凄腕の探索者? いいえ、ただの釣り人です~ゲームに似た異世界に転移したが、ただの素材集めキャラなのでのらりくらりと過ごそうと思います~

うみ

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第34話 砂海もいいものだ

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 スループ砂上船が出発して10分ほど、しばらくハジの様子を見ていたが、彼の操船は慣れたもので全く危なげがない。
 となれば、俺は俺で釣りに集中させてもらうことにしよう。
「じゃじゃーん、砂海用の釣り竿だー」
「てんちょお、他の釣り竿と見分けがつきません」
 は、はは。俺もだよ、アーニー。しかし、アイテム名には砂海用って記載があるんだよね、これが。
 砂海用の釣り竿じゃなくても釣りができそうな気もするけど、一応専用のものを使おうと思って。
「アーニーの分の釣り竿もあるぞ。もちろん砂海用だ」
「おー」
 彼女へもう一本の釣り竿を渡す。彼女は俺の釣りがひと段落ついたところで使うと言っていた。
 釣り竿を振りかぶり、ひょんとウキが砂海へ着弾する。
 ズブズブと針先が砂へと沈み込み、間も無く腕がビビビときた。さすが釣りスキルである。
「一発目は何かなー」
 タイミングを測って釣り竿を引く。
 結果は古びた花瓶の一部だった。花瓶はガラス製で、半分くらい割れて欠落している。壊れた花瓶は売り物としての価値は全くない。一部プレイヤーのインテリア用としての需要はあるが、この世界だと買う人もいないだろ。砂漠に埋まっているリビアングラスのように高音で売れればいいのに……。あっちは天然のガラスなんだっけか。こちらは明らかな人工物だから無理そうだな……。
 さあて、続いて二発目行ってみよう。
「ほいさっと」
「ひゃああああ」
 今度は枯れ木だった。アーニーが変な声を出したのも頷ける。木々なんて一本も生えていない土地に枯れ木なのだから。更に化石化しているわけでもなく、まだ水分が残ってそうなくらいの新しい木だった。釣りスキルなのでどの地域でも釣ることができるように設定されているアイテムは出てくる……仕様がゲームと同じ仕様ってことなのだけど、現実世界と考えたらあり得ない事象だよな。魔法的な何かで異空間から引っ張ってくるのかもしれない。
 深く考えても答えがでないことは考えても仕方がないのだ。
 針から枯れ木を外し、甲板にゴロンと転がす。それをアーニーが拾い上げ、鼻をスンスンさせた。
「やっぱり、いい香りがします」
「ほー、どれどれ。香木かな、これ」
ゲームでは嗅覚がなかったため、枯れ木にこんな香りがあったとは驚きだ。枯れ木となるとインテリアにも使えないし、ただのゴミアイテムだったのだが、香りのアイテムだったとは思いもしなかったよ。
「香りを楽しむにはどうすりゃいいんだろうな」
「楽しむ?」
 独り言のつもりだったのだけど、声に出ていたか。アーニーが不思議そうに犬耳をぺたんとさせる。
 一方で俺は腕を組み、うーんと首を捻りながら考えを述べた。
「細かく削るとか、火をつけてみるとか、低音で炙るとか」
「帰ったらやってみていいですか!」
「もちろん」
「楽しみです」
 枯れ木、いや、香木をぎゅっと胸に抱きにっこにこのアーニーである。火をつけるならもう少し香木を乾燥させてからの方がいいかも?
 香木なんてこれまで使ったことがないから、どうすりゃいいのか見当がつかないんだよな。
「よおし、次は生き物こいよお」
 三度目の挑戦。今回もまた釣り始めたらすぐに獲物がかかる。
 お、砂面が動いているじゃないか。きっと生物に違いないぞ。こいつは期待!
「わあ」
 アーニーから歓声があがる。
 釣りあがったのは期待していた生き物であるが、モンスターじゃあなかった。
 砂埃で全身が覆われ、ずんぐりとしたミミズを太くしたような生物である。体表は薄紫色で、毛はなく、うねうねっと動いていた。
 掴みたくはなかったが、手袋越しだから我慢してそいつを掴み、針から外してリリースしようと腕を――アーニーに両手で腕を掴まれてしまった。
「てんちょお、お店で食べたイモムシさん? ですよね」
「知らん、俺は知らん。イモムシなんてものは。毒々しい色をしているし」
 押し留めるアーニーを無視して彼女の両手を振りほどく。そう、こいつは間違いなくレストランで食べたあのイモムシで間違いない。
「兄ちゃん、そいつなかなかおいしいよ。食べ物屋が買ってくれるよ」
 ええい、少年。君は操船に集中したまえ。
 巧みに船を操りつつも、彼が目線で何かを示す。ふむ。袋だな。
「てんちょお、わたしがやっておきます! ハジくん、袋借りるね」
「あ……」
 ま、待てえ。アーニーにイモムシを奪い取られ、あろうことかお持ち帰り袋に収納されたのである。
 本当に語りたくないのだが、イモムシのサイズは全長40センチから50センチほどもあり、全経も両手で輪を作っても入りきらないという立派なサイズなのだ。
 勘弁してくれ、ほんと。あ、イモムシの体表はすべすべだぞ、えへ。
「てんちょお、まだまだ足りませんー」
「……」
 いらねえよ! って叫びたかったが、アーニーのこぼれるような笑顔を見ていたら面と向かって苦言を呈することはできず、苦笑いするに留めた。
 釣りは続行する。まだこれといったものを釣り上げていないから。だけど、イモムシは断固お断りします(重言)。
「そんじゃあ、再開するぞお」
「はいー!」
 ドキドキの四回目、五回目、お約束というかなんというか、イモムシが連打だった。こ、この辺はイモムシの入れ食いエリアなのかもしれん。
 誰だよ、釣りスキルは場所に関わらず釣れる獲物が謎空間から引っ張られてくるとか言ったのは。
「ちょ、ちょっと休憩するよ」
「じゃ、じゃあ、わたし、釣ってみます!」
 アーニーの釣りとなるとちゃんと仕掛けを作らないと釣ることはできないのかな?
 よくわからなかったが、物は試しと釣りスキルと同じ状態で彼女に釣りをしてもらうことにしたのだ……が。
 イモムシが三体も釣れてしまったのである。どんだけイモムシを釣れば気が済むんだよ!
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