凄腕の探索者? いいえ、ただの釣り人です~ゲームに似た異世界に転移したが、ただの素材集めキャラなのでのらりくらりと過ごそうと思います~

うみ

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第22話 ハミルトン

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「ペペぺ様、お久しぶりです……お会いしに行かず、切に切に……」
 探索者ギルドで俺とアーニーの担当になったのは何とハミルトンだった。店員時代の彼は黒スーツのナイスミドルだったのだけど、今の探索者ギルドの白シャツにベストも似合っている。シルバーブロンドの髪はベリーショートで、額からは二本の短い角、浅黒い肌に筋骨隆々なのに穏やかな雰囲気を持つ彼の特徴はゲーム時代のままだ。種族は鬼人で、タフさと筋力にボーナスがあるが、その分、古代魔法と精霊魔法にマイナス補正がある。彼のスキルの割り振りはタフさと筋力を活かした格闘系に振っていた。今の彼はゲーム時代とスキル構成が異なる可能性があるものの、変わっていた場合でも戦士系じゃないかな。
 そんな渋いイケメンミドルが周囲の目も気にせず滂沱の涙を流している。
「い、いや、俺の方こそハミルトンが忙しそうだからと会いに行かなくてごめん」
「わ、私に会いに……」
 感極まったハミルトンの口から鋭い牙がのぞく。リアルになるとよりいかつく見えるな。それがまた渋くて良い。
 せっかくなら彼のようなキャラクターでこの世界に転移すればよかったのに、と考えるも、見た目も中身も三枚目な俺じゃ生かせないってもんじゃないか。
 前回探索者ギルドに来た時に無理にでも彼に会ってよけばよかった。俺が彼を避けているとでも思われたのかもしれないよな……。
 的外れかもしれないけど、彼に思いをぶつけておかなきゃ。
「ハミルトンとアーニーにはとても感謝しているんだよ、決して君を避けていたとかそんなんじゃないって」
「まさかそのような……不出来な私のことを?」
「だから言ったじゃないー、ハミルさんー、てんちょおはハミルさんのことも大事に思ってたって」
 すかさずアーニーから砕けた言葉でフォローが入った。アーニーってこんな喋り方もできるんだ。俺にも同じように接してくれていいのに。
 この機会に彼女にお願いしようとしたが、ハミルトンが先んじる。
「そのようなことは……不愛想で使えない私を叱責した後、ペペぺ様だけでなくチーズポテト様もシュークリーム様もお姿を消してしまわれました」
 ん、どういうことだ。俺がNPCの店員を詰めるなんてことするわけないだろうに。
 俺が意識していないとしても、彼が俺に怒られた、使えない、と感じた何かがあったってことだよな。
 あ、ひょっとして……。
「え、いや、俺の並べ方が悪いと思ってアイテムを整理していただけだよ。整理した後、ハミルトンに販売を任せる予定だったんだ。だけど、そのまま俺が消えちゃったんだよな。すまなかった」
「め、滅相もない。ただの私の勘違いです」
 ハミルトンの反応を見るに俺の予想は正解だったようだ。アイテムを無造作に置いて販売していてさ。せめて鉱石なら鉱石とカテゴリーごとに分けて販売しようと整理していたんだよね。それが彼からしたら、自分が無能だから商品が売れず、店長が商品を引き上げた、と考えたというわけか。
 そんで、元店長である俺が戻ってきたと聞いても、自分から会いに行くということができなかったわけだ。
 そのような事情など露知らず、ハミルトンはお仕事で忙しいんだな、邪魔しないでおこうと考えていた自分が愚かすぎる……。
「俺から言えたことじゃないけど、以前のように親しい友達として接してもらえないかな」
「ペペぺ様……不甲斐ない私に勿体ないお言葉。願ってもないことです」
 がっしと握手を交わし、俺から彼の背中をポンと叩く。
「てんちょう、ハミルさんーよかったですー」
 アーニーが俺とハミルトンの双方に腕を回し、ぎゅうっと抱きしめる。
 しばらくそうした後、ハミルトンがキリリとした表情になった。
「深海竜……私たち風ですとサーペントロードの討伐、感謝いたします」
「そうだった。探索者ギルドにきたのはサーペントロードの件だった」
 ハミルトンとの感動の再開によってすっかり忘れていたぞ。担当が彼でよかったよ、先に俺の事情を伝えておいて、うまくやれないか聞いてみよう。
「ハミルトン、俺は探索者登録もしてないから、探索者じゃないんだ」
「存じております。ペペぺ様がお姿を消している間に探索者ギルドが設立されておりますし、探索者として登録されるには戻られてから時間が余りに短すぎます」
「探索者じゃなかったけど、サーペントロード討伐の件で罰せられたりとかはないかな?」
「ございません。サーペントロードは討伐レベルS、地位や身分など問わず、一刻も早く排除する対象となっております」
 討伐レベルとかは何のことやら分からんが、お咎めなしということだけは分かった。
 ふう、と胸を撫でおろし、にっこにこ俺たちを見つめているアーニーのピコピコ動く耳に思わず口元が緩む。
 ちょっと和んでいたら、ハミルトンが言葉を続ける。
「という事情がございますため、討伐した者が何者であっても探索者ギルドから討伐報酬が支払われます」 
「と、討伐報酬だと……そ、それってジェムがもらえるの?」
「左様です。シェルではなく恐縮ですが……」
「いやいや、シェルなんていくらもっていても使えないし、サーペントロードに遭遇するきっかけになったのもジェムを稼ぐために釣り大会へ出たからだし」
 わーい、ジェムがもらえるぞお。ゲーム内通貨シェルならたんまりともっているけど、現在の通貨ジェムは一銭たりとも持ってないからね。
 リンゴの一つも買えやしない。
「もう一つ、職員から聞いたのですが、サーペントロードの処分と素材は探索者ギルドに任せていただける、でよろしかったですか?」
「うん、解体費用を出そうにも持ち合わせがないから、討伐報酬で当ててもらうことってできるかな?」
 そうだったそうだった。サーペントロードの解体を頼んだんだったわ。人を動かすのだからもちろんお金がかかるよね。
 自分でやろうにも、あの巨体だ。正直そのまま海に沈めたいのだが、街中だからなあ。
 街には街のやり方があるだろうから、任せる以外の選択肢がないのよね。
 なあに、報酬と解体費用が相殺されたとしても、俺には釣り大会がある。早く探索ギルドでの用事を済ませて、釣り大会へ復帰するのだ。
 
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