運命──捨てられて養子にした子供は俺の運命の番だった

RINFAM

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 クルトさんは仕事の合間や、お休みの日などに時間を取って、俺に読み書きを教えてくれるようになった。

 最初は何が何だかわからなくてつまらなかったけど、少しずつ読み書きができるようになると、自分だけで本も読めるようになってきて、それが面白くて嬉しくて、毎日がもっと楽しくなってきた。なにより優しいクルトさんと一緒にいられる時間が、俺には夢みたいに幸せで。

 こんな人が俺の家族だったら、良かったのにな。
 ずっとずっと、クルトさんと一緒にいられたらいいのに。

 いつしか俺は本気でそう思うようになっていた。
 それがクルトさんにとって迷惑なのは解っていたけれども。


 そうこうするうちに『約束の日』はやってきた。ほんとにあっという間だった。時間がこんなにに早く過ぎるものだなんて、今まで俺は知らなかった。

 本当の家族と暮らしていた間は、時間が過ぎるのをあんなに遅く感じていたのに。

「迎えに来なかったな……」
「……………」

 父が『迎えに来る』と嘘の約束をしたその日。

 終日、父も母もクルトさんの屋敷を訪ねてくることはなかった。
 俺は最初から分かっていたことだから、今更何とも思わなかったけれど、騙される羽目になったクルトさんは、きっと内心不審に思っていたことだろう。いや、表情に出さないだけで、本当は怒っていたのかも知れない。
「そんな心配すんな。きっと、予定が遅れただけで、明日には来てくれるさ」
「…………」
 後ろ暗さから俯く俺を心配してなのか、クルトさんは明るくそう言って慰めてくれた。
 たぶん俺が、両親が迎えに来ないことを不安がっていると思ったんだろう。実際はそんなんではなくて、父がクルトさんを騙していることを知っていたから、心苦しくて彼の顔を見れないだけだったのだけど。

 そう、何日待っても、迎えなんか来ない。

 解っていたことだけど、どうやら俺は、それでもほんの少しだけ期待していたらしい。

 もしかしたら父が、迎えに来てくれるかもしれない、と。

 そんなこと絶対に有り得ないと分かっていたし、ほんのわずかな可能性の欠片もないと知っていた。最初から諦めていたはずだったのに。でも、それなのにいざ、この辛辣な現実を突きつけられると、俺はやはりショックを受けずにはいられなかったようだ。
「ラルカ………」
 気が付くと俺は声もなく泣いていた。
 誰の来訪の気配もない屋敷の玄関。
 俺は無意識に立ち尽くしたまま、じっとその方を見詰めていた。
 そんな俺の頭をクルトさんの大きな手が撫でてくれ、その温かさに触発されたみたいに涙が零れて止まらなくなった。ポロポロと勝手にあふれてくる涙。俺は、それを拭うこともせず、零れるままにし続けた。

 それは最後の希望が、断たれた瞬間だった。
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