ブロック作成スキルで、もふもふスローライフを目指すことにした

うみ

文字の大きさ
10 / 45

第10話 家の改装

しおりを挟む
「ライラ、家をもう少し居心地のいいものにしたいと思っているんだ。何か希望とかあるかな?」
「そうですね……。良介さんはいくつでも立方体をクリエイトできるのですか?」
「うん、木があればいくつでも大丈夫だよ」
「それでしたら、床を一段あげた方が良いのではと思います」
「なるほど。確かに。俺も家の作成を急いだ理由はそこにあったんだ」

 やっぱり、ライラに相談してよかった。ここは熱帯雨林で豊富な水量があることは、シダやコケなどの植物と小川を見れば一目瞭然なんだ。
 ということは降雨量もさぞ多い事だろう。ライラが懸念していることは、家の中に増水した水が入ってくるということだ。
 ブロックの高さは一メートル弱あるから、一段高くしておけば川が増水したとしても水が中に入ってこない。
 
「じゃあ、外のオープンデッキも一段高くしようか」
「その方が泥だらけにならなくて済むと思います」
「あと、もう一つ……君の家なんだけど……」
「良介さん、一緒の家ではダメですか?」
「あ、うん。君さえいいなら」
「もう一つ、扉のことなんですけど……」

 ライラは言葉を続ける。窪地は危険な地上性のモンスターが入ってくることはまずないから、ブロックで入り口を密閉しなくても大丈夫だと彼女は言う。
 まだここに来て数日だから何とも言えないけど、扉を設置するのが最善だけど今はそれができない。かといって密閉してしまうと、俺以外出入りができなくなってしまうし風通しも最悪だ。
 出入口を開けるなら、何かで窓を作成して家の中に窓も欲しいな。
 彼女が一緒の家でと言ってくれたから良かったよ。そうなんだ。彼女が一緒の家にいた方が安全上望ましいことは確かなんだよ……男と同じ家の中ってことを除けばな。あ、俺が危険って意味じゃなえぞ。
 
「ライラ、君の提案でいこう。それに、ポチがいるから万が一、危険を感じた時は彼が反応してくれるさ」

 そう、ポチの存在が大きいってわけだ。

「それは心強いですね。近く扉も作りませんか? 良介さん」
「うん、そのつもりだよ。大工道具が一切ないからなあ……」
「枝と草を組み合わせて簡易的な扉を作るのはいかがですか?」
「おお、それは面白そうだ! 一旦、家とオープンデッキを組んでみるから見てみてくれないか?」
「はい! ぜひ! 楽しみです! その間に私は燻製の準備をしますね」
「うん、ありがとう!」

 言われて初めて思い出したよ。そういえば昨日、鹿の皮を加工したんだった。一晩乾かしてから燻製して皮を伸ばして革にするんだったな。
 伸ばす工程は後程ライラに聞くとしよう。
 よおし! まずはブロックの準備だ。
 
 俺はタブレットを出して家のそばにある木の前に立つ。木は豊富にあるけど、家を中心に円形に広場ができるように木をブロック化していく。
 ブロック自体は言うまでもなく生活に必須のアイテムだが、木を取り除く副次効果も侮れない。この能力は木ばかりの土地を平地に変える能力と見ることもできるのだ。
 
 ブロックの準備が整ったら、家の設計だ。土地はいくらでもあるし、ブロックも無限といっていいほど準備可能だから広めの家にしようと思っている。
 壁を除き、床面積は横十五ブロックで縦が十ブロック。入り口は右から三ブロックのところに穴を開けて、横十ブロック分をリビングとする。リビングを壁で区切り、ここを俺の寝室とした。
 ライラの住処はなんと二階だ。二階部分は横に十ブロックとり、外に出られるようにしてベランダを作る。
 天井までの高さは一階は四ブロック分、二階は三ブロックとした。
 
 うん、シンプルだけどなかなかいい感じに仕上がったんじゃないか?
 外のオープンデッキは家から小川までを繋ぎ、高さを二ブロック取る。端には四ブロックの高さがある柱を立てて、柱同士を繋ぎ屋根とした。
 別にみんなで食事をできるよう、一辺十六ブロックの正方形を作り、中央は一辺二ブロックの穴を開ける。ここを煮炊き場として使おう。もちろん、ここにも屋根を付けている。
 他にかまどとか燻製用の場所をと思ったけど、元からあった場所にブロックを繋げることにするかあ。
 
 残すは燻製の場所だけとなり、ブロックを置いているとちょうどライラが鹿の皮をスモークし始めたところだった。
 
「ライラ、どれくらい煙でいぶすんだろう?」
「夜まで置いておきます。明日の朝に伸ばせば大丈夫です。え、えええ!」

 俺に声をかけられたことで振り向いたライラは驚きの声をあげた。
 彼女は俺の能力を知っているとはいえ、三十分も立たないうちに家と屋根付きのオープンデッキができていたら……。それに音一つ立てないからな……ブロックの組み立てって。
 
「組み立てはライラの立っている場所にブロックを置いたら一旦完成だよ」
「す、すごいです! あの立派な家は二階建てですか?」
「うん、ライラには二階に住んでもらおうと思ってる。どこに窓を開けるか後で教えてくれるか?」
「は、はい!」

 ライラと一緒に家の中に入ったが、やっぱり暗い……。外は太陽の日差しがキツイくらいなのに中に入ると入り口から差し込む光のみだからなあ。
 それに昼間は蒸す……夜になったら涼しいのに。
 
「良介さん、入り口の向い側の高いところに窓を。良介さんのお部屋は二か所開けた方が良いのではと思います」

 ライラはリビングと俺の部屋を確認して意見を述べた。
 俺は彼女の言葉を聞きながら、すぐにリビングには横二ブロックの窓を作り、俺の部屋は一ブロックを二か所取り除いて窓にすることにした。
 
「じゃあ、二階に行こう」

 ブロックで作った階段を登ると二階部分になる。
 先に俺が二階に入り、ライラが後に続く。
 
「りょ、良介さん、私の部屋の方が広いなんて……ダメです」
「いいじゃないか、女の子の方が物がいるだろう?」
「い、いえ、それとこれとは……」
「まあ、いいじゃないか。ベランダも作ったんだよ。窓をどこに開ける?」
「奥と右手に開けて頂いてよろしいですか?」
「ほいよ」

 戸惑うライラの肩をポンと叩いて、ダブレットを出すとちょいちょいと窓を作成する。
 うん、タブレットの操作なら一瞬だ。
 しっかし、立派な家とは裏腹に生活レベルは未だ原始的な生活さえままならない……。ブロックがもう少し融通がきけばなあ……。
 いや、贅沢を言ってはいけないよな。ブロックがあるのとないのじゃあ天と地ほどの差がある。
 
 とは言ってもなあ……家の側だけはあるがベッドも無ければテーブルもない。ましてや灯りなんて目途も付かねえ。

「ライラ、家はできたんだけど……それ以外のものはこれからだ」
「はい! 良介さん、蝋を作っているんですよ。鹿の脂質から」
「お、おおお。すごいな」
「種火にもなりますし、便利ですので」
「次は何を作ろうかなあ」

 思案する俺の顔を見てライラがクスっと可愛らしい声を出す。
 
「ん?」
「す、すいません。偉大な賢者様だと思っていたんですけど、子供っぽい少年のような顔を見てつい」
「あ、ああ。ただの普通の人間だって言ったじゃないか」
「まるで秘密基地を作ろうと言っている少年みたいでしたよ」
「そ、そうか」
「いえ、私にとってはその方が好ましいです」

 面と向かってそんなことを言われると照れるじゃないか。
 恥ずかしさを誤魔化すようにベランダに出てみると、ポチのわんわんという元気のいい声が聞こえてきた。
 
「お、ポチ!」

 大きくなったポチの姿を目にとめると、俺は力いっぱい彼に向かって両手を振る。
 俺の姿に気が付いたポチは尻尾をぶんぶんと振り回し、家の前でジャンプ!
 なんと彼はそのままベランダに降り立ってしまったじゃないか。
 
「おー、楽しかったか? 散歩は?」

 ハッハという嬉しそうな声を出すポチの首をモフモフさせてねぎらうと、幸せな気分になってきた。
 
「良介、ポチは鹿を捕らえて来たのだよ。すぐそこに置いておる。皆で食そうではないか」

 いつの間にかやってきたカラスのウォルターが嬉々として声をあげる。
 
「おお、ポチ! 散歩だと思ったら狩猟に行っていたのか! 偉いぞ!」
「わんわん」

 ポチは元気よく吠えると元のサイズに戻る。
 これから鹿を解体して、遅い昼食にするとしますかー。
 
「ライラ、鹿をこっちに運び込もう」
「はい!」

 ライラは満面の笑みを浮かべて、コウモリの羽をはためかせた。
 
※五話の前半部分に抜けがありましたので修正いれました。
 
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢に転生したので、ゲームを無視して自由に生きる。私にしか使えない植物を操る魔法で、食べ物の心配は無いのでスローライフを満喫します。

向原 行人
ファンタジー
死にかけた拍子に前世の記憶が蘇り……どハマりしていた恋愛ゲーム『ときめきメイト』の世界に居ると気付く。 それだけならまだしも、私の名前がルーシーって、思いっきり悪役令嬢じゃない! しかもルーシーは魔法学園卒業後に、誰とも結ばれる事なく、辺境に飛ばされて孤独な上に苦労する事が分かっている。 ……あ、だったら、辺境に飛ばされた後、苦労せずに生きていけるスキルを学園に居る内に習得しておけば良いじゃない。 魔法学園で起こる恋愛イベントを全て無視して、生きていく為のスキルを習得して……と思ったら、いきなりゲームに無かった魔法が使えるようになってしまった。 木から木へと瞬間移動出来るようになったので、学園に通いながら、辺境に飛ばされた後のスローライフの練習をしていたんだけど……自由なスローライフが楽し過ぎるっ! ※第○話:主人公視点  挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点  となります。

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう

お餅ミトコンドリア
ファンタジー
 パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。  だが、全くの無名。  彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。  若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。  弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。  独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。  が、ある日。 「お久しぶりです、師匠!」  絶世の美少女が家を訪れた。  彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。 「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」  精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。 「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」  これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。 (※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。 もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです! 何卒宜しくお願いいたします!)

【収納∞】スキルがゴミだと追放された俺、実は次元収納に加えて“経験値貯蓄”も可能でした~追放先で出会ったもふもふスライムと伝説の竜を育成〜

あーる
ファンタジー
「役立たずの荷物持ちはもういらない」 貢献してきた勇者パーティーから、スキル【収納∞】を「大した量も入らないゴミスキル」だと誤解されたまま追放されたレント。 しかし、彼のスキルは文字通り『無限』の容量を持つ次元収納に加え、得た経験値を貯蓄し、仲間へ『分配』できる超チート能力だった! 失意の中、追放先の森で出会ったのは、もふもふで可愛いスライムの「プル」と、古代の祭壇で孵化した伝説の竜の幼体「リンド」。レントは隠していたスキルを解放し、唯一無二の仲間たちを最強へと育成することを決意する! 辺境の村を拠点に、薬草採取から魔物討伐まで、スキルを駆使して依頼をこなし、着実に経験値と信頼を稼いでいくレントたち。プルは多彩なスキルを覚え、リンドは驚異的な速度で成長を遂げる。 これは、ゴミスキルだと蔑まれた少年が、最強の仲間たちと共にどん底から成り上がり、やがて自分を捨てたパーティーや国に「もう遅い」と告げることになる、追放から始まる育成&ざまぁファンタジー!

異世界の貴族に転生できたのに、2歳で父親が殺されました。

克全
ファンタジー
アルファポリスオンリー:ファンタジー世界の仮想戦記です、試し読みとお気に入り登録お願いします。

一緒に異世界転生した飼い猫のもらったチートがやばすぎた。もしかして、メインは猫の方ですか、女神様!?

たまご
ファンタジー
 アラサーの相田つかさは事故により命を落とす。  最期の瞬間に頭に浮かんだのが「猫達のごはん、これからどうしよう……」だったせいか、飼っていた8匹の猫と共に異世界転生をしてしまう。  だが、つかさが目を覚ます前に女神様からとんでもチートを授かった猫達は新しい世界へと自由に飛び出して行ってしまう。  女神様に泣きつかれ、つかさは猫達を回収するために旅に出た。  猫達が、世界を滅ぼしてしまう前に!! 「私はスローライフ希望なんですけど……」  この作品は「小説家になろう」さん、「エブリスタ」さんで完結済みです。  表紙の写真は、モデルになったうちの猫様です。

魔物が棲む森に捨てられた私を拾ったのは、私を捨てた王子がいる国の騎士様だった件について。

imu
ファンタジー
病院の帰り道、歩くのもやっとな状態の私、花宮 凛羽 21歳。 今にも倒れそうな体に鞭を打ち、家まで15分の道を歩いていた。 あぁ、タクシーにすればよかったと、後悔し始めた時。 「—っ⁉︎」 私の体は、眩い光に包まれた。 次に目覚めた時、そこは、 「どこ…、ここ……。」 何故かずぶ濡れな私と、きらびやかな人達がいる世界でした。

ペットたちと一緒に異世界へ転生!?魔法を覚えて、皆とのんびり過ごしたい。

千晶もーこ
ファンタジー
疲労で亡くなってしまった和菓。 気付いたら、異世界に転生していた。 なんと、そこには前世で飼っていた犬、猫、インコもいた!? 物語のような魔法も覚えたいけど、一番は皆で楽しくのんびり過ごすのが目標です! ※この話は小説家になろう様へも掲載しています

処理中です...