているのがおかしくなってしまって……」
「い、いや。負担がないならそれでいいんだ」
俺も誤魔化すように笑うと、ライラは急に真剣な表情になって尋ねてきた。
「ひょっとして、良介さんの魔法は体に負担がかかるものなんですか?」
「いや、ブロック化を行ってもまるで疲労しないよ。何度でも使える」
「そ、そうなんですか……あれほどの魔法を……」
魔法じゃないんだけどね。とは今更言うべきではないか……ひょっとしたらブロックアプリは魔法かもしれないし。
これが魔法なのかそうじゃないのかを解明する気なんて今のところないけどさ。
「ポチ、ウォルター、家に入ろうか」
焚火の前で寝そべっていたポチと彼の背に乗っかって船を漕いでいるウォルターへ呼びかけると、俺は家の中に入る。
「窓があるからまだマシなんだろうけど、本当に真っ暗だなあ」
「夜は暗いものですよ。良介さん」
ライラは不思議そうに首をかしげた。
あ、ひょっとしたら。
俺はタブレットを出して電源を入れてみる。
お、おお。タブレットの画面の明るさがロウソク変わりになるじゃないか。
ん、ブロックアプリのアイコンに赤色でビックリマークが浮かんでいるな。スマートフォンのアプリとかメールでよく見る感じだ。
気になった俺はさっそくブロックアプリを起動させてみると、メッセージが浮かび上がった。
『ミッションクリア レベルが上がりました』
ん、んん。良く分からないぞ。俺はいつの間にミッションとやらをこなしていたのだ……。そんな項目は無かったと思うんだけど……。
しかし、レベルが上がったとなれば何らかの機能が解放されたってことなのかな?
「どうしました? 良介さん?」
「ん、ちょっと自分の魔法をこの後、調べてみようかなと」
「そうですか、研究熱心なんですね!」
「そ、そうでもないんだけどね……」
「しかし、良介さん。真っ暗な中でどうやって調べるのでしょう?」
「え? ライラ、タブレットが光っているじゃないか」
俺は手の上に乗ったタブレットをライラに向けるが、彼女はきょとんとした顔で呟く。
「タブレット? 何でしょうか」
「まさか、俺の手にある物が見えない?」
「良介さんの手しか見えませんけど……」
「そ、そうか……」
な、なんと、ライラにはこのタブレットが見えないらしい。うーん、ますますタブレットがどういうものなのか気になってきたんだけど、他にやることが山積みだからなあ……。
生活が安定してきたら、詳しく実験してみるとするか。
「ふああ」
朝から動き回った疲れからか、ライラが可愛らしいあくびをする。
つられて俺も大きなあくびをしてしまい、それに伴って眠気が……。
「おやすみ、ライラ。また明日」
「はい! おやすみなさい。良介さん」
ライラが二階へ向かうのと同時に俺もポチと一緒に自室へ移動した。
当たり前だが部屋はまだ何も置かれておらずガランとしている。せめて藁か何かを盛って寝床を作りたいなあ。
しげしげと部屋を眺めていたら、ポチが撫でて欲しそうに床をゴロゴロしはじめているではないか。俺がポチのふさふさの首元を撫でてやると、彼はち千切れそうな勢いで尻尾を振った。ううむ、ういやつよ。
ひとしきりポチをモフッった後、俺はポチのお腹に頭を寄せながら、タブレットのブロックアプリを起動させた。
アプリに触れるといつもと違うメッセージがさらに流れてくる。
『ステータス表示が解放されました』
『ブロックのサイズが追加されました』
ほうほう。二つも機能が増えたのか。
画面の右下にメガネマークのアイコンが一つ追加されている。これがステータス表示ってやつかな。
試しにメガネマークへタッチしてみると、ウインドウが開く。
『サイズ、材質』
サイズを見てみると、九十センチ立方体と四十五センチ立方体と表記されていた。今まで作成していたブロックは九十センチのやつだよな。
小さい立方体も作れるようになったってことか。
材質は木だけ書かれている。レベルアップしたら、例えば岩とかもブロックにすることができるようになるのかもしれない。
しっかし、レベルが上がったはいいけど、レベルの上げ方が分からない!
ミッションとやらはどこを見ても表記されていないしなあ。たまたまミッションを達成したからいいものの、次のミッションはどうすればいいのかまるで分らない。
考えても仕方がないかとすぐ気持ちを切り替えた俺は、眠さに勝てずすぐに意識が遠くなっていくのだった。
お腹がすいて仕方がない。
「良介さん、さっき作った土器ですが、そろそろ火入れできそうですよ」
「お、おお。じゃあ食べてからやろうか」
「はい!」
俺が解体作業をしている間もライラは燻製している鹿の皮の様子まで見ていてくれた。
また彼女がチェックしたところ食器類はひび割れもなかったから、すでにかまどの中に入れたとのこと。仕事が早くて助かるよ。
「良介、肉はまだなのか?」
「すぐやるよ」
かまどを見ていたらウォルターが早く早くと急かすので、すぐに肉を焼き始める。
今日は塩がある、もう一度言う、塩があるのだ。
先にうるさいカラスと可愛いポチへ焼けた肉を与えてから、次の肉が焼けるのを待つ。
「ライラ、これ焼けてるから先に食べてくれ」
「良介さんから先にどうぞ」
「いや、君が見つけてくれた塩だから、先に」
「いえいえ」
「ならば、我が輩が」
ライラと俺が肉を譲り合っていると食いしん坊カラスが割り込んできたから、ささっと焼けた肉を取ってライラの手に握らせた。
話をしているうちに俺の分も焼けたし……。
肉を持ち、さっそく塩をパラリとかけて食べてみる。
お、おおお。塩を振るだけで昨日とは段違いだ。獣臭さがかなりマシになってこれなら美味しくはないけど、食べる分には問題ない。
いずれ、美味しいと思えるような肉を食べたいところだ。
「ライラ、明日はフルーツや野草を探しに行かないか?」
「はい!」
俺が頭に思い浮かんだ熱帯性のフルーツはパイナップルだった。肉にパイナップルは邪道だと言う人は多いけど、パイナップルの酸味で肉が柔らかくなると聞く。
それに、味付けにもなるから塩を振るだけより味がよくなると思うんだよなあ……。
今はポチが狩猟してくれる鹿とスイカしかない状態だから。食の充実は急務だ。生活に必須なものは食にあると俺は思っている。
「良介さん、蔦を集めませんか?」
「お、縄はあると便利だね。ついでに集めよう」
「はい!」
ここにはツル性植物がわんさか自生しているから、容易に集めることができるだろう。
蔦をそのまま使ってもよし、細いものならより合わせて縄にしたら強度もそれなりに増すから何かと使い勝手がよい。縄を編めば籠にもできるじゃないか。
お、おお。想像すると一気に生活が便利になる気がしてきたぞお。
みんなが満腹するまで食べたんだけど、四分の一くらいの肉が余ってしまった。昨日は捨てるしか選択肢がなかったけど、塩がある今なら燻製にすると多少日持ちがするかな。
「ライラ、余った肉を燻製にしようと思っているんだ」
「私もそれを考えてました。おそらく三日くらいなら保管しておけると思います」
「おお、気温が高くてもそれくらいもつんだ」
「はい。日が暮れる前にやりましょう!」
ライラの手ほどきを受けながら、手頃なサイズに切り分けた鹿肉にナイフで細かい穴を開けて塩を塗り込んでいく。
本来は乾燥させる工程が入るみたいだけど、このまま置いておくと肉がすぐに腐ってしまう。熱帯って食べ物が豊富なのはいいところなんだけど、すぐに食べ物がダメになってしまうのが難点なんだよなあ。
ひょっとしたらベーコンも作れるかなあと思ったけど、肉を寝かせておく冷蔵庫がないことにすぐ気が付いた。
そんなことを考えているうちに、ライラがビニール紐くらいの太さがある蔦を持ってくる。
「良介さん、この蔦で肉を縛って振り回してください」
「りょーかい」
なるほど。道具が何もないから、水気を切るのに原始的な手段を取るってことか。
肉塊が飛んでいかないようしっかりと蔦で縛り付けると、その場で腕を回し肉を回転させる。
うお、思った以上に血の混じった液体が飛び散るな……。
液体が肉塊から飛ばなくなったら小川で肉を洗い、再び軽く塩を刷り込み再び肉塊を振り回した。
よおし、これで下準備が完了だ。
続いて鹿の皮を燻製している所へ肉塊を吊り下げ作業が終了した。
俺は、満足気に吊り下がった肉塊を眺め、大きく息を吐く。
一息つこうかと思ったんだけど、ライラが休みもせずさっき解体した鹿の皮の下処理をしていたから彼女を手伝うことにした。
それが終わると、かまどに火を入れて土器を焼く。
「ライラ、これってこのままでいいのかな?」
「はい。朝まで置いておけば完成です」
「おお! それは明日が楽しみだ!」
明日になれば、食器がない生活から解放される! テンションが上がってきた。
しかし、この頃にはすっかり日が落ちてしまう。
太陽が沈むと月あかりと焚火以外に光が無くなるから、途端に視界が悪くなるよなあ。現代日本じゃ考えられない光景だ。
「良介さん、ロウソクに火をつけようと思ったんですが、ロウソク受けがありません……土器が完成するまで我慢ですね」
「うん、今日はもう家に入ろうか」
「はい。どうしても灯りが必要でしたら、少しの間だけですが光を灯すことはできます」
「お、おお。魔法の光かな?」
「はい」
焚火のゆらゆらとした赤い光に照らされたライラの顔を見つめると、彼女ははにかんで軽く頷きを返した。
この世界の魔法はどんな仕組みなんだろう? MPを使うのか、MPは寝たら回復するのか……ライラに火の魔法を何度も使ってもらっているけど、彼女の体調に負担をかけていないか心配になってくる。
「ライラ、魔法を使うと君の身体にどんな影響がでるのかな?」
「そうですね……多少疲れる程度です。充分な休息を取れば何ともありません」
「そっか。それならよかった。君の魔法が命を削るようなものだったら使わせるべきじゃあないと思っていたから」
すると、ライラはクスっと声を出して笑う。そんなおかしい事言ったかなあ?
俺がブスっとしているのに気が付いたライラは無理に笑いをこらえて口を開く。
「す、すいません。変なところで心配されているのがおかしくなってしまって……」
「い、いや。負担がないならそれでいいんだ」
俺も誤魔化すように笑うと、ライラは急に真剣な表情になって尋ねてきた。
「ひょっとして、良介さんの魔法は体に負担がかかるものなんですか?」
「いや、ブロック化を行ってもまるで疲労しないよ。何度でも使える」
「そ、そうなんですか……あれほどの魔法を……」
魔法じゃないんだけどね。とは今更言うべきではないか……ひょっとしたらブロックアプリは魔法かもしれないし。
これが魔法なのかそうじゃないのかを解明する気なんて今のところないけどさ。
「ポチ、ウォルター、家に入ろうか」
焚火の前で寝そべっていたポチと彼の背に乗っかって船を漕いでいるウォルターへ呼びかけると、俺は家の中に入る。
「窓があるからまだマシなんだろうけど、本当に真っ暗だなあ」
「夜は暗いものですよ。良介さん」
ライラは不思議そうに首をかしげた。
あ、ひょっとしたら。
俺はタブレットを出して電源を入れてみる。
お、おお。タブレットの画面の明るさがロウソク変わりになるじゃないか。
ん、ブロックアプリのアイコンに赤色でビックリマークが浮かんでいるな。スマートフォンのアプリとかメールでよく見る感じだ。
気になった俺はさっそくブロックアプリを起動させてみると、メッセージが浮かび上がった。
『ミッションクリア レベルが上がりました』
ん、んん。良く分からないぞ。俺はいつの間にミッションとやらをこなしていたのだ……。そんな項目は無かったと思うんだけど……。
しかし、レベルが上がったとなれば何らかの機能が解放されたってことなのかな?
「どうしました? 良介さん?」
「ん、ちょっと自分の魔法をこの後、調べてみようかなと」
「そうですか、研究熱心なんですね!」
「そ、そうでもないんだけどね……」
「しかし、良介さん。真っ暗な中でどうやって調べるのでしょう?」
「え? ライラ、タブレットが光っているじゃないか」
俺は手の上に乗ったタブレットをライラに向けるが、彼女はきょとんとした顔で呟く。
「タブレット? 何でしょうか」
「まさか、俺の手にある物が見えない?」
「良介さんの手しか見えませんけど……」
「そ、そうか……」
な、なんと、ライラにはこのタブレットが見えないらしい。うーん、ますますタブレットがどういうものなのか気になってきたんだけど、他にやることが山積みだからなあ……。
生活が安定してきたら、詳しく実験してみるとするか。
「ふああ」
朝から動き回った疲れからか、ライラが可愛らしいあくびをする。
つられて俺も大きなあくびをしてしまい、それに伴って眠気が……。
「おやすみ、ライラ。また明日」
「はい! おやすみなさい。良介さん」
ライラが二階へ向かうのと同時に俺もポチと一緒に自室へ移動した。
当たり前だが部屋はまだ何も置かれておらずガランとしている。せめて藁か何かを盛って寝床を作りたいなあ。
しげしげと部屋を眺めていたら、ポチが撫でて欲しそうに床をゴロゴロしはじめているではないか。俺がポチのふさふさの首元を撫でてやると、彼はち千切れそうな勢いで尻尾を振った。ううむ、ういやつよ。
ひとしきりポチをモフッった後、俺はポチのお腹に頭を寄せながら、タブレットのブロックアプリを起動させた。
アプリに触れるといつもと違うメッセージがさらに流れてくる。
『ステータス表示が解放されました』
『ブロックのサイズが追加されました』
ほうほう。二つも機能が増えたのか。
画面の右下にメガネマークのアイコンが一つ追加されている。これがステータス表示ってやつかな。
試しにメガネマークへタッチしてみると、ウインドウが開く。
『サイズ、材質』
サイズを見てみると、九十センチ立方体と四十五センチ立方体と表記されていた。今まで作成していたブロックは九十センチのやつだよな。
小さい立方体も作れるようになったってことか。
材質は木だけ書かれている。レベルアップしたら、例えば岩とかもブロックにすることができるようになるのかもしれない。
しっかし、レベルが上がったはいいけど、レベルの上げ方が分からない!
ミッションとやらはどこを見ても表記されていないしなあ。たまたまミッションを達成したからいいものの、次のミッションはどうすればいいのかまるで分らない。
考えても仕方がないかとすぐ気持ちを切り替えた俺は、眠さに勝てずすぐに意識が遠くなっていくのだった。
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