24 / 27
5日目
第17節 早朝の配布作業
しおりを挟む
翌朝、新聞部員たちは部室へと集まり始めていた。しかし、約束の時間を過ぎても、高崎部長は来ない。まさか今日に限って、部長が遅刻するとは。
「……部長、まだ来ませんね」
私は、スマートフォンを何度も確認しながら呟いた。
「電話しても、出ないんですよ。メッセージも既読にならないし……」
三鷹は、心配そうに眉を寄せる。
「……とにかく、私たちが今できることをしましょう。予定通り新聞の配布をしましょう」
私は皆を落ち着かせるように言う。
「でも、部長がいないのに、勝手に配布を始めちゃっていいんでしょうか……」
「待っていても仕方ありません。部長なら、きっと何か考えがあってのことのはず。私たちは、部長を信じて、自分たちの役割を果たすべきです」
続けて、部員たちを鼓舞するように言った。そして、部室の奥のロッカーから、昨夜運び込んだ新聞の束を取り出した。
まだ生徒の姿もまばらな早朝の校舎。私たちは、息を潜め、細心の注意を払いながら、各教室へと向かった。手には、刷り上がったばかりの第二回特別号外の束を抱えている。
「1、2年生の教室は、私と久留里さんで。3年生の教室は、三鷹くんと荒川くんでお願いします」
私の指示で、二手に分かれる。教室に入ると、まだ誰もいない机が整然と並んでいる。その一つひとつの引き出しに、新聞をそっと滑り込ませていく。
部室に戻ると、皆、額に汗を滲ませ、どこかやり遂げたような、しかし依然として不安げな表情を浮かべていた。部長からの連絡は、まだない。
やがて、登校してくる生徒たちの喧騒が校舎に満ち始める。新聞部員たちは、それぞれの教室で、固唾を飲んでその時を待っていた。
登校してきた生徒たちは何気なく机の引き出しに手を入れる。そして、そこに挟まれていた新聞に気づき、一人、また一人と手に取り始める。
ざわ……
教室のあちこちから、小さな、しかし確かな動揺が広がっていくのが肌で感じられた。
『追悼・藤沢智也くん その人柄とご遺族の想い───新聞部独自取材』
大きな見出しが、生徒たちの目を釘付けにする。皆、食い入るように記事を読み進め、時折、隣の席の者と顔を見合わせ、小声で何かを囁き合っている。藤沢くんの死の衝撃、そして新聞部が報じたご遺族の悲痛な想いが、教室の空気に伝播していく。
キーンコーンカーンコーン───。
無情にも、朝のHR開始を告げるチャイムが、校舎全体に鳴り響いた。
「……部長、まだ来ませんね」
私は、スマートフォンを何度も確認しながら呟いた。
「電話しても、出ないんですよ。メッセージも既読にならないし……」
三鷹は、心配そうに眉を寄せる。
「……とにかく、私たちが今できることをしましょう。予定通り新聞の配布をしましょう」
私は皆を落ち着かせるように言う。
「でも、部長がいないのに、勝手に配布を始めちゃっていいんでしょうか……」
「待っていても仕方ありません。部長なら、きっと何か考えがあってのことのはず。私たちは、部長を信じて、自分たちの役割を果たすべきです」
続けて、部員たちを鼓舞するように言った。そして、部室の奥のロッカーから、昨夜運び込んだ新聞の束を取り出した。
まだ生徒の姿もまばらな早朝の校舎。私たちは、息を潜め、細心の注意を払いながら、各教室へと向かった。手には、刷り上がったばかりの第二回特別号外の束を抱えている。
「1、2年生の教室は、私と久留里さんで。3年生の教室は、三鷹くんと荒川くんでお願いします」
私の指示で、二手に分かれる。教室に入ると、まだ誰もいない机が整然と並んでいる。その一つひとつの引き出しに、新聞をそっと滑り込ませていく。
部室に戻ると、皆、額に汗を滲ませ、どこかやり遂げたような、しかし依然として不安げな表情を浮かべていた。部長からの連絡は、まだない。
やがて、登校してくる生徒たちの喧騒が校舎に満ち始める。新聞部員たちは、それぞれの教室で、固唾を飲んでその時を待っていた。
登校してきた生徒たちは何気なく机の引き出しに手を入れる。そして、そこに挟まれていた新聞に気づき、一人、また一人と手に取り始める。
ざわ……
教室のあちこちから、小さな、しかし確かな動揺が広がっていくのが肌で感じられた。
『追悼・藤沢智也くん その人柄とご遺族の想い───新聞部独自取材』
大きな見出しが、生徒たちの目を釘付けにする。皆、食い入るように記事を読み進め、時折、隣の席の者と顔を見合わせ、小声で何かを囁き合っている。藤沢くんの死の衝撃、そして新聞部が報じたご遺族の悲痛な想いが、教室の空気に伝播していく。
キーンコーンカーンコーン───。
無情にも、朝のHR開始を告げるチャイムが、校舎全体に鳴り響いた。
2
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
セーラー服美人女子高生 ライバル同士の一騎討ち
ヒロワークス
ライト文芸
女子高の2年生まで校内一の美女でスポーツも万能だった立花美帆。しかし、3年生になってすぐ、同じ学年に、美帆と並ぶほどの美女でスポーツも万能な逢沢真凛が転校してきた。
クラスは、隣りだったが、春のスポーツ大会と夏の水泳大会でライバル関係が芽生える。
それに加えて、美帆と真凛は、隣りの男子校の俊介に恋をし、どちらが俊介と付き合えるかを競う恋敵でもあった。
そして、秋の体育祭では、美帆と真凛が走り高跳びや100メートル走、騎馬戦で対決!
その結果、放課後の体育館で一騎討ちをすることに。
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
みんなの女神サマは最強ヤンキーに甘く壊される
けるたん
青春
「ほんと胸がニセモノで良かったな。貧乳バンザイ!」
「離して洋子! じゃなきゃあのバカの頭をかち割れないっ!」
「お、落ちついてメイちゃんっ!? そんなバットで殴ったら死んじゃう!? オオカミくんが死んじゃうよ!?」
県立森実高校には2人の美の「女神」がいる。
頭脳明晰、容姿端麗、誰に対しても優しい聖女のような性格に、誰もが憧れる生徒会長と、天は二物を与えずという言葉に真正面から喧嘩を売って完膚なきまでに完勝している完全無敵の双子姉妹。
その名も『古羊姉妹』
本来であれば彼女の視界にすら入らないはずの少年Bである大神士狼のようなロマンティックゲス野郎とは、縁もゆかりもない女の子のはずだった。
――士狼が彼女たちを不審者から助ける、その日までは。
そして『その日』は突然やってきた。
ある日、夜遊びで帰りが遅くなった士狼が急いで家へ帰ろうとすると、古羊姉妹がナイフを持った不審者に襲われている場面に遭遇したのだ。
助け出そうと駆け出すも、古羊姉妹の妹君である『古羊洋子』は助けることに成功したが、姉君であり『古羊芽衣』は不審者に胸元をザックリ斬りつけられてしまう。
何とか不審者を撃退し、急いで応急処置をしようと士狼は芽衣の身体を抱き上げた……その時だった!
――彼女の胸元から冗談みたいにバカデカい胸パッドが転げ落ちたのは。
そう、彼女は嘘で塗り固められた虚乳(きょにゅう)の持ち主だったのだ!
意識を取り戻した芽衣(Aカップ)は【乙女の秘密】を知られたことに発狂し、士狼を亡き者にするべく、その場で士狼に襲い掛かる。
士狼は洋子の協力もあり、何とか逃げることには成功するが翌日、芽衣の策略にハマり生徒会に強制入部させられる事に。
こうして古羊芽衣の無理難題を解決する大神士狼の受難の日々が始まった。
が、この時の古羊姉妹はまだ知らなかったのだ。
彼の蜂蜜のように甘い優しさが自分たち姉妹をどんどん狂わせていくことに。
※【カクヨム】にて編掲載中。【ネオページ】にて序盤のみお試し掲載中。【Nolaノベル】【Tales】にて完全版を公開中。
イラスト担当:さんさん
久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…
失恋中なのに隣の幼馴染が僕をかまってきてウザいんですけど?
さいとう みさき
青春
雄太(ゆうた)は勇気を振り絞ってその思いを彼女に告げる。
しかしあっさりと玉砕。
クールビューティーで知られる彼女は皆が憧れる存在だった。
しかしそんな雄太が落ち込んでいる所を、幼馴染たちが寄ってたかってからかってくる。
そんな幼馴染の三大女神と呼ばれる彼女たちに今日も翻弄される雄太だったのだが……
病み上がりなんで、こんなのです。
プロット無し、山なし、谷なし、落ちもなしです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる