【完結】冷遇され続けた私、悪魔公爵と結婚して社交界の花形になりました~妹と継母の陰謀は全てお見通しです~

深山きらら

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第五章 嵐の予兆

暗い影がよぎる

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 王都での日々は、充実していた。

 エリアナは、社交界で多くの友人を作った。彼女の教養と優しさ、そして美しさが、人々を惹きつけた。

 また、慈善活動にも積極的に参加し始めた。
 孤児院を訪れ、子供たちに本を読んであげる。貧しい人々のための食事会を開く。

「公爵夫人は、本当に心優しい方だ」

 人々は、そう噂するようになった。

 アレクシスの評判も、変わり始めていた。

「悪魔公爵だなんて、とんでもない」
「あの方は、実直で正義感の強い、素晴らしい方だ」
「奥様を、あんなに大切にされている。真の紳士だ」

 エリアナとアレクシスの仲睦まじい様子は、社交界の話題になった。


 ある日、エリアナは王妃に謁見した。

「ヴァルモント公爵夫人、噂はかねがね聞いておりますよ」
 王妃は、優しく微笑んだ。
「あなたは、とても素敵な方だと」

「恐れ多いお言葉です」
 エリアナは、深々とお辞儀をした。

「あなたの慈善活動のこと、感心しております。ぜひ、私の後援する孤児院にも、お力を貸していただけませんか」
「喜んで」

 エリアナは、輝く笑顔で答えた。

 王妃の信頼を得たことで、エリアナの社交界での地位は、さらに確固たるものになった。

 でも、すべての人が、エリアナの変化を温かい目で見守っているわけではなかった。
 リリアーナは、日に日に苛立ちを募らせていた。

 侯爵夫人として、リリアーナも社交界の花形のはずだった。
「百年に一度の美女」として、すべての注目を集めるはずだった。

 でも、実際は違う。
 話題の中心は、いつもエリアナだ。

「ヴァルモント公爵夫人、素敵ですわね」
「あの方の優雅さ、見習いたいわ」
「公爵との愛情も羨ましい」

 そんな会話を聞くたびに、リリアーナの心は黒く染まっていった。

 夫のアンリは、リリアーナに優しかった。
 でも、それは表面的なもの。彼が愛しているのは、リリアーナの美貌であって、彼女自身ではない。
 アンリはただ、見た目がきれいな妻を連れて歩きたいだけなのだ。自分の格を上げるアクセサリーとして。
 会話も弾まない。心が通じ合っている感じもない。

 それに比べて、エリアナとアレクシスは——
 舞踏会で見る二人の姿は、まるで絵画のように美しかった。
 見つめ合う瞳、優しい微笑み、手を取り合う姿。
 全てが、本物の愛情で満ちている。

「許せない」
 リリアーナは、夜毎そう呟いた。
「なぜ、あの地味で取り柄のなかった姉が、わたくしより幸せなの」



 リリアーナの母であるマルグリットも、同じように苛立っていた。

「エリアナの評判が、うなぎ登りだそうじゃない」

 ある日、リリアーナは母のサロンを訪れていた。

「王妃様の信頼まで得たそうよ。信じられるかしら」

「信じられないわよ」
 リリアーナは、カップを乱暴に置いた。
「あの女は、わたくしたちの企みで、不幸になるはずだったのに」

「そうよ。悪魔公爵に虐げられて、惨めに暮らすはずだったのに」

 二人は、顔を見合わせた。なんだかんだ言って、気の合う母子だった。二人の思いは言葉にする前から一致していた。

「どうにかしないと」
 マルグリットが、低い声で言った。
「このままでは、エリアナが全てを手に入れてしまう。社交界での地位、人々の尊敬、王家の信頼……そして、あの公爵の愛を」

「でも、どうすれば……」

「考えがあるわ」
 マルグリットの目が、危険な光を帯びた。
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