運命──捨てられて養子にした子供は俺の運命の番だった

RINFAM

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 両親が夫婦喧嘩をした夜の翌朝から、彼らはあからさまに俺へ対する態度を変えてきた。

「今日からここがお前の部屋だよ!」
「え…ここ……って…」
 それまで兄と同じ部屋で眠っていたのに、夜が明ける早々、ベッドから引きずり出された俺は、そのまま物置として使っていた狭い部屋へと投げ入れられた。まだ半寝ぼけで状況が掴めていなかった俺は、説明を求めて母の顔を見上げたが、母は一言も発さず問答無用とばかりにドアを閉めてしまう。
「お母さん…ッ!?」
 色々なものでゴタゴタと狭い物置部屋には、俺が動き回れるスペースはほとんどなかった。せいぜい、身体を丸めて寝るくらいが精いっぱい。しかも、しばらく掃除も片付けもしていないのか、床も天井も埃だらけだった。
「お母さん…お母さん、開けてよ!」
 この時の俺にはまだ、前夜の夫婦喧嘩の原因が、俺の出生やこの家における『立場』と直結するなどは思っておらず、それによって俺の存在が厄介者になるとは考えてもいなかった。
「ごめ…ごめんなさい、俺、何かしたの?ごめんなさいっ」
 だから、突然の状況の変化に訳が解らず、なにか俺が悪いことをしたのだろうか?と誤解し、泣いて謝って許してもらおうと必死になっていた。けれど、いくらそうしても母も、父も、兄すらさえも、俺の声に応えようとはしてくれず。

 外から鍵をかけられた物置の中で、寒さに震えながら考えて、考えて、一日中考えてやっと俺は、昨夜の夫婦の口論の元凶が『俺』なのだと理解した。

 ああ、そうか。俺は、母の子ではなかったのか。
 父が他所に産ませた子供。それが、俺のことだったのか。
 
 信じられない。信じたくない現実。でも、そう考えたら妙に納得がいった。
 家族の誰もが茶色の髪色と目の色なのに、俺だけが黒髪なのも、俺だけが青い目なのも、それひとつですべて理由が付くからだ。
 きっとこれらの色は、すべて、俺を産んだという母のものなのだろう。
 顔も、きっと母の方に似たんだろう。だから、家族の中で俺だけが、誰にも似てなくて浮いてたんだ。

 母が俺に対して冷たい気がしていたのも、きっと気のせいなんかじゃなかったんだろう。

 諦めにも似た気分で俺は、誇りまみれの床に寝転んだ。
「お腹すいたな……」
 泣き疲れて眠って、ようやくお腹が空いてることに気付く。そういえば閉じ込められてから一日中、何も食べさせてもらえてなかった。途中、一度ドアが開いて、無言で水だけ置いて行かれたから、なんとか水だけは飲むことが出来たけれど。
「お腹すいたよ……」
「やかましい!!!!」
 何度か空腹を訴えてドアを叩いたけど、煩いと怒鳴られて逆に向こうからドアを激しく叩き返された。
 その剣幕があまりに恐ろしすぎて、俺は、空腹を訴えることも怯えて出来なくなった。

 閉じ込められていた間、数日に一度、粗末な食い物を与えられたけど、お腹がいっぱいなるほど貰えなくて。いつも、いつも俺は、お腹を空かせて汚れた床に座り込み、目の前のドアが開くのを待っていたと思う。

 実を言うとあの頃の記憶は、かなり曖昧になっていた。

 辛い記憶であったということだけは、ハッキリ刻み込まれている。

 満足な食事を与えられず、身体を伸ばして眠ることも出来ず、思い出したように物置を訪れた母から、いわれのない暴言や暴力を受ける日々だった。

 そんな暮らしが一年ほど続いた、と思う。
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