凄腕の探索者? いいえ、ただの釣り人です~ゲームに似た異世界に転移したが、ただの素材集めキャラなのでのらりくらりと過ごそうと思います~

うみ

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第36話 暗礁地帯

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 船は海でいうところの暗礁地帯に入った。砂海からところどころ岩の先端が見え隠れしている。砂海の場合って深さがまるで分らないからなあ。
 砂海に入ったとたんに頭の先まで沈むこともあり、浅くなっていたり深くなっていたりよくわからん。
 といっても岩に砂上船をひっかけない限りは砂上船が進めなくなる心配はないんだ。海に浮かぶ船が進むには船の大きさによって深さが必要になる。
 一方で砂海を進む砂上船は船体が砂にあまり沈み込まないんだ。少し違うがサーフィンで進むむたいな感じ?
「この辺りなのかな?」
「もう少しだよ、あの高い岩が目印なんだ」
 ハジに尋ねると、彼は右斜め前方を指さす。
「おお、砂海に岩山とは珍しい」
「おいら、ここ以外に岩山があるところを知らないよ」
 確かに言われてみると、砂海ってほとんどの場所が砂上に何もないエリアだよな。海も似たようなもんだけど。
 砂海の中にも島と言われる地域もあれば、岩山もある。ゲーム時代の砂海には、一つの島と三つの岩山があった記憶だ。
 今はどうなんだろう? 少なくとも街の名前も場所も全然違っているから、地形が違っていても不思議ではない。
 アーニーのように俯瞰マップが見れればいんだけど、残念ながらこの世界に転生してからはコマンドそのものが使えなくなってしまった(インベントリーのところだけ例外)。
 ハジの指し示す岩山まではあと数十分ってところかなあ。なんて思っていたら、アーニーが突然叫ぶ。
「ハジくん、船を右か左に動かして、停まれるならそれでも」
「わかった!」
 アーニーの言葉に疑うでもなく、即反応し舵を右にきるハジ。
 彼女には俯瞰マップが見えているから、敵影も即捕捉可能だ。ハジもまたサンドシャークの時に彼女の俯瞰マップの正確さを目の当りにしているから……いや、彼ならサンドシャークの件がなかったにしてもアーニーの警告に対し、まず船を動かした後に疑問があれば問いかけるようにするだろう。
 砂海は案外モンスターの襲撃が多く、海より遥かに危険に対して敏感にならねばならない。まず体が動き、次に疑問を出す、というのは一流の船乗りには必要な技能なのかもしれない。
「アーニー、敵影の大きさは分かる?」
「とっても大きいです! きっと大顎ですよ」
 敵影が見えていることに疑いの余地はなく、彼女に聞いてみたらなんと大顎かもしれないという。
「おおお、ビンゴだったのか」
「釣り上げますか?」
「大顎は釣り上げることはできない。ペットを出そう、船が危ないから引っ張る」
「お供します!」
 大顎またの名をフェイオーはイベントモンスターだから、釣りスキルの対象外になる。船ごと飲み込まれるのもできるが、せっかくの高給船が壊れてしまう。
「あ、そうだ。アーニー、大顎にはまだ動きはない?」
「はい、こちらに向かってきたりはしていません」
 よっし、時間にまだ余裕があり何よりだ。肝心なことを忘れていたことに今更気が付いた。
 急に舵をきり、ようやく一息ついたところのハジへ向け問いかける。
「大顎……フェイオーに会う目的って聞いてなかった。単に姿を見れればいいのかな?」
「おいらも言ってなくてごめん、兄ちゃんたちが規格外過ぎたから……出航したらすぐに言おうと思ってたんだ」
「俺たちも気が回らなくてごめんな」
「ううん」
 ぶんぶんと首を振ったハジは大顎に会いに来た目的を語り始める。
「父ちゃんが、あいつに飲み込まれたんだ」
「船ごとかな?」
「父ちゃんはおいらを助けようとして」
「そうか……」
 詳しく聞くのも気が引けたので、それ以上聞くまいとしていたのだが、ハジから彼の父の状況を説明してくれた。
 ハジと彼の父は二人でスループ砂上船を駆り、イモムシ狩をしていたのだそうだ。ここ暗礁地帯はイモムシのスポットとして有名で、操船に自信のある船乗りたちが集まっているんだと。おぞましいことで。
 そんで、大顎が出て今は閑散としているってわけだ。
 話を戻すと、父子でイモムシ狩をしていたところ、大顎が出現し父がヨットで大顎を引き付けるからと飛び出し、ハジが一人船に残される。
 逃げろと言われても父を残して逃げるわけにもいかず、動けずにいたところ、父のヨットが大顎に飲み込まれ、大顎は消え去ったんだと。
「お父さんがフェイオーに飲まれたは何日前なの?」
「二日前だよ」
「分かった。会えるかは天運次第だけど、俺も大顎に飲み込まれてみる」
「ダメだよ! それじゃあ、兄ちゃんも父ちゃんと同じになっちゃう」
 縋りついてきたハジの頭を撫で、ニヤリとほほ笑む。
「俺については心配しなくていいって。実はさ、俺もアーニーも転移魔法が使えるんだよ」
「ええええ、兄ちゃん、大魔法使い様だったの!?」
「いやいや、こんな間抜け面が大魔法使いなわけないだろ」
「うすうす兄ちゃんたちがすごい人だって分かっていたけど、転移魔法まで使えるなんて」
 釣りで大暴れしただけなのだが……彼に見せたスキルは釣りスキルだけなので、凄いも何もないんだが、ゲーム時代と基準が違うのは魔法だけじゃないらしい。
 スキルの熟練度を最大まで上げていること自体が珍しいのかも?
「ま、まあ、いざとなれば転移魔法でこの船に戻ってくるから心配しないで」
「う、うん」
「アーニー、同行すると言ってくれたところ申し訳ないのだけど、万が一もあるから、ここに残ってもらえるかな?」
「分かりました! いざというときはてんちょおのホームに逃げ込むようにしますね!」
 うっし、万が一、大顎に驚いたモンスターが襲撃してきたとしても、アーニーがいれば問題ない。
 当初計画ではハジに大顎を見せるために、あくまで奴を引っ張るだけだったからな。
「そんじゃあ、状況開始といこう。出でよ、砂イルカ」
「ぴきー」
 頭が骨のような兜に覆われたイルカが出現し、どぱーんと砂海に潜って砂上を飛び跳ねる。
 見た目イルカとはいえ、俺を乗せて動くことができるほどのサイズがあるんだぜ。
 ひょいっとイルカに飛び乗り、大顎のいる方向へ進む。
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