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4.虫はちょっと
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落ち着け。こういう時は焦ってはいけない。
自分のお腹に手を当てつつ、島の書をペラペラとめくる。
ネコジャラシ以外にもいくつか食べられる野草を見つけていたはず。生で食べることができるのかは不明……。
「ええと、ハコベ、シロネグサ、ナズナ……全部葉っぱばっかりだな。土を掘り返してみないとジャガイモみたいな芋類は発見できないよなあ……」
実はこれ以外にも食べられるものを発見している。
ただ病院暮らしの長かった僕にとって口に含むには相当な覚悟がいるものなんだよね。
こういうやつだよ。
『カミキリムシ
幼虫は可食』
『ミールワーム
クリーミー』
何でこれを島の書に乗せたんだって話なんだけど、興味本位というか危険が無いか確かめるため木の棒で挟んで本に当ててみたというわけなのだ。
もし毒を持っていたりしたら、うかつに触れないように注意しなきゃいけないだろ?
それがまさかまさか、食べることができるなんて。
カミキリムシの幼虫とミールワームはどちらも白いイモムシである。
そのままぶちゅっと潰して食べる……無理だああああ!
はあはあ。
「あれやこれや好き嫌いを言っている場合じゃないのは分かるのだけど、無理なものは無理だ……」
人間、本当の危機に陥った場合は何でもできるというから、飢餓状態になったら食すことができるかもしれない。
だが、今ではない。
「カピー。僕に残された道は三つ」
「きゅっ」
カピーの頭を撫でたら片目だけ開いて可愛らしく鳴く。
彼に聞いてもらったところで、彼が僕の言葉を理解するわけではない。だけど、声に出すことで自分の考えを整理することができる……かもしれない。
太陽が真上に近くなってきて、焦りだけが募ってくる。
こんな時こそ落ち着いて自分のペースを落とすべきなのだ。じれったいけど、病弱だった頃は次へ次へとやってしまったためにぶっ倒れてしまうことが何度もあった。
急いては事を仕損じるを身をもって体感しているのが僕である。
そんなわけで指を一本立て、カピーへ語りかけた。
「一つ。火起こしの手段を確立し、魚と野草を楽しむ。これが最善」
火起こしの手段は火打石方式か摩擦熱、あとは虫眼鏡方式あたりだろうか。
クラフトを上手く使えばいけるかもしれない。だけど、どれくらいの時間を要するかの見積をできないことが難点か。
「二つ。木の実みたいなそのまま食べられるものを探す」
これが最も現実的な手段かな。探しながら火起こしの手段も同時に見繕うのがよさそうだ。
僕はクラフト以外にも採集と釣りに特性を持つ。
採集なら既に行っているのだけど、クラフトみたいに手が光ることがなかった。使えるアイテムが見つかりやすくなるとかそういう特性かもしれない。
三つ目は、最初に戻る……イモムシはご勘弁願いたいところ。最悪、明日の夜までに何も成果がでなければ、今は考えることをしないでおこう。
◇◇◇
枯れ木や火種となる綿のような植物性の何かやら乾燥した落ち葉を拾って小屋に運びつつ、探索を続ける。
この島に転移したのが昨日の15時ごろだとするとようやく丸一日が経過したってところか。
この頃になって僕はようやく自分の体が健康体になっていることを確信していた。
水分補給だけで朝からずっと動きっぱなしにも関わらず、空腹以外に変調が無い。以前の自分なら想像がつかない体力だ。
埃ぽい空気を吸おうがぜんそくが発症することもないし、試しに軽く走ってみたのだけど胸が痛むこともなかった。
食べ物さえ見つかっていない現状だけど、健康体を意識すると無性に嬉しくなってくる。
ここでは何をするにも簡単にはいかない。だけど、自由に動け痛まぬ体がある。便利で何不自由ない暮らしよりも、不便であるが元気な方がよほどいい。
イモムシを食べる勇気はまだないけどね……。
お。落ち葉に紛れて緑色の果実があったぞ。
大きさはビワの実くらいかな。
「お、おお。当たりだ。クルミだって!」
黒曜石のナイフで緑の実を切ってみたら中から茶色い殻が出てきた。
この殻を割って中の種がクルミってことだな。
近くにいくつも転がっていたので緑の実の状態のままポケットに詰め込む。
この辺りは高木が多く、他にも何か果物がないかと少し進んで立ち止まり見上げて枝を確認する動作を繰り返し探索を続ける。
「こいつはスモモか。よし、今日のところはクルミとスモモがあればよいかな」
スモモを両手いっぱいに抱えて小屋へと戻った。
クルミはそのままだと食すことができない。堅い殻があるからね。
手頃な岩を用意してクルミの殻を割ろうと石を握った時に緑色に光った。
すると、オートでクルミの殻が割れていく。
いいね! 地味だけどとても便利だ。
クルミの殻を割ったことで感動している間にハプニングが起こる。
ヤカンに水を張って中にスモモを放り込んで後で洗おうと思っていたら、いつの間にやら起き上がったカピーが前脚でヤカンを倒してしまったんだ。
哀れスモモが水と一緒に外へ転がってしまった。
カピーはすんすんと鼻をつけパクっとスモモを食べている。
「お腹が空いていたのか?」
「もしゃもしゃ……」
カピーは癒し系の鳴き声を発することもなく、スモモを完食すると次のスモモを食べ始めた。
彼の食べる姿に癒されていたが、ハッとなり自分の分を二個だけ確保する。残りはカピーに食べてもらうことにしよう。
余談であるが、スモモはとても酸っぱかった。クルミは食べなれた味といったところ。
スモモとクルミだけとはいえ、拾い集めに行けばまだまだ量がある。これだけで栄養価は足りないが、食糧確保を急ぐ必要がなくなった。
「そんなわけで、蔓やら木の枝を集めてきました」
誰に向けて言ったわけでもないのだけど、様式美というやつだ。気にしないで欲しい。
かなり曖昧な記憶で正確な構造は分からないのだけど……クラフトの特性があればひょっとしたらと思って。
蔓と枝に手を当てイメージする。
よっし、緑色に光ったぞ。
枝が弓のようになり、矢がつがえられる。
矢は弓の中央部を貫通する形になっていて、蔦が巻き付けられていた。
お、おお。良い感じじゃないかな。
クラフトの特性で削った板とふわふわの乾燥した植物を置いて、そこに矢の先をあてがう。
「よいっしょっと」
弓を下へ押し込むとその力が蔦を伝って矢に回転の力を加える。
弓を上に戻し、再び押し込むを素早く繰り返した。
すると火種となるふわふわから煙があがり、あっという間に火が付く!
火が消えないように集めておいた枝をくべ焚火にできた。
「おお、うまくいったぞ。竈を作っておいた方がいいな」
といってもレンガとかはないし。いずれ岩を集めてきて竈もどきを作ることにしようか。
今日のところは火起こしができただけでも満足だ。
火を使った料理は明日への楽しみにとっておくとして、クルミとスモモを集めて夕飯にしようかな。
その日の晩――。
『すたーたす
クラフト 熟練度3
採集 熟練度5
釣り 熟練度0
今日の成果 島の書にたくさんのものを埋めた』
カピーが投影してくれた「すたーたす」を眺め、うんうんと頷く。
採集は意識しなくても発動する特性と捉えればよいみたいだ。クラフトは分かりやすいんだけどね。
『デイリーガチャを引きますか?』
「うん」
『どこどこどこどーん』
宝箱を開けてみると、中には100円ライターが入っていた……。
え、えええ。火起こしを頑張ったのに。
自分のお腹に手を当てつつ、島の書をペラペラとめくる。
ネコジャラシ以外にもいくつか食べられる野草を見つけていたはず。生で食べることができるのかは不明……。
「ええと、ハコベ、シロネグサ、ナズナ……全部葉っぱばっかりだな。土を掘り返してみないとジャガイモみたいな芋類は発見できないよなあ……」
実はこれ以外にも食べられるものを発見している。
ただ病院暮らしの長かった僕にとって口に含むには相当な覚悟がいるものなんだよね。
こういうやつだよ。
『カミキリムシ
幼虫は可食』
『ミールワーム
クリーミー』
何でこれを島の書に乗せたんだって話なんだけど、興味本位というか危険が無いか確かめるため木の棒で挟んで本に当ててみたというわけなのだ。
もし毒を持っていたりしたら、うかつに触れないように注意しなきゃいけないだろ?
それがまさかまさか、食べることができるなんて。
カミキリムシの幼虫とミールワームはどちらも白いイモムシである。
そのままぶちゅっと潰して食べる……無理だああああ!
はあはあ。
「あれやこれや好き嫌いを言っている場合じゃないのは分かるのだけど、無理なものは無理だ……」
人間、本当の危機に陥った場合は何でもできるというから、飢餓状態になったら食すことができるかもしれない。
だが、今ではない。
「カピー。僕に残された道は三つ」
「きゅっ」
カピーの頭を撫でたら片目だけ開いて可愛らしく鳴く。
彼に聞いてもらったところで、彼が僕の言葉を理解するわけではない。だけど、声に出すことで自分の考えを整理することができる……かもしれない。
太陽が真上に近くなってきて、焦りだけが募ってくる。
こんな時こそ落ち着いて自分のペースを落とすべきなのだ。じれったいけど、病弱だった頃は次へ次へとやってしまったためにぶっ倒れてしまうことが何度もあった。
急いては事を仕損じるを身をもって体感しているのが僕である。
そんなわけで指を一本立て、カピーへ語りかけた。
「一つ。火起こしの手段を確立し、魚と野草を楽しむ。これが最善」
火起こしの手段は火打石方式か摩擦熱、あとは虫眼鏡方式あたりだろうか。
クラフトを上手く使えばいけるかもしれない。だけど、どれくらいの時間を要するかの見積をできないことが難点か。
「二つ。木の実みたいなそのまま食べられるものを探す」
これが最も現実的な手段かな。探しながら火起こしの手段も同時に見繕うのがよさそうだ。
僕はクラフト以外にも採集と釣りに特性を持つ。
採集なら既に行っているのだけど、クラフトみたいに手が光ることがなかった。使えるアイテムが見つかりやすくなるとかそういう特性かもしれない。
三つ目は、最初に戻る……イモムシはご勘弁願いたいところ。最悪、明日の夜までに何も成果がでなければ、今は考えることをしないでおこう。
◇◇◇
枯れ木や火種となる綿のような植物性の何かやら乾燥した落ち葉を拾って小屋に運びつつ、探索を続ける。
この島に転移したのが昨日の15時ごろだとするとようやく丸一日が経過したってところか。
この頃になって僕はようやく自分の体が健康体になっていることを確信していた。
水分補給だけで朝からずっと動きっぱなしにも関わらず、空腹以外に変調が無い。以前の自分なら想像がつかない体力だ。
埃ぽい空気を吸おうがぜんそくが発症することもないし、試しに軽く走ってみたのだけど胸が痛むこともなかった。
食べ物さえ見つかっていない現状だけど、健康体を意識すると無性に嬉しくなってくる。
ここでは何をするにも簡単にはいかない。だけど、自由に動け痛まぬ体がある。便利で何不自由ない暮らしよりも、不便であるが元気な方がよほどいい。
イモムシを食べる勇気はまだないけどね……。
お。落ち葉に紛れて緑色の果実があったぞ。
大きさはビワの実くらいかな。
「お、おお。当たりだ。クルミだって!」
黒曜石のナイフで緑の実を切ってみたら中から茶色い殻が出てきた。
この殻を割って中の種がクルミってことだな。
近くにいくつも転がっていたので緑の実の状態のままポケットに詰め込む。
この辺りは高木が多く、他にも何か果物がないかと少し進んで立ち止まり見上げて枝を確認する動作を繰り返し探索を続ける。
「こいつはスモモか。よし、今日のところはクルミとスモモがあればよいかな」
スモモを両手いっぱいに抱えて小屋へと戻った。
クルミはそのままだと食すことができない。堅い殻があるからね。
手頃な岩を用意してクルミの殻を割ろうと石を握った時に緑色に光った。
すると、オートでクルミの殻が割れていく。
いいね! 地味だけどとても便利だ。
クルミの殻を割ったことで感動している間にハプニングが起こる。
ヤカンに水を張って中にスモモを放り込んで後で洗おうと思っていたら、いつの間にやら起き上がったカピーが前脚でヤカンを倒してしまったんだ。
哀れスモモが水と一緒に外へ転がってしまった。
カピーはすんすんと鼻をつけパクっとスモモを食べている。
「お腹が空いていたのか?」
「もしゃもしゃ……」
カピーは癒し系の鳴き声を発することもなく、スモモを完食すると次のスモモを食べ始めた。
彼の食べる姿に癒されていたが、ハッとなり自分の分を二個だけ確保する。残りはカピーに食べてもらうことにしよう。
余談であるが、スモモはとても酸っぱかった。クルミは食べなれた味といったところ。
スモモとクルミだけとはいえ、拾い集めに行けばまだまだ量がある。これだけで栄養価は足りないが、食糧確保を急ぐ必要がなくなった。
「そんなわけで、蔓やら木の枝を集めてきました」
誰に向けて言ったわけでもないのだけど、様式美というやつだ。気にしないで欲しい。
かなり曖昧な記憶で正確な構造は分からないのだけど……クラフトの特性があればひょっとしたらと思って。
蔓と枝に手を当てイメージする。
よっし、緑色に光ったぞ。
枝が弓のようになり、矢がつがえられる。
矢は弓の中央部を貫通する形になっていて、蔦が巻き付けられていた。
お、おお。良い感じじゃないかな。
クラフトの特性で削った板とふわふわの乾燥した植物を置いて、そこに矢の先をあてがう。
「よいっしょっと」
弓を下へ押し込むとその力が蔦を伝って矢に回転の力を加える。
弓を上に戻し、再び押し込むを素早く繰り返した。
すると火種となるふわふわから煙があがり、あっという間に火が付く!
火が消えないように集めておいた枝をくべ焚火にできた。
「おお、うまくいったぞ。竈を作っておいた方がいいな」
といってもレンガとかはないし。いずれ岩を集めてきて竈もどきを作ることにしようか。
今日のところは火起こしができただけでも満足だ。
火を使った料理は明日への楽しみにとっておくとして、クルミとスモモを集めて夕飯にしようかな。
その日の晩――。
『すたーたす
クラフト 熟練度3
採集 熟練度5
釣り 熟練度0
今日の成果 島の書にたくさんのものを埋めた』
カピーが投影してくれた「すたーたす」を眺め、うんうんと頷く。
採集は意識しなくても発動する特性と捉えればよいみたいだ。クラフトは分かりやすいんだけどね。
『デイリーガチャを引きますか?』
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