世界史上最強になったヒトが突然告白するというので動揺する傍観者

人藤 左

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思い立ったときのこと

ひとりぼっちについて

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 思っていたより再生に時間がかかるようだったので、僕はベルさんと談笑しただけで帰宅する運びとなった。

 どこまで戻るのだろうか。
「そんなもん気にしてどうするんだよ」
 ふとした僕の疑問に、ミッコさんは不機嫌そうに答えた。

「重要っちゃ重要ですよ。最初のところに戻ってたら寂しいですし」
「寂しいなんてタマですか? あなたが?」

 僕が懸念しているのはそういうことではない。ミッコさんの指摘とおり、僕は多分寂しくなんてちっともないだろう。

 この再生が、この事件のどこまで遡るのか。あいつとのケンカの直前なのか、それとも最後の大崩壊の直前なのか。あるいはベルさんたちとの衝突なのか、Jを名乗る蜘蛛のような男との戦争なのか。はたまたミッコさんの戦いそのものが始まる前に戻るのかもしれない。

 遡行、ないし修正を、僕やミッコさん、それとさっき会ったベルさんは受けないようだ。何かあるかもしれないが、気にしてもしょうがない。

「ミッコさんは寂しくないんですか?」
「寂しいよ」
 僕の懸念はそこにある。

 ミッコさんは寂しがりだ。そのくせ孤高にして最高の人類最強なもんだから一人ぼっちで、仕方なく僕みたいな傍観者を隣に置いている始末だ。

 いろいろ壊してきた中で、築いてきたものはあった。知り合った人たちがいた。その人たちに忘れられてしまうかもしれない寂しさは、推し量ることしかできないけれど、つらいはずだ。

「……もうケンカできないと思うとなぁ」
「んん?」
「何だお前、わかってないのか? 私があいつに勝っちまった以上、誰も私に勝てないし向かってこないんですよ」
「……まぁ、はい」

 前提としてミッコさんに勝てない。仮の仮に勝てたとして、そいつに待っているのは次なるひとりぼっちの称号――孤独と虚無感だろう。せっかく席を埋めてくれた阿呆に、頭を下げて代ろうだなんて酔狂者は全員ミッコさんが倒した。
 なるほど。だからこその告白か。合点がいった。ミッコさんにとっては新しい戦いなのだろう。

「私は、寂しいです」
「はいはい。そろそろ夕ご飯にしますからねミッコさん。食べて寝て、落ち着いたら話でもなんでも聞きますから」
「……はい」

 また突っ伏した。思い切り背を丸めるその姿勢は体にガタが来やすいのでやめて欲しいのだが、それが楽なら仕方ない。
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