【完結】冷遇され続けた私、悪魔公爵と結婚して社交界の花形になりました~妹と継母の陰謀は全てお見通しです~

深山きらら

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第三章 北の城にて

新しい生活

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 ヴァルモント城での生活は、エリアナにとって驚きの連続だった。

 初めての朝、目覚めると柔らかな日差しが窓から差し込んでいた。王都の屋敷では、薄暗い部屋で目覚めるのが日常だったのに、ここでは光が溢れている。
 ノックの音がして、昨日の侍女——名前はソフィアと言った——が入ってきた。

「おはようございます、エリアナ様。お目覚めですか?」
「おはようございます、ソフィア」

 エリアナは、まだ「様」と呼ばれることに慣れていなかった。

「朝食の準備ができております。お召し替えを手伝わせてくださいませ」

 ソフィアは、手際よくエリアナを手伝ってくれた。その優しい笑顔に、エリアナは少しずつ緊張がほぐれていくのを感じた。
 食堂に案内されると、そこにはすでにアレクシスが座っていた。

「おはよう、エリアナ。よく眠れたか」
「はい、とても」

 本当によく眠れた。ベッドは柔らかく、部屋は温かく、何より——安心できた。

 テーブルには、温かい食事が並んでいる。焼きたてのパン、ハム、チーズ、果物、そして湯気の立つスープ。
 エリアナは、思わず目を見張った。こんなに豊かな朝食は五年ぶりだ。

「食べてくれ。君は痩せすぎている」

 アレクシスの言葉に、エリアナは頬を染めた。

「あ、ありがとうございます……」

 食事を始めると、その美味しさに感動した。パンは外がサクサクで中はふわふわ、スープは優しい味わい。
 気づけば、夢中で食べていた。
 ふと顔を上げると、アレクシスがこちらを見ていた。

「す、すみません。みっともない姿を……」

「いや」アレクシスは、僅かに口角を上げた。「君が美味しそうに食べてくれると、嬉しい」

 その言葉に、エリアナの心が温かくなった。

 食事の後、アレクシスは言った。

「城を案内しよう。ここでの生活に慣れるには、まず城内の配置を知る必要がある」

 それは、エリアナにとっても、願ってもないことだった。二人は城の中を歩いた。
 広間、図書室、音楽室、庭園——どの部屋も美しく整えられている。

「この城は、私の曾祖父が建てたものだ。代々、ヴァルモント家が守ってきた」

 アレクシスは、淡々と説明してくれた。

「家族の肖像画が、ここに」

 廊下の壁には、歴代の当主たちの肖像画が並んでいる。そして、その最後に——若い頃のアレクシスと、美しい女性の肖像画。

「これは……?」
「私の母だ」

 アレクシスの声が、わずかに柔らかくなった。

「十五年前に亡くなった。病で」
「……そうだったのですか」

 エリアナも、母を病で亡くしている。その悲しみは、痛いほど分かった。

「母は、優しい人だった。父が冷たい人間だったから、母だけが私の心の拠り所だった」

 それは、アレクシスが初めて自分の内心を語った瞬間だった。

「お父様は……冷たい方だったのですか、そんなに」
「ああ。父は、感情を表に出さない人だった。軍人として優秀だったが、父親として私には何も教えてくれなかった。愛情というものを、知らずに育った」

 エリアナは、胸が締め付けられた。
 この人も、愛されなかった。
 自分と同じように。

「でも」アレクシスは続けた。「だからこそ、わかる。君が、どれだけ辛い思いをしてきたか」

 その言葉に、エリアナは顔を上げた。
 アレクシスの青い瞳が、彼女を見つめていた。

「君の家での様子は、調べさせてもらった。許してほしい」
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