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第40話 わたし、ゲート出しますね
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フクロウ良し、アーニー良し、手持ちの道具良し、今度こそ抜けはない。指さし確認はお仕事の基本である。
「わたしも『良し』、やりたいです!」
「あ、うん」
断る理由はないので、アーニーにも指さし確認をやってもらったのだが、俺、あんな変なポーズをとってたっけ。
いやいや、さすがに回転しながら指さしポーズなんてとってねえよ。
「どうですか?」
「あー、そうだな、スカートをもう少し長くした方がいいんじゃないかな」
「スカートが長い方が『良し』をもっとうまくできるんですね、お勉強になります」
「スカートはまあ、特に良しとは関係ないかな」
えー、でしたらなんで? と不思議顔のアーニーに何か意見を言わなきゃと思って適当なことを言ってしまった、と言うべきか迷う。
さっき指さしポーズのためにくるりと一回転しただろ、したら短いスカートが波打って、もろ見えなんだよね。
中にスパッツ的なのを着るとかしたらどうだろうか。おっし、俺からプレゼントしようかな。
「うーん、このスカートが、うーん」
「そうだ、アーニー、何色がいい?」
「色? スカートですか? スカートは見れば分かり……あ、こっちですね!」
「こらああ、はしたない」
スカートをぺろんとしたアーニーがコテンと首をかしげる。そこできょとんとするんじゃないってばよ。
色は紺色か。紺色のスパッツ的なものを用意しようっと。
しっかし、アーニーだけがこうなのか、異世界人の羞恥心がどうなってんのか理解に苦しむ。
「わたし、裸じゃないですよ?」
「あー、あー、聞こえなあい。ゲート出すぞ、ゲート」
アーニーの恥ずかしさのことを聞くと脳がおかしくなりそうだ。こんな時は話を打ち切り、次の行動へ移すへ限る。
◇◇◇
「ふああ、ここですかあ。岩ばかりですね」
「ただの洞窟なのか、ダンジョン化しているのか、はたまた腹の中なのか」
んー、と顎に指をあてたアーニーがどうやら俯瞰マップを見てくれているようだ。
アーニーの俯瞰マップとフクロウの空からの調査によって、周辺探索を行えばすぐにここのことが分かるだろ。
「グゲ」
「お、何か見つけた?」
グゲゲと汚らしい声で鳴いたフクロウがよたよたと進みはじめる。やっぱり飛ぶんじゃなくて歩くのね。
しばらく歩いていたら「あ」とアーニーが声を出す。
「外へ出られるようですよ、そこの角を右手に進めば外の光が見えるはずです!」
「お、おお。結局大顎の腹の中なのか違うのか確かめることができそうだ」
「洞窟かダンジョンのどっちかだと思いますよ! 出口の形が大顎の口には見えないです」
「楽しみだ」
出口が確認できたと理解したのかは定かじゃないが、フクロウが歩くことをやめ俺の肩に乗った。
「行きましょう、行きましょう」
「おう」
俺の腕を両手で掴んだアーニーにせかされ、走り出す。
舗装された道じゃあないんだから、走ると危ないってば。なんて言っても俺も走り始めているし説得力がないな。
こうなったら――。
アーニーの手を振りほどき、速度をあげる。
「俺が先に出てやるぜ」
「てんちょお、ずるいですー」
追いすがるアーニーをヒラリと躱し、突き当りを右へ。
お、おお。光だ! 外は晴れてるんだなー。時刻は確認していなかったけど、多分お昼過ぎくらい?
「おさきですー」
「あ……」
「光なんて見ながら走ればいいんですう、だ」
「ちくしょお」
今何時ごろだろう、なんて考えていたら速度が落ちたらしい。先ほど走った感じからして、俺とアーニーの速度は同じくらいだ。
一度追い越されたら追い抜くのは至難。それでも、諦めねばきっとチャンスは巡ってくる。
なんて、考えていた時がありました。
アーニーが足を取られるなんてこともなく、追いつけないまま外へ出ちゃいましたよ。
外はどこかの山中、緑豊かな場所で草木が生い茂っている。外に出たらまず確認すべきこと、それは、さきほど出てきた穴だ。
ただの洞窟なのかダンジョンなのかは入り口を見れば分かる。ゲーム時代と同じならね。俺のホームの近くにあるダンジョン「ダスタルド」にももちろん入口に看板がある。ダスタルドのようにダンジョンならば入口に名前を示す看板が必ず掲げられているのだ。
ええと、どこかなあ。ダンジョンによっては発見しずらい場所に看板が挟まっていたりする。
「てんちょお、肩車してくださいー」
「お、おう、いいけど、っうお」
立ったままの俺の肩に両手を乗せたアーニーが跳ねあがり、器用に俺に肩車される形になった。
「見えましたー、ここは『デスパイト』ですね」
「デスパイトか。よくもまあ、モンスターに出会わなかったものだ」
「ものすごく嫌そうな顔をしましたね。デスパイトってどんなところなんですか?」
「生ける屍の巣窟だよ」
デスパイトは全四階層のダンジョンで、二階層と三階層にアンデッドどもがひしめいている。
棲息するモンスターのレベル自体はダスタルドとそう変わらないのだけど、アンデッドとなると気になることがあるんだよ。
そいつを想像して嫌そうな顔をしたってわけなのだ。動く骨であるスケルトンであれば問題ない。
しかしだな、動く腐った死体、と肉があるモンスターだと腐臭をはなっていることだろう。VRMMOでは視覚と触覚だけなのでどれだけ臭う設定だったとしても、そもそも臭いを感じないので問題ない。
今はダメだ。腐臭にやられまともに動くこともできない気がする。特に行かねばならない理由もないから、デスパイトに再入場することもない。
「大顎の飲まれた先がどこかハッキリしたし、ホームへ戻ろうか」
「まだまだ明るいですよ! わたし、ゲート出しますね」
あ、いや、待て。なんだか嫌な予感がする。止めるのが遅くアーニーがゲートの扉を出してしまった。
行先は予想がついてんだよなあ。せっかく誤魔化したってのに。
「わたしも『良し』、やりたいです!」
「あ、うん」
断る理由はないので、アーニーにも指さし確認をやってもらったのだが、俺、あんな変なポーズをとってたっけ。
いやいや、さすがに回転しながら指さしポーズなんてとってねえよ。
「どうですか?」
「あー、そうだな、スカートをもう少し長くした方がいいんじゃないかな」
「スカートが長い方が『良し』をもっとうまくできるんですね、お勉強になります」
「スカートはまあ、特に良しとは関係ないかな」
えー、でしたらなんで? と不思議顔のアーニーに何か意見を言わなきゃと思って適当なことを言ってしまった、と言うべきか迷う。
さっき指さしポーズのためにくるりと一回転しただろ、したら短いスカートが波打って、もろ見えなんだよね。
中にスパッツ的なのを着るとかしたらどうだろうか。おっし、俺からプレゼントしようかな。
「うーん、このスカートが、うーん」
「そうだ、アーニー、何色がいい?」
「色? スカートですか? スカートは見れば分かり……あ、こっちですね!」
「こらああ、はしたない」
スカートをぺろんとしたアーニーがコテンと首をかしげる。そこできょとんとするんじゃないってばよ。
色は紺色か。紺色のスパッツ的なものを用意しようっと。
しっかし、アーニーだけがこうなのか、異世界人の羞恥心がどうなってんのか理解に苦しむ。
「わたし、裸じゃないですよ?」
「あー、あー、聞こえなあい。ゲート出すぞ、ゲート」
アーニーの恥ずかしさのことを聞くと脳がおかしくなりそうだ。こんな時は話を打ち切り、次の行動へ移すへ限る。
◇◇◇
「ふああ、ここですかあ。岩ばかりですね」
「ただの洞窟なのか、ダンジョン化しているのか、はたまた腹の中なのか」
んー、と顎に指をあてたアーニーがどうやら俯瞰マップを見てくれているようだ。
アーニーの俯瞰マップとフクロウの空からの調査によって、周辺探索を行えばすぐにここのことが分かるだろ。
「グゲ」
「お、何か見つけた?」
グゲゲと汚らしい声で鳴いたフクロウがよたよたと進みはじめる。やっぱり飛ぶんじゃなくて歩くのね。
しばらく歩いていたら「あ」とアーニーが声を出す。
「外へ出られるようですよ、そこの角を右手に進めば外の光が見えるはずです!」
「お、おお。結局大顎の腹の中なのか違うのか確かめることができそうだ」
「洞窟かダンジョンのどっちかだと思いますよ! 出口の形が大顎の口には見えないです」
「楽しみだ」
出口が確認できたと理解したのかは定かじゃないが、フクロウが歩くことをやめ俺の肩に乗った。
「行きましょう、行きましょう」
「おう」
俺の腕を両手で掴んだアーニーにせかされ、走り出す。
舗装された道じゃあないんだから、走ると危ないってば。なんて言っても俺も走り始めているし説得力がないな。
こうなったら――。
アーニーの手を振りほどき、速度をあげる。
「俺が先に出てやるぜ」
「てんちょお、ずるいですー」
追いすがるアーニーをヒラリと躱し、突き当りを右へ。
お、おお。光だ! 外は晴れてるんだなー。時刻は確認していなかったけど、多分お昼過ぎくらい?
「おさきですー」
「あ……」
「光なんて見ながら走ればいいんですう、だ」
「ちくしょお」
今何時ごろだろう、なんて考えていたら速度が落ちたらしい。先ほど走った感じからして、俺とアーニーの速度は同じくらいだ。
一度追い越されたら追い抜くのは至難。それでも、諦めねばきっとチャンスは巡ってくる。
なんて、考えていた時がありました。
アーニーが足を取られるなんてこともなく、追いつけないまま外へ出ちゃいましたよ。
外はどこかの山中、緑豊かな場所で草木が生い茂っている。外に出たらまず確認すべきこと、それは、さきほど出てきた穴だ。
ただの洞窟なのかダンジョンなのかは入り口を見れば分かる。ゲーム時代と同じならね。俺のホームの近くにあるダンジョン「ダスタルド」にももちろん入口に看板がある。ダスタルドのようにダンジョンならば入口に名前を示す看板が必ず掲げられているのだ。
ええと、どこかなあ。ダンジョンによっては発見しずらい場所に看板が挟まっていたりする。
「てんちょお、肩車してくださいー」
「お、おう、いいけど、っうお」
立ったままの俺の肩に両手を乗せたアーニーが跳ねあがり、器用に俺に肩車される形になった。
「見えましたー、ここは『デスパイト』ですね」
「デスパイトか。よくもまあ、モンスターに出会わなかったものだ」
「ものすごく嫌そうな顔をしましたね。デスパイトってどんなところなんですか?」
「生ける屍の巣窟だよ」
デスパイトは全四階層のダンジョンで、二階層と三階層にアンデッドどもがひしめいている。
棲息するモンスターのレベル自体はダスタルドとそう変わらないのだけど、アンデッドとなると気になることがあるんだよ。
そいつを想像して嫌そうな顔をしたってわけなのだ。動く骨であるスケルトンであれば問題ない。
しかしだな、動く腐った死体、と肉があるモンスターだと腐臭をはなっていることだろう。VRMMOでは視覚と触覚だけなのでどれだけ臭う設定だったとしても、そもそも臭いを感じないので問題ない。
今はダメだ。腐臭にやられまともに動くこともできない気がする。特に行かねばならない理由もないから、デスパイトに再入場することもない。
「大顎の飲まれた先がどこかハッキリしたし、ホームへ戻ろうか」
「まだまだ明るいですよ! わたし、ゲート出しますね」
あ、いや、待て。なんだか嫌な予感がする。止めるのが遅くアーニーがゲートの扉を出してしまった。
行先は予想がついてんだよなあ。せっかく誤魔化したってのに。
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