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1st STAGE
『アイドルグループ SU☆PI☆KA』 -1
しおりを挟む――遡ること数時間前。
東京都台東区。年季の入った雑居ビルが立ち並ぶ少し寂れた路地を、冷たい風が吹き抜けていく。
歓楽街のメインストリートから二本ほど脇道に入っただけで驚くほど人通りは少なくなり、どこか陽の光さえも薄暗くなったように感じられる。
そんな場所にその建物はあった。
所々細かいヒビの入った外壁に、掲げられた看板だけが嫌に真新しい。そこには周辺の雰囲気に似付かわしくないポップな字体でこう書かれていた。
『スター・トゥインクル・プロダクション』
ここが桜子達アイドルグループ「SU☆PI☆KA」の所属する芸能事務所だった。
アイドルを専門に扱う事務所だが、外の新しい看板を見ても分かる通り、まだ設立してそれほどの時は経っていない。所属している人数も両手の指で事足りるほどだ。
3階立ての建物の地下はトレーニングルームとなっており、今は桜子達5人の貸し切りとなっている。
一面全部が鏡張りとなった壁に向かって横一直線に並び、目の前に映った自分の姿を見つめながら5人が踊っていた。
それぞれが身に着けたTシャツは汗を吸い込んでぐっしょりと濡れている。顔を振る度に弾ける雫が床にパタパタと小さな水たまりを作っていた。
流れている曲に合わせるようにダンスは激しさを増していき、盛り上がりがピークに達しようという瞬間――
唐突に5人のうちの一人が踊るのを止めてしまった。
「だーかーらー! そこの振りはそうじゃないでしょ!」
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