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2nd STAGE

『桜子の歌』 ―2

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 この状況を救えるのは、自分しかいない――。

 突き付けられた事実が重しとなって心にのし掛かってくる。

 手が震えた。

 足が竦んだ。

 情けない事に涙が出そうになった。


(――それでも・・・!)


 桜子は目を見開いた。

 思い出せ。さっき自分はなんと言っていた? 


 『――やる前から諦めたくないんだよ』


 そうだ。そう言ったのでは無かったか? またあの無力感を味わうつもりか?

 桜子はセシアの顔を見た。


 セシアは――笑っていた。


 痛みを堪えながら、爆発への恐怖を押し殺しながら、まるで何も心配などいらないとでも言いたげに微笑んでいた。

「セシアちゃん・・・」

「桜子様なら、大丈夫、です・・・私は信じてます・・・桜子様も、自分を信じて・・・」

 自分を信じる――その言葉を胸中で繰り返し、桜子は力強く頷いた。

「分かった――私、やるよ」

 ダンバンから指輪を受け取ると右手の人差し指に嵌める。少しきついが、入らない程ではない。そのまま奥まで強引に押し込む。


 桜子は脈動を続ける卵の前に立った。ダンバンに抱えられ、セシアも傍に来る。

 熱い。まだ1m以上は離れているのにも関わらず、熱気に頬がチリチリする。

「まずは、唱えてください・・・オートキャスティング、と・・・」

 桜子は頷くと指輪を嵌めた右手を伸ばし起動呪文を唱える。

「――詠唱開始(オートキャスティング)――」

 桜子の言葉に反応するかのように指輪がぼんやりとした緑色の光を宿す。

「――や、やった! 私にも出来た?」

「ふふ・・・そうです・・・桜子様なら、出来ます」

 セシアが笑みを浮かべる

「次はイメージです・・・卵が軽くなって浮いている姿を・・・想像してください・・・」

「魔技はイメージが全てだ。今日見たセシアの動きのイメージ通りにやればいい」

 ダンバンの言葉に小さく頷く。

(卵・・・軽く、軽く・・・セシアちゃんの動きをイメージして・・・)

 ドラゴンの卵が薄く光り出した。熱気が放つ赤い光ではない、桜子の指に宿るものと同じ緑色の光だ。桜子が卵に触れるそうになるくらいまで腕を近づける。

 熱気に掌が焼けそうになる。額に浮かぶ汗が頬を流れていくのを感じる。

「次は・・・宙に浮かんだ卵を、スライドさせる・・・イメージです・・・」

 説明を続けるセシアも辛そうだ。桜子は逃げ出したくなる心を奮い立たせ必死に手を伸ばした。卵にかざした手を動かすと、その動きに合わせて卵がゆっくりと動き出した。

「よし! いいぞ!」

 宙を浮遊するようにして、卵が装置から離れていく。

(で、出来た!?)


 その時だった。

 桜子が気を緩めた僅かな瞬間、卵の高度がガクリと下がった。

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