凄腕の探索者? いいえ、ただの釣り人です~ゲームに似た異世界に転移したが、ただの素材集めキャラなのでのらりくらりと過ごそうと思います~

うみ

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第57話 ウリドラ

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「アーニー、反対側の入り江に飛ぶ」
「はいー」
 テレポートで届く距離だったため、灯台と向い合せになっている入り江まで飛ぶ。
 目的は灯台にいる二人から離れるため。
 この場所だとウリドラの風の刃で灯台が破壊される可能性があるからな。入り江に移動したところで風の刃が灯台に当たらないと言い切れないが、直撃よりはマシだよね、きっと。探索者二人は危なくなったら魔法で逃げる、と言っていたし、即気絶したりしなきゃ大丈夫、大丈夫。
「アーニー、奴との距離は凡そ300メートルほど、この距離なら届く。プレッシャーで動きが鈍りそうなら即逃げてくれよ」
「はいいい。てんちょおにしがみついているので大丈夫と思います」
「それじゃ、状況開始だ」
「あいあいさー」
 初手、ペット召喚!
 白い煙と共に威風堂々とした魔獣が出現する。
 全身は豹と虎を足して割ったような姿で、豹のしなやかさと虎の力強さを兼ね備えているかのよう。
 青白い毛に全身が覆われ、足元と尻尾の毛色の青みが強く、まるで燃え盛っているようにも見える。
 全長は凡そ6メートルと全長20メートルを超えるウリドラと比べると小さいが、馬より遥かに大きい。
 こいつの種族名はソウエン。蒼炎と書くのだそうだ。魔獣使いの熟練度がマックスまで上がっていないと使役することはできない。もちろん、ぺぺぺじゃ扱えない魔獣なのだ。
 背伸びしてソウエンの首を撫でるとぐるぐると気持ちよさげに喉を鳴らす。
「ひ、久しぶりに見ましたが、シュークリームさんのペットは超怖いです……」
「噛みはしないさ。乗るぞ」
 作戦は待ち構える。こちらは入り江から動かず、来るなら来いのスタイルで行く。
 といっても、ただただ待っているだけじゃないぜ。
「ソウエン、威嚇を頼む」
『ガアアアアアアア』
 耳をつんざく咆哮がソウエンの口から吐き出され、ビリビリと空気が震える。
 すると、ウリドラの顔があがり、真っすぐこちらを見据え、ぐんぐん迫ってきた。
 これにはもちろん種も仕掛けもある。ソウエンはモンスターのヘイトを稼ぐ「咆哮」の能力を持ち、ウリドラがギリギリ射程範囲内にいたのだ。
 どうやらうまくいったようで、ウリドラのターゲットは俺になった。
「アーニー」
「はいい、てんちょおの後ろだからか、大丈夫そうです」
「分かった。もしもの時は頼む」
「はいー。リュックもバッチリです」
 喋っている間にもウリドラとの距離は残りあと120メートルほど。
 奴は顔と首元だけを海水面より上に出し、なかなかなスピードで迫ってきている。
 敵は海の中、となれば。
 手首を回し魔法陣を出す。続いてもう一個、更に反対の手の指先をくるりと回転させた。
 その時、100メートルまで接近したウリドラの周囲に水柱が立ち上がり、口に吸い込まれ、水流ブレスとなってこちらに一直線に飛んでくる。
 水流ブレスは直径1メートル以上もあり、まともに喰らったらひとたまりもない。
「魔法陣よ、力を示せ。アイスウォール!」
 ウリドラが水を活かすならこちらも地形を利用させてもらう。
 海上に氷の柱が一瞬にして出現し、水のブレスを受け止め、水流ブレスと共に砕け散る。
「続いて、チェインマジック。魔法陣よ、力を示せ。ライトニング。風の精霊よ、竜巻となりて力を示せ。ウインドストーム」
 古代魔法と精霊魔法の同時発動により、辺り一帯が黒い雲に覆われ、ウリドラを中心に海がうねり風の竜巻となって襲い掛かった。
 更に天から雷が落ち、竜巻が帯電しビカビカと青白い稲光をあげる。
『グウウアアア』
 ウリドラから悲鳴が発せられるも、僅か数秒怯んだだけで、再びこちらと距離を詰め始めた。
「ひいい。あれでもまるで効いてないんですか?」
「いや、多少は効いている。ウリドラの耐久はネームド平均だけど、ネームドって異常に耐久力があるからな……」
 今の挨拶程度で止まるとは鼻から思っちゃいない。
 奴が怯んでいる隙に次の魔法陣を出し、詠唱に入っている。
「魔法陣よ、力を示せ。アイスフィールド」
 キイインとした乾いた音とともに、瞬く間に俺の前方50メートルほどの海が凍り付く。
 こいつは自身の魔法攻撃力に応じて適用範囲が広くなる魔法で、辺り一帯を氷の大地に変える。海や池なら凍り付き、大地の場合はカチカチになるんだ。
 対するウリドラは軽々と分厚い氷を崩し進んできている。
 奴の様子を見て、次の手を決めた。この分だと今の間にもう一発いけそうだ。
「アーニー、少しの間、ソウエンから降りる」
 彼女の手を引き、地面に降り立つ。大地も凍り付いているので足元から冷気があがってきているため、アーニーがブルリと肩を震わせていた。
「頼む、ソウエン! アーニー、この後、アレを頼む」
「はい!」
『ガルルルル』
 飛び出したソウエンは風のような速度で氷の上を疾駆し、前足でウリドラの首元に一撃を食らわせる。
「魔法陣よ、力を示せ。ライトニング」
 それに合わせ、天から雷が何本も降り注ぎ、追撃を加えた。
「まだまだ行くぞ。魔法陣よ、力を示せ。アイスコフィン」 
 ウリドラの周囲が瞬間冷却され、海から出ている奴の体を分厚い氷が覆う。
 その隙にソウエンが離脱し、俺の元に戻ってきた。彼にはそのまま俺たちを護るように前に立ってもらう。
 一方アーニーは俺の手を握りしめ、もう一方の手には小瓶を持った状態で魔法の詠唱を始める。
「てんちょお、全魔力をお渡しします! 魔法陣よ、力を示せ。トランスファーマジック」
「え、全部? 気絶するって」
 トランスファーマジックの効果で俺の中に彼女の魔力が注ぎ込まれ、さきほど魔法使用で使った魔力の半分ほどが充填された。
 されたはいいのだが、ふらりと彼女から力が抜ける。落としそうになった小瓶を掴み彼女を助け起こす。
「だ、だいじょ……」
「大丈夫じゃねえだろ」
 緊急事態発生! いざというときは彼女に魔力を補充してもらう算段だったのだが、リュックに詰め込んだ魔力回復ポーションを飲みながらじわじわとやってもらう予定だったんだ。それが全魔力を注ぎ込むとかやってしまったので、こんな事態に。
 魔力を全て失うと、気を失ってしまう。
 気を失うと魔力回復ポーションが飲めなくなるじゃないかよ。慌てて魔力回復ポーションを口に含み、口移しで彼女に飲ませる。
「あとは自分で飲んで欲しい」
「ご、ごめんなさい」
「ちゃんと言ってなかった俺が悪かった。シュークリームの魔力量が多いからって思ったんだよな」
「はいい」
 ウリドラを凍らせておいて正解だったよ。
 もちろん、これで仕留めれるような軽いモンスターじゃないから、ビシビシとウリドラを包み込んだ氷にヒビが入り始めていた。
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