凄腕の探索者? いいえ、ただの釣り人です~ゲームに似た異世界に転移したが、ただの素材集めキャラなのでのらりくらりと過ごそうと思います~

うみ

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第39話 あら、そんなところに

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 ゴロンゴロンと転がって、何かにぶつかりドシンと音がした。どうやら、椅子を倒してしまったようだ。
「すまん、椅子を壊してしまったかも」
「無事脱出できたから良し、ですよ!」
 なんだか俺のようなセリフだな、と思いクスリときた。
 アーニーのゲートの扉は彼女の家に繋がっていて、ハジ父子の姿も見える。ふう、危機一髪だったよ。
 彼女は一人暮らしの家なのでそう広くはないが、転がって即壁に体をぶつけるほどではない。といっても、走り回れるってほどじゃあないのだけどね。
「危なそうなら逃げちゃってくれてよかったんだよ」
「まだいける、と思ったんですよ。既にてんちょおの扉が出てましたから」
「タイミング的に俺たちを助けてくれようとしたんだな、ありがとう、アーニー」
「えへへー」
 ありがとう、の意味を込めて彼女の頭をわしゃわしゃする。対する彼女は気持ちよさそうに目を細めていた。彼女は犬猫と同じように撫でられるのが大好きなのだ。現代社会だとセクハラになるから人間相手にやってはいけないぞ。彼女だからよいのだということを忘れてはならない。もっとも、俺が撫でてみたいのはその尻尾なのだけどね。彼女の機嫌がいい時にお願いしてみようっと。
「店長さん、アーニーさん、ありがとうございました!」
 ハジの父親が深々と頭を下げ、息子も彼に倣う。
「船まで含めて脱出できなくてすいません」
 一方で俺はあの後バラバラになってしまったであろう砂上船を思い謝罪する。
 すると、ハジの父親は「いえいえ!」と大きな声で否定し、握手を求めてきた。
「私がこうして無事陸に帰ってこれたことは奇跡です! 船はまた用意すればよいだけのこと、本当にありがとうございました!」
「兄ちゃん、姉ちゃん、ありがとう。父ちゃんとまた会えたよ!」
 父親の差し出された手を握りしめ、もう一方の手でハジの頭を撫でる。その後、三人で抱擁し、健闘を称え? 違うな、まあ、感動のスクラムを組んだ。俺たちにアーニーが加わろうと勢いよく飛び込んできたら、将棋倒しになってしまう。これもまたお約束ってやつかもしれない。
「サンドシティまで送ります。ここはサンドシティから遠く離れていますので」
「じゃあ、わたしがゲート出します!」

 砂上船を失った彼らは立て直すために結構な苦労となることだろう。だが、彼らに悲壮感は微塵たりともなかった。見送る俺たちを背に力強く踏み出していく彼らにちょっとばかし胸が熱くなる。
「ふう、まあ、砂海釣りが楽しめたから良かったな!」
「よくありません! もう一回、砂海へ行きましょう!」
 えー、釣り場は他にもたくさんあるじゃないか。大顎にしばらく会いたくないんだけど。
 どうしたもんかと腕を組んだところにアーニーから聞きたくないセリフが飛び出した。
「船ごと置いてきたので、せっかく集めたイモムシさんまでいなくなっちゃったんですよ!」
「カルデラ湖とかダンジョン湖水とかにしよう、そうしよう」
「もうー」
 両手を握りしめてぷんすかするアーニーの不満顔になんて絆されないからな!
 グッバイいもむし、フォーエバー。
 心の中でイモムシへのお別れの挨拶を済ませる俺であった。
「そうだー、てんちょお、砂イルカさんとハジくんの船へゲートで移動してみましょうよー」
 知らん、知らんぞ。聞こえなーい。
「ほら、ゲートの扉が出ましたよ!」
 ぐいぐいと袖を引っ張られるも、テコでも動かぬ。動かないぞ。ん、待てよ。
 そういえばと思い出し、考えに気を取られ体から力を抜くと、アーニーに覆いかぶさるようにして倒れ込んでしまった。
 ぐいぐい引っ張っていたところ、急に力を抜いたから仕方ない。
 先に立ち上がって彼女を引っ張り上げ、ごめんと右手をあげる。
「ハジの砂上船に行くよりおもしろそうなところがあることを思い出したんだよ」
「へー、どんなところなんですか?」
「大顎に飲み込まれた先でゲートの登録をしてきたんだ」
「おもしろそうです! どんなところだったんですか!?」
 見た方が早いと、手首を回し魔法陣を出現させ、ゲートの魔法を唱えた。
「あ、待って、先にホームに戻りたい」
「ペットも連れていくんですね」
「うん、さっきフクロウを……あ、フクロウを置いてきたままだった!」
「それは大変です!」
 はやる気持ちをおさえ、まずはフクロウとどこではぐれてしまったのか思い出してみよう。
 ゲートで移動するのは簡単だが、フクロウは置物じゃないから動く。飛ぶこともできるから移動を始めると数キロ先にいるってこともありうる。
 なので、なるべく一発でフクロウとはぐれた場所へ行きたいのだ。
 大顎に飲み込まれた先の岩場にフクロウを連れてきた。そんで、ハジの父親と共に扉をくぐってハジの砂上船へ移動しただろ。
 その時、フクロウは俺の肩にとまっていた。ハジの砂上船では大顎が体当たりしてこようとしており、一刻の猶予もなく、ほうほうの体でアーニーの出したゲートの扉に転がり込んだよな。
 その時、フクロウはどこにいた? 
「アーニーの家に戻ろう」
「はいー。ゲートを出します!」

 さてさて、アーニーの家に再び戻ってきたぞ。
 俺の予想が正しければ、きっと彼女の家の中にフクロウがいる。
「あ、あんなところに!」
「おお」
 梁の上にちょこんと座って目をつぶっているフクロウを発見した。おいて行かれてふてくされていたのか、俺が思うより大物でいずれ俺が来るだろうと寝ていたのかはフクロウのみぞ知る。
「フクロウごめん、行こう」
 フクロウへ呼びかけるとお目目をパチリと開けて、俺の腕に着地した。
「フクロウさんなら暗いところでも平気ですね!」
「そうなんだ。行先は真っ暗の岩場でさ。ナイトサイトを使わないとまるで見えないくらいだよ」
「真っ暗闇ですか。ダンジョンの中じゃないのかもです」
「だなあ、ダンジョンは何故かぼんやりと明るいし」
 真っ暗闇のダンジョンもあるにはあるけど、ナイトサイトが必要ないダンジョンの方が多いのだ。
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