無双将軍の参謀をやりながら異世界ローマも作ってます

うみ

文字の大きさ
26 / 167

26.精霊

しおりを挟む
 そこで一旦言葉を切ったグランデルは俺に水を出してくれた。水が入っていたコップは小鬼の村で見たものと同じ木をくりぬいたようなものだった。ダークエルフの村でも木製が中心を占めているのは他の亜人と変わらないのかな。

「プロコピウス。あなたは精霊について何か聞いたことがありますか?」

「はい。エリスさんが水と風の精霊術を見せてくれました。素晴らしい技術ですね」

「ふむ。精霊術は技術というよりは祈祷ですね。それはともかく、ダークエルフは他の種族より精霊の加護が強いのです」

「精霊の加護ですか」

「はい。他種族ではせいぜい加護があっても一種なんですが、ダークエルフでは二種の精霊から加護を受けます」

「精霊に種類があるんですか?」

「ええ。精霊には地水火風に太陽と月。太陽は光、月は闇と言われることもありますね。精霊術は加護を受けた精霊に働きかけることで行います」

「精霊にも好みがあるってことなんですか?」

「おおむねその通りです。エリスの場合は水と風の精霊から加護を受けています」

 この世界には精霊なるものが居て、気に入った人に加護を与えているのかな。ダークエルフは精霊のお気に入りで、二種類の精霊から加護を受けると。精霊はお願いすることで、エリスがやったような火消や電話のような力を行使してくれる。
 精霊にどのようなことをやってもらうかってのが精霊術。だいたいこんなところか。

「なるほど。分かりやすい説明ありがとうございます」

「精霊にも相性がありますので、水と火の加護を持つダークエルフは非常に稀です」

「なんとなく分かります。火と水は打ち消し合いますものね」

「ええ。そうです。ダークエルフは二つの加護を受ける分、精霊には他種族より敏感です」

「より鋭敏に精霊の加護を感じ取れるってことですね。他人の精霊の加護についても分かるのですか?」

「鋭いですね。その通りです。そして、精霊の中でも太陽と月の精霊は、人を引き付ける力を持ってます」

 なんとなく先が読めて来たぞ。俺はきっと太陽か月の精霊を宿しているんだ。だから、ダークエルフ達に敵意を持たれないんじゃないだろうか。

「ひょっとして、俺が太陽か月の精霊の加護を受けてるんですか?」

「ええ。その通りです。本当にあなたは聡い」

「だから、人間なのに俺はダークエルフに敵意を持たれなかったと」

「人間が精霊の加護を持っていること自体稀です。まして太陽や月を持つ人間は私の知る限りあなた以外に唯一人です」

 これは想像がつく。俺のことはともかく、規格外のことと言えば彼に違いない。

「それはベリサリウス様ですか?」

「はい。そうです。ベリサリウスは太陽の加護を持っています」

 やはりベリサリウスだった。太陽の加護を持つからエリスも嫌悪感なく彼に接し、ついにはあんな可哀そうな状態になったんだろう。恋もいいけど彼女には、もうちょっと周りを見て欲しいなあ。

「ただ、私はベリサリウスなら会う気はありませんでした」

 何だって! 何故俺に?

「それは一体?」

 ガタリとグランデルは立ち上がり、これまでの落ち着いた態度から一転して、両手を広げ若干頬が紅潮すると、熱く俺に語り始める。

「あなたは、あなたこそ。私たちダークエルフでも、私たちが隔意を持つエルフでも成しえなかった、加護を受けているんです!」

「特殊な精霊なのですか?」

 いきなり興奮しだしたグランデルに若干引き気味の俺は、顔を引きつらせながら彼に問う。

「いえ、そうではありません! プロコピウス。あなたは太陽と月の加護を受けているのです!太陽と月は不倶戴天と言われ、決して同じ人物に加護を与えないのです! 我々ダークエルフやエルフを引き付けてやまない太陽と月の精霊......私はエリスからあなたのことを聞いたとき、すぐにでも会いたいと思いました」

「俺が人間でもですか?」

「あなたが人間ということは些細な事でしかありません。私はあなたに会った時、無条件であなたに協力しようと思ってしまいました。それほどのものをあなたは持っているのです」

 何故俺が太陽と月、両方の加護を持っているのか不明だけど、ダークエルフでさえ持ちえない加護持ちだったため、グランデルは会ってくれたわけか。

「俺はそんな大した人間ではありませんが......」

「いえ、私はあなたに会って確信しましたよ。あなたの謙虚さは人間には持ちうぬものだと。そんなあなただからこそ、精霊は加護を与えたのだと」

 うああ。べた褒めされて頬が熱くなる。みんながみんな俺を持ち上げるけど、俺はそんな大した人間じゃないんだ。プレッシャーが......まあベリサリウスから受ける無茶振りに比べれば全て色あせるが。
 こうしてダークエルフの協力を俺は取り付けることができたのだった。


◇◇◇◇◇


 ダークエルフの族長――グランデルの家から出て来た俺を待ち構えていたエリスとティンは期待の籠った目で俺を見ている。

「どうだったの?」

 エリスが胸の前で腕を組んだ格好で聞いてくる。相変わらずおっぱいが腕の上に乗っかっている。たまに下から掬い上げたくなる衝動に駆られるが、もしやったら俺の首が締まるだろう......

「グランデルさんは協力してくれると言ってました」

「まあ、あなたの頼みなら当然ね」

 エリスは満足したように頷くが、ティンは驚きで目を見開いていた。

「ダークエルフが協力してくれるんですか! すごい! さすがピウス様!」

 興奮し腕を振り上げたティンは、俺の前でピョンピョン跳ねる。だから、そんなに褒められると照れるって。

「ただ、俺の下に付けると条件がつきましたが」

「慎重なグランデルらしいわ。あなたの下なら問題も起きないでしょうし」

「しかし、衝撃でしたよ。俺の加護が」

「あなたは精霊も見えないようだけど、私にとっても衝撃だったのよ。あなたの加護」

 知ってるなら事前に説明してくれてもいいのに。全くエリスらしいと言えばそうなんだけど、交渉はドキドキだったんだぞ。下手したら無礼打ちでもされるんじゃないかと思ったくらいだし。

「ピウス様のご活躍で、周辺に住む亜人全ての協力を取り付けましたね!」

 ティンの言う通り、これで人材集めは一旦終わりだ。次はローマの建設に注力していこう。
 俺たちは飛龍に乗り込み、ダークエルフの村を後にした。


 ローマに帰る途中ふと気になったことから、前方で飛龍の手綱を握るエリスに聞いてみることにしたんだ。

「エリスさん、俺には加護があるんですよね?」

「ええ。太陽と月という規格外の加護があるわよ」

「俺にも精霊術って使えるんですか?」

「うーん。頑張れば何とかなるんじゃない? これから来るダークエルフに聞いてみなさいよ」

 エリスは自分では教える気は一切無いらしい。彼女らしいと言えば彼女らしいけど。彼女の言う通り、ダークエルフが俺の下につくからその時でも構わない。
 急いでエリスに聞いたところでそう変わるものでもないだろうし。

「あ、でも。精霊が見えないなら、結構困難よ」

 ボソっとエリスが呟いたが、しっかりと俺に聞こえてるって......精霊が見えないといけないのか。加護があるってことは精霊がいつも俺のそばにいるのかなあ。うーん。

「ピウス様! 私も精霊が見たいです。ハーピーは全員風の精霊の加護があるって聞いてます!」

 ティンにも精霊は見えないのかあ。ひょっとして彼女が飛べるのは風の精霊の加護か? なら、見えなくても精霊術使えそうだよね? 分からん。
 そんな会話を交わしているうちに、ローマが見えて来た。
 そろそろ、勧誘した亜人たちも到着し始めるだろうから、頑張らないと!

【後書き】
 プロコピウスにも才能があった! 他力本願だけど。
しおりを挟む
感想 20

あなたにおすすめの小説

おばちゃんダイバーは浅い層で頑張ります

きむらきむこ
ファンタジー
ダンジョンができて十年。年金の足しにダンジョンに通ってます。田中優子61歳

異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!

椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。 しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。 身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。 そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!

地味な薬草師だった俺が、実は村の生命線でした

有賀冬馬
ファンタジー
恋人に裏切られ、村を追い出された青年エド。彼の地味な仕事は誰にも評価されず、ただの「役立たず」として切り捨てられた。だが、それは間違いだった。旅の魔術師エリーゼと出会った彼は、自分の能力が秘めていた真の価値を知る。魔術と薬草を組み合わせた彼の秘薬は、やがて王国を救うほどの力となり、エドは英雄として名を馳せていく。そして、彼が去った村は、彼がいた頃には気づかなかった「地味な薬」の恩恵を失い、静かに破滅へと向かっていくのだった。

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

最上級のパーティで最底辺の扱いを受けていたDランク錬金術師は新パーティで成り上がるようです(完)

みかん畑
ファンタジー
最上級のパーティで『荷物持ち』と嘲笑されていた僕は、パーティからクビを宣告されて抜けることにした。 在籍中は僕が色々肩代わりしてたけど、僕を荷物持ち扱いするくらい優秀な仲間たちなので、抜けても問題はないと思ってます。

ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います

とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。 食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。 もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。 ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。 ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。

Sランクパーティを引退したおっさんは故郷でスローライフがしたい。~王都に残した仲間が事あるごとに呼び出してくる~

味のないお茶
ファンタジー
Sランクパーティのリーダーだったベルフォードは、冒険者歴二十年のベテランだった。 しかし、加齢による衰えを感じていた彼は後人に愛弟子のエリックを指名し一年間見守っていた。 彼のリーダー能力に安心したベルフォードは、冒険者家業の引退を決意する。 故郷に帰ってゆっくりと日々を過しながら、剣術道場を開いて結婚相手を探そう。 そう考えていたベルフォードだったが、周りは彼をほっておいてはくれなかった。 これはスローライフがしたい凄腕のおっさんと、彼を慕う人達が織り成す物語。

僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた

黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。 その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。 曖昧なのには理由があった。 『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。 どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。 ※小説家になろうにも随時転載中。 レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。 それでも皆はレンが勇者だと思っていた。 突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。 はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。 ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。 ※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。

処理中です...