凄腕の探索者? いいえ、ただの釣り人です~ゲームに似た異世界に転移したが、ただの素材集めキャラなのでのらりくらりと過ごそうと思います~

うみ

文字の大きさ
47 / 59

第47話 亀で釣りを楽しむ

しおりを挟む
 亀の進みは遅くはないが速くもない。俺が駆け足で進むくらいだろうか。
 世界地図を見ながらだけど、せっかく水上にいるのだ。釣りを楽しむべきである。
 さっきは水中神殿が優先で釣りは後回しとか言っていたが、待ち時間で釣りができるだからやらないという選択肢はないさ。獲物が俺を呼んでいるぜー。
「さあて、一発目行くぞお」
 ちゃぽん、とウキが着水する。
 するとさっそく釣り竿を掴んでいる方の腕にビビビときた。さすが釣りスキル。いつもながら迅速である。
「よし、引き上げるぞ」
 頃合いを見て竿を引く。
 本日一発目の釣果は家具の欠片であった。ソファーの脚部分かなあ。
 続いて2回目。今度はエイに似た魚だった。牙がやたらと鋭いのだけど、きっとエイの一種である。
「これ(エイ)食べられるのかなあ」
「あとで焼いてみましょうー、あ、てんちょう、あっちから何かきます」
 アーニーが示す位置は斜め右方向で、距離は100メートルくらい。このまま直進しても敵影へ直撃することはないが、亀の進む方向を微修正しとこう。もっとも、敵影とて座したままというわけではない。襲ってくるなら追いかけてくるはず。
「アーニー、相手の形と大きさは分かる?」
「う、うーん、たぶん魚です! おっきいです。あ!」
 アーニーが何か言おうとしたところで、水面が動き、8メートルほどの頭に兜をまとったような巨大魚が跳ね上がってきた。そいつはヒレを羽のようにして、一直線にこちらへ向かってくる。どうしたものかと手首を回し魔法陣を出し、思案するも空から急降下してきた巨大な鷹に掴まれて連れ去られて行った。
「空から鳥が物凄いスピードでした」
「鳥のことを教えてくれようとしていたんだな」
「はいー。速すぎてとらえたらもう目の前でした」
「獲物が俺たちじゃなくてよかったよ」
 巨大魚ならば脅威ではない。釣りスキルで釣り上げてしまえばいいだけだ。しかし、鳥となると釣りスキルではどうにもならないんだよな。最悪、エアリアルボヤージの魔法で緊急退避だ。そうなると、また岸からやり直しにはなるけどね。
 何度目かになるが、ゲートは扉をくぐらないと転移することができない。一方でエアリアルボヤージは魔法が発動すると転移する。前者は術者本人が扉をくぐってから数十秒くらいの間は扉が消えず、その間に何人でも転移できること。術者が扉をくぐらなかった場合はたしか三分か四分くらい扉が出っぱなしだっけか。後者は自分とペットしか転移することができないデメリットがある。
 どちらも一長一短であるが、緊急時にはエアリアルボヤージに軍配があがり、普段はゲートの方が使い勝手がよい。何事も臨機応変ってのが大事なのである。
「他にはもう(モンスターは)いないかな?」
「はいー、何かいたらまたお知らせします!」
 何もいないでこのまま進みたいものである。
 舌の根の乾かぬ内に釣り竿を持ち直し、再び釣りを始める俺。
 アーニーは俯瞰マップを見ながらも、釣り竿に注目していた。さてさて、お次は何がかかるかなあ。
「よっし、かかった」
「何があがってくるのか楽しみですー」
「……石だな」
「大理石じゃないですか?」
 魚が引っかかる率が低いような気がするのだが、気のせいであってくれ。残念ながら鑑定スキルなんてものは持っていないので、こいつがどんな石なのか分からない。大きさはソフトボール大くらいで家具などの内装アイテムの一部何じゃあないかと思う。
 ゲーム時代はアイテムを見ると表示名が浮かんでいたから、何の欠片なのか分かったんだよね。それで鑑定スキルにあまり意味合いを見いだせなかった。
 装備だって見て分からずとも実際に装備すればどれくらいの性能か分かるもの。武器防具を売る場合、鑑定結果のメモを添えて売ったりする人もいるにはいた。
 俺は生産キャラを作っていなかったので、鑑定スキルを有効に活用するシーンがなかったんだよね。
 現実世界になった今なら鑑定スキルもなかなかの有用スキルじゃないかな。といっても今からスキル構成を変えることは困難なので、俺が鑑定スキルを使うことは今後もない。とまあ、グチグチと隣の水が甘い、と述べていたわけであるが、今でも十分なスキルを持っているから全くもって問題ないのである。
 十分与えられていることを自覚していても欲望がなくならないのだから、あさましいよな、我ながら。
 何が欲しいんだって? それはあれだよあれ、俯瞰マップさ。スキルじゃなくコマンドだからどうやっても手には入らないのだけどね。
 敵を察知する能力に長けた種族とか索敵を補うスキルはあるが、俯瞰マップほど分かりやすくはない。視界に周辺マップが出てきて、ソナーやレーダーのように敵影を映すのだもの。水中だろうが、空中だろうがお構いなしってのもよい。他と違ってゲーム時代に常に使っていたから慣れているのも大きいんだよな。
「てんちょお、今更ですけど世界地図で場所のあたりはつくんですか?」
「ざっくりだなあ。世界地図は縮尺率の問題で、過去に行った時の景色を思い出しつつ世界地図と照らし合わせる感じだなあ」
「そうなんですね! てんちょおの見込みではあとどれくらい進む感じです?」
「んー、アーニーの俯瞰マップには水中神殿が映らないかな?」
 ぶんぶんと首を振るアーニーであった。水中神殿は水深の関係で俯瞰マップには映らないのかなあ。
 ゲーム時代はどうだったっけ。
 ……ゲートに頼り過ぎていて、水中神殿の真上がどの辺りなのかも記憶があいまいなんだよな。ただ、東方向に小島が見えたことだけは確か。
 小島はこのまま真っすぐ行けば見える……多分。地図にも小さな点になるけど、描かれているし、現在地から推測しても方向はあっている。
「あ、見えた、あの小島から西側へ進めばいい」
「さすがてんちょうです!」
「褒めるのは水中神殿を発見してからな」
「はいー、発見したらなでなでします」
 俺は犬猫じゃないってば。
 なんて笑い合っている間に小島がどんどん近くなってきた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

スマホアプリで衣食住確保の異世界スローライフ 〜面倒なことは避けたいのに怖いものなしのスライムと弱気なドラゴンと一緒だとそうもいかず〜

もーりんもも
ファンタジー
命より大事なスマホを拾おうとして命を落とした俺、武田義経。 ああ死んだと思った瞬間、俺はスマホの神様に祈った。スマホのために命を落としたんだから、お慈悲を! 目を開けると、俺は異世界に救世主として召喚されていた。それなのに俺のステータスは平均よりやや上といった程度。 スキル欄には見覚えのある虫眼鏡アイコンが。だが異世界人にはただの丸印に見えたらしい。 何やら漂う失望感。結局、救世主ではなく、ただの用無しと認定され、宮殿の使用人という身分に。 やれやれ。スキル欄の虫眼鏡をタップすると検索バーが出た。 「ご飯」と検索すると、見慣れたアプリがずらずらと! アプリがダウンロードできるんだ! ヤバくない? 不便な異世界だけど、楽してダラダラ生きていこう――そう思っていた矢先、命を狙われ国を出ることに。 ひょんなことから知り合った老婆のお陰でなんとか逃げ出したけど、気がつけば、いつの間にかスライムやらドラゴンやらに囲まれて、どんどん不本意な方向へ……。   2025/04/04-06 HOTランキング1位をいただきました! 応援ありがとうございます!

駆け落ち男女の気ままな異世界スローライフ

壬黎ハルキ
ファンタジー
それは、少年が高校を卒業した直後のことだった。 幼なじみでお嬢様な少女から、夕暮れの公園のど真ん中で叫ばれた。 「知らない御曹司と結婚するなんて絶対イヤ! このまま世界の果てまで逃げたいわ!」 泣きじゃくる彼女に、彼は言った。 「俺、これから異世界に移住するんだけど、良かったら一緒に来る?」 「行くわ! ついでに私の全部をアンタにあげる! 一生大事にしなさいよね!」 そんな感じで駆け落ちした二人が、異世界でのんびりと暮らしていく物語。 ※2019年10月、完結しました。 ※小説家になろう、カクヨムにも公開しています。

過労死した俺、異世界で最強農業チートに目覚める。神農具で荒野を楽園に変えたら、エルフや獣人が集まって最高の国ができました

黒崎隼人
ファンタジー
「君、死んじゃったから、異世界で国、作らない?」 ブラック企業で過労死した俺、相川大地。 女神様から授かったのは、一振りで大地を耕し、一瞬で作物を育てる**最強の『神農具』**だった!? 右も左もわからない荒野でのサバイバル。 だけど、腹ペコのエルフ美少女を助け、頼れるドワーフ、元気な猫耳娘、モフモフ神狼が仲間になって、開拓生活は一気に賑やかに! 美味しいご飯とチート農具で、荒野はあっという間に**「奇跡の村」**へ。 これは、ただの農民志望だった俺が、最高の仲間たちと世界を救い、種族の壁を越えた理想の国『アグリトピア』を築き上げる物語。 農業は、世界を救う! さあ、今日も元気に、畑、耕しますか!

異世界に飛ばされた人見知りの僕は、影が薄かったから趣味に走る事にしました!

まったりー
ファンタジー
主人公は、人見知りな占いが大好きな男の子。 そんな主人公は、いるのか分からない程の影の薄さで、そんなクラスが異世界に召喚されてしまいます。 生徒たちは、ステータスの確認を進められますが、主人公はいるとは思われず取り残され、それならばと外に1人で出て行き、主人公の異世界生活が始まります。

酒好きおじさんの異世界酒造スローライフ

天野 恵
ファンタジー
酒井健一(51歳)は大の酒好きで、酒類マスターの称号を持ち世界各国を飛び回っていたほどの実力だった。 ある日、深酒して帰宅途中に事故に遭い、気がついたら異世界に転生していた。転移した際に一つの“スキル”を授かった。 そのスキルというのは【酒聖(しゅせい)】という名のスキル。 よくわからないスキルのせいで見捨てられてしまう。 そんな時、修道院シスターのアリアと出会う。 こうして、2人は異世界で仲間と出会い、お酒作りや飲み歩きスローライフが始まる。

子育てスキルで異世界生活 ~かわいい子供たち(人外含む)と楽しく暮らしてます~

九頭七尾
ファンタジー
 子供を庇って死んだアラサー女子の私、新川沙織。  女神様が異世界に転生させてくれるというので、ダメもとで願ってみた。 「働かないで毎日毎日ただただ可愛い子供と遊んでのんびり暮らしたい」 「その願い叶えて差し上げましょう!」 「えっ、いいの?」  転生特典として与えられたのは〈子育て〉スキル。それは子供がどんどん集まってきて、どんどん私に懐き、どんどん成長していくというもので――。 「いやいやさすがに育ち過ぎでしょ!?」  思ってたよりちょっと性能がぶっ壊れてるけど、お陰で楽しく暮らしてます。

追放された最強賢者は悠々自適に暮らしたい

桐山じゃろ
ファンタジー
魔王討伐を成し遂げた魔法使いのエレルは、勇者たちに裏切られて暗殺されかけるも、さくっと逃げおおせる。魔法レベル1のエレルだが、その魔法と魔力は単独で魔王を倒せるほど強力なものだったのだ。幼い頃には親に売られ、どこへ行っても「貧民出身」「魔法レベル1」と虐げられてきたエレルは、人間という生き物に嫌気が差した。「もう人間と関わるのは面倒だ」。森で一人でひっそり暮らそうとしたエレルだったが、成り行きで狐に絆され姫を助け、更には快適な生活のために行ったことが切っ掛けで、その他色々が勝手に集まってくる。その上、国がエレルのことを探し出そうとしている。果たしてエレルは思い描いた悠々自適な生活を手に入れることができるのか。※小説家になろう、カクヨムでも掲載しています

キャンピングカーで走ってるだけで異世界が平和になるそうです~万物生成系チートスキルを添えて~

サメのおでこ
ファンタジー
手違いだったのだ。もしくは事故。 ヒトと魔族が今日もドンパチやっている世界。行方不明の勇者を捜す使命を帯びて……訂正、押しつけられて召喚された俺は、スキル≪物質変換≫の使い手だ。 木を鉄に、紙を鋼に、雪をオムライスに――あらゆる物質を望むがままに変換してのけるこのスキルは、しかし何故か召喚師から「役立たずのド三流」と罵られる。その挙げ句、人界の果てへと魔法で追放される有り様。 そんな俺は、≪物質変換≫でもって生き延びるための武器を生み出そうとして――キャンピングカーを創ってしまう。 もう一度言う。 手違いだったのだ。もしくは事故。 出来てしまったキャンピングカーで、渋々出発する俺。だが、実はこの平和なクルマには俺自身も知らない途方もない力が隠されていた! そんな俺とキャンピングカーに、ある願いを託す人々が現れて―― ※本作は他サイトでも掲載しています

処理中です...