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⑬
「堅物のお前がどこでオメガを…って思ってたんだが、まさかラルカティアがなぁ」
ラルカティアという子供を預かったこと、その子が親に捨てられて養子にしたこと、など、これまでの経緯は以前からリュースにだけは伝えていた。
自分にも子供が居るリュースは、ラルカのことで色々と助言をくれて、今までずっと俺を助けてくれていたのだ。子育てなんぞ経験したこともない俺が、今まで何とかラルカを育てて来られたのも、リュース夫妻が居てくれたおかげという訳だ。本当に、持つべきは親友だとつくづく思う。
「俺は…俺は、そんなつもりじゃなかった。ラルカには…もっと自由に…自分の人生を決める権利があったはずなのに…俺は…ッ」
とは言っても、今回の件は話したところでどうなる訳でもなかった。何と言っても、すでに終わってしまったことなのだ。
ラルカがオメガ性に分化したことも、俺がラルカを番にしてしまったことも。
今、彼からなにか有用な助言を貰えたとしても、今更取り返しもつかないし、やり直しなど決して出来はしないのだから。そんな、諦めきった様子の俺にリュースは、固く閉じていた口を開いて話しかけてきた。だが、しかし──
「そんなつもりじゃなかった…か。クルト、それ、ラルカティアにも言ったのか?」
リュースが口にしたのは、的確かつ有用な助言でも、優しい慰めの言葉でもなく、まるで何かを責めるような詰問の言葉だった。
「………えっ?…ああ…確か」
はっきり覚えていないが言った気がする。リュースの怒りを滲ませた声に驚きつつそう答えると、彼は突然、ガタンッと荒々しく椅子から立ち上がった。それから、殴りそうな勢いで長い腕を伸ばしてきた彼は、テーブル越しで俺の胸倉を乱暴に掴んで持ち上げたのだ。
普段はおちゃらけたイケメン面に、物凄い、怒りの形相を浮かべて。
「リ……リュース……?」
彼は何を怒っているのか。
さっぱり訳が解らなかった俺は、我ながら間抜けな顔をしていたと思う。
後になって考えてみると、俺は本当に馬鹿だったと思う。
そう、俺はこの時、彼の怒りの所以を察するどころか、気付いてすらいなかったのだ。
俺がどれだけ愚かで、どれほど酷い間違いを犯したか。
『守りたい』などと抜かしておきながら、どこの誰が一番、大切なラルカを傷付けていたか。
俺は、何も気付いていなかったし、理解しても居なかったのだ。
そんな、いっそ殴られていてもおかしくないほど愚鈍な俺に、リュースは、ひとつ息を吐いてから怒声を浴びせかけてきた。
「てめえ、ラルカティアが、どんな思いでお前のその言葉を聞いたか、解んねえのか?」
「え………っ」
リュースの怒声に店内が静まり返った。客や店員の視線が、一斉に俺達の席へ注がれる。
そんな周囲の気配を察したリュースは、俺の胸倉を掴んでいた手を放し、ちょっと外出ろと視線で促してきた。未だ怒り収まりやらぬ、その様子のまま。
「…………ッッ」
俺は物も言わず出口へ向かうリュースを追い、先に会計を済ませてから店内を後にした。
先にも言ったが、俺はどうしてリュースが、あんなにも怒っていたのか、その理由が解っていなかった。だが同時に、彼がなんの正当な理由もなく、理不尽な怒りを俺にぶつけてきているとは到底思えなかったから。
ひょっとして俺は、何か大変な間違いを犯してしまったのではないか。
それによって俺は、なにより大切なラルカを傷つけてしまったのではないか。
ようやくその考えに至り始めると、俺は背筋が凍るほど酷く恐ろしくなってきた。
そしてそんな俺の不安と恐れの予感は、残念ながら見事に的中していたのである。
ラルカティアという子供を預かったこと、その子が親に捨てられて養子にしたこと、など、これまでの経緯は以前からリュースにだけは伝えていた。
自分にも子供が居るリュースは、ラルカのことで色々と助言をくれて、今までずっと俺を助けてくれていたのだ。子育てなんぞ経験したこともない俺が、今まで何とかラルカを育てて来られたのも、リュース夫妻が居てくれたおかげという訳だ。本当に、持つべきは親友だとつくづく思う。
「俺は…俺は、そんなつもりじゃなかった。ラルカには…もっと自由に…自分の人生を決める権利があったはずなのに…俺は…ッ」
とは言っても、今回の件は話したところでどうなる訳でもなかった。何と言っても、すでに終わってしまったことなのだ。
ラルカがオメガ性に分化したことも、俺がラルカを番にしてしまったことも。
今、彼からなにか有用な助言を貰えたとしても、今更取り返しもつかないし、やり直しなど決して出来はしないのだから。そんな、諦めきった様子の俺にリュースは、固く閉じていた口を開いて話しかけてきた。だが、しかし──
「そんなつもりじゃなかった…か。クルト、それ、ラルカティアにも言ったのか?」
リュースが口にしたのは、的確かつ有用な助言でも、優しい慰めの言葉でもなく、まるで何かを責めるような詰問の言葉だった。
「………えっ?…ああ…確か」
はっきり覚えていないが言った気がする。リュースの怒りを滲ませた声に驚きつつそう答えると、彼は突然、ガタンッと荒々しく椅子から立ち上がった。それから、殴りそうな勢いで長い腕を伸ばしてきた彼は、テーブル越しで俺の胸倉を乱暴に掴んで持ち上げたのだ。
普段はおちゃらけたイケメン面に、物凄い、怒りの形相を浮かべて。
「リ……リュース……?」
彼は何を怒っているのか。
さっぱり訳が解らなかった俺は、我ながら間抜けな顔をしていたと思う。
後になって考えてみると、俺は本当に馬鹿だったと思う。
そう、俺はこの時、彼の怒りの所以を察するどころか、気付いてすらいなかったのだ。
俺がどれだけ愚かで、どれほど酷い間違いを犯したか。
『守りたい』などと抜かしておきながら、どこの誰が一番、大切なラルカを傷付けていたか。
俺は、何も気付いていなかったし、理解しても居なかったのだ。
そんな、いっそ殴られていてもおかしくないほど愚鈍な俺に、リュースは、ひとつ息を吐いてから怒声を浴びせかけてきた。
「てめえ、ラルカティアが、どんな思いでお前のその言葉を聞いたか、解んねえのか?」
「え………っ」
リュースの怒声に店内が静まり返った。客や店員の視線が、一斉に俺達の席へ注がれる。
そんな周囲の気配を察したリュースは、俺の胸倉を掴んでいた手を放し、ちょっと外出ろと視線で促してきた。未だ怒り収まりやらぬ、その様子のまま。
「…………ッッ」
俺は物も言わず出口へ向かうリュースを追い、先に会計を済ませてから店内を後にした。
先にも言ったが、俺はどうしてリュースが、あんなにも怒っていたのか、その理由が解っていなかった。だが同時に、彼がなんの正当な理由もなく、理不尽な怒りを俺にぶつけてきているとは到底思えなかったから。
ひょっとして俺は、何か大変な間違いを犯してしまったのではないか。
それによって俺は、なにより大切なラルカを傷つけてしまったのではないか。
ようやくその考えに至り始めると、俺は背筋が凍るほど酷く恐ろしくなってきた。
そしてそんな俺の不安と恐れの予感は、残念ながら見事に的中していたのである。
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