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第16話 お金持ってません
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ダスタルドはドラゴンやワニといった爬虫類系(と勝手に呼んでいる)のモンスターが多い。といっても全てが爬虫類系というわけじゃあない。
一番近い単独でポップしているモンスターは古代竜だ。
「うーん、古代竜は硬いし炎も効かないんだよな、よし、あいつらで試してみよう」
2階層に入ったところで試してみるか。
2階層へ続く坂を降りたところは踊り場のようなちょっとした広場になっている。踊り場から右奥、左手前に道が続いている構造だ。
右手奥に子供が砂場で山を作ったような形をしている水色のぶよぶよ。距離が離れて左手前の道を塞ぐようにして腰布を巻いただけの筋骨隆々な巨人。巨人は身長が4メートルほどもある迫力のあるサイズで、武器を持っておらず徒手空拳で戦うパワーファイターだ。
「うっし、状況開始」
巨人と三角形のぶよぶよ、両者を共に相手をするとなればなかなか厄介なんだよな。戦闘向けのキャラクターだったら左うちわで押し通るレベルなのだが、こちとら素材集め用のキャラクターだから慎重に進めねばならない。
慎重に進めすぎかもしれないけど、ゲームと異なってモンスターがパワーアップしている可能性もあるからさ。
右手を振り、魔法陣が浮かび上がる。
進むは右手奥。行くぜ!
「魔法陣よ、力を示せ。ストーンウォール」
ぶよぶよと俺を隔てる石の壁が出現する。石の壁と直角に引っ付くようにもう一個石の壁を出した。
これで、ぶよぶよの隔離完了。ゲームと同じなら……だけど。モンスターの視界に入らなければ襲ってこないとも限らないから、これで安全と信じ切らないようにしておくべし。それでもまあ、石壁のおかげで回り込まなきゃならなくなるから、時間は稼げる。
お次はダッシュで左手前へ。
巨人とはまだ距離があるが、走る足を止めずにヒクイドリにお願いする。
「ブレスを頼む!」
「グバアアアアアア」
飛翔しつつ大きく息を吸い込んだヒクイドリから、炎のブレスが吐き出された。
炎のブレスは真っすぐ巨人へ襲い掛かり、奴は右手を突き出しそれを受け止める。
間髪入れず、腰のホルスターから投げナイフを引き抜き、巨人に向けて投擲!
「ヒクイドリ、巨人をけん制してくれ」
俺のお願いをきいてくれたヒクイドリが巨人の手が届くか届かないかといった絶妙な高さを飛び回る。
炎のブレスと投げナイフを立て続けに喰らった巨人であるが、大したダメージを受けていない様子。
「少なくとも巨人の動きはゲームと変わらないな」
スピードや攻撃手段については同じに見える。ヒクイドリにまとわりつかれた巨人は追い払おうと手を左右に振って、完全にヒクイドリに気を取られているところとかゲームと動きがそっくりだ。
VRMMOと現実じゃモンスターの解像度がまるで違うが、VRMMOだからこそこちらの体の動かし方とか、相手との距離感とかは現実だから随分と助かるよ。これがマウスやコントローラーで操作するタイプのゲームなら現実世界でモンスターと対峙するなんて無理無理になってたよなあ。
「ヒクイドリ、もうちょっと頑張って欲しい」
「くああ」
任せろとばかりにヒクイドリが元気よく鳴く。
ヒクイドリが巨人を引き付けてくれているから、今のうちに巨人にダメージを与えたい。ならば、巨人の耐久力がゲームと比べてどれほど違いがあるのか確かめようじゃあないか。
腰から吊り下げた袋から小瓶を三本掴み、魔力を込める。すると、透明な色だった液体が蛍光緑に変わった。
これで準備完了だ。
この小瓶は低熟練度の錬金術で作成できる「爆薬」なんだ。低熟練度で作ることができるアイテムなので、大した威力はない。
しかし、爆薬などのアイテムでモンスターにダメージを与えることのできるアイテムは威力が一定という仕様がある。
「そおおおい」
巨人に小瓶が振れた瞬間、ドカアアアアン、と派手な音とともに爆発した。
まだまだ行くぞおお。
最初に取り出した三本を使い切っても、次なる爆薬を袋から取り出し、魔力を込め、巨人に向けて放り投げる。
放り投げるうう。
まだまだああ。
そして、35本投げたところでようやく巨人が倒れた。
「はあはあ……ど、どうやらゲームと同じ爆薬35本で倒すことができるようだな」
肩で息をしつつも、頑張ってくれたヒクイドリに向け手をあげ、「ありがとう」と伝える。
さて、もう一方の残ったモンスターである、ぶよぶよはこちらに向かってきそうにはなかった。石壁で視界を遮ると石壁の向こうで爆音が響いていても問題ないようだ。ゲームと同じでなによりである。
「それじゃあ、石壁の効果が切れる前に撤収しよう」
「ぐあ」
確認したいことは確認できたし、用が済んだらこれ以上危険を冒す必要もなく、立ち去るに限るぜ。
◇◇◇
時は金なりとはまさにこのこと。ダンジョンからとっとと撤収したことで、食材集めの時間を長くとることができた。
結果、キノコや山菜、更に野生の牛に似た動物を狩ることまでできたんだよね。唯一残念なことは果物がなかったことくらいかなあ。
インベントリーに抱えている肉類はまだまだあるけど、いずれ枯渇する。それに、肉以外の食材はインベントリーの中に入っていなかった記憶だ。
なので、ホーム周辺の探索で食材を集めることができたことは大きな成果なんだよ。
そんなこんなでホームまで帰ってきた。
「よおっし、今日は山菜とキノコを使って料理をするぞお」
「あ、てんちょお、おかえりなさいー」
カウンターの向こうでブンブンと両手を左右に振るのはアーニーだった。
「お、アーニー。早いな」
「ちょこっとだけでしたので。お買い物も行ってきました!」
お買い物してきた商品はカウンターの下に置いているとのこと。一体何を買ってきたのだろうか。
気をきかせて俺の代わりに買ってきてくれたのだとしても、今は持ち合わせがないんだよな。
一番近い単独でポップしているモンスターは古代竜だ。
「うーん、古代竜は硬いし炎も効かないんだよな、よし、あいつらで試してみよう」
2階層に入ったところで試してみるか。
2階層へ続く坂を降りたところは踊り場のようなちょっとした広場になっている。踊り場から右奥、左手前に道が続いている構造だ。
右手奥に子供が砂場で山を作ったような形をしている水色のぶよぶよ。距離が離れて左手前の道を塞ぐようにして腰布を巻いただけの筋骨隆々な巨人。巨人は身長が4メートルほどもある迫力のあるサイズで、武器を持っておらず徒手空拳で戦うパワーファイターだ。
「うっし、状況開始」
巨人と三角形のぶよぶよ、両者を共に相手をするとなればなかなか厄介なんだよな。戦闘向けのキャラクターだったら左うちわで押し通るレベルなのだが、こちとら素材集め用のキャラクターだから慎重に進めねばならない。
慎重に進めすぎかもしれないけど、ゲームと異なってモンスターがパワーアップしている可能性もあるからさ。
右手を振り、魔法陣が浮かび上がる。
進むは右手奥。行くぜ!
「魔法陣よ、力を示せ。ストーンウォール」
ぶよぶよと俺を隔てる石の壁が出現する。石の壁と直角に引っ付くようにもう一個石の壁を出した。
これで、ぶよぶよの隔離完了。ゲームと同じなら……だけど。モンスターの視界に入らなければ襲ってこないとも限らないから、これで安全と信じ切らないようにしておくべし。それでもまあ、石壁のおかげで回り込まなきゃならなくなるから、時間は稼げる。
お次はダッシュで左手前へ。
巨人とはまだ距離があるが、走る足を止めずにヒクイドリにお願いする。
「ブレスを頼む!」
「グバアアアアアア」
飛翔しつつ大きく息を吸い込んだヒクイドリから、炎のブレスが吐き出された。
炎のブレスは真っすぐ巨人へ襲い掛かり、奴は右手を突き出しそれを受け止める。
間髪入れず、腰のホルスターから投げナイフを引き抜き、巨人に向けて投擲!
「ヒクイドリ、巨人をけん制してくれ」
俺のお願いをきいてくれたヒクイドリが巨人の手が届くか届かないかといった絶妙な高さを飛び回る。
炎のブレスと投げナイフを立て続けに喰らった巨人であるが、大したダメージを受けていない様子。
「少なくとも巨人の動きはゲームと変わらないな」
スピードや攻撃手段については同じに見える。ヒクイドリにまとわりつかれた巨人は追い払おうと手を左右に振って、完全にヒクイドリに気を取られているところとかゲームと動きがそっくりだ。
VRMMOと現実じゃモンスターの解像度がまるで違うが、VRMMOだからこそこちらの体の動かし方とか、相手との距離感とかは現実だから随分と助かるよ。これがマウスやコントローラーで操作するタイプのゲームなら現実世界でモンスターと対峙するなんて無理無理になってたよなあ。
「ヒクイドリ、もうちょっと頑張って欲しい」
「くああ」
任せろとばかりにヒクイドリが元気よく鳴く。
ヒクイドリが巨人を引き付けてくれているから、今のうちに巨人にダメージを与えたい。ならば、巨人の耐久力がゲームと比べてどれほど違いがあるのか確かめようじゃあないか。
腰から吊り下げた袋から小瓶を三本掴み、魔力を込める。すると、透明な色だった液体が蛍光緑に変わった。
これで準備完了だ。
この小瓶は低熟練度の錬金術で作成できる「爆薬」なんだ。低熟練度で作ることができるアイテムなので、大した威力はない。
しかし、爆薬などのアイテムでモンスターにダメージを与えることのできるアイテムは威力が一定という仕様がある。
「そおおおい」
巨人に小瓶が振れた瞬間、ドカアアアアン、と派手な音とともに爆発した。
まだまだ行くぞおお。
最初に取り出した三本を使い切っても、次なる爆薬を袋から取り出し、魔力を込め、巨人に向けて放り投げる。
放り投げるうう。
まだまだああ。
そして、35本投げたところでようやく巨人が倒れた。
「はあはあ……ど、どうやらゲームと同じ爆薬35本で倒すことができるようだな」
肩で息をしつつも、頑張ってくれたヒクイドリに向け手をあげ、「ありがとう」と伝える。
さて、もう一方の残ったモンスターである、ぶよぶよはこちらに向かってきそうにはなかった。石壁で視界を遮ると石壁の向こうで爆音が響いていても問題ないようだ。ゲームと同じでなによりである。
「それじゃあ、石壁の効果が切れる前に撤収しよう」
「ぐあ」
確認したいことは確認できたし、用が済んだらこれ以上危険を冒す必要もなく、立ち去るに限るぜ。
◇◇◇
時は金なりとはまさにこのこと。ダンジョンからとっとと撤収したことで、食材集めの時間を長くとることができた。
結果、キノコや山菜、更に野生の牛に似た動物を狩ることまでできたんだよね。唯一残念なことは果物がなかったことくらいかなあ。
インベントリーに抱えている肉類はまだまだあるけど、いずれ枯渇する。それに、肉以外の食材はインベントリーの中に入っていなかった記憶だ。
なので、ホーム周辺の探索で食材を集めることができたことは大きな成果なんだよ。
そんなこんなでホームまで帰ってきた。
「よおっし、今日は山菜とキノコを使って料理をするぞお」
「あ、てんちょお、おかえりなさいー」
カウンターの向こうでブンブンと両手を左右に振るのはアーニーだった。
「お、アーニー。早いな」
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気をきかせて俺の代わりに買ってきてくれたのだとしても、今は持ち合わせがないんだよな。
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