無双将軍の参謀をやりながら異世界ローマも作ってます

うみ

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82.プロコピウス(本物)

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「はじめましてと言えばいいのかな?」

 美丈夫は優雅な仕草で俺に挨拶をしてくる。

「あなたは?」

 俺はジーパンに白のロンTを着用した、ギリシャ彫刻のような美丈夫の青年に声をかける。

「私かい? 私は君だよ」

 青年はパイプベッドに腰かけ、俺に目を合わせる。

 地球の日本にある俺の部屋に美丈夫の青年……違和感しかないぞ。
 それにしても、ジーンズにTシャツでここまでカッコよく見えるとか……くやしい!

 俺が心の中で「イケメンは爆発しろ」と呪詛のように唱えてるとはつゆしらず、青年は華やかに声をかける。

「君は私が何者だと思ってるんだい?」

 夢の中だと思ってハッチャケていたけど、これは異常な光景だ……この美丈夫はプロコピウスその人だろう。
 この世界――ブリタニアに来て以来、異常事態続きだったから、夢ならいいだろと軽く構えていた。
 ダメだ。こんな緩んでいてはいつか命に関わるぞ。

「あなたはプロコピウスじゃ?」

「そうだとも。私は君で君は私だよ」

「あの戦闘の時、助けてくれたのはプロコピウスさん、あなたですよね?」

「そうだとも。無粋だと思ったが、助力させてもらった。迷惑だったろう。すまぬな」

「いや! そんな事は無いです! 俺は剣を握った事も無くて」

「君ならばすぐ使い手になるとも。それにこの体が剣技を覚えている。私なぞいなくとも戦えるさ」

 うーん。例え体が動くにしても判断力とか恐怖心はどうしようもないだろ! この人もベリサリウスやエルラインと同じで、俺を過大評価している……全くどいつもこいつも!

「荒事になったら助けて欲しいです……」

「そうだった。君の美徳はその謙虚さだったな。そう言ってくれるなら、喜んで手を貸そうじゃないか」

「ありがとうございます! いろいろ聞きたい事があるんですけど……」

「私に分かる事は少ないが、分かる事なら答えよう」

「えっと、プロコピウスさんでいいんですよね?」

「そうだとも。君もまたプロコピウスだがね」

「お、同じ名前だとややこしいですね……俺の事はとみ……いやトミーと呼んで下さい」

「トミーか。君こそプロコピウスで、私の事は影とでも呼んでくれればいいのだが」

「ま、まあ。この体はプロコピウスさんのものですよね? 俺とあなたはこの体の中でどうなってるんです?」

「私の推測で良ければ……」

「ぜひ。お願いします」

「推測だが……君はこの部屋で生きていた時から、私の記憶を見ていただろう?」

「なぜその事を?」

「君は覚えてないようだが、君はこの世界に来てからも私の記憶を見ていたのだよ」

 そうだったのか! 全く覚えてないぞ。毎日の緊張感から、床についたと思ったらすぐ朝だったもんなあ。
 て事は、彼は俺がブリタニアに来てから同じ時を共有していたのかな?

「ええと、俺がここに来て以来、あなたはこの体に?」

「いかにも。私も気が付いたら此処に来ていたのだよ」

「じゃあずっと俺が何してたのか見ていたんですか?」

「その通りだ。ずっと君を見ていた」

 うわあ。俺の心の動きまで把握してたのかなあ。恥ずかしい。
 俺が赤くなってうつむいてるのを見て察したのか、プロコピウスは苦笑しながら俺に口を開く。

「心配していることは想像がつく。君の心の声は聞こえていないから安心して欲しい。どう言えばいいのか、君が私の記憶を見ているような感覚と言えばいいかな」

 なるほど。映画のように、この体から感じられる映像と音声のみ分かるということか。
 
「すいません。話が横にそれてしまって。あなたの推測を聞かせていただけますか?」

「この体……は私の体だろう。全て憶測に過ぎないが……」

 プロコピウスの推測はこうだ。元々俺とプロコピウスの魂は繋がりがあったから、俺が地球にいる頃からプロコピウスの体験を夢で見ていた。そこへこの世界の召喚儀式で呼び出されたプロコピウスに俺の魂が引っ張られたのではないか? ということだった。
 ベリサリウスとナルセスの例を見るに、召喚の儀式は皆自らが死んだ記憶を持っている。つまり、死亡した後の魂を呼び出し若い頃の肉体を形成するってことだ。
 若い肉体に老練な経験を持つ精神の組み合わせ。しかも地球の歴史が誇る英傑達だから、その強さは魔法を使えないとは言え破格のものだろう。
 プロコピウスも彼らと同じで死後の魂が召喚の儀式で呼び出され、若い頃の肉体が形成された……しかし、プロピコピウスと魂の繋がりがあった存在まで一緒に引っ張ってしまった。それが俺だ。
 じゃあなんで肉体の主導権が本来の持ち主であるプロコピウスではなく、俺なんだって言うと俺の魂が生者の物だったからだとプロコピウスは推測している。

「なるほど……しかしあなたはいつでもこの体の主導権を取れたのでは?」

「例えそうだとしても、私にそのつもりはないよ」

「せっかく生きて体も若返ったのにですか?」

 俺は知っている。プロコピウスに戦ってもらった時、彼がベリサリウスに褒められ体が歓喜に支配されたことを。ベリサリウスが傍に居て、ローマ時代と違いベリサリウスも人間関係に悩まされずみんなから尊敬されている。
 プロコピウスもこの世界でベリサリウスへ付き従えればどれだけ幸せなことなんだろうか。俺には体の主導権を奪わない理由が分からない。
 
「トミー。私はね。今度こそベリサリウス様には幸せになってもらいたいのだよ。私ではダメだった。君ならあるいはと思ったのだ」

「俺なんかよりプロピウスさんの方がよっぽど役に立ちますよ」

「当初、私は君がベリサリウス様に害をなすなら力づくでも体の主導権を奪おうと動くつもりだった。しかし私は君ならばと思ったんだよ」

「俺は戦闘も政治も素人ですよ……」

「私は君をこれまでずっと見て来た。その結果、君ならベリサリウス様を幸福に導くことが出来ると確信したのだよ。さらにはベリサリウス様だけでなく、亜人全てを幸福へ導くだろう」

「そんなことは……」

「君は政治や軍事の能力が無いと自己嫌悪に陥ってるようだが、そんなことは些細なことなのだ。君は誠実で謙虚という美徳を持ち、和を重視し敵を作らない。そのありようがここでは必要だよ」

「そんな理由で……あなた自身の幸せはどうなんですか?」

「こう言っては何だが、私自身故人なんだ。君は生者だろう。死者が生者の時を奪うのは正しい事じゃない。それに私は君の目を通じて目に入る風景にとても幸福を感じているよ」

「それでも……たまには体を使ってください。約束ですよ!」

「全く君はどこまでも……」

 プロコピウスは肩を竦めて苦笑すると、何か思いついたように手を叩く。何だろう?
 
「トミー。君は恋愛に躊躇しているようだが、私には気にせず謳歌して欲しい」

 吹いた! た、確かに最近ティンやカチュアと風呂に一緒に入ったりしてたけど……

「い、いや……」

「全く君は奥手だな。君の好きな二人を寵愛しないのかい?」

 二人って……二股を進めてくるなー! ああ、彼らの感覚だと特に問題ないのか? いやでも。俺のモラルが許さねえ。

「恋人は一人以上要りませんよ!」

「じゃあ君はどちらを選ぶのかな。楽しみにしていようか」

 ケラケラと笑い、俺をからかってくるプロコピウス。何かエルラインを想像してしまった。

「ティンでもカチュアでも選べませんよ! 俺はまだ恋人を作る余裕なんてないんです!」

 いーっと口を横に広げ威嚇すると、プロコピウスはさも意外そうな顔を俺に向ける。
 
「カチュアも好んでいたのかい。三人か。君も奥手だと思ったらなかなか」

「三人ってあと誰なんですか?」

「え? エルラインだろう? いつも一緒にいるじゃあないか」

「エルラインは男じゃないですか!」

「そうだとも。何か問題があるのかな?」

 うああああ。そうか! プロコピウスはローマ人だった。ローマは同性愛に寛容なんですよー。ってそんなことどうでもいいわ! 俺はこの後プロコピウスの誤解を解くため暫くの間、彼と話す事になった……
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