凄腕の探索者? いいえ、ただの釣り人です~ゲームに似た異世界に転移したが、ただの素材集めキャラなのでのらりくらりと過ごそうと思います~

うみ

文字の大きさ
26 / 59

第26話 表示名

しおりを挟む
 遠距離通信……つまり、離れたところから他の人に通信する手段のことだ。わざわざ言わんでも分かるって? そいつは失礼。
 遠距離通信ってゲーム内なら一般的な機能で地球でもスマートフォンを使えばどこにいても知り合いにメッセージを送ったり、電話をかけたりすることができる。ところがどっこい、スマートフォンがなきゃ。離れたところにいる知り合いに通話することなんてできないのだ。
 いや、まあ、当たり前のことを言っている自覚はある。しかしだな、意識していないと忘れそうになるんだよ。この世界には通信機器なんてないってことに。
 さて、話を戻す。アナザーワールドオンラインではどのキャラクターでもキャラクター名宛にメッセージを送ることができる。ゲーム用語だとウィス、囁く、と言われているような機能だ。
 一つ気になることがあって、もしかしたらアーニーはゲーム的な機能を一部または全て使えるんじゃないかって思ってさ。
 酒盛りの後、彼女の家に着いたところで、さっそく聞いてみた。
「道案内があるのをどうやって知るのか、ですか? ハミルさんにウィスを飛ばすんですよー」
「ハミルトンにウィスで道案内の仕事があったらウィスをくれと伝えておくのね」
「ですです。てんちょおにはコマンドが見えますか?」
「いや、見えない」
 彼女はゲームの時と同じように視界にコマンドが映っているらしい。
 んー、そうじゃないかと思ったが、やっぱりそうなのかあ。
「コマンドが見えるのはわたしとハミルさんだけみたいなんです。てんちょおならわたしたちと同じかもと思ったんですが残念です」
「俺を見てぺぺぺだと分かったのも、キャラクター名が頭上に見えているからだよな?」
「はい、そうです。表示は出し入れできるのですが、わたしは常に出してます」
「俺は必要な時だけ出す、方が好みだったな」
 いやさ、賢い俺は気が付いたんだ。今頃とか鈍すぎるだろって声は聞こえない。
 何かというと、俺が転移した直後のことを覚えているだろうか。
 キャラクターはぺぺぺなんだけど、顔は元の俺のようになっているってさ。彼女は人相が変わっている俺を見てこちらに確認もせず、俺がぺぺぺだと確信していたんだよね。彼女は俺の姿形を見て「てんちょお」と言っていたわけじゃなかったんだ。彼女は俺の頭上に表示される表示名「ぺぺぺ」を見て判断していた。
「アーニー、コマンドでできることは全部できるの?」
「てんちょおの見えているコマンドとわたしの見えているコマンドって同じなんでしょうか」
 ああ、彼女のコマンドの中にログアウトなんてものはないだろうし、
「確かにちょっと違うかもしれない。キャラクター名が見えるのと、ウィスができること、他にもあったりする?」
「他には地図が開けたりします。モンスターが赤い丸で見えるので便利ですよ」
 おお、俯瞰マップを見ることができるとは、羨ましい。
「あ、そういや、コマンドが見えるところがあったな」
「でしたら、てんちょおもウィスを受け取ることができるんですね!」
「コマンドをねっとりと確認したわけじゃないからなあ、メインインベントリーに触れた時だけコマンドが出たんだよ」
「てんちょお宛にウィスを送っておきます、コマンドを開いたらチェックしてみてくださいね!」
 そうしよう、そうしよう。
 
 ◇◇◇
 
 なあんて思っていた時が俺にもありました。
 いや、ほらさ、帰るだろ、ずっと外にいたから風呂で汗を流すだろ、したらさ、酒も入っているわけで急速に眠くなり気が付いたら翌日ってわけですよ。
 アーニーが自室の扉をどんどんして起こしに来てくれてさ。着替えて、旅の準備をして、ゲートの魔法でアーモンドアイの街へ移動して残橋ってわけなのである。ま、まあ、サンドシティまで送り届けてもらってから、ホームまで帰ってからじっくりねっとりとコマンドを確認すりゃいい。
 コマンドはいつでも確認できるが、船旅は今日しか味わうことができないのだから。準備の時間がまるでなかったが、急ぎいくつかインベントリーから引っ張り出しリュックに詰め込んできた。他のゲームによくあるアイテムボックスとか袋的なものはアナザーワールドオンラインにはない。アイテムは手に持つかリュックやカバンに入れて持ち運ぶ必要がある。とはいえ、ホームにはいくらでもアイテムを置くこともできるし、ゲートの魔法でいつでもホームに戻ってくることができるからそう不便ではない。むしろ個人的にはリアリティがあってよいと思っている。ゲーム的にはホームの仕組みがあるのだから、キャラクター本体だけでいくらでもアイテムを持つことができたら、ホームの意味が薄れてしまうってのもあるのかも。
「てんちょお、はやくはやくー」
「おう、今行くー」
「わたしがゲートを出しちゃいますよ」
「さんきゅう」
 などと言いながらゲートをくぐりアーニーの家へ移動する。
 その後、急ぎならがらも楽しもうと街までアーニーと競争したのだが、全然勝負にならなかった。まだまだアーニーのテレポートの域に達するには時間がかかりそうだ。足場の見極めを瞬時にしなきゃ、とてもじゃないが彼女に追いつけない。いや、見極めるとか考えている間は無理そうだ、平な道を歩く時にどこを踏んで、なんて考えてないものね。
 
 残橋にはドワーフの船長の船が停泊していた。
「お待たせしました!」
「おう、まだ出発までには時間があるぞ。もう飯は食ったのか?」
 俺が手を振ると船の上からドワーフの船長が右手をあげて応じる。急いだから随分と早く着いちゃったのかな?
 出発までご飯を食べるほどの時間は残ってなさそうなのだけど、準備に時間がかかっているのかも。それなら彼らの手伝いをしたいところだ。
 元々船に乗ってから手伝いをしようと考えていたからね。
「まだです」
「んじゃ、その辺で食べてから来てくれ、特に手伝いは必要ねえぞ、却って邪魔になるからな」
 おっと、先んじて言われてしまった。
 んー、ここはありがたく露店で何か買って戻ってくることにしようか。アーニーが既に歩き始めていることだし。
 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

スマホアプリで衣食住確保の異世界スローライフ 〜面倒なことは避けたいのに怖いものなしのスライムと弱気なドラゴンと一緒だとそうもいかず〜

もーりんもも
ファンタジー
命より大事なスマホを拾おうとして命を落とした俺、武田義経。 ああ死んだと思った瞬間、俺はスマホの神様に祈った。スマホのために命を落としたんだから、お慈悲を! 目を開けると、俺は異世界に救世主として召喚されていた。それなのに俺のステータスは平均よりやや上といった程度。 スキル欄には見覚えのある虫眼鏡アイコンが。だが異世界人にはただの丸印に見えたらしい。 何やら漂う失望感。結局、救世主ではなく、ただの用無しと認定され、宮殿の使用人という身分に。 やれやれ。スキル欄の虫眼鏡をタップすると検索バーが出た。 「ご飯」と検索すると、見慣れたアプリがずらずらと! アプリがダウンロードできるんだ! ヤバくない? 不便な異世界だけど、楽してダラダラ生きていこう――そう思っていた矢先、命を狙われ国を出ることに。 ひょんなことから知り合った老婆のお陰でなんとか逃げ出したけど、気がつけば、いつの間にかスライムやらドラゴンやらに囲まれて、どんどん不本意な方向へ……。   2025/04/04-06 HOTランキング1位をいただきました! 応援ありがとうございます!

駆け落ち男女の気ままな異世界スローライフ

壬黎ハルキ
ファンタジー
それは、少年が高校を卒業した直後のことだった。 幼なじみでお嬢様な少女から、夕暮れの公園のど真ん中で叫ばれた。 「知らない御曹司と結婚するなんて絶対イヤ! このまま世界の果てまで逃げたいわ!」 泣きじゃくる彼女に、彼は言った。 「俺、これから異世界に移住するんだけど、良かったら一緒に来る?」 「行くわ! ついでに私の全部をアンタにあげる! 一生大事にしなさいよね!」 そんな感じで駆け落ちした二人が、異世界でのんびりと暮らしていく物語。 ※2019年10月、完結しました。 ※小説家になろう、カクヨムにも公開しています。

過労死した俺、異世界で最強農業チートに目覚める。神農具で荒野を楽園に変えたら、エルフや獣人が集まって最高の国ができました

黒崎隼人
ファンタジー
「君、死んじゃったから、異世界で国、作らない?」 ブラック企業で過労死した俺、相川大地。 女神様から授かったのは、一振りで大地を耕し、一瞬で作物を育てる**最強の『神農具』**だった!? 右も左もわからない荒野でのサバイバル。 だけど、腹ペコのエルフ美少女を助け、頼れるドワーフ、元気な猫耳娘、モフモフ神狼が仲間になって、開拓生活は一気に賑やかに! 美味しいご飯とチート農具で、荒野はあっという間に**「奇跡の村」**へ。 これは、ただの農民志望だった俺が、最高の仲間たちと世界を救い、種族の壁を越えた理想の国『アグリトピア』を築き上げる物語。 農業は、世界を救う! さあ、今日も元気に、畑、耕しますか!

異世界に飛ばされた人見知りの僕は、影が薄かったから趣味に走る事にしました!

まったりー
ファンタジー
主人公は、人見知りな占いが大好きな男の子。 そんな主人公は、いるのか分からない程の影の薄さで、そんなクラスが異世界に召喚されてしまいます。 生徒たちは、ステータスの確認を進められますが、主人公はいるとは思われず取り残され、それならばと外に1人で出て行き、主人公の異世界生活が始まります。

酒好きおじさんの異世界酒造スローライフ

天野 恵
ファンタジー
酒井健一(51歳)は大の酒好きで、酒類マスターの称号を持ち世界各国を飛び回っていたほどの実力だった。 ある日、深酒して帰宅途中に事故に遭い、気がついたら異世界に転生していた。転移した際に一つの“スキル”を授かった。 そのスキルというのは【酒聖(しゅせい)】という名のスキル。 よくわからないスキルのせいで見捨てられてしまう。 そんな時、修道院シスターのアリアと出会う。 こうして、2人は異世界で仲間と出会い、お酒作りや飲み歩きスローライフが始まる。

子育てスキルで異世界生活 ~かわいい子供たち(人外含む)と楽しく暮らしてます~

九頭七尾
ファンタジー
 子供を庇って死んだアラサー女子の私、新川沙織。  女神様が異世界に転生させてくれるというので、ダメもとで願ってみた。 「働かないで毎日毎日ただただ可愛い子供と遊んでのんびり暮らしたい」 「その願い叶えて差し上げましょう!」 「えっ、いいの?」  転生特典として与えられたのは〈子育て〉スキル。それは子供がどんどん集まってきて、どんどん私に懐き、どんどん成長していくというもので――。 「いやいやさすがに育ち過ぎでしょ!?」  思ってたよりちょっと性能がぶっ壊れてるけど、お陰で楽しく暮らしてます。

追放された最強賢者は悠々自適に暮らしたい

桐山じゃろ
ファンタジー
魔王討伐を成し遂げた魔法使いのエレルは、勇者たちに裏切られて暗殺されかけるも、さくっと逃げおおせる。魔法レベル1のエレルだが、その魔法と魔力は単独で魔王を倒せるほど強力なものだったのだ。幼い頃には親に売られ、どこへ行っても「貧民出身」「魔法レベル1」と虐げられてきたエレルは、人間という生き物に嫌気が差した。「もう人間と関わるのは面倒だ」。森で一人でひっそり暮らそうとしたエレルだったが、成り行きで狐に絆され姫を助け、更には快適な生活のために行ったことが切っ掛けで、その他色々が勝手に集まってくる。その上、国がエレルのことを探し出そうとしている。果たしてエレルは思い描いた悠々自適な生活を手に入れることができるのか。※小説家になろう、カクヨムでも掲載しています

キャンピングカーで走ってるだけで異世界が平和になるそうです~万物生成系チートスキルを添えて~

サメのおでこ
ファンタジー
手違いだったのだ。もしくは事故。 ヒトと魔族が今日もドンパチやっている世界。行方不明の勇者を捜す使命を帯びて……訂正、押しつけられて召喚された俺は、スキル≪物質変換≫の使い手だ。 木を鉄に、紙を鋼に、雪をオムライスに――あらゆる物質を望むがままに変換してのけるこのスキルは、しかし何故か召喚師から「役立たずのド三流」と罵られる。その挙げ句、人界の果てへと魔法で追放される有り様。 そんな俺は、≪物質変換≫でもって生き延びるための武器を生み出そうとして――キャンピングカーを創ってしまう。 もう一度言う。 手違いだったのだ。もしくは事故。 出来てしまったキャンピングカーで、渋々出発する俺。だが、実はこの平和なクルマには俺自身も知らない途方もない力が隠されていた! そんな俺とキャンピングカーに、ある願いを託す人々が現れて―― ※本作は他サイトでも掲載しています

処理中です...