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第35話 サンドシャーク
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「てんちょお、焼けましたよお」
「あ、うん」
あれから一時間ほど進んだところで、砂上船を固定できるちょうどよい岩場があったので停泊したのだ。
そんじゃあ、ちょうどいいってことで昼食となったわけなのだが……。
「日よけの位置を修正してから……」
「大丈夫ですってえ」
ほら、パラソルの位置がずれると椅子に座っても日差しが当たるだろ。パラソルと椅子は船倉にあったものである。
ここをちょいっと引っ張れば……な、なにをするう。
アーニーに腕を引かれ、椅子に座らされた。
「ほーい、兄ちゃんー」
「あ、うん」
えっほえっほとハジが焼き立てほやほやのイモムシをととんとテーブルに置く。いやあ、船の上でパラソルにテーブル、椅子とはなんという優雅な空間なんだ。
イモムシ? 気のせいだ。そんなものは俺の目に映らない。素焼きとか知らないぞ。
「いっぱいとれたのでおかわりもありますよ!」
「兄ちゃん、どんどん焼くから遠慮せずに言ってね」
言ってね、じゃねえよ。
視線が痛く、仕方なく手を合わせる。
「い、いただきます……」
く、悔しい。塩コショウを振っただけだってのにそれなりにおいしいから困る。
しかしだな、料理ってのは見た目が重要なのだ。イモムシそのままなんて食欲を誘うわけないじゃないか。
魚の刺身だったら姿そのまま残っていても平気なのだから不思議なものだよ。イモムシそのままになると途端に食欲が失せてしまうが、魚なら逆においしそうに見えるんだよな、これが。
「てんちょお、もうすぐ次が焼けますよお」
「う、うん」
結局、三匹のイモムシを平らげてしまった。二人がぐいぐいすすめてくるから仕方なかったのだ。
◇◇◇
「うお、でけえ」
でっかいサンショウウオのようなモンスターを釣り上げた。サンショウウオとの大きな違いはずらりとならんだ牙、尻尾の先が硬質の刃だ。全長7メートルと、砂海のモンスターの中でも大きい部類に入る。
「兄ちゃん、船に入らないよ」
「リリースしたいけど、こいつの尾で船に当たられたらひとたまりもないよな?」
「う、うん……兄ちゃんたちがいなかったら、今頃、おいら死んでる」
「あ、あはは」
どうすっか、このサンショウウオ……いや、ガリアントだっけか、このモンスターの名前。
アーニーはともかく、ガリアントの尻尾が見えた時のハジの驚きようは相当なものだった。それでも操舵が疎かにならなかったことは賞賛したい。
膝に力が入らなくとも、仕事はやってのける彼は幼いながらも一端の船乗りである。船を動かす役目がなかったら、腰を抜かして無言になっていただろうな。
普通に会話できているのも、彼のプロフェッショナルさからくるものじゃあないだろうか。
「てんちょお、ガリアントどうします?」
「ガリアントであっていたんだ」
「ん?」
「あ、こっちの話。牙と尻尾の刃だけとってポイしようか」
はあい、と手を挙げて応じた彼女が、てきぱきと解体に取り掛かる。見た目こそ可憐で朗らかな犬耳少女であるアーニーだけど、躊躇なくガリアントの首を落とすところなんかはさすがこの世界で生きる実力者だよなあ。文化の違いって恐ろしい。不思議なもので俺も血や肉が飛び散る様子を見ても嫌悪感を抱くことはないのだけどね。もし、アーニーの代わりに俺が解体するとなったとしても、全くもって嫌な気持ちにならない。
VRMMO時代は流血表現に制限がかかっていたし、肉の断面もスーパーの肉みたいだったんだよな。
って、アーニーの作業を黙って見ている場合じゃねえ。
「アーニー、こっち持ってるからそこ頼む」
「はあい」
アイテムボックス的なのがあればいいんだけど、ないんだよなあ。
ゲートでホームに移動してインベントリーにぶち込む、ならいくらでも入るけど、ハジの手前、むやみにゲートを使うのはよろしくない。
緊急事態なら迷わず使うけどね。
「いっせーの」
「はあい」
船の外へ解体したガリアントを投げ捨てた。あっという間にズブズブと砂の中へ沈んでいくガリアント。
「てんちょお、多数の敵影です」
「肉を食べに集まってきたのかな?」
「釣り上げますか?」
「たぶん、サンドシャークだよなあ」
撒き餌すると我先にと集まってくるのは砂海のハイエナことサンドシャークである。サンドシャークの牙はガリアントに比べると数段落ちるんだよな。
わざわざ引っ張り上げることもない。
スルーだな、と思っていたら血相を変えたハジの声が。
「兄ちゃん、サンドシャークって砂鮫のことだよね?」
「うん、食べてもおいしくなさそうだし」
「姉ちゃん、敵影っていっぱいいるの?」
「いるよお。20匹くらいかなあ」
あ、ハジが泡吹いて倒れそうになった。何か問題があるのか?
「砂鮫は船を齧るんだよお」
「船は進んでいるけど、追いかけてくるのかな?」
「こないときもあるけど……」
「くる時もあるのね」
今は肉に群がっているだろうサンドシャークがそれで満足してくれればよいが、船に齧りつかれたら一大事だな。
ガリアントみたいに尾の一撃で船が真っ二つってことはないけど、いずれ船に穴が開いてしまう。
結果、釣り上げて、締めて、ポイして、を数度繰り返し、サンドシャークに肉を提供することでこの場を切り抜けることにした。
ハジからは「無茶苦茶だよお」と言われたけど、これが最善だと思うんだよなあ。
なんてことがありながらも、船は着々とフェイオーこと大顎のところへと航行している。
あとどれくらいかかるんだろうか。一泊、二泊くらいする覚悟はできているぞ。
「ハジ、フェイオーまではあとどれくらいなの?」
「おいらが向かっているポイントまでは、夜休んだ後、翌日のお昼くらいまでにはつくよ」
「そこでフェイオーに会えなかったら別のポイントに向かうのかな?」
「うん、いくつか見かけたって話は聞いてるから向かうつもり」
ふむふむ。行く前に聞いておけよって感じだが、船の進み具合は風や砂の動きに左右される。なので都度聞くのが良いのだ。
決して忘れていたわけではない。
「あ、うん」
あれから一時間ほど進んだところで、砂上船を固定できるちょうどよい岩場があったので停泊したのだ。
そんじゃあ、ちょうどいいってことで昼食となったわけなのだが……。
「日よけの位置を修正してから……」
「大丈夫ですってえ」
ほら、パラソルの位置がずれると椅子に座っても日差しが当たるだろ。パラソルと椅子は船倉にあったものである。
ここをちょいっと引っ張れば……な、なにをするう。
アーニーに腕を引かれ、椅子に座らされた。
「ほーい、兄ちゃんー」
「あ、うん」
えっほえっほとハジが焼き立てほやほやのイモムシをととんとテーブルに置く。いやあ、船の上でパラソルにテーブル、椅子とはなんという優雅な空間なんだ。
イモムシ? 気のせいだ。そんなものは俺の目に映らない。素焼きとか知らないぞ。
「いっぱいとれたのでおかわりもありますよ!」
「兄ちゃん、どんどん焼くから遠慮せずに言ってね」
言ってね、じゃねえよ。
視線が痛く、仕方なく手を合わせる。
「い、いただきます……」
く、悔しい。塩コショウを振っただけだってのにそれなりにおいしいから困る。
しかしだな、料理ってのは見た目が重要なのだ。イモムシそのままなんて食欲を誘うわけないじゃないか。
魚の刺身だったら姿そのまま残っていても平気なのだから不思議なものだよ。イモムシそのままになると途端に食欲が失せてしまうが、魚なら逆においしそうに見えるんだよな、これが。
「てんちょお、もうすぐ次が焼けますよお」
「う、うん」
結局、三匹のイモムシを平らげてしまった。二人がぐいぐいすすめてくるから仕方なかったのだ。
◇◇◇
「うお、でけえ」
でっかいサンショウウオのようなモンスターを釣り上げた。サンショウウオとの大きな違いはずらりとならんだ牙、尻尾の先が硬質の刃だ。全長7メートルと、砂海のモンスターの中でも大きい部類に入る。
「兄ちゃん、船に入らないよ」
「リリースしたいけど、こいつの尾で船に当たられたらひとたまりもないよな?」
「う、うん……兄ちゃんたちがいなかったら、今頃、おいら死んでる」
「あ、あはは」
どうすっか、このサンショウウオ……いや、ガリアントだっけか、このモンスターの名前。
アーニーはともかく、ガリアントの尻尾が見えた時のハジの驚きようは相当なものだった。それでも操舵が疎かにならなかったことは賞賛したい。
膝に力が入らなくとも、仕事はやってのける彼は幼いながらも一端の船乗りである。船を動かす役目がなかったら、腰を抜かして無言になっていただろうな。
普通に会話できているのも、彼のプロフェッショナルさからくるものじゃあないだろうか。
「てんちょお、ガリアントどうします?」
「ガリアントであっていたんだ」
「ん?」
「あ、こっちの話。牙と尻尾の刃だけとってポイしようか」
はあい、と手を挙げて応じた彼女が、てきぱきと解体に取り掛かる。見た目こそ可憐で朗らかな犬耳少女であるアーニーだけど、躊躇なくガリアントの首を落とすところなんかはさすがこの世界で生きる実力者だよなあ。文化の違いって恐ろしい。不思議なもので俺も血や肉が飛び散る様子を見ても嫌悪感を抱くことはないのだけどね。もし、アーニーの代わりに俺が解体するとなったとしても、全くもって嫌な気持ちにならない。
VRMMO時代は流血表現に制限がかかっていたし、肉の断面もスーパーの肉みたいだったんだよな。
って、アーニーの作業を黙って見ている場合じゃねえ。
「アーニー、こっち持ってるからそこ頼む」
「はあい」
アイテムボックス的なのがあればいいんだけど、ないんだよなあ。
ゲートでホームに移動してインベントリーにぶち込む、ならいくらでも入るけど、ハジの手前、むやみにゲートを使うのはよろしくない。
緊急事態なら迷わず使うけどね。
「いっせーの」
「はあい」
船の外へ解体したガリアントを投げ捨てた。あっという間にズブズブと砂の中へ沈んでいくガリアント。
「てんちょお、多数の敵影です」
「肉を食べに集まってきたのかな?」
「釣り上げますか?」
「たぶん、サンドシャークだよなあ」
撒き餌すると我先にと集まってくるのは砂海のハイエナことサンドシャークである。サンドシャークの牙はガリアントに比べると数段落ちるんだよな。
わざわざ引っ張り上げることもない。
スルーだな、と思っていたら血相を変えたハジの声が。
「兄ちゃん、サンドシャークって砂鮫のことだよね?」
「うん、食べてもおいしくなさそうだし」
「姉ちゃん、敵影っていっぱいいるの?」
「いるよお。20匹くらいかなあ」
あ、ハジが泡吹いて倒れそうになった。何か問題があるのか?
「砂鮫は船を齧るんだよお」
「船は進んでいるけど、追いかけてくるのかな?」
「こないときもあるけど……」
「くる時もあるのね」
今は肉に群がっているだろうサンドシャークがそれで満足してくれればよいが、船に齧りつかれたら一大事だな。
ガリアントみたいに尾の一撃で船が真っ二つってことはないけど、いずれ船に穴が開いてしまう。
結果、釣り上げて、締めて、ポイして、を数度繰り返し、サンドシャークに肉を提供することでこの場を切り抜けることにした。
ハジからは「無茶苦茶だよお」と言われたけど、これが最善だと思うんだよなあ。
なんてことがありながらも、船は着々とフェイオーこと大顎のところへと航行している。
あとどれくらいかかるんだろうか。一泊、二泊くらいする覚悟はできているぞ。
「ハジ、フェイオーまではあとどれくらいなの?」
「おいらが向かっているポイントまでは、夜休んだ後、翌日のお昼くらいまでにはつくよ」
「そこでフェイオーに会えなかったら別のポイントに向かうのかな?」
「うん、いくつか見かけたって話は聞いてるから向かうつもり」
ふむふむ。行く前に聞いておけよって感じだが、船の進み具合は風や砂の動きに左右される。なので都度聞くのが良いのだ。
決して忘れていたわけではない。
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