目が覚めたら誰もいねええ!?残された第四王子の俺は処刑エンドをひっくり返し、内政無双で成り上がる。戻って来てももう遅いよ?

うみ

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49.三本の矢じり

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「帝国軍は三本の矢じりのような陣形。南方は放置、南西はロレンツィオ隊。南東は俺とジョルジュでやる。桔梗は連絡と偵察。九曜は裏へ回れ」

 報告に来た桔梗にそう伝え、細い獣道を進む。
 
「注意しろ。一列で進め。散開地点まで行くぞ」
「行くぞおお! 騎馬隊よ!」
「サンドロ、声を抑えろ。敵に聞こえることはないが、もう少し抑えても伝わる」
「申し訳ありません。イル様」

 騎馬隊の副長としてアレッサンドロを連れてきたわけなのだけど、元気すぎるのも考えものだな。
 いや、それでこそアレッサンドロか。彼の朗らかさが兵に平常心を与えてくれる。

「ジョルジュ隊は樹上、獣道、どちらかでもいい」
「承知した。我が主」

 片膝を付き、頭を下げたジョルジュは、身軽な者へ指示を出す。
 軍議の翌日、帝国軍に動きがあった。
 和平交渉の決裂後、丸一日空いていたのは侵攻の準備をしていたからだろう。
 帝国は中央に兵3000を配置し、そこから矢じりのように三方向へ陣が伸びるといった特殊な陣形をしいていた。
 矢じりが状況を確認し、後方へ伝える動きだな。矢じりは本陣と繋がっていて、罠に引っかかれば方向修正する。
 矢じりはそれぞれが約1000配置しており、全て歩兵だった。
 ほぼ全軍が進出してきたわけだが、残した兵もいる。トイトブルク森は一日で踏破できない。
 よって、糧食を持つ必要がある。本陣の後方に馬車が並び、そこに糧食が積んでいた。
 だが、それが全てじゃあない。
 これまで彼らが待機していた城壁には、兵站が残されている。
 外に出た部隊が持っている糧食はせいぜい三日分くらい。九曜の報告によると、城壁には一週間分程度の糧食があるとのこと。
 糧食は後方から城壁に運ばれてきていることも掴んでいる。
 つまり、ずっと待ち構えて、帝国が動かなかった場合でも奴らが補給切れになることはないってことだ。
 
 さて、目的地点に着いたぞ。
 ここはちょっとした広場のようになっていて、200人程度なら整列することができる。
 ちょうどそこに桔梗が姿を現す。
 
「イル様。帝国軍、南東部は順調にこちらに向かっております」
「罠が無いことが分かったのかな」
「はい。一直線にこちらへ。ロレンツィオ様の方も同様です」
「承知した。九曜の方はどうだ?」
「いつでも実行可能です」
「ありがとう。ロレンツィオへも報告を」
「はい。失礼いたします」

 幹を蹴って太い枝に飛び乗った桔梗はそのまま枝を伝ってすぐに見えなくなった。

「イル様」
 
 アレッサンドロが俺の名を呼ぶ。
 下馬した彼の隣にジョルジュが片膝を付いた状態で控えている。
 アレッサンドロも彼と同じようにかしづいた。
 彼らの後ろにはずらっと下馬した騎兵とジョルジュ隊が整列している。
 
「諸君、いよいよだ。傭兵、王国騎士を始め、様々な者がこの戦いに馳せ参じてくれた。ミレニア王国を代表して私から改めて感謝を」

 俺の言葉に対し、固唾を飲んで見守る心強い戦士たち。
 すうっと息を吸い込み、右の拳を振り上げる。
 
「逃亡者ノヴァーラを打倒せよ! ノヴァーラに与する帝国へ鉄槌を!」
「逃亡者ノヴァーラを打倒せよ!」
「ノヴァーラに与する帝国へ鉄槌を!」

 口々に打倒を叫ぶ兵達。響き渡れ、俺たちの叫びよ。
 大音量で声が枯れんばかりに何度も何度も。
 ドーンドーン!
 銅鑼を打ち鳴らす。
 
「これより状況を開始する! サンドロ。狼煙を上げろ」
「ハッ!」

 アレッサンドロが火打石をかちりとならし、藁を巻きつけた松明に火をつける。
 燃え盛る火を積み上げた藁に投げ込み、瞬く間に白い煙があがった。
 
「派手にやり過ぎだ。でもまあ、いいか」
「申し訳ありません!」
「ちゃんと覆いもしてあるし、問題ないだろ。では、配置につけ。サンドロは俺と共に来い」
「承知いたしました!」

 ヒラリと馬に乗り、ジョルジュに目配せする。
 彼は承知したとばかりに大きく首を縦に振った。
 
 ジョルジュ隊の散開、配置を待ってから馬を走らせる。
 徒歩でも良かったのだけど、念のためだ。馬ならば、絶対に人じゃあ追いつけないからさ。

「もう少し細かく偵察しながら来ると思ったんだがなあ」
「そうだったのですか」

 並走するアレッサンドロが俺の独り言に対し返答する。

「うん。こういった仕掛けを八か所作ったんだ。つまり『道』も本陣に向かうものを除き八あったってわけだよ」
「ロレンツィオ殿が準備されたのですか?」
「そうだな、殆どロレンツィオがやってくれた。一部、桔梗たちの手も借りている」
「これほどの仕掛け、相当な労力が必要だったでしょうに」
「そうだな。罠自体より、地図が大変だったと思う。自分の脳内だけで森をマッピングし、的確に道を作るロレンツィオは規格外だよ」
「イル様がそうおっしゃるお方とは……想像もできません」
「ははは。無駄口はここまでだ。見えてきたぞ。お相手も馬の足音に気が付いたみたいだな」

 お、騒いでる騒いでる。
 この「道」は俺とアレッサンドロが並走してもまだまだ余裕があるほどだから、移動しやすいだろ?
 かつては馬車だって走らせたことがある、とロレンツィオが言っていた気がする。

「いたぞ! 奴らだ! 後方へ伝令!」
「銅鑼を鳴らせ!」

 ドーンドーンと帝国側から銅鑼の音が鳴り響く。
 旧王国騎士と違って、顔を真っ赤にして即走ってこないんだな。まあ、普通はそうか。
 矢じりは本隊に繋がっていて、偵察も兼ねているから。まず報告からだよな。
 
 長槍を持ち、鎧姿の帝国兵たちがようやく隊列を組みつつ前進してくる。
 ちと横列が長いな。

「うあああああ!」

 ほら、言わんこっちゃない。
 足元に仕掛けた罠に引っかかった帝国兵が足首に絡まった蔦によって勢いよく宙に浮く。
 木より高く浮き上がった帝国兵は、重力に従いそのまま勢いよく地面に頭から叩きつけられ動かなくなった。
 
「逃亡者ノヴァーラを打倒せよ! ノヴァーラに与する帝国へ鉄槌を!」

 アレッサンドロが叫ぶ。
 対する帝国兵は目の前で仲間を一人失ったからか、目の色を変えて突き進んでくる。
 
「小癪な奴らだ! 今すぐその首叩ききってくれる!」
「あらら。怖い怖い。逃げようぜ。サンドロ」
「イル様ー!」

 こいつ、本来の目的を忘れちゃいないだろうな。
 剣を抜いている場合じゃないだろ。タイミングがズレたらどうすんだよ。
 
 帝国兵をトレインし引っ張り、広場へと向かう。
 チラッと後ろを確認したところ、隊を分けず矢じりがそのまま伸びる感じで追ってきているな。

 広場の端まで到達。そのまま木々の間に入る。
 その時、遥か後方で動きがあった。
 最初に俺たちが敵兵を惹きつけた辺りから真っ赤な炎が吹きあがったのだ。
 炎は壁となり、敵兵をそこで分断する。
 
「射てー!」

 ジョルジュの掛け声に合わせ、広場に向け一斉に矢が飛ぶ!
 
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