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第四章 氷が溶けるとき
二度目の対決
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「リリアーナ、元気そうね」
エリアナは、落ち着いて答えた。
「ええ、とっても。アンリ様が、優しくしてくださるので」
リリアーナは、指にはまった大粒のダイヤモンドの指輪を見せた。
「これ、昨日いただいたの。素敵でしょう?」
周りの婦人たちが、感嘆の声を上げた。
でも、エリアナは動じなかった。「素敵ね」とだけ言って、微笑み続けていた。
「ヴァルモント公爵様は……きっと、女にこまやかな贈り物などしてくださらないんでしょうね?」
と、リリアーヌ。
リリアーナの指輪は明らかにとても高価なものだ。「こまやかな」贈り物、では済まない。
その言葉選びにも皮肉がたっぷりこめられていたが。
「そんなことはないわ。これは、夫が選んでくれたの」
エリアナは自分の指輪をリリアーナに示した。
シンプルな銀の指輪。ダイヤモンドほど華やかではないが、繊細な彫刻が施された美しいもの。
「まあ、ヴァルモント公爵が? 意外とロマンチックなのね」
リリアーナの言葉には、わずかな嘲りが込められていた。
でも、エリアナは微笑んだ。
「ええ、とても」
そして、彼女は付け加えた。
「夫は、わたくしの好みをよく理解してくれているの。値段ではなく、心を込めて選んでくれるのよ」
その言葉に、リリアーナの表情が変わった。
周りの婦人たちも、「素敵ですわ」「真の愛情ですね」と口々に褒めそやした。
リリアーナは、お茶のカップを強く握りしめた。
お茶会の後、エリアナが帰ろうとすると、リリアーナが追いかけてきた。
「お姉様、少しお話しできますか」
二人は、庭園の隅に移動した。
リリアーナは、笑顔を消して、エリアナを睨んだ。
「どういうつもり?」
「何のこと?」
「とぼけないで。お姉さまったら、変わりすぎよ。まるで別人みたい」
エリアナは、落ち着いて答えた。
「人は、環境で変わるものよ。あなたも知っているでしょう」
「あの暗くて、地味で、取り柄のなかったお姉様が、今では社交界の注目の的なんて……おかしいわ」
リリアーナの声には、明らかな嫉妬があった。
「おかしくなんてないわ。わたくしは、ただ自分らしく生きているだけ」
「自分らしく? 笑わせないで。お姉様は、悪魔公爵の妻になって、不幸になるはずだったのに」
その言葉に、エリアナは眉をひそめた。
「リリアーナ、あなたは……」
「そうよ ! お姉様が不幸になるのを、楽しみにしていたのよ!」
リリアーナは、感情を爆発させた。
「あの冷酷な公爵に虐げられて、惨めになるはずだったのに。なのに、お姉様は幸せそうで……許せない !」
エリアナは、あっけにとられて妹を見つめた。
やがて、哀れみの感情が、じわっと胸に広がった。
「リリアーナ……あなたは、何も分かっていないのね」
「何ですって?」
「幸せは、外見や財産で量れるものじゃないわ。本当の愛情があるかどうかよ」
「……!」
返す言葉を失い、リリアーナは可憐な顔を歪めた。
「アンリ様は、あなたをちゃんと愛してくれている? 物をくれることは、愛とは限らないわ」
エリアナの問いに、リリアーナは答えられない。
「それは……」
「わたくしの夫は、わたくし自身を愛してくれている。外見だけじゃなく、心も。それが、どれほど幸せなことか」
リリアーナは何も言えなかった。
エリアナは、落ち着いて答えた。
「ええ、とっても。アンリ様が、優しくしてくださるので」
リリアーナは、指にはまった大粒のダイヤモンドの指輪を見せた。
「これ、昨日いただいたの。素敵でしょう?」
周りの婦人たちが、感嘆の声を上げた。
でも、エリアナは動じなかった。「素敵ね」とだけ言って、微笑み続けていた。
「ヴァルモント公爵様は……きっと、女にこまやかな贈り物などしてくださらないんでしょうね?」
と、リリアーヌ。
リリアーナの指輪は明らかにとても高価なものだ。「こまやかな」贈り物、では済まない。
その言葉選びにも皮肉がたっぷりこめられていたが。
「そんなことはないわ。これは、夫が選んでくれたの」
エリアナは自分の指輪をリリアーナに示した。
シンプルな銀の指輪。ダイヤモンドほど華やかではないが、繊細な彫刻が施された美しいもの。
「まあ、ヴァルモント公爵が? 意外とロマンチックなのね」
リリアーナの言葉には、わずかな嘲りが込められていた。
でも、エリアナは微笑んだ。
「ええ、とても」
そして、彼女は付け加えた。
「夫は、わたくしの好みをよく理解してくれているの。値段ではなく、心を込めて選んでくれるのよ」
その言葉に、リリアーナの表情が変わった。
周りの婦人たちも、「素敵ですわ」「真の愛情ですね」と口々に褒めそやした。
リリアーナは、お茶のカップを強く握りしめた。
お茶会の後、エリアナが帰ろうとすると、リリアーナが追いかけてきた。
「お姉様、少しお話しできますか」
二人は、庭園の隅に移動した。
リリアーナは、笑顔を消して、エリアナを睨んだ。
「どういうつもり?」
「何のこと?」
「とぼけないで。お姉さまったら、変わりすぎよ。まるで別人みたい」
エリアナは、落ち着いて答えた。
「人は、環境で変わるものよ。あなたも知っているでしょう」
「あの暗くて、地味で、取り柄のなかったお姉様が、今では社交界の注目の的なんて……おかしいわ」
リリアーナの声には、明らかな嫉妬があった。
「おかしくなんてないわ。わたくしは、ただ自分らしく生きているだけ」
「自分らしく? 笑わせないで。お姉様は、悪魔公爵の妻になって、不幸になるはずだったのに」
その言葉に、エリアナは眉をひそめた。
「リリアーナ、あなたは……」
「そうよ ! お姉様が不幸になるのを、楽しみにしていたのよ!」
リリアーナは、感情を爆発させた。
「あの冷酷な公爵に虐げられて、惨めになるはずだったのに。なのに、お姉様は幸せそうで……許せない !」
エリアナは、あっけにとられて妹を見つめた。
やがて、哀れみの感情が、じわっと胸に広がった。
「リリアーナ……あなたは、何も分かっていないのね」
「何ですって?」
「幸せは、外見や財産で量れるものじゃないわ。本当の愛情があるかどうかよ」
「……!」
返す言葉を失い、リリアーナは可憐な顔を歪めた。
「アンリ様は、あなたをちゃんと愛してくれている? 物をくれることは、愛とは限らないわ」
エリアナの問いに、リリアーナは答えられない。
「それは……」
「わたくしの夫は、わたくし自身を愛してくれている。外見だけじゃなく、心も。それが、どれほど幸せなことか」
リリアーナは何も言えなかった。
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