【完結】冷遇され続けた私、悪魔公爵と結婚して社交界の花形になりました~妹と継母の陰謀は全てお見通しです~

深山きらら

文字の大きさ
14 / 46
第三章 北の城にて

奪われていた「好き」を取り戻す

しおりを挟む
「調べた……?」
「ああ。婚約を受ける前に、フォンティーヌ家のことを調査した。私には独自の情報網があるので、関わりを持つ相手のことは、すべて調べ上げることにしているのだ」

 アレクシスは、悪魔公爵らしさをちらりとのぞかせる発言をしたが、エリアナはもう怖くなかった。彼女をみつめる彼の目が、確かな気遣いに満ちていたからだ。

「調査の結果、知ってしまった。君があの家で、どれだけ冷遇されてきたかを」
「じゃあ、わたくしが『出来損ない』と呼ばれていたこともご存じなのですね。……それなのに、わたくしとの婚約を?」
「むしろ、だからこそだ」

 アレクシスは、エリアナの手を取った。

「君を、あの家から連れ出したかった。ここでなら、君は自由に生きられる」

 その言葉が、エリアナの心の奥深くまで染み込んだ。
 涙があふれた。

「アレクシス様……」
「泣かないでくれ。もう、君を傷つける者はいない。私が、守る」

 その誓いが、どれほどエリアナを救ったか。

 彼女は、初めて心から安心した。
 ここは、安全な場所。
 そして、この人は、自分を守ってくれる。

  ◇

 日々が過ぎていく中で、エリアナは少しずつ城での生活に慣れていった。
 使用人たちは皆、親切だった。特に侍女のソフィアは、エリアナの良き相談相手になってくれた。

「エリアナ様、今日は庭園を散策なさいませんか? 薔薇が咲き始めていますよ」

「薔薇?」

 エリアナの目が輝いた。
 庭園には、見事な薔薇園があった。赤、白、ピンク——様々な色の薔薇が咲き誇っている。

「これは……」
「アレクシス様が、特別に手入れをさせている薔薇園です。亡きお母様が愛していたお花だとか」

 エリアナは、薔薇に触れた。柔らかい花びら、優しい香り。
 母も、薔薇が好きだった。

「エリアナ」

 振り向くと、アレクシスが立っていた。

「薔薇を見ていたのか」
「はい……とても美しいです」
「君が気に入ってくれたなら、嬉しい。好きな花があれば、言ってくれ。植えさせよう」
「本当ですか?」
「ああ。ここは、君の家でもあるのだから」

 その言葉に、エリアナは微笑んだ。
 自分の家——そう呼べる場所が、ついにできた。

「アレクシス様、わたくし……ここが好きです」
「そうか」

 アレクシスは、珍しく柔らかな表情を見せた。

「私も、君がここにいてくれることが嬉しい」

 二人は、薔薇園を並んで歩いた。
 それは、静かで、穏やかな時間だった。




 ある日、エリアナは城の図書室を訪れた。
 扉を開けると、そこには天井まで届く本棚がずらりと並んでいた。何千冊もの本が、整然と並べられている。

「まあ……」

 エリアナは、感嘆の声を上げた。
 かつては本を読むのが大好きだった。母が生きていた頃は、よく一緒に本を読んだものだ。でも継母が来てからは、本を読む時間も場所も奪われていた。

「気に入ったか」

 アレクシスの問いかけに、エリアナは大きくうなずいた。

「はい……こんなにも多くの本が」
「好きなだけ読んでくれ。ここの本は、全て君のものでもある」

 エリアナは、本棚に近づいた。詩集、物語、歴史書、音楽の専門書——あらゆる種類の本が揃っている。
 一冊の本を手に取る。古い詩集だ。ページを開くと、美しい言葉が並んでいる。

「この城には、ピアノもある」

 アレクシスが言った。

「ピアノ……ですか」

 エリアナの心が躍った。

「音楽室にある。君が弾けるなら、使ってくれ」
「わたくし、昔は少し……でも、もう何年も触っていません」
「なら、またここで弾けばいい」

 その言葉が、エリアナには信じられなかった。
 自分の好きなことを、していいと言われる。
 それが、どれほど嬉しいことか。

「ありがとうございます、アレクシス様」
「礼はいい。君が笑顔でいてくれることが、私には何よりだ」

 アレクシスの言葉は、いつも素っ気ないようでいて、温かさを含んでいた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

「地味で無能」と捨てられた令嬢は、冷酷な【年上イケオジ公爵】に嫁ぎました〜今更私の価値に気づいた元王太子が後悔で顔面蒼白になっても今更遅い

腐ったバナナ
恋愛
伯爵令嬢クラウディアは、婚約者のアルバート王太子と妹リリアンに「地味で無能」と断罪され、公衆の面前で婚約破棄される。 お飾りの厄介払いとして押し付けられた嫁ぎ先は、「氷壁公爵」と恐れられる年上の冷酷な辺境伯アレクシス・グレイヴナー公爵だった。 当初は冷徹だった公爵は、クラウディアの才能と、過去の傷を癒やす温もりに触れ、その愛を「二度と失わない」と固く誓う。 彼の愛は、包容力と同時に、狂気的な独占欲を伴った「大人の愛」へと昇華していく。

侯爵令嬢はざまぁ展開より溺愛ルートを選びたい

花月
恋愛
内気なソフィア=ドレスデン侯爵令嬢の婚約者は美貌のナイジェル=エヴァンス公爵閣下だったが、王宮の中庭で美しいセリーヌ嬢を抱きしめているところに遭遇してしまう。 ナイジェル様から婚約破棄を告げられた瞬間、大聖堂の鐘の音と共に身体に異変が――。 あら?目の前にいるのはわたし…?「お前は誰だ!?」叫んだわたしの姿の中身は一体…? ま、まさかのナイジェル様?何故こんな展開になってしまったの?? そして婚約破棄はどうなるの??? ほんの数時間の魔法――一夜だけの入れ替わりに色々詰め込んだ、ちぐはぐラブコメ。

離婚寸前で人生をやり直したら、冷徹だったはずの夫が私を溺愛し始めています

腐ったバナナ
恋愛
侯爵夫人セシルは、冷徹な夫アークライトとの愛のない契約結婚に疲れ果て、離婚を決意した矢先に孤独な死を迎えた。 「もしやり直せるなら、二度と愛のない人生は選ばない」 そう願って目覚めると、そこは結婚直前の18歳の自分だった! 今世こそ平穏な人生を歩もうとするセシルだったが、なぜか夫の「感情の色」が見えるようになった。 冷徹だと思っていた夫の無表情の下に、深い孤独と不器用で一途な愛が隠されていたことを知る。 彼の愛をすべて誤解していたと気づいたセシルは、今度こそ彼の愛を掴むと決意。積極的に寄り添い、感情をぶつけると――

双子の姉に聴覚を奪われました。

浅見
恋愛
『あなたが馬鹿なお人よしで本当によかった!』 双子の王女エリシアは、姉ディアナに騙されて聴覚を失い、塔に幽閉されてしまう。 さらに皇太子との婚約も破棄され、あらたな婚約者には姉が選ばれた――はずなのに。 三年後、エリシアを迎えに現れたのは、他ならぬ皇太子その人だった。

【完結】悪女を押し付けられていた第一王女は、愛する公爵に処刑されて幸せを得る

甘海そら
恋愛
第一王女、メアリ・ブラントは悪女だった。 家族から、あらゆる悪事の責任を押し付けられればそうなった。 国王の政務の怠慢。 母と妹の浪費。 兄の女癖の悪さによる乱行。 王家の汚点の全てを押し付けられてきた。 そんな彼女はついに望むのだった。 「どうか死なせて」 応える者は確かにあった。 「メアリ・ブラント。貴様の罪、もはや死をもって以外あがなうことは出来んぞ」 幼年からの想い人であるキシオン・シュラネス。 公爵にして法務卿である彼に死を請われればメアリは笑みを浮かべる。 そして、3日後。 彼女は処刑された。

婚約破棄されたら兄のように慕っていた家庭教師に本気で口説かれはじめました

鳥花風星
恋愛
「他に一生涯かけて幸せにしたい人ができた。申し訳ないがローズ、君との婚約を取りやめさせてほしい」 十歳の頃に君のことが気に入ったからと一方的に婚約をせがまれたローズは、学園生活を送っていたとある日その婚約者であるケイロンに突然婚約解消を言い渡される。 悲しみに暮れるローズだったが、幼い頃から魔法の家庭教師をしてくれている兄のような存在のベルギアから猛烈アプローチが始まった!? 「ずっと諦めていたけれど、婚約解消になったならもう遠慮はしないよ。今は俺のことを兄のように思っているかもしれないしケイロンのことで頭がいっぱいかもしれないけれど、そんなこと忘れてしまうくらい君を大切にするし幸せにする」 ローズを一途に思い続けるベルギアの熱い思いが溢れたハッピーエンドな物語。

婚約破棄された夜、最強魔導師に「番」だと告げられました

有賀冬馬
恋愛
学院の祝宴で告げられた、無慈悲な婚約破棄。 魔力が弱い私には、価値がないという現実。 泣きながら逃げた先で、私は古代の遺跡に迷い込む。 そこで目覚めた彼は、私を見て言った。 「やっと見つけた。私の番よ」 彼の前でだけ、私の魔力は輝く。 奪われた尊厳、歪められた運命。 すべてを取り戻した先にあるのは……

没落貴族とバカにしますが、実は私、王族の者でして。

亜綺羅もも
恋愛
ティファ・レーベルリンは没落貴族と学園の友人たちから毎日イジメられていた。 しかし皆は知らないのだ ティファが、ロードサファルの王女だとは。 そんなティファはキラ・ファンタムに惹かれていき、そして自分の正体をキラに明かすのであったが……

処理中です...