凄腕の探索者? いいえ、ただの釣り人です~ゲームに似た異世界に転移したが、ただの素材集めキャラなのでのらりくらりと過ごそうと思います~

うみ

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第13話 魔法の粉

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「あ、お腹空いてない? ちょうど肉を焼いていたんだ」
「ありがたく、ご相伴にあずからせていただくかの」
 ワニのローブ姿ゲニラが虎頭とダークエルフに目を向けると、二人とも即頷きを返す。
「ありがてえ。俺からは魔法の粉を提供する、マジでうめえから試してみてくれ」
「お、おお。調味料かな」
 いや、この世界だと言葉通りの「魔法」の粉なのかもしれないが、魔法をかけたようにうまくなる調味料の意味じゃないかなと受け取った。
 そんな俺にダークエルフのエルフィーが苦笑しながら教えてくれる。
「カイト、魔法の粉といってもマジックアイテムじゃないのよ。コショウと青唐辛子を混ぜたものよ」
「そっちの方がありがたい。こっちは塩しかなくてさ」
 そんなわけで、引き続きケバブ大会だ。今度は五人とよりにぎやかになって。
 インベントリーから新たなイノシシ肉の塊を取り出し、第二ラウンド開始とあいなった。
 アーニーの魔法の炎で肉を焼き、こんがり焼けた表面をナイフで削り取る。
 先にゲストの三人へ肉を切り分け、皿に乗せてほいほいと手渡す。
 虎頭ウォーレンは迷わず魔法の粉を、残り二人は塩を振っていた。
「お、この肉……イノシシだよな! とんでもなくうめえ」
「肉は余り得意じゃないけど、これなら食べられるわ」
 二人の反応は上々。ワニのローブ姿ゲニラは「ふむ」と目を細める。
 彼は指先の爪で肉を少し削ぐとペロリと長い舌で舐めた。
「店主殿、これほど手間暇かけた肉をご馳走してくださり、改めて礼を言わせてくれ」
「あ、いや、眠らせてた肉だから、うん」
「このレベルのイノシシ肉となれば、街の高級店でしか食べることができないものじゃ、店主殿自ら仕込んだのかの?」
「い、一応、そうだけど、置いておいたのがよかったのかも」
 低熟練度ながらも調理スキルがあるから、さばいた肉は自動的に血抜きされ熟成肉となる……という設定だった。
 現代人たる俺にとっては、血抜きも熟成も当たり前なので、まあ野生のイノシシ肉にしては普通に食べられるといった程度だったんだよね。
 逆に調理スキル無しだったら、食べられたもんじゃなかったのか……想像すると背筋がゾッとした。
「てんちょお、ウォーレンさんの魔法の粉、イノシシ肉ととってもあいますよ!」
「ほお、どれどれ」
 気まずさを覚えたところで気をきかせてくれたらしいアーニーがにこおっとなって耳をピコピコさせる。
「こいつはおいしい!」
 特に青唐辛子? の辛さが良い。イノシシ肉の油も不思議とさっぱりとなって、良いぞこれ(語彙力死亡中)。
 食べながら彼らからダスタルド探検の様子を聞く。自分でダスタルドに行った時と異なり、彼らの話はワクワクするものだった。
 俺のダスタルド体験といえば、ただひたすらに鉱石を掘って掘って掘りまくるか、地底湖で釣り糸を垂らすかだったもの。単純作業で無心になることしかなかったんだよな。対して彼らはドラゴンの群れから一体を釣り出そうと小石を投げ、一体どころか複数に追い回され逃げ回ったとか、逆に釣り出しに成功してドラゴンを仕留めたとか、変化に富んでいる。間一髪、命からがら、なんてことは体験したくないけど、同じダスタルドでも俺とは随分と様相が異なる。
 実力者たる彼らでこうなのだから、俺ならもっと苦労しそうだよなあ。やっぱり、モンスターの強さが変化していると見るのが正解かも。シャドードラゴンの麻痺レベルは同じだったんだけどなあ。
「んで、ドラゴンの鱗を持てるだけ持って戻る途中に影竜だ」
「荷物も増えたところで、とはいやらしいな」
 虎頭の苦言にうんうんと頷く。探索者の冒険話を聞くのはとても楽しい。俺もメインの戦闘キャラではそれなりにモンスターをなぎ倒しているけど、ゲームと現実じゃやっぱり違うからな。
「途方に暮れ、ここに戻ったら大魔法使い様がいたわけだ」
「誇張しすぎだろ。雑貨屋店主でいいから」
「ガハハ、そういうことにしておけってことだな」
「変な噂を広めないでくれよ」
 分かった分かった、とバンバン自分の膝を叩く虎頭であった。面白半分で賢者だの魔法使いだの騒がれても困る。ぺぺぺはただの素材集めキャラクターなのだから。もし、ぺぺぺではなく、魔法特化のシュークリームだったとしても噂を広めて欲しくないことは変わらんずら。
 騎士や官僚を目指すなら名声ってもんが必要かもしれんが、俺はホームで自給自足をしつつ、店を再開し、得た小銭で街へ買い物に行く生活を夢見ている。
 目立つことはマイナスにしかならんよ。いや、有名になれば店の客足が増えるかもしれんか。しかし、厄介ごとの方が増えそうだ。色々天秤にかけると、目立つより目立たない方が良いと判断できる。あ、そうか。俺個人の名声じゃなく、店が有名になるようにすりゃ客足が増えつつ、厄介事は持ち込まれない……のか?

 食事を終え探索者たちは店舗の床で休むことになった。
 残った俺とアーニーはどうするか会話を交わしているところだ。
「アーニーは家に戻る? それともここで泊まる?」
「戻って休みます!」
「りょーかい。もしここで泊まるなら、2階の部屋のどちらかを使って。使わない方はハミルトンに使ってもらうつもり」
「わ、わたしがよいのですか!」
 よいよい。2階は3部屋あって、俺が使うのは1部屋だ。俺のホームへ入ることができるのは俺以外にアーニーとハミルトンのみ。
 ホテルを経営するならアクセス権を変更するか増築だな。
「部屋といっても、ベッドとクローゼットくらいしかないけどね」
「で、ですが、残りのお部屋はチーズポテトさんとシュークリームさんのお部屋ですよね」
「使わないから、シュークリームの部屋の方がよいよね。チーズポテトの部屋はなんか汗臭そうだし」
「いえいえ! チーズポテトさんのお部屋は匂いなんてしないです」
 めっちゃはっきりと言い切ったな。あ、そうか、彼女が部屋の掃除をしていてくれていたのか!
「2階だけじゃなく1階もアーニーが掃除を?」
「わたしとハミルさんで」
 ホームが綺麗に保たれていたのはアーニーとハミルトンが欠かさず掃除をしてくれていたからだった。
 俺が消えてから数百年の間、掃除をし続けていてくれたとは彼女らに足を向けて寝れないな。
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