凄腕の探索者? いいえ、ただの釣り人です~ゲームに似た異世界に転移したが、ただの素材集めキャラなのでのらりくらりと過ごそうと思います~

うみ

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第49話 水ゲット

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 女神像はよく見るギリシャ彫刻のような像で、ローブを纏い、水瓶を肩に乗せた姿をしている。噴水ではないので、水瓶から水が噴射されてはいないが……。
 女神像の足元には庭にある水場のような長方形のシンクがある。シンクと違って水が抜ける穴はなく、素材も豪華なメノウでできていた。メノウ製だというのはゲーム情報なので間違えているかもしれないのだけどね。そもそも俺はメノウがどんな素材なのかも分かっていないのだから。
「女神さまのところにお水があるのかと思ってました」
 アーニーが女神像を見ての感想を述べる。
「いんや、間違ってないよ」
 聖骸の水は神聖な女神像で清められた水なのだ。彼女の予想は外れてはいない。
「箱の中にもお水がないですよ?」
「こいつはこうするんだ」
 ここまで知ったかをして、ゲームと同じじゃなかったら恥ずかし過ぎるな……という考えが頭をよぎるも、アーニーを迎えに行く前にホームへ立ち寄って持ってきた純白のハンカチをメノウのシンクに入れた。ゲームと同じであればこれで問題ない。
 祈るような気持ちでシンクを眺めていたら、底から水が湧き出してきてあっという間に満水となったのだ。
「お水が出てきました!」
 犬耳をピンとさせ、尻尾の毛を逆立たせたアーニーが驚きの声をあげる。
「これが、聖骸の水。ハミルトンが言う聖杯の水だよ」
「深い深いダンジョンの底にあるのかなと思ってました!」
「持ち帰るのはそう難しくない。何度も依頼が出るほどなのかなあ、これ」
「水中神殿のことが長い時を経て忘れ去られているのではないでしょうか」
 俺も最初はアーニーと同じことを考えた。だけど、忘れ去られていたのなら一つ疑問が残る。聖骸の水は錬金術の素材として使うアイテムだろ。失伝しているのなら、現在でも聖骸の水が欲しいってなるのかなあ、て。錬金術のレシピだけが残っていて、研究者が一度錬成してみたい? なら、聖骸の水が欲しいとなる線もあるか。どうやら今回の依頼主はお貴族様のようだし。お貴族様なら自分の趣味のために莫大なお金をかけるのも頷ける。
「聖骸の水は水袋に入れて持ち帰ろうか」
「はいー! お手伝いします」
「んじゃ、これに水を入れて」
「お任せをー」
 手分けして8つの水袋にせいがいの水を満たし、リュックに詰め込む。
「てんちょお、このハンカチも回収してよいですか?」
「うん、頼む」
「はいー、ハンカチも魔法のアイテムなのです?」
「いんや、白い布なら何でもよいんだ。インベントリーを見たら真っ先に見つけたから」
 聖骸の水を湧き出させるには、白い布であればなんでもいいんだ。エコバックのようなものでも布製で白なら聖骸の水が湧き出てくる。
「てんちょおは博識ですね!」
「いや、俺が聖骸の水の取得方法を見つけたわけじゃないから」
 アナザーワールドオンライン攻略サイトにでかでかと記載しているからな。俺じゃなくとも錬金術をやってみようかな、とか、手頃な売り物を並べたいな、って時に調べれば、聖骸の水が出てくる。聖骸の水はゲートで目の前まで移動すればすぐ取れるから、お手軽なんだよね。
 お手軽過ぎるから店に並べても売れないだろう、と思うかもしれないが、案外これが売れるんだよ。他の消耗品と一緒に「ついで」購入で。
 購入者からしたら、手軽に取れるアイテムだけにお値段も格安だし、店で他のアイテムと一緒に買うなら手間にもならない。
 使い道は錬金術のみで、回復系や状態異常治療系のポーションに利用できる。
「おっし、これで終わり。戻ろうか」
「ダンジョンは探索していかないのですか?」
「ハミルトンの依頼が急ぎらしいから、パパっと納品してからまた来ようかなって」
「そうしましょう!」
 特に何もトラブルが起きず、いそいそと帰還するって却ってもやもやするものだな。
 いや、スムーズに目的を達成できるのは喜ばしいことで、理想的だとは分かっている。しかし、これまで何かしら起きていたし、ゲーム脳な俺としては何かしらのイベントをこなして報酬を得る。いかんいかん、毒され過ぎだ。
 
 ◇◇◇
 
 さっそくやって参りました。アーモンドアイの探索者ギルドへ。
「うーん、ハミルさん、いないですね」
「んだな、探索者ギルドの業務って受付だけじゃないだろうし」
 額に手をやり目を細めるアーニーに、そんなポーズをしなくても見えるんじゃ、と無粋な感想を抱きつつ、俺も真似してみた。
 彼女がやるにはいいが、俺がやるとちょっと気持ち悪い。恥ずかしくなり、額から手を放そうとしたら、じっと彼女に見られていることに気が付き、ますます座りが悪くなる。
 気にしてはいけない。こういう時はスルーしてズカズカと受付へ向かうに限る。
 ちょうど右の受付が空いていたので、手を挙げて会釈しアーニーと並んで椅子に腰かけた。
 どうやらアーニーと受付のウサギ耳の女の子は知り合いらしく親し気に挨拶を交わしている。
「アーニーさん、ハミルトンさんは港の方へ行ってます」
「てんちょお、どうしますか?」
 俺に話が振られると思っておらず、少し間が開いてしまった。急にボールがきたら戸惑うのは俺だけじゃないはず。
「あ、まあ、渡すものを渡しちゃっていいんじゃないか。ハミルトンはここにいずれ戻ってくるわけだし」
 そう言って、水袋をトスンとカウンターに置く。
 何ら説明をせずに水袋が置かれたものだから、受付の女の子が戸惑ったように尋ねてくる。
「も、申し訳ありません。こちらをどのようにすれば?」
「ハミルトンから、聖骸……じゃない、聖杯の水を急ぎ持ってきて欲しいって頼みを受けて」
「あ、え……聖杯の水……を、ですか?」
「は、はい」
 やはりハミルトンに聖骸の水を直接渡すべきだったか。受付のプロフェッショナルの彼女が固まってしまうくらいなのだから、余程のことだぞ。
 何故彼女がここまで動揺しているのかイマイチピンとこないのだけど、俺は探索者じゃないから探索者的な事情は分からん。探索者として驚かれることがあったのかもしれない。ハミルトンから個人的に依頼を受けただけで、探索者ギルドの依頼を受けたわけじゃないものなあ。
 あ、探索者ギルドで依頼を受けていなかったら、そもそも探索者ギルドの受付で依頼の品を渡すのがおかしい。そういうことか。

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