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逆ハーエンドを迎えましたが俺はモブなので関係ありません①
しおりを挟む「リア・ウォールマン。お前との婚約を破棄する!」
その一言でなんとも滑稽な舞台は幕を上げた。
国内外の有力貴族、そして国王陛下も参列する卒業パーティーの会場の中心で六人の生徒が対峙していた。
登場人物は学園きっての有名人たちだ。
まず注目すべきは彼女だろう。学園創立以来最も優秀な頭脳の持ち主であり、ハルハドールの華と謳われる美貌を兼ね備えた才媛、リア・ウォールマン。
その所作ひとつすら洗練され、貴賤の別なくたおやかに人と接し、困っている人がいれば迷いなく手を差し伸べ、間違ってれば忌憚なく発言する……。彼女がどれほど優れているかあげればキリがないほど出来すぎた令嬢だ。
そんな彼女を矢面に立たせ、糾弾しようとしているのがこの国の第二王子であり彼女の婚約者であるレオン・ハルハドールとその仲間たちである。
宰相子息トワ・シンプソン。
公爵子息ガゼル・ロンド。
伯爵子息マイセル・フォワード。
そして、この貴族学校に特別入学を果たした平民の少女アンナ・ロドリー。
冒頭の発言をしたのが第二王子。その後ろでアンナ・ロドリーを守るようにして立っているのがその他三人だ。
これで状況はご理解いただけただろうか?
俺は全く分からない。
あ、どうも俺はただのモブです。一応この学園の生徒です。貴族学校にいるからにはそれなりの身分があります。俺の紹介、以上。
これってあれじゃね?悪役令嬢婚約破棄ものじゃね?なんかしれっと前世の記憶なるものを思い出してしまったんですけど。俺、ただのモブなんですけど。
前世の記憶によるとこれは『ストロベリームーンの饗(狂)宴』という乙女ゲームの最後のシーンに酷似している。
ゲームの概要はこうだ。
本作はヒロインが平民にも関わらず貴族学校に入学するところから始まる。
攻略対象は全部で四人。言わずもがなヒロインがアンナ・ロドリーであり、今現在彼女を囲んでいる奴らが攻略対象だ。
彼らは学園生活を営んでいく上でなんだかんだと交流を深め、恋仲になっていく。そんな中でヒロインの出生の秘密も明らかになって……とここまではありきたりな乙女ゲームのストーリーなのだが、本作の醍醐味は全員ヤンデレというところにある。
そう、ヤンデレだ。奴らは全員ヤンデレである。途中までは好青年、紳士、知的な仮面をかぶっているが恋愛感情が一定ラインを越えるとやばい方向に走っていく。
束縛、監禁、暴力、自傷行為、などなどヤンデレってこんなにレパートリーがあるんですねというくらいにみんな病んでいく。メリーバッドエンドが最高のハッピーエンドであり、なんだったらヒロインと攻略対象が一緒に死んで永遠の愛を誓うとかいうエンドもハッピーエンドにあたる。
こんなので萌えるプレイヤーも相当病んでいる。
……前世の俺も病んでたのかな?てか、なんで内容熟知してんの?前世も男だったと思うんだけど。
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