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第48話 水中神殿
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小島は大型モンスターが入り込めるほど大きくなく、湖水から数メートル上に岸があるためのんびりすごせそうな感じだった。のんびりした昼下がりを満喫できそうな小島そばで拠点登録をしつつ、目的地まで進む。
「この辺かなあ」
「潜ってみますか?」
「だな、ちょっくらみてくる」
ペットを出して水中を移動しても良いのだが、様子見だけなので素潜りでもいいかなって。もちろん、魔法は使うけどね。
手首を回し、魔法陣を出す。
「魔法陣よ、力を示せ。ブリージング」
エフェクトがないから発動したか分からないけど、魔法陣の光が消えたので魔法がかかっている。ブリージングは水中でも呼吸ができるようになる魔法で、水中に行く場合には必須の魔法だ。
上着だけ脱いで、いざ。
「ちょ、アーニーは待ってて。亀を見ていて欲しいから」
「えー、私もご一緒しようと思ったのに」
「あと潜るにしろ、俺のように服を着たままでよいからね。水中神殿を拠点登録したら着替えるから」
「はいー」
俺がいるってのに全裸で泳ごうとか考えていたんだろうか。水中はなるべく肌の露出を避けた方がよい。全身タイツみたいな水着がベストだが、あいにく持ち合わせていないのだ。そして、武器の携帯も忘れちゃならない。地球と違ってモンスターがいるからね。武器を持っていたといっても、水中だと振るい辛いんだよなあ。幸いVRMMOである程度の慣れはあるので、ちょっとしたモンスターなら倒すことは倒せるのだが……戦闘系スキルはちょこっとしか持っていないからたかがしれている。一番は逃げること。俺の場合は、武器を出すより魔法陣を出す方が理に叶っている。あれ、武器要らなくね?
亀から湖面へ飛び込み、下へ下へと向かう。湖水は思った以上に澄んでいて遠くまで見渡すことができる。とはいえ、深いところになると暗くて見えなくなっていた。光の届く範囲って案外狭いのだ……。暗くても俺を遮るものにはならんぞお。と、謎のテンションでナイトサイトの魔法をかけ、更に進む。
深く潜ると水圧が気になるところだが、ゲームと同じでこの体は水圧の問題がない様子だった。素晴らしいぞ、ゲームの体! 最悪、ストーンウォールで四方を覆って、とかも考えていたが杞憂に終わり良かったよ。
「お、あった」
暗闇でも昼のように見通せるナイトサイトのおかげで、パルテノン神殿のような建造物を視界に捉えることができた。
あの建物が水中神殿で間違いない。ゲームと同じなら、パルテノン神殿が入り口になっていて、ダンジョンに続いている。
水中神殿に近寄ると空気と水を遮る壁のようなものがあり、それを押し込んだらあっさりと中に入ることができた。入った途端に水の浮力がなくなり真っ逆さまに下へ落ちる。華麗に着地してふうと一息つく。
水中神殿は大きな泡のような壁に覆われていて、中に入ると地上と変わらぬ空気に満ちた空間になっているんだ。水中神殿を覆う壁の内側で拠点登録をすれば、水に濡れることもなく水中神殿を訪れることができる。
「拠点登録おっけ」
無事目的を果たしたので、アーニーを連れてきてから探索へ向かうことにしようぞ。
「ほへー、水中にどうやってこんな立派な神殿を建てたんでしょうねー」
「確かに、建築された経緯なんて考えたこともなかった」
目をぱちくりさせてあんぐり口を開けるアーニーを横目に相槌を打つ。ゲームの設定だから、と言ってしまえばそれまでなのだが、この世界は現実世界でゲームではない。となると、誰かが神殿を作った、と考えるのも自然なことだ。
湖ができる前に神殿があって、長い年月の後に湖の底になった。……うーん、それなら水と神殿を隔てる壁はなんであるんだって疑問が残る。
神殿を建てた動機については、ダンジョンからモンスター出てこないように的な結界のため? あ、結界だから神殿が膜に覆われているとか?
考え始めたら楽しくなってきた。
思考の渦にどっぷりつかる前にアーニーから声がかかり、ハッとする。
「入らないんですかー?」
「お、おう、中を探査しよう。アーニーは水中神殿へ来るのは初めてだったよね?」
「そうです! もう外から見ただけで感動です」
「不思議な神殿だよなあ」
またしても考え込みそうになったので、神殿へ向かう足を動かす。俺に並ぶようにして尻尾をフリフリしながらアーニーも続く。
大理石の石畳に大理石の柱は豪奢であるが、中はガランとし静まり返っている。
こう何もないだだっ広い空間ってなんだか落ち着かないんだよね。広いながらも何もない単純な構造なので、どこにダンジョンの入口があるのかも分かっている。そろそろアーニーの俯瞰マップにもダンジョンの入口が映るはず。
「あ、見えました。下へ続く穴? が」
「言い忘れていてごめん。ダンジョンには入らないんだ」
「そうなんですか! そこにダンジョンがあれば探索するのが探索者じゃないですか」
「そ、そうかも、だけど俺、探索者じゃなくて釣り人だし……」
理由になってないが、何故かアーニーが納得し、うんうん、と頷いている。
「でしたらどこに向かうんです?」
「ダンジョンの入口辺りまで行ったら目的地が俯瞰マップに映るはずだよ」
「行きましょうー!」
「ちょ」
俺の右手を手に取り、走り始めるものだから倒れ込みそうになってしまう。
なんとか立て直し、逆に彼女を引っ張るようにしてダンジョンの入口まであっという間に到着した。
ここからなら俯瞰マップじゃなくとも、視界に映り込むはず。
「銅像? のようなものがありますね」
「うん、ここからじゃまだ指先くらいだけど、銅像……女神像が目指す場所だよ」
「そこに聖骸の雫があるんですね!」
「そそ、アーニーがちゃんと目的を覚えているとはちょっと驚いた」
「そういうことは口に出して言わないものですよ!」
「あはは、ごめん、ごめん」
などと、キャッキャしながら女神像まで移動する俺たち。
「この辺かなあ」
「潜ってみますか?」
「だな、ちょっくらみてくる」
ペットを出して水中を移動しても良いのだが、様子見だけなので素潜りでもいいかなって。もちろん、魔法は使うけどね。
手首を回し、魔法陣を出す。
「魔法陣よ、力を示せ。ブリージング」
エフェクトがないから発動したか分からないけど、魔法陣の光が消えたので魔法がかかっている。ブリージングは水中でも呼吸ができるようになる魔法で、水中に行く場合には必須の魔法だ。
上着だけ脱いで、いざ。
「ちょ、アーニーは待ってて。亀を見ていて欲しいから」
「えー、私もご一緒しようと思ったのに」
「あと潜るにしろ、俺のように服を着たままでよいからね。水中神殿を拠点登録したら着替えるから」
「はいー」
俺がいるってのに全裸で泳ごうとか考えていたんだろうか。水中はなるべく肌の露出を避けた方がよい。全身タイツみたいな水着がベストだが、あいにく持ち合わせていないのだ。そして、武器の携帯も忘れちゃならない。地球と違ってモンスターがいるからね。武器を持っていたといっても、水中だと振るい辛いんだよなあ。幸いVRMMOである程度の慣れはあるので、ちょっとしたモンスターなら倒すことは倒せるのだが……戦闘系スキルはちょこっとしか持っていないからたかがしれている。一番は逃げること。俺の場合は、武器を出すより魔法陣を出す方が理に叶っている。あれ、武器要らなくね?
亀から湖面へ飛び込み、下へ下へと向かう。湖水は思った以上に澄んでいて遠くまで見渡すことができる。とはいえ、深いところになると暗くて見えなくなっていた。光の届く範囲って案外狭いのだ……。暗くても俺を遮るものにはならんぞお。と、謎のテンションでナイトサイトの魔法をかけ、更に進む。
深く潜ると水圧が気になるところだが、ゲームと同じでこの体は水圧の問題がない様子だった。素晴らしいぞ、ゲームの体! 最悪、ストーンウォールで四方を覆って、とかも考えていたが杞憂に終わり良かったよ。
「お、あった」
暗闇でも昼のように見通せるナイトサイトのおかげで、パルテノン神殿のような建造物を視界に捉えることができた。
あの建物が水中神殿で間違いない。ゲームと同じなら、パルテノン神殿が入り口になっていて、ダンジョンに続いている。
水中神殿に近寄ると空気と水を遮る壁のようなものがあり、それを押し込んだらあっさりと中に入ることができた。入った途端に水の浮力がなくなり真っ逆さまに下へ落ちる。華麗に着地してふうと一息つく。
水中神殿は大きな泡のような壁に覆われていて、中に入ると地上と変わらぬ空気に満ちた空間になっているんだ。水中神殿を覆う壁の内側で拠点登録をすれば、水に濡れることもなく水中神殿を訪れることができる。
「拠点登録おっけ」
無事目的を果たしたので、アーニーを連れてきてから探索へ向かうことにしようぞ。
「ほへー、水中にどうやってこんな立派な神殿を建てたんでしょうねー」
「確かに、建築された経緯なんて考えたこともなかった」
目をぱちくりさせてあんぐり口を開けるアーニーを横目に相槌を打つ。ゲームの設定だから、と言ってしまえばそれまでなのだが、この世界は現実世界でゲームではない。となると、誰かが神殿を作った、と考えるのも自然なことだ。
湖ができる前に神殿があって、長い年月の後に湖の底になった。……うーん、それなら水と神殿を隔てる壁はなんであるんだって疑問が残る。
神殿を建てた動機については、ダンジョンからモンスター出てこないように的な結界のため? あ、結界だから神殿が膜に覆われているとか?
考え始めたら楽しくなってきた。
思考の渦にどっぷりつかる前にアーニーから声がかかり、ハッとする。
「入らないんですかー?」
「お、おう、中を探査しよう。アーニーは水中神殿へ来るのは初めてだったよね?」
「そうです! もう外から見ただけで感動です」
「不思議な神殿だよなあ」
またしても考え込みそうになったので、神殿へ向かう足を動かす。俺に並ぶようにして尻尾をフリフリしながらアーニーも続く。
大理石の石畳に大理石の柱は豪奢であるが、中はガランとし静まり返っている。
こう何もないだだっ広い空間ってなんだか落ち着かないんだよね。広いながらも何もない単純な構造なので、どこにダンジョンの入口があるのかも分かっている。そろそろアーニーの俯瞰マップにもダンジョンの入口が映るはず。
「あ、見えました。下へ続く穴? が」
「言い忘れていてごめん。ダンジョンには入らないんだ」
「そうなんですか! そこにダンジョンがあれば探索するのが探索者じゃないですか」
「そ、そうかも、だけど俺、探索者じゃなくて釣り人だし……」
理由になってないが、何故かアーニーが納得し、うんうん、と頷いている。
「でしたらどこに向かうんです?」
「ダンジョンの入口辺りまで行ったら目的地が俯瞰マップに映るはずだよ」
「行きましょうー!」
「ちょ」
俺の右手を手に取り、走り始めるものだから倒れ込みそうになってしまう。
なんとか立て直し、逆に彼女を引っ張るようにしてダンジョンの入口まであっという間に到着した。
ここからなら俯瞰マップじゃなくとも、視界に映り込むはず。
「銅像? のようなものがありますね」
「うん、ここからじゃまだ指先くらいだけど、銅像……女神像が目指す場所だよ」
「そこに聖骸の雫があるんですね!」
「そそ、アーニーがちゃんと目的を覚えているとはちょっと驚いた」
「そういうことは口に出して言わないものですよ!」
「あはは、ごめん、ごめん」
などと、キャッキャしながら女神像まで移動する俺たち。
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