凄腕の探索者? いいえ、ただの釣り人です~ゲームに似た異世界に転移したが、ただの素材集めキャラなのでのらりくらりと過ごそうと思います~

うみ

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第14話 エフェクトがかっこいい

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「ありがとう、アーニー」
「ひゃい」
 彼女の手を両手で握り、お礼を述べる。対する彼女はお礼を言われるとは思っていなかったのか耳をペタリとさせてしどろもどろになっていた。
「良ければ今日からでも使ってね」
「ですがお二人に許可を」
「俺が良いと言えば二人にも否はないよ」
「わ、わかりましたあ」
 チーズポテトもシュークリームも中身は俺だし、問題ない。
 彼女は了承しつつも今日のところは家に帰ることに。部屋は日用品が何も置いてないから、泊まってよいとなっても戸惑うわな。ゲートの魔法を使えばドアをくぐる距離で彼女の自宅だし。泊まる理由がないか。
「そんじゃ、俺はちょいと外で水浴びしてくる」
「わたしもご一緒します」
「え、ま、まあ、うん、助かる」
「……?」
 ゲームなら必要ないのだが、現実世界になると身体も汚れるし髭も生える。風呂は難しいにしても水浴びくらいはしておきたい。シャンプーやボディソープも近く手に入れなきゃな。
 もちろん、ホームの外にシャワーがあるわけじゃあない。魔法で水を出して頭からかぶろうかと思っていた。アーニーなら魔法で水浴びも慣れているだろうから教えてくれるのかなと思って。

 外に出た。夜でも月明かりがあると動くに支障はないな。街灯を設置しなきゃならんかもと考えていたが無くてもいけそうな気がするぞ。今日みたいに晴れていれば、特に他の灯りは必要ない。むしろ、月明かりのみというのは風流で良いまである。
 さてと、まずは服を脱ぎます。
「て、てんちょお! 服、服」
「え、いや、服を着たままで水浴びはできんだろ」
 まだ上半身裸になっただけだってのに、アーニーが顔を真っ赤にして両手を突き出し左右に手を振っている。
「あ、アーニーも脱げと言っているわけじゃないからね」
「え、いえ、わたしが脱ぐ分には別に」
「いやいや、ついてきてくれたのは魔法を使った水浴びのいいやり方を教えてくれるのかと」
「わ、わたしが参考にしようと思って」
 おっと、期待することがお互いに同じだった。
 うーん、単に水を出して頭からかぶるだけだと、桶で体に水をかけるのと変わらないよな。これじゃあ、体をごしごしとすることもできない。
 あ、もしかしたらこの方法でいけるかも。浮かんだのはアナザーワールドオンラインでモンスターを隔離した時のこと。
「試してみる。うまくいけばもうけものってことで」
 右手を振り、手の平から魔法陣を浮かぶ。
「魔法陣よ、力を示せ。ストーンウォール」
 サイズを調整するのが肝要だ。ストーンウォールは通常そそり立つ壁のようにして出すのだが、角度や大きさも指定できるんだよね。
 最大サイズは決まっていてわざわざサイズしていをする人はまずいない。時間経過で自然消滅するし、自然消滅前に消すことも可能。
 自然消滅前にストーンウォールを消すことは有効な時もあったりした。
 さてさて、真っ黒な石壁であるストーンウォールは地面にかぶさるように出現している。
「さて、まだまだ出すぞ。魔法陣よ、力を示せ。ストーンウォール」
 今度は先ほど出したストーンウォールの上に立てるように石壁を出す。これを都合四つ。
 結果ストーンウォールは蓋のない箱型になった。
「てんちょお! すごいアイデアです!」
「お、察してくれたか、お次は水を出すんだ、この箱……いや湯船の中に」
「でしたら私がお水を暖めます!」
「頼んだ。俺じゃ温度調節に失敗しそうだ」
 魔法で水を出し、アーニーが水を暖める。魔法だと一瞬で終わるんだな。すげえぞ、魔法。
 そんじゃま、失礼して。
 生まれたままの姿になり、かけ湯を……桶がない。ぐ、ぐぬぬ。
 インベントリーにちょうどよい容器があるはず。いそいそと再度服を着て、インベントリーを漁り戻ってくる。
 水桶だけじゃなく奇跡的にタオルまであったんだぜ。
 再び裸になり、今度こそかけ湯をする。
「お、おおお。ちょうどいい湯加減だよ」
「ひゃあいい」
 あ、しまった。風呂を前にしてアーニーのことをすっかり忘れていたぞよ。
 そっぽを向いた彼女が悲鳴をあげているではないか。彼女へのフォローは後回しだ。いい湯加減のうちに風呂に入りたい!
「ふいいいい」
 ちょっと風呂が広すぎたかな。キングサイズのベッドより一回り以上広い。深さはバッチリ。座ると肩まで浸かることができる。俺は深めの方が好きだからこれでちょうどいい。いったい何リットルのお湯が入っているんだろ、これ。魔法だと一発だからなあ。
「失礼します!」
「ちょ! きゃああ」
「裸にならないと服が濡れてしまいます、とてんちょおもおっしゃっていたじゃないですか!」
「タ、タオル、そこのタオルを体に巻いて。四枚くらい持ってきたから」
 バスタオルを余分に持ってきてよかったよ。俺の裸に恥ずかしがっているアーニーがまさか入ってくるなんて思ってなかった。
 彼女を見ないようにして、バスタオルを装着してもらってホッと一息。バスタオルも濃い色かつ厚手でよかった。
 
 ◇◇◇
 
 翌朝、朝日が出る頃にアーニーがホームに戻ってきて、探索者たちの見送りに彼女も参加してくれたんだ。
「世話になった」
「これから街まで?」
「そのつもりだ。ここから一番近いコンラッドを目指すつもりだぜ」
「目指す? 歩いて行くの?」
 虎頭に聞き返すと、三人が狐につままれたような顔になる。
 ん、何か変なことを言ったっけ。あ、コンラッドとやらの街に誰もマークをしていないのか。
 だったらわざわざ歩くよりマークしてある街へ移動した方が楽だと思うのだが。
 そんな俺に対し、エルフィーが補足してくれた。
「私だけならコンラッドまで移動できるんだけど、ウォーレンは戦士だし、ゲニラは魔法使いだから」
「そうなんだ。なら歩いて行くしかないってことなんだな」
「そういうこと。道案内ちゃんも魔法で移動できるんでしょ、彼女はコンラッドより遠いアーモンドアイって聞いているし」
「うん、アーニーは魔法で移動できるよ」
 話を合わせつつも、俺の頭は大混乱中である。遠くへの移動魔法の定番はゲートだ。俺の中で移動魔法といえばゲートなのだが、実のところ別の魔法でも移動できるものがある。それは古代魔法とは別系統の魔法である精霊術なんだよね。
 精霊術にエアリアルコールという魔法があって、遠くまで一瞬で移動することができる。しかし、ゲートと異なり、移動できるのは本人のみだ。
 しかも、晴れている日かつ屋外かつ地上でしか発動しない制約がある。ダンジョンの中でも家の中でも魔法が発動しないし、雨でもアウトとなったら使い辛いったらありゃしない。
 エフェクトがかっこいいのが唯一の利点だな、うん。
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