無双将軍の参謀をやりながら異世界ローマも作ってます

うみ

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133.第二部完結 ベリサリウスの婚儀

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 夜に何度かエリスから叫び声が頭に届いて目が覚めたので、寝起きの気分はすこぶる悪い。
 浮かれるのはいいんだけど、俺に遠隔会話をするな!

 とりあえず顔を洗ってキャッサバパンと牛乳を飲もう。
 牛乳は保管が効かないのが難点だよな。すぐヨーグルトになってしまう。井戸水に浸しておけば一日は持つんだけど、ローマは亜熱帯気候だから常に気温が高いのだよ。だからすぐ食べ物が腐る。水の精霊術で冷やし続けることは出来るけど人力でずっとってのは現実的な保管方法じゃないよな。

 それでも乳製品がローマで食べられるようになったのはとても嬉しいよ。ラヴェンナではすでに牛と鶏を飼育しているけど、少し前に牛と鶏をローマにも連れて来たんだ。

 お試しということで少数しか連れて来てないけど、ローマ郊外の牧場で人間の牧場主が飼育してくれてる。
 俺たち魔の森の街では牛の肉は食べない。牛は乳牛から取れる牛乳のみ使い、肉は草食竜と鶏や狩猟で獲った獣類が食用となる。

 草食竜の肉は豚肉の味に似ている。イメージ的に鶏肉に似てると思ったんだけど食べてみてビックリしたよ。
 ブリタニアには豚がいないけど、都合よく豚肉に似た草食竜の肉がある。

 朝から忙しなく動いているわけなんだけど、もちろん急ぐ理由はある。それは……エリスから呼び出しを食らってるからなんだよ!
 たぶんベリサリウスにエリスとの結婚の話を告げられるんだろうけど。

 エリスが30分ごとに遠隔会話で急かすからたまらんぞ。こっちが言い返せないのをいいことに言いたい放題だよほんと!
 俺は少しイライラしながら、キャッサバパンをかじり、牛乳でパンを胃に押し込む。

 の、喉が詰まった!
 残りの牛乳を飲み、喉に詰まったパンを流す、流す。

 ハアハア。さあ、行くか。

 ベリサリウス邸の扉を叩くとエリスとベリサリウス二人が出迎えてくれて、少し恐縮してしまったがそのまま中へ案内される。
 今日は執務室ではなく、リビングに案内され俺達は腰かける。なるほど。用向けが仕事じゃなくプライベートだからリビングってわけだな。
 俺が着席するとエリスは俺に目くばせをした後、部屋を出て行った。
 
「プロコピウス。朝早くから済まぬな」

「いえ、どうか気になさらず呼び出して下さい」

 ベリサリウスは一度深く頷くと、改めてこちらに向きなおる。

「まずはお前に感謝を。あれからエリスとすぐに話をしたのだ」

「そうでしたか」

 知らなかったかのように言っているが、エリスの執拗なまでの遠距離会話でうんざりするほど話は聞いている。

「エリスと婚儀をあげることにした」

「お二人ともおめでとうございます!」

 俺は立ち上がり二人を祝福すると、ベリサリウスは少し照れたように自身の髪を撫でる。

「しかしだなプロコピウス。婚姻の儀は行わないでおこうと思っているのだ」

 ん? まさか恥ずかしいから嫌だって理由じゃないだろうな……ベリサリウスに限ってそんなことは無いと思うけど。

「婚姻の儀を延期するってことですか?」

「婚姻の儀をしたく無いというわけでは無いのだ。プロコピウス」

「深い理由がおありなんですね」

「うむ。私の中にあるつまらぬケジメに過ぎないのだが……」

 ベリサリウスはローマを護る者として、これから行われるだろう聖王国との決戦が終わってから結婚式を行いたいと俺に説明する。

「ローマの護民官としてローマを護る決意のためでしょうか」

「くだらぬ拘りなのだがな。エリスをローマを平和に導くため、自身を奮い起こすことに婚姻の儀を……本当にくだらぬな」

 要は婚姻の儀というご褒美を自身に課すことでより頑張れるって事だよな。何も悪く無いし、むしろそこまで追い込まなくていいのにと心配になるんだけど……

「いえ、ベリサリウス様の覚悟。しっかり受け止めました!」

 俺はベリサリウスをじっと見つめ、敬礼すると、彼も立ち上がり俺に返礼する。
 うん、俺とベリサリウスはこれでいい。これがいい。言葉など要らない。そんなもの無くとも彼の信頼感が俺に伝わってくる。
 本当はプロコピウスじゃない俺だけど、ブリタニアに来て以来ベリサリウスと接している事で俺は彼に絶大な信頼を寄せるようになった。

 彼の実直な人柄は突然ブリタニアに来た俺へどれだけの助けになったか。
 少なくとも俺は彼を裏切る事はしない。彼もそうだろうか。ブリタニアで一番尊敬する上司であり親友と勝手に思うことを許してくれ。

「話はこれだけだ。これからも頼むぞ。プロコピウス!」

「はい!」

 できればエリスに会ってやってくれと言われたので、外で待っていたエリスと少し会話するが、恋愛モードが酷すぎてトリップしていたから俺は隙を見て退散することにした。

 ベリサリウス邸を後にして自宅に帰る途中、珍しくプロコピウス(本物)が声をかけてきた。もちろん実際に声が出るわけでは無く、心の中での会話だけどね。

<トミー。本当に本当に君に感謝している>

<感謝されるような事はしてないよ>

<ベリサリウス様があれ程満足された姿を見たのは久しい。君のお陰だ>

<エリスさんとの仲を取り持っただけですよ。俺は>

<そうじゃない。そうではないぞ。トミー。君のやってきた足跡こそ、ベリサリウス様の今を引き出したのだ>

<そ、そうかな。俺も頑張れたのかな>

<そうだとも! 君で良かった。いや、君でなくてはならなかった。君へ最大の感謝を>

 ここまでべた褒めされると、ものすごく照れるけど……言われて悪い気はしない。俺がやって来たことを認めてくれる。それもずっと俺を見ていた偉人からとなるとこれほど嬉しい事はない。

 まだ最大の山場が残っているけど、ローマのみんなのため、ベリサリウスの幸せな結婚式のため、愛する全ての者のため……そして何より俺自身のために乗り切ろう。この難局を。

 きっと俺たちなら大丈夫。そう信じて明日から歩いて行こう。
 聖王国は強大だ。しかし何も心配する事はない。俺たちにはベリサリウスがいるのだ。何も問題ない。
 
 俺は両手を広げ軽く伸びをすると、再び歩き始めるのだった。
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