拝啓、無人島でスローライフはじめました

うみ

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11.拝啓、いろいろあっても僕は順調にガチャを引く

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『デイリーガチャを引きますか?』
「うん」
『どこどこどこどーん』

 結局ニーナは夜までに姿を現さず、小屋に引き返してきたんだ。
 カピーと食事をした後に浜辺まで見に行ったんだけどねえ。
 ここから泡の中までどれくらいの時間がかかるのかとか聞いてなかったから、結構な距離があるのかもしれないよね。
 なんて彼女のことが気がかりでありながらも、宝箱をオープン。
 
「お、軍手か。ありがたい」

 島の探索も進めたいところだけど、明日は麻を集めようかな。
 クラフトの特性があれば、麻袋に縄、ひょっとしたら服やシーツまで作ることができるかもしれないよな。
 麻を採集してそのまま使えるとは思えないのが厳しいところだけど、ね。
 
 ◇◇◇
 
 ――六日目。
 島に来て初めての雨だ。といっても細かい粒が降り注ぐ小雨である。
 これくらいならそのまま外に出ても大丈夫だ。だけど、外で煮炊きをするにはちょっと厳しいかも。
 いざ雨になるとやっぱり屋根を作っておけばよかったと後悔する僕である。
 屋根を作るといっても木材は使えないし、葉と落ちている枝を組み合わせたらなんとかなるか?
 いずれにしろ、外から戻ったら屋内か軒先で暖をとらないと風邪を引きそうだ。
 
「後から考えるかあ。まずは行動。カピーはここで待ってて」

 ベッドの下に潜り込んでお尻だけを出しているカピーにそう告げて外に出る。
 果物ならそのまま食べることができるし、カピーも食べるから丁度いい。
 まずは採集だな。
 
 無事に朝食を済ませた僕は浜辺へ繰り出す。雨の日は浜辺で釣るより磯の方がいいかも、やたらと足をとられる。
 しかし、磯は磯で足を滑らせそうな気も。
 今日のところはニーナがこちらに向かっているはずだし、浜辺のがいいだろ。
 
 竹竿を構え、すっかり慣れた仕草で浮きを投げる。
 5つ数えて、竹竿を引き上げた。
 
「お、幸先よく魚だな」

 平べったい魚が針にかかっている。こいつは海の書に頼らずとも分かるぞ。
 たぶんヒラメだ。
 海の書で確認したら、ばっちり正解だった。ちょっとしたことだけど、嬉しくなってにまあと口角があがる僕である。
 
 びったんびったんと跳ねるヒラメに目を細め……え、えええ。
 バサバサっと着地したカモメが当然のようにヒラメを嘴で突き刺した。
 
「くあ」
「お前も腹が減っていたんだな。それにしても昨日はあんなに食べたってのにすごい食欲だな」

 ガツガツとあっという間にヒラメを平らげてしまうカモメにタラリ額から冷や汗が。
 この分だとまだまだ食べそう。
 
「よっし。そんじゃあ、ま。どんどん釣るとしようか」
「くああ!」

 僕の言葉が分かるはずがないのだが、気合を入れる僕に合わせてカモメも足元で元気よく鳴く。
 カモメも応援してくれていることだし、竹竿を振り上げブンと振る。
 飛距離は目測で35メートルくらいか。もっと遠くへ飛ばすことができるけど、これくらいが丁度良い。この距離ならまだ辛うじて見えるからね。
 ただし波が上にあがると見えない。
 
 よし、かかった。
 竹竿に力を込め、引き上げ――大きな口をした巨大な頭が海から顔を出す。
 
「うああああ!」

 あれ、知ってる。知ってるよおお。有名な奴やで。
 映画にもあった。白い死神ことホホジロザメだ!
 あんなもの引き上げたら、そのまま喰われるかもしれん。
 こんな時、釣りの特性が憎らしい。僕の筋力でも僕を丸のみできそうな大きな鮫だろうが引き上げることができるんだ。
 リリースするにはどうしたらいいのか。
 ダ、ダメだ。竹竿を引いてしまったから、自動的に引っ張り上げてしまう。
 そ、そうか!
 竹竿を離せば。
 ハッとなり、慌てて竹竿から手を離そうとした時、カモメがのっしのっしと僕を守るかのように前に立ち嘴を上にあげた。
 呆気にとられた僕は棒立ちになってしまう。
 
「カモメ、逃げろ!」
「あんちゃん、おいらの後ろに隠れていなよ!」

 どこから? と思ったらカモメの代わりにアッシュグレーの髪色をした少年が僕に注意を促していたのだ。
 彼はボロボロの麻布を巻きつけただけのような服を着ていて、靴をはいていない。髪の毛もぼさぼさでショートボブと言えなくもない髪型をしている。
 次から次へと頭が追いつかないぞ!
 だけど、竹竿だけは手放した。
 
「少年、急いで離れればまだ間に合う」
「え、待てって。大丈夫だって。鮫くらい」

 後ろから少年を抱え横に回避しようとしたが、ゴロゴロと転がってしまった。
 6日前までまともに体を動かせなかった僕が華麗な動きなどできるわけがなかったあ。
 それでも、もう一度彼を抱えたまま転がり、なんとか鮫の斜線からは逃れたぞ。
 
 ところが、ホホジロザメは速度を緩め、砂浜に打ちあがる前に停止した。
 パカッとホホジロザメの凶悪な口が開き、ばさーっと水面から出てくる。
 が、首から下は華奢な体に貝殻ブラジャーだったのだ!
 
「ニーナか?」
「はいい」
「何でそんなホラーになってんだよお!」
「ビャクヤさんが荷物に注意しろって言ったじゃないですかー。だからせめて頭だけでもと思いまして」

 未だに心臓がバクバクしているよ。
 少年の腰から手を離し、彼に手を貸……す前に立ちあがっちゃった。逆に彼に引っ張り上げられてしまう始末。
 憮然とした僕に対し、ニーナは無邪気に両手を振る。
 
「ほらほら、これなら両手があくじゃないですかー」
「まずはその鮫の頭を取りなさい」
「ビャクヤさん、まずいです。首の骨が折れそうです」
「え、えええ! ここまで運んできたんだろ!」
「ヒレから脚に変化させると、か弱くなってしまうんです」
「だったら、あああ。少年、手伝ってくれ」
「う、うん。この姉ちゃん、大丈夫なのか」
 
 ヒレに戻せばいいじゃないか、とか突っ込みを入れているうちにあれれーとか首が逝っちまったらまずい。
 彼女ならやりそうだし。
 慌てて少年と協力して、鮫の頭を彼女から取り外す。重た過ぎだろ、鮫の頭。
 言うまでもないけど、少年の「大丈夫なのか」はニーナの頭の中がってことだぞ。 
 
 軍手をつけていてよかった。鮫のトゲトゲで怪我をしていたところだよ。

「あ、ありがとうございますー」
「絶対に、絶対にもうやるなよ」
「はいい。道中で鮫を見つけて、ビャクヤさんにお土産をと思ったんですう」
「分かった。分かったから、もう何も言うな」

 フルフルと可愛らしく首を振るニーナに向けどうどうと両手を前に出しなだめすかす。
 涙目になりながらも、ようやく彼女の動きが止まった。
 
「ビャクヤさん、ところでその子は?」
「僕も分からない。瞬きしたらカモメがいたところに彼がいたんだ」
「それ、おいらだから」

 え、えええ。
 思わず少年を凝視すると、彼はへへんと鼻の頭を指先でさする。
 カモメが少年になるとは、すんごい世界だな。人魚もいるし、もう何でもありだよ。
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